カチカチとボタンを鳴らして画面のキャラを動かしていく。
ヘッドホンから聞こえるBGMを聞きながら、コマンドを入れていって相手に向けて攻撃準備。一人目のキャラの魔法を準備させたらもう一人へ。それを四人分繰り返していって、少し派手なバトルシーンを眺める。
炎が燃え盛る音、ときには氷が割れるような音。武器の打撃音。
その、中で。
こつり、こつり。
ゲームの中とは違う音がした。相変わらずですねーなんて心で思いつつ、俺は俺で忙しいのでそのままゲームの操作へ。相手の攻撃は自キャラを操作してかわして、また俺がキャラクターを操作していく。
ノーダメでこっちのターンに持ってこれたことに口角を上げて。ガチャ、なんて扉が開くような音をBGMの中で聞きつつ、まずは一番目のキャラの操作から。移動させて、通常攻撃。二人目のキャラはもっかい魔法でいいかな。三人目は先に補助が入るようにして。
四人目は――
「あ」
と。
通常攻撃でも行きますかと思ったら、近づいてきた足音は容赦なく俺のヘッドホンを奪い去る。犯人なんてわかってるので、恨めしげにそっちを見て。
「……そろそろアポ入れるなりノックするなり礼儀わきまえてくんない」
そう、言えば。
「アポ取る時間もノックする時間も惜しい、ってねぇ」
四月以来俺の家によく来るようになった、眼帯で左目を隠す先輩が、にっと歯を見せて笑っていた。
対戦相手も無事発表されて、今年は誰が上がるかねなんて少し楽しみにしながら迎えた週明け。若干親友がすでにもう死にそうだったけれど、そこはみんなで「頑張れ」ってエールを送っておきまして。
その楽しみを迎える前に。
エシュトの武闘会前恒例行事、主に第一次予選に向けた交渉期間が始まった。
上にあがりたいからこの条件で身を引いてほしい、早めに終わりたいからリタイアさせてほしい、あの人を倒したいから協力してほしい。内容は生物それぞれだけど、要は自分の利益のために交渉をしていきましょうっていう期間。
一年はもうこういう行事はただただ経験として、学年が上がった俺ら二年以降の生物は本格的に交渉術を覚えていこうねっていうものなんだけれども。
俺らは一年のときから不良グループのお世話になっているので。
「……俺の放課後は去年同様静かだと思ってたんだけど?」
「あらぁ、静かじゃなぁい」
今年も同じく、俺らのグループに「協力してください!」なんていう強者は現れるはずもなく。優雅に祈童と見回りを終えてのんびりとした放課後を楽しんでたんだけれども。
俺の勉強椅子にまたがってこっちに笑うそのヒトは許してくれないらしい。静かじゃないとか絶対そんなことないでしょ。
「この薬がどうだとかこれ見てだとかここ試してだとか、俺あなたが来た日ぜんっぜん静かじゃないんだけど」
「楽しいでしょぉ?」
「そこは否定しないけども」
自分だけじゃなくて新しい意見とか発見があるからいろいろおもしろいし。それ言うと調子乗って家に来る回数が増えそうなので絶対言わないけど。
とりあえずアポなしの代わりにキリのいいところまでゲームはやらせてくれるので、いつものように一旦視線をゲームへと目を戻して。
「この戦闘まで」
「おっけぇ」
それだけ言って、またカチカチとゲームのボタンを鳴らした。
フィノア先輩は、俺らが二年になった四月ぐらいからよく俺の家に来るようになった。
クリスティアの睡眠香でお世話になってたとき、成分だとか効能だとかを解析してたりそれについて話してたりしたのがきっかけらしく。
薬詳しいならこういうのはどう、なんていうのを始めに、休みの日とか放課後にうちに訪問して来るようになった。
アポなし部屋もノックなし、しまいには俺の作ってた秘密部屋まで簡単にバレたっていうのが結構いただけなかったけれども。
彼女の持って来る薬は割と興味深いものが多くて。
最初は、いくら使用量が異常だったとは言え重度の副作用が出てしまった睡眠香の調整。
あれ実は仕事の方がメインで使ってるらしくて。フィノア先輩は夢の中に行かなきゃいけないので相手には眠ってもらわなきゃいけない。ただ生物、すぐ眠れるタイプもいれば当然寝つきが悪いタイプもいるわけで。フィノア先輩も仕事忙しいときあるし、ぱっと眠ってもらうことを目的に使ってたとのこと。ただクリスティアの件があったので、もう少し弱い方がよかったりするのかって質問から始まった。副作用が出るならどのくらいの頻度なら症状は出にくいだとか、なるべく早めに入眠できるのはどの程度だとか。彼女自身も主に自分を使って散々研究をしてきたらしいけど、俺からの意見も聞きたいってことで答えていきまして。
医療は長年付き合ってきたものでやっぱり知識量は自信はある。それがお気に召したのか。
今回はこんなの作ってみただとか、これやろうと思ってるというのをよく持ってくるようになりまして。
たまにほんとに「これはだめだろ」っていうのもあるんだけど、楽しいのも事実。なので結局この訪問を許して。
「で? 色が変わるマニキュアは完成したの」
ぱぱっとゲームを終わらせて、フィノア先輩へと話を戻した。
その話を振れば、先輩はちょっと悔しげな顔。
「その顔を見る限りムリだったと」
「一定の変化は出せるんだけどぉ」
「まぁフィノア先輩の目指す、淋架先輩並みに変わるってのは難しいだろうね」
わかってた結果に笑ってあげれば、フィノア先輩はさらに悔しげな顔をして。咥えてる飴をガリっと噛んだ。
今、フィノア先輩が挑戦してんのは色が変わるマニキュア。
色鬼である淋架先輩からヒントを得て、ちゃんと本人にも確認して。
色鬼の色変化という種族特性が、周りに受け入れられるようにって始めたことなんだけれど。
「変化はするけど季節に伴ってが行かないぃ……」
「しかもその変化、塗った瞬間に変わるとかじゃん。ベースの色保ってくれないよね」
「そうなのよぉ。まずベースとなる色が塗った時点から安定しなくてぇ。場合によっちゃあ変なグラデーションになったりうまく色が変化しきれないとかぁ」
「元は種族特性のものだからなぁ」
それを再現っていうのは相当難しい。
一定のところから色が変わるってなっても、魔術や体質じゃない人工的なものなら、その一定のラインで完全に色が変わるまでのところから変化を起こさなきゃいけない。それが目に見えないものならぱっと変わってキレイだねって言えるけれど。うまくできないのが現実というもので。
「ゆくゆくはカラコンとか髪染めるのも作りたいのにぃ……」
フィノア先輩はここ数か月、とくに進展がない。それには肩をすくめてあげて。
「道はまだまだ長いねー」
「あんたならどうすんのよぉ」
「そもそもそこはほんとは専門外なんだけども……」
元から俺がやってんのは美容じゃないし。
ただまぁどうすんのかと聞かれたら。
「淋架先輩みたいにランダムじゃなくて、寒色なら寒色、暖色なら暖色。ある一定のカラーできれいに見せるってのから始めるんじゃない」
「夢はランダムなのよ」
「その夢実現する前の段階踏んでけっての」
夢を持つことは素晴らしいことだけども。
苦笑いをこぼし、ベッドヘッドにもたれて。椅子にまたがって背もたれに腕を乗せて突っ伏してる先輩を見た。
「これができたらぜぇったいまた偏見とか減るのにぃ……」
「……」
なんて呟くから、結局こうして家に訪れるのは拒めないんだよなぁと。今度は自分に苦笑いをこぼしてしまう。最近は甘くなったかなと肩をすくめてから。
「刹那もぜぇったい喜ぶでしょぉ?」
「あの子は紅オンリーにしてあげれば喜ぶから」
なんならリアスの血でマニキュア作りましたが最高に喜ぶから。そこはちょっと彼女の頭をまた疑われてしまうので言わないけども。
で? と。
進捗が思うようにいかずむくれてる先輩に。
本題へ。
「今日別にマニキュアの進捗言いに来たんじゃないんでしょ」
「……」
「先輩は基本的に”できた”ってときのチェックか新しいやつの提案でしか来ないくせに」
どうしたの、と。
優しく言いながらも有無を言わせないように、聞いた。
それに、今度は見抜かれてたことにむくれたようにして。
ほんの少しだけ真剣な色を混ぜて、口を開いた。
「……一個だけ、聞きたいことあってぇ」
「うん」
「……」
先輩は、何度か目を左右にやってから。
俺を見て。
「……”内部の傷”を治す薬ってさぁ、作れんの」
そう、聞いてきた。
恐らくどんな本にも載ってないであろうその情報。
あの薬部屋を見て、それ相応の年数生きてるってことくらいはわかってるフィノア先輩は、俺ならその答えを知ってるって思ったんだろう。
たしかに、答えは知ってる。
「……それをこの交渉期間で聞くってことは相当なことなんだ?」
「別にぃ」
そういうわけじゃないけど、という声には、本音と、ほんの少しの嘘がわかった。
まぁ踏み入れるのは好きでもないしそこはいいんだけど。
どのみち。
答えが答えなので。
ただまぁ形式上この交渉期間で聞かれてるので。
「答えたらどうしてくれんの」
「……あんたが知りたい武煉のことでも話すぅ?」
「あ、そういうのは却下」
フィノア先輩自身が言っておきながらどうせそれを言わないのもわかってるし。
「ああいうのは自分で探って吐かせるのが好きなんで」
「趣味わっる」
「絶対フィノア先輩には言われたくないわ」
一回息を吐いて。
「まぁ対価はなんでもいいや。俺があとでお願いするってのでもいい? 話の結果聞いてフィノア先輩がそれ相応の対価だと思うものを提案してくれてもいいけど」
「んじゃとりあえずあんたのお願い一個聞くってことでぇ。あ、好きな服着てあげよっかぁ?」
「えーフィノア先輩着せ替え甲斐がなさそう」
「あんた交渉期間じゃなかったら引き裂くわよぉ」
なんて互いに笑ってから。
ひとまずお願いを聞くってことで交渉成立ってことで。
俺の雰囲気が変わったことで、フィノア先輩も真剣な顔に戻った。
それに、微笑みながら。
彼女が求める答えを。
「答えは、イエスでもありノーでもあるよ」
言えば、当然のことながらフィノア先輩は目を見開いていった。それに構わず。
話を、続けた。
魔力を持つ生物にはまず、回復魔術がある。
一般的に定義されている方の回復魔術は、血や肉で構成されたいわゆる”普通”の生物に使う自己治癒力促進魔術。自己治癒力を上げる栄養素を魔力結晶に詰め込んで、傷口に集中的に照射することで、その傷の回復を早めるもの。
使うメリットとしては、その効果である傷の治癒が早まるってことくらい。体力使うからひん死状態だと難しいけど、そういうんじゃなければだいたい全治三か月のものも体力回復含めて一週間とかで治ったりする。
逆にデメリット。
まずそのひん死状態だと使えないこと。
あとは、傷口に集中照射をしないといけないこと。
「回復魔術ってなんで集中照射じゃないとだめだって言われてると思う?」
「……傷の具合によっちゃあ、他が栄養過多でよくないんでしょぉ」
「正解。足りないヒトには薬になるけど、足りてるヒトには毒になる。ほんのちょっとの過剰摂取、しかもそれが一回きりならまぁ、排出されていくから目をつぶってもいいけど。長期的ともなれば逆に体に害を及ぼしかねない」
「それが薬にしても一緒だってぇ?」
「一緒って言うかなぁ……」
薬にすると、
「なお厄介、かな。それに関しては」
なんでっていうのは雰囲気でわかっているので、そのまま続けていく。
「薬ってさぁ、魔術みたいに狙った場所に必ずしも行くわけじゃないんだよ。確かに薬別に効く症状は違うけど。一回体の中に入って、溶かして運んで……。ピンポイントでその場所に向かってくれるかって言われたらそうじゃない。ましてや飲むものは”栄養素の塊”。要はサプリと一緒。ビタミンCとかだとわかりやすいかな。あれって蓄積されないからすぐ排出されちゃうんだけど。それと似た感じで、本来魔術で集中的に照射するからこそ発揮できた回復力の促進は、たぶんそのほとんどが排出されて終わってく」
その排出を防ぐために本来の必要以上に飲んで行けば。
「結果的にはただ体の毒になるだけ。自己治癒力はたしかに上がるけど、魔術よりは微々たるもの。まぁ、魔術だって集中放射が前提になるから、内部の傷を治すなら常にその傷に繋がる道をかっぴらいとかないと意味ないんだけど。体力があるならその傷までの道をかっぴらく方が賢明かな。今の医療だとね」
「そぉ……」
「ってわけで俺の知ってる話は終わり。答えはイエスでもありノーでもある。ただしノー寄り、ってとこかな」
納得はできた?
聞けば、フィノア先輩はイエスというように困ったように肩をすくめた。
それに、ひとつだけ。
深入りは良くないとはわかっていつつ、困ったような顔に、思わず聞いた。
「……誰かそういう人でもいんの」
「……んー」
フィノア先輩はその困った顔のまま、少し目を下げて。
「いやさぁ」
「うん?」
「今年さぁ……」
「うん」
「陽真と武煉、第一戦で一緒じゃなぁい?」
――うん?
なんでいきなり二人の名前なんて驚きつつも頷いておく。
「そうね?」
「毎年さぁ、結構上で勝ち上がってっていうのが楽しみだったわけよぉ」
「去年もすさまじかったもんねー」
でしょぉ、って言いながら、本当にフィノア先輩は引き気味に笑って。
「第一次予選って時間無制限でもないしぃ、でも互いにこう、やっぱりライバルって手抜きたくないじゃなぁい?」
「……そーね」
あ、俺もだんだん引き笑いになってきたかもしんない。
「いつもより手っ取り早く終わらせにいきつつガチで行くと思うのよねぇ」
「うん……」
たぶん想像したのわかった。
その答えに丸をつけるかのように、フィノア先輩は腕の中に顔をうずめて。
「……今回ばかりは内臓まで行きそうな気がしてぇ」
「……道かっぴらけないほど奥深くの部分まで、行くよね……」
「だからさぁ」
内部の傷に効く薬がないか聞いたと。
そりゃ聞きたくなるわな。姉貴分としては心配なんだろうけども。
まずさ。
「……先輩さ」
「はぁい」
多分この交渉期間、それを俺に聞く前にですね。
「たぶんフィノア先輩はあの問題児上級生に内臓だけはやめてくれって交渉した方が早いと思うんだけど」
そう、きっと誰もが思う正論を、口にすれば。
申し訳なさもなにもなく、にっこり笑って。
「去年広人せんせーの交渉破棄して骨折りあったあいつらがそれ聞くと思うぅ?」
なんて言われたので。
姉貴分として頑張れよと思うけども。
一年半見てきた上級生の交渉破棄という信頼感の方がどうしても勝ってしまったので。
「……なんか、こう……。内臓修復の方法とか、ちょっと探してみるわ……」
自分の新しい勉強にもなるだろうと言い聞かせて、遠い目をしてフィノア先輩に笑っておいた。
『内部の傷を治す薬は作れますか!』/レグナ
交渉期間コミック
陽真から武煉へ

今年はなんかあるの

モチ。――手加減したらぶっ飛ばす♡

これにときめくのは俺だけかな(笑)
美織とルク編

ルッくんは何かあるかしら! せっかくだしあたしで交渉練習しましょ! ここ誰も声かけてこないから!

……。……なるべく、いろんなヒトと全力で、闘いたい、です……いつも乱闘、なので……

じゃあ勝ち上がれるようにサポートすればいいのね!

ちがう……

?

美織先輩とも……全力で闘いたい……

きゅんとしたわ!!

申し込まれたのはバトルなんだよな……

つくづく感覚が変な人たちの集まり……
雪巴とエルアノ編

こ、これはもうお互い決まって、ますね!

もちろんですわ。全力で

です! ま、負けません!

こちらこそ
リアスとクリスティア編

クリスも交渉…

俺の記憶が正しければお前は出ないんだがな??

かっこいいリアス様見たーい…

今年もか……。対価は

……先払い?

は? ――!

指噛みやがった……!

…お願い♡

この小悪魔めっ……
四組女子組

この交渉は三人でしかできないと思うの。刹那ちゃんはきっと炎上君にくぎ付けだし

そ、そうですね……!

では

素敵な展開の記録

た、対価は報告で!
カバンに入れた大切な思い出たちを揺らしながら、足取り軽く歩いていく。
こつこつとヒールを鳴らして向かって行けば、目的地の近くに来ていた兄と遭遇。私を見たレグナはふわっと笑いました。
「ごきげんだね」
「お互い様でしょう?」
笑ってあげれば、頷きはしなけれど。その微笑みは肯定だとわかっているので。
合流して、先ほどよりかはゆっくりとした足取りで、また目的地へと進んでいきました。
「なんだか久しぶりな気がしますよね、四人の時間」
「なんだかんだずっと誰かしらいたり別行動だったりだもんね」
メンバーも増えて、それぞれの交流も深まって。
昔より、ほんの少しだけ減った気がする幼なじみ四人の時間。
全く寂しくないなんて言ったら嘘になるけれど。
でも、その時間すらも楽しんでいる自分がいました。
少し離れている間。
こんなことがあったんですよ、そっちはどうだったかしら。これがおもしろかったから、今度は一緒にしましょうね、なんて。
当たり前だったはずなのに、少し離れてみると当たり前ではないと気づく、他愛のない会話。最近はそれをするのがとても楽しみで。
「離れている時間が愛を育むというのは本当ですのね」
「俺の記憶が正しければお前に愛を育む相手はいなかったはずだけど」
「親友との愛を少しばかり」
「なに、ifルートの開拓準備?」
「だから親友ですってば」
相変わらず親友との友愛を認めてくれない兄に、顔は笑いながら少々むくれてみる。けれど兄は気にしてないそぶりで肩をすくめました。その顔はやっぱり穏やかで、そっけなく返す割には兄もこの時間が楽しみだったことを再確認。
それにむくれ顔は一瞬で微笑みに変えて。
「まずはアルバム整理から参りましょうね」
「前回やってたのって一月だったんだっけ」
「そうですよ、我々が忙しかったとき。どうしても溜まってしまってよろしくないということでやったそうですけど」
一緒にできなかったのはやはり残念ですわ。
けれど今日はご一緒できる。いつの間にか増えたご友人たちにもらった、大切な思い出を詰めたカバンをぎゅっと抱きしめて。
「振り返りながら、たくさん楽しみましょうね」
そう、ほんの少し寄り添えば。
「いいんじゃない」
そっけないながらも、それを許してくれる兄。
明日からの武闘会の元気ももらうということで、心はわくわくで。自然と顔が綻んだまま、目的地であるカップル宅へと到着。
今日もまたひとつ、アルバムのページを増やしながら思い出が増えていくんですね。そのうれしさに、顔をほころばせてインターホンを押す。
結界が張ってあることはわかっているので、まだそこから動かぬまま待っていれば。
あ、なんかばたばたとした音聞こえてきましたね。
「今日は熱烈歓迎ですかね?」
「クリスも楽しみにしてたんじゃない」
「まぁ嬉しい」
あらでもなんとなくその足音二重に聞こえません?
「……クリスティアがはしゃいでリアスが止めに走っているんですよねこれ」
心なしか言い合いっぽいの聞こえるのって気のせいですよね?
ねぇ? と兄を見ると。
「……」
ちょっとお顔逸らさないでくださいよ。確定じゃないですか。
これはまぁ、と。
微笑みが苦笑いに変わった瞬間、インターホンの応答もないままバンッと玄関が開きまして。
「「カリナッ!!」」
どうやらケンカ中のお二人が私に助けを求めるべく、必至にな形相で名前を呼ばれましたわ。
お楽しみの前にこちらの問題解決からですね。
「大丈夫です、予想の範囲内ですわ」
「んじゃよろしく」
「その裏切りは予想外でしたけれども」
こういう言い合いもひとつの思い出と、いつからか思えるようになったので。
「カリナ聞いてっ」
「俺からだろ」
「はいはいまず中に入れてくださいまし、お話はそこからですよ」
思い出の振り返りの前に、先にひとつ思い出を増やすということで、呆れ笑いをしながら。
レグナと一緒におうちへと入っていきました。
で。
「事の経緯をお聞きしたいんですけれども?」
お招きいただきまして、持ち前の律義さを忘れることのない男は目の前に紅茶をくださいまして。ソファに失礼させてもらって、対面の床に「納得いかない」と顔に書いている二人に問えば。
「聞いてカリナっ、クリスの話からっ!」
「おい俺の方が先だろ」
「カリナはわたしの話聞きたいっ、リアスはクリスの次っ」
「今回ばかりは俺の話から聞きたい、絶対」
食い気味に「カリナ」と呼んでは互いに睨んで自分が先だなんだとまた言い合い。あらまぁこの言い合いも久しぶりですねぇ。……いやそうでもないですわ。ここ最近一緒にいなかっただけでそう思うだけ。言い合いはよくしますわこのお二人。これはこれで微笑ましいんですけれども。
お話が進まないので。
「順番ですよ順番。はい公平に?」
優雅に紅茶を飲みながら促してあげると。
「……じゃんけん」
「ほいっ…」
息ぴったりで揃ってじゃんけん。
かわいいですわ。レグナ紅茶持っている手震えてますよ。かわいいですよね。こぼさないでくださいね。
噴き出しそうになるのはなんとかこらえまして。
勝者は両手をあげたクリスティアということで。
「ではクリスどうぞ」
ぱっと顔を明るくしたクリスティアに目を向けて。
「西行くって聞かなくて、だめで、でも行くって言うし、だめなのにまだ早いのに言うこと聞いてくれないっ」
秒でリアスを見ましたわ。
「公平にということで同じ文字数前後でリアスお願いします」
主に通訳を。
にっこり笑いながら言えば、リアスは頷いて。
「……俺の行動療法を再開したくて、西地区に行こうと言ったんだがまだ早いと止められている」
わかりやすい説明ありがとうございます。
ではお互いの言いたいことをしっかり頭で整理しまして。
「要は、リアスは行動療法を再開したい、クリスティアとしては……再開は構わないけれど西まで行くのはまだ早いとなりまして。お互い譲らずに言い合いになり私に味方してもらおうと?」
「俺そろそろお前のその情報補完能力怖くなってきたわ」
「長年の付き合いの賜物ですわ。ちょっとした自慢にもなりそうです」
「身内だけにとどめてね」
どういう意味かしらそれは。
問いただすのは後にしまして。答えを確認するために二人へ向けば。
不服そうに、揃って頷きました。
とりあえず状況は理解できたので次ですね。
「そうですねぇ……。行動療法の再開はいいでしょう」
「ほら見ろ」
「クリスだってそこは反対してないっ…」
「はーい私のお話進めさせてくださいねー」
パンパンと手を叩けばこちらを向くお二人。幼稚園の先生ってこんな感じかしら。かわいいですわ。
「……お前その道には行かないでよ」
何を悟ったのお兄様。聞かなかったふりさせてくださいね。
えぇと、そうよお話を戻したいんですよ。いつものごとく咳ばらいをさせてもらいまして。
「クリスティアの行動療法再開は私もまぁ賛成です」
「俺も」
「医療に理解の深い兄もオッケーなので再開自体に問題はないでしょう」
ただ。
「リアスの主張する”西地区へ”というのは頷きかねる部分ではありますね」
「……何故」
「そこは私もクリスティアと同意見です。以前は――」
「フランス抜くと六月だったかな」
答えてくれた兄に頷いて。
「そこから約四か月。しかもあの頃はおうちの周りなどの東のみだったでしょう。それがいきなり反対地区の西だなんて急すぎると思いますけれど」
「……国は越えたろ」
「割と死にそうだったでしょうよあなた」
確かに行けましたけれども。
それに列車と徒歩じゃ状況も違いますわ。あの時は誰も入ってこないのが前提の場所。仮に今から西地区へ行くのであれば日曜ということもあってヒトはかなりの数のはず。
それは頭のいい本人が一番わかっているでしょうに。
それに。
言いたいことは同じだったのでしょう。紅茶を置いたレグナが尋ねました。
「行動療法はトリスト先輩の案で食事に切り替えるって話じゃなかった?」
「……」
そう。
メンバーも大所帯。揃って外に出てというのは規制線の関係もあって中々ない。ましてやうちは様々な訳ありの集合グループ。淋架先輩やトリスト先輩、ルクくんのように進んであまり外に出たくないというタイプもいる。
それならば、と。室内でできるもので、一番改善がしやすいとなるものが食事の行動療法ではないかという話になったはず。諸々他の事情が重なって延期が続いていましたが、本人もその療法に切り替えることは了承済みだったのに。
なのに何故、と。
本当に不思議で、リアスを見れば。
何度か目をうろうろとさせたあと、諦めたかのように息を吐いて。
ぽつり、こぼしました。
「……来週には帰るんだそうだ」
「帰る、ですか」
「正確にはゼアハード夫妻とうちの義両親で、エイリィとセフィルはこちらにまだ残るそうだが」
ハイゼルお義父様が試作をある程度見たら、来週。
ご義両親たちはフランスへ帰ると。
――あぁ。
納得ができて、微笑む。
「せっかくなら日本で少しでも一緒にお出かけという思い出をあげたいと」
「お前のその情報補完能力は助かるんだがな」
どうしてこの男はすごい引っかかるような言い方しかできないのかしら。
「その補完能力であなたも助かっているでしょうに」
「否定はしない」
「全力で肯定をお願いします」
だめですわこの男のこれに乗ると話が逸れる。再度の咳ばらいをして話を戻し。
「まぁなんだかんだ、来た割には一緒の時間ってそうそうありませんでしたものねぇ」
「特にアシリアさんたちとはね」
「二人ともいそがしい…」
「エイリィ達も。義父の調査の手伝いだなんだと今も結局こっちには満足に来れてもいない。せっかく来てもあのときは徹夜明けだったから追い返したようなもんだしな」
「それで帰る前に少しくらい一緒の時間を?」
「……まぁ。そこに俺が入ることが前提なのは毎度申し訳ないが」
そう、申し訳なさそうにしてクリスティアの目元をくすぐるリアス。
それにリアスの気持ちもわかったからか。クリスティアはふるふると首を振って、「大丈夫」と言わんばかりに抱き着きました。
その二人に微笑みつつ。
もうひとつ、理由があって顔はもっと綻んでしまう。
全員が、家庭環境というものにいろんな意味で恵まれることのなかったこれまで。我々双子やリアスは険悪、クリスティアは異常な愛情というものが多くて、元から四人、家族とは最低限しか付き合いなんてなくて。
リアスはとくに、クリスティアを守るかのように常に一緒にいました。なるべく異常愛情をかけてくる両親から引き離すようにしたり、かなりの努力をしていたのはよく知っている。
それが、今世。
自分から歩み寄ろうだなんて。成長というんでしょうかね。ここ最近のリアスにはどうしても微笑みが絶えませんわ。
歩み寄れるようになったのは、今世珍しく彼の家庭環境が良い方だからか、それともクリスティアの方が割とさっぱりとした環境だからか。恐らく踏み切れるようになったのは両方の要素が重なったからというのが一番でしょうけれど。
疑いだってあるでしょうに、彼らの中に見出した「何か」に答えようと、歩み寄ろうとしているのはやっぱり微笑ましくて。
「……何笑っている、二人して」
その笑みに気づいたリアスが、こちらをじとっと睨んできましたわ。二人ということはお兄様も同じですね。きっと同じ笑みでしょう彼の方に向けば、優しく笑っている兄と目が合う。それにまた笑って。
「最近の幼なじみの成長が嬉しくてですね」
「子供を慈しむってこんな感じなのかなってね」
「俺はお前らの子供になった覚えもなるつもりもないが」
「あ、クリスティアとリアスが結婚したら俺らがどっちかっていうと子供の方に入んの?」
「あら、誕生日順でもそうなるんですかね」
「毎日なでてあげればいいの…?」
「レグナ、クリスティアが我々を撫でやすいように幼児化できるようなお薬を」
「馬鹿じゃないのか」
なんて、勝手に逸れていく会話に四人、いつも通り笑って。
まずは本題の解決をということで、次のアルバム整理の準備をするためレグナと共に床に座りつつ、リアスへ。
「とりあえず行動療法の件ですが」
「……」
「お兄様の見解は」
「西まではちょっとまだ早いかな。年内にそこに到達するのが目標でって言うならわかるんだけど」
「ほら…」
また言い合いをしそうな雰囲気の二人が口を開く前にすかさず口を開きまして。
「私もそこは同意見です。もちろんリアスのご意見もよくわかりますわ。けれどあなたがいつもクリスティアに言うように、急ぎすぎは禁物。思い出を作ってあげたいからと急いて外で発作を起こしたとなれば逆によろしくない思い出になるでしょう」
「……」
そうは言っても、やはりどうにかしたいというお顔のリアス。
「お気持ちはわかりますわ」
「具体的にどうぞカリナさん」
「ご義両親はまぁ、もともとお忙しい身というのもあるから多少諦めはつくでしょう。特にクリスティアの方は比較的マイペースでお二人共さっぱりとした性格。そしてアシリアさんはフランス人特有と言えば特有、家族よりも恋人との時間を尊重したいタイプ。もちろん家族としての時間があれば楽しんでくれそうですが、彼らに関しては明日から帰宅までの武闘会期間、ご一緒にお話できる時間があれば十分でしょうね。それはリアスも恐らく予想済み」
「じゃあ…?」
「あなたはどちらかと言うとエイリィさんやセフィルさんとちょっとしたお出かけができたらなーというのがお強いのでは?」
「そろそろカリナとのシンクロ率を下げたい」
「こちらからお願いしたいところです」
そのお顔ドンピシャだったようですね。私だって寒気してますよ一人で腕さすらないでください。
「とくにエイリィさんは向こうでもあなたはお世話になっていたけれど、日本では調査の方で思いのほかエイリィさんたちとの時間も取れませんでしたし……」
「文化祭も思ったよりかは一緒に周ってなかったもんね」
「はいな。だから、どうにかして一日くらい日本で一緒に過ごす時間があればとお考えなのかなと」
どうでしょう、と写真を広げながら見れば。
図星ですねリアス、顔覆っちゃいましたもんね。ごめんなさいねここまでよくわかってしまって。私だってクリスティアのことの方よくわかりたいですよ。そこは心にとどめまして。
「お気持ちはわかりますが」
「わかりすぎると思う」
「私も思いますけども。先ほども言った通り、中途半端な段階で行くのは少々我々が止めたいところ。全員が楽しめるというのであればおうちに呼んだほうが良いのでは? あなたが外に出ようとしているのはとても嬉しい成長なんですけれどもね」
そう言って。
困ったように笑って、クリスティアの方を向くように促す。それに気づいたリアスはクリスティアの方を向く。
その視線の先には。
「……!」
リアスが楽しめない可能性を感じて、少々悲しそうにしている恋人が。
それを見て、ようやっと我に返れたのでしょう。ふっと肩から息を抜いたように笑って、クリスティアを抱きしめました。
「……悪かった」
「…」
「少し焦った」
「ん…」
「うちのかわいい天使は全員が楽しいが一番ですから」
「気が気じゃないより、気楽に楽しめる範囲で頑張れるならいいんじゃない」
「……」
「お前の”頑張りたい”はわかってるから。ゆっくりね」
「……わかった」
微笑んだリアスに笑って。
彼らの悩みはひとまず解決ということで、テーブルに写真を広げていく。
「では今日の目的のアルバム作りでも参りましょうか」
「うんっ」
「エイリィさんたちにあげる写真も選ばなきゃね」
「そこはカリナが担当だろう」
「何故かしら」
「クリスティア教のツボはお前が一番わかっているだろうからお前が選んだものに間違いはない気がする」
「でしたら全力を尽くさねばなりませんね」
「クリスティア教は認めるのね…」
「愛しておりますから」
多分その答え違うみたいな顔しないでクリスティア。
緩く首を振ったクリスティアには笑っておきまして。
広げた写真を一枚一枚確認しつつ。クリスティア達が予め用意しておいてくれたアルバムへ入れていく。
「これはもうここに入れてっちゃっていい感じです?」
「うん……九月はそれに入れて……」
「それまでのはこっちでまとめておく」
「一月以降は整理してなかったんだ?」
「なんだかんだばたばたしていたしな。旅行だなんだと。ヒマがないわけではなかったが」
「次は四人いっしょ…」
「らしいからな」
クリスティアのかわいらしいお言葉に顔の緩みが止まりませんわ。隠すこともないのでそのまま頷いて、任された九月のアルバムの制作へ。
それぞれが撮った準備期間の写真を一枚ずつ丁寧に入れていき。
ときには横にコメントを書き、また新しい写真を入れて。レグナに「こんなのありましたね」と見せたり。
こっちの写真はクリスティアが撮ったものですわ。見事にリアスばっかり。
「こっちリアスが撮ったやつでしょ」
「うん?」
「クリスティアに自分の方向かせて撮ったやつ」
「そうだな」
「名前呼んで振り返るのによくぶれずに撮れますよねぇ」
「俺としてはすげぇいいタイミングすぎる瞬間をよく撮れるよねって言いたいんだけど」
「もう言ってるじゃないですか」
「これカリナ撮ったやつ…わたしの視線が合ってない…」
それ寂しくてこっそりクリスティアのところに行って撮ったやつですね。言いませんよ。あ、でも気づいてますよねごめんなさい。
「エルアノさんだけには内密に」
「そろそろ裁判ものじゃないの」
「まだ、まだ大丈夫ですっ、たぶん。ほら、我々友人ですから」
「お前のその友人への信頼感は何なんだ」
希望を持ちたいんですよ。
このままでは私がどんどん裁判にかけられる方向に行ってしまいますね。これはいけない。
とりあえず逃げるように写真をアルバムに入れていくことを再開。写真の内容を言っていくと絶対墓穴掘っていくので。
「今月もいっぱい思い出増えそうですねクリスティア」
「ねー…わたしの視線の合わない写真という思い出が…」
せっかく話し逸らそうとしたのにどうしてそういうこと言うの。
「そろそろこう、カメラに向かって楽しんでますって写真が増えてほしい…」
「あ、ご希望であれば」
「それは隠しカメラで合わせていくやつだろう?」
「だから私のは隠しカメラじゃないですって」
堂々とつけてますって。
あ、前のお二人方疑ってますね? 本当ですって。
「本人が持ってれば隠しカメラじゃないです!」
「目に見えないカメラは全部隠しカメラって言うんだよ妹」
世界の基準が難しい。
どうしましょう結局話題が私のカメラの話題ですわ。これはいけない。
「こ、今月も、また、思い出、増えます、ねー」
「苦し紛れに同じこと言ってるぞ」
「もっかい言えばいい…? 視線の合わない写真が増えてくねって…」
「増やしますから視線の合う写真!! ちゃんとカメラ構えますから!」
他のもちゃんと構えますけれども。あ、心の声のはずなのに絶対みんな気づいてます。わかりますよその顔。でも気づかなかったふりしておきますね。
さぁ気づかなかったということでアルバムにまた写真を入れていきましょうね。
そう、また逃げるように写真入れを再開したところで。
「あ」
と。
レグナが声をあげました。
なんですかまたクリスティアの視線が合ってない写真でもありましたか。
「文化祭のときは比較的視線が合っているものが多かったはずなんですけれども」
「お前それ頑張って狙って合わせたやつだろ。って俺が言いたいのはそうじゃなくて」
華麗に受け流してくださってありがとうございます。
お礼は、レグナがリアスを見たので後ほど言うとして。
兄の視線は追わず、とある写真を掲げてリアスを見ている兄を見ました。
兄が持っている写真は……。
「クリスティアとリアスが衣装着て、ルクくんと珠唯さんのお店であーんしあってる写真ですか」
「そ。これでふとさっきの思い出作りたいの話」
「…?」
「行動療法云々は一旦置いといて。まだしばらくエイリィさんたちはいるんでしょ?」
「そうだな。たしか……」
「十一月の頭に、帰る予定、みたい…」
「んじゃさ」
兄は首を傾げている私たちに笑って。
「とびきりかわいいクリスティアのハロウィン衣装っていう最高の思い出、あげてみる?」
”もちろんそれに合わせてリアスの食事療法少しずつ始めてもいいよ”。
そう、笑う兄に。
一度三人、目を合わせる。
食事の行動療法はできたらできたでエイリィさんたちも褒めてくれるだろうし、他のメンバーも少しずつ安心材料になるでしょう。そこはあくまで追加要素的なもの。
重要なのは、来たるハロウィン。
クリスティアは毎年大変可愛らしい恰好をしますわ。そしてリアスはそれに合わせて、ペアなりおそろいなり格好いいお姿になる。
芸術好きのセフィルさんはもちろんのこと。大好きな弟妹が素敵な恰好をしたとなれば。
それはそれは最高の思い出になるに違いない。
確信した瞬間顔が笑顔になりましたわ。そうして全力で頷いて。
「クリスティア教のトップからしたら最高の案ですわ!」
「ぐっじょぶレグナ…!」
「んじゃその方向でってことで。リアスも良い?」
喜ばせたいと願った本人を見れば。
珍しく、微笑みに嬉しさをにじませていました。
リアスはその笑みで、頷いて。
「……あぁ。服は頼んだ」
そう、言うので。
これは全力を尽くさねばなりませんねと、今度はレグナとクリスティアと顔を見合わせて頷き。
まずは、と。先ほどの感謝の念も含めまして。
「最高ですわレグナっ! 早速今日からいろいろ考えましょうっ!」
「おっと。任せてー」
最高な案を出した最高の兄に、抱きついて。
一通り感謝の念を伝えてから。四人、アルバム作りと同時進行でハロウィン会議を始めていきました。
『ハロウィンに楽しい思いで作りましょ』/カリナ
写真整理しながらハロウィン計画も進行していこうということで

十一月頭までいるならばハロウィンにいるのは確実ですね。パーティーの日程は身内全員の予定で調整するとして

エイリィたちには聞いておく

お願いしますわ。では服装の希望ですが――

うさ耳

今年こそ猫耳で
間

去年やったじゃないですかうさ耳!!

かわいいものは何度だって見たい

わかりますけども!! 今年こそは猫耳ですよ!

そろそろ耳から離れろ

人のこと言えないくせに!!
その間のクリスティアとレグナ

今年はリアスどんな恰好がいい?

とびきりかっこいいのー

毎年恒例アバウトだねクリスー。んじゃバンパイアとかいってみよっか

最高レグナ…!
のほほんと即決しました
グリィナ夫妻を呼びましょう!
お誘い メサージュ

詳しいことはまた話すが。文化祭で来たエイリィとセフィルをハロウィンで呼んでも?

OK!

たのしみー…

あとはエイリィたちにも連絡を――?

ゆきは…

今年のハロウィンは素敵ないちゃいちゃがたくさん見れるんですねっ!? 楽しみですっ!!

当日こいつが一番楽しんでそうだな……
参加決定!

……ということで、全員から許可ももらったんだが

えっハロウィンパーティー!? 去年クリスがかわいい恰好してたあれ!?

あぁ。去年からメンバーは増えたが。文化祭で逢った奴らがいたろ。そいつらで今年もやるんだが。日本のハロウィン見て帰るなら参加はどうだと

わぁあ本当っ!? 本当!? セフィルー!! リアスたちがハロウィンパーティーやらないかってー!

本当かい!? ぜひとも!!

それでそっちの予定も聞きたいんだが

ハロウィンあたりで、どこ空いてる…?

こっちにいる間はわたしたちはいつでも大丈夫だよー!

義父から何か研究についてやるようにとかは

ううん、それも大丈夫っ! とりあえずイヤホンがどうだったかーっていうのは聞きたいから、なるべくヒトと話す機会作ってってくらいかな?

だからハロウィンパーティーの申し出はありがたいよ。むしろぼくらがきみたちに予定を合わせたいくらいだ

一応暗黙でハロウィン当日にらしいが

じゃあその日の夜はなにがなんでも空けとくね!!

仮装の用意をしなきゃだねエイリィ!!

セフィルとびきりなやつ選んでね!

もちろんさ!

こちらもとりあえず予定は大丈夫か

なら一応ハロウィンで。変わるようなら――

武闘会のときに、お話しする…

そういうことで

わかった!

楽しみにしているよ

こちらこそー…

じゃあ――

あ!

ん?

せっかくなら帰るの遅らせてもらってパパたちも仮装させて連れていこっか!?

お前は俺に新たなトラウマでも植え付ける気か?? 断るわ
♦

……!? 義父からメサージュ……!?

帰る日程は変えられないが写真を待っている

…よかったね…

複雑すぎるんだが……