大学生:リアス、レグナ、カリナ(3年生くらい)
高校生:クリスティア+同級生組
大学生がカフェでみんなバイト
リアスが元々深夜番、双子ちゃんは夜番で入れ替わり制
ある日夜番のバイトの子が一人やめてしまって、リアスにとりあえず繋ぎで夜番出てってところでクリスティアと出逢うみたいなリアクリ
書きたいとこだけ
リアスPart
「……夜番ですか」
「そう! 一日だけでいいからさー!! お願いしていい!?」
「別に構いませんが」
そんなに人手が足りなかったのかというくらい目を輝かせられても。
まぁ別に夜寝付きが悪いから深夜番をしているだけだったし。
夜番は双子もいるしいいだろうと了承して。
店長との話も終わり、店に出る支度をして事務室を出る。
ちょうど隣の更衣室もドアが開き、目を向けると。
双子の片割れのカリナがいた。
互いにお疲れと交わし、店の方へ共に歩き出す。
「夜番来るんです?」
「あぁ」
頷いた瞬間に、目の前の女はたいそう楽しそうな顔をした。
「……なんだ」
「いえ、それでしたらあなたにおすすめの子がいるんですよ。深夜だと言っても逢えないだろうからと言えなかったんですけど」
「おすすめ?」
「えぇ、とてもかわいらしい子が来るんですよ! 中学生くらいかしら」
「中学生が夜に来るのか」
「いえ、正確には夕方に。これまたほんとにかわいくてですね、腰まで伸びた水色の髪に、深い蒼の目が宝石のようで──」
「おい」
遮られたことに不満を隠すことなくこちらを向いたカリナに、構うことなく。
「聞いても頼んでもいないことを何故勧めてくる」
「私と好みが似ているあなたは彼女を絶対に好きになりそうなので見つけやすいようにと」
「いらねぇよ」
そう言っていられるのも今のうちだと気づいたのは、彼女に逢ってから。
カリナPart
夜番になって、初めて彼女に逢ってから、私はその少女の声を聞いたことがない。
「いらっしゃいませ」
水色のその子は、カウンター越しに対面すると少し身長差がある。
けれど決して声が届かないという距離ではない。
それでも、彼女は口を開きませんでした。
「…」
すっと、人差し指が「ココア」に伸びる。いつも頼みますよねこれ。好きなんでしょうね。かわいい。
「ココアですね、大きさはいかがなさいます?」
「…」
今度は、「トール」の文字へ。
大きいのですね、これもいつものですわよね。だいぶ長いこと通っていますが毎回これなのでもう覚えましたわ。
できるなら「いつものですね」なんて言いたい。けれど知られていることに気味悪がられたら生きていけない。
お会計をもらって、少し端によって待ってもらう。
「今日は声聞けた?」
「いいえ」
厨房にいる兄に、少し残念気味に笑った。
そんな私に苦笑いをして、兄はできあがったココアを渡してくれる。
それを、水色の少女へ渡して、彼女が律儀にしてくれる会釈にほほえんで、お礼を言う。
これが、私の日常であり、私が知るかわいらしい彼女だった。
それなのに。
「……注文は?」
「…………………ここあ」
どーーーしてあなたは簡単に声を聞けているのっ。
夜番に来た初日ですよ??? 私彼女のこと一年くらい見てますけど未だに声聞けたことないんですよ!?
イケメンの効果はそんなにすごいの。
「私もイケメンに生まれたかったっ……」
「ごめんね兄はイケメンじゃないくて」
「お兄さまはイケメンです……私が男ならよかったのよ……」
「そういう問題かなあれ」
そういう問題です、とレジのテーブルに肘を突いている男を恨めしげににらむ。
私の恨みなんてつゆ知らず、彼はかわいいかわいい彼女と未だに会話を続けている。え、うらやましい。
「サイズはどうしますか」
「…おっきいの…」
「570円です」
ちょっとあなた何手差し出しているの。
あぁっいいなあれっ、女の子から直接お金もらってるいいな!!
「カリナ思ってることめちゃくちゃ顔に出てる」
「あわよくばリアスが気づいて代わってくれればいいと思ってますわ」
「ガチ勢すぎるでしょ」
だってあんなかわいい子からお金もらえるとかうらやましすぎでは???
歯ぎしりしている間に、注文を受けたリアスがこちらへやってきて。
私と目があった瞬間に「うわぁ」って顔しましたよ失礼ですね。
「なんて顔しているんですか」
「お前がなんて顔しているんだ。ひどいぞ」
「あなたがうらやましくてつい」
「うらやま……? ──ああ、声聞けなかったんだったか。普通にしゃべったぞ」
「イケメンが憎い……」
レグナちょっと笑わないで、妹は真剣です。
さらに歯を食いしばっていると、苦笑いをしたリアスが。
「今度は視線を合わせてやるといい」
「は?」
「声が小さいのを気にしているのかは知らんが、喋ろうとはしている」
それだけ言って、レグナからココアをもらってリアスは少女の元へと言ってしまった。
え、私もちょっとがんばる。
レグナくんのお気に入り雪巴ちゃんとの会話
あ、こんにちわ
こ、こんにち、わ……
今日は何がいい?
え、あ、お、おすすめとか……ありますか
今日はこれがおすすめだけど……俺はこれが好きかな
じゃあそれで……!
年の差なしの全員バイトバージョン リアクリ休憩中
…おつかれ…?
あぁ……
くったりしてる…
妙に今日は女が多くて絡まれた……
もってもてー…
嬉しくねぇよ……
…おひざ
……
いつもなら「なんだ」とか「仕事場」とか言うくせに…今日相当疲れてんのかな…そのまま抱きしめちゃった…
クリスにあーんする…?
する……
わぁ相当疲れてる
ん
キスはめっ、お仕事中でーす…
休憩中でーす
続きはおうちでしてくださーい…
今日は夜更かしだな
わぁリアス様のえっちー
入れない……!
あれ閃吏なにしてんの。――あぁ。ちょっとどいてね
?
クリスティア返してくださーい!
あそこ突入するのすごいな……さすが
『喫茶店の日(if)妄想』
「……」
すべてができるようになるまで、早くて半年。
遅くて一年で足りるだろうか。
腕を組みながらソファに座り、下で黙々と本を読んでいるクリスティアを見る。
恋人は、恋愛のスキンシップが苦手だ。
だいぶ昔に、クリスティアにちょっかいをかけてくる遊び人の男がいて。女なら誰彼かまわずちょっかいを出していたそいつは、屋敷の廊下脇でメイドに、まぁそのなんだ、今夜どうだ的なことを、その、卑猥な感じで体を揺らしながら問うていたそうだ。
それを、この恋人が見てしまい。
瞬時に、いつか自分もされるのではないかと想像してしまったんだろう。本能的に拒絶したらしい。俺がクリスティアを見つけた頃には顔を真っ青にして挙げ句の果てには吐いた。
そのときから恋愛のスキンシップというか、いやらしい目や仕草を拒絶してしまうようになり。
齢一万年近くになった今でも、俺はこいつに手を出せないでいる。
「……」
ただそろそろ何かはしたい、というのが本音である。
一緒に住むというのがここまできついとは正直思わなかった。朝は無防備だわ、一応本人も頑張ろうと思うのか思わせぶりなことばかりするわ。
ぶっちゃけて言ってしまえば欲望がやばいわけで。
そこで、いろいろと穏やかになった今で気づいたわけだ。
ゆっくり刷り込んでいけばいいだろう、と。
自分とするのは大丈夫だと、ゆっくりゆっくり刷り込んでいけばいい。幸い彼女は俺にだけは従順すぎるほど従順なのだから。
いつものごとく包囲していけばいいじゃないか。
そうして、冒頭の考えに至る。
最後まで、と考えるならば早くて半年が妥当ではないかと。
キスまでと考えるならば。
「……一ヶ月、くらいか」
「…なにがー?」
小さな呟きが聞こえて振り返った彼女に、なんでもないと首を振る。
そう、とまた本に戻ったクリスティアの髪を掬った。
さて一ヶ月と見込んで。
俺はまず”それ”をする機会を伺っていなければいけない。
本音を言うとあまり気は進まないが、他にやりようはない。言葉では恐らく警戒するだろう。ならば行動で、警戒心など抱かせず、ごくごく自然にやらなければならない。さらに言えば、最後までも警戒心を抱かせずにいかなければいけない。
レグナにならって言うなら難易度S級のクエストである。
拒絶されたら終わり。ものによっては立て直しができるだろうが、今回のものは厳しいだろう。
さぞかし余計なことをしてくれたなと、もうすでに死んでいる元凶を恨んだ。
そこで。
「……!」
クリスティアが動く。髪に触れていた手を離してやると、本をぱたりと閉じて立ち上がり、キッチンの方へと向かった。冷蔵庫を開けて、じっくり見ること一分弱。何を食うか決めたんだろう。手を突っ込んで引っ張り出したのは、細い棒状のチョコスナック菓子。
神からのGOサインか?
機会を伺おうと思っていたらすぐにそれがやってきた。これはもうGOサインだろう。
神からも背中を押されたなら仕方ない。やるしかないなと心に決めて、嬉々としてこちらに戻ってくるクリスティアを手招きする。
彼女はなんの警戒心も抱かず、俺の膝に座った。
「…♪」
そのまま機嫌良さげに袋を開け、一本を口に含む。ポキポキと音を鳴らしながら、それは彼女の口へと吸い込まれていった。
「うまいか」
「ん」
頷いて、また袋から一本取り出す。それを口に含んだ、
瞬間に。
「クリスティア」
名前を呼んだ。
そうすれば彼女は必ずこちらを向く。
「ふぁあに(なぁに)」
クリスティアは口に含みもごもごさせながら首を傾げた。少女のような彼女に、微笑んで。
「あ」
自身の口を、小さく開けた。
「…?」
当然彼女は、すでに傾げてある首をさらに傾げる。そこに警戒心はない。ただの疑問だけ。
我ながらいやらしいなと笑いそうになるが、ぐっと抑えて、手を伸ばす。
行き先は、彼女の加えたスナック菓子。
俺の口に近い方を、トン、トンと叩いてやる。
それと、口を開けている状態を見て、察したんだろう。
「!」
その菓子をくれと。
俺は甘いものがものすごく苦手だ。できれば口には含みたくない。
今までクリスティアがどんなに差し出してこようとも、「誰かにあげるから味見して」と言うとき以外には拒否している。
普通なら、そんな恋人がいきなり菓子をくれと言ったら「なんだ」と警戒するだろう。
しかしクリスティアは別だ。
今まで拒否していたものをくれとせがんだとき。
クリスティアはとても嬉しい顔をする。
何故か。
彼女は好きなものの共有が大好きだから。
俺が好きだと言ったものは一旦口にするし(味覚がほぼ正反対なので後々後悔しているが)、好きな本は必ず読みたいと言う。逆も然り。気に入った本は薦めてくるし、好みの味は食べてみない? と必ず差し出してくる。
そんなわけで。
「♪」
共有が大好きな彼女は、俺がくれと言っているとわかった瞬間。案の定パァッと目を輝かせて、俺の肩へと手を置いた。そのまま、近づいてくる。
袋から一本出してあげる、という発想はないんだろう。
それがわかっているからやっている自分も中々だがこいつの俺に対する警戒心のなさも中々だと思う。
ゆっくりと近づいて、スナック菓子が唇に乗った。
俺の手はまだどこにも添えず。ソファに手をついたまま、菓子の先をポキリと折る。
あっまい。
思わず顔をしかめたくなるが、耐えて。
「おいし?」
そう、嬉しそうに聞いてくる彼女に。
「……たまには、悪くない」
精一杯微笑んで返した。
それを見て、さらに嬉しそうに笑って。クリスティアは菓子へと意識を戻す。
さぁ今日から、少しずつ包囲していこうか。
知らぬ間に堕ちてくるであろう彼女の髪をいじりながら、そっと、口角をあげた。
唇まで、あと十五センチ。
『彼女とキスができるまで』/リアス
「…」
動かしてたペンが、止まる。
「んー…」
何度その問題とにらめっこしても、解き方がぜんぜんわかんない。
カレンダーに目を移すと、三日後に期末試験が迫ってる。
本当なら、自分の力でがんばって、あとで言おうかなって思ってたけど。このままじゃ言うこともできなさそう。
イスから降りて、すぐそばの窓から、同じ二階にある目の前の部屋をのぞく。
そこには、窓際においたベッドの上で本を読んでる、五つ上の幼なじみで、
恋人の、リアスお兄ちゃんがいた。
絵みたいなその光景にちょっと見とれてから、我に返って。
邪魔して悪いなって思いつつ、自分の窓を、少し強めに三回、ノックした。
「……!」
その、音に。気づいてくれたお兄ちゃんが、こっちを向く。目があった瞬間のほほえみに、心がきゅんってなったのは聞かないフリ。
「どうした」
いつものようにカラカラって窓を開けてくれたのを見て、わたしも窓を開けて。
「あのね…」
「ん?」
少しだけ悩んだあと。
意を決して、言う。
「勉強、教えて、欲しい…」
お兄ちゃんはほんの少しだけ目を開いたあと、またきれいにほほえんで手招き。
「おいで」
それにうなずいて。
わたしは勉強道具だけ持って、お兄ちゃんの家に向かった。
「いらっしゃい」
ぱたぱた駆けていって、インターホンに手を伸ばすと。お兄ちゃんはそれを鳴らす前に出てきてくれた。家に上がらせてもらって、そのままお兄ちゃんの部屋に向かう。入ったとき誰の声もしなかったから、今は一人なのかな。
お兄ちゃんらしい、モノトーンな家具で統一された部屋に入って、ベッドにもたれるようにして床に座る。
「飲み物いるか」
「へーき…」
首を横に振ったら、そうか、って言って、お兄ちゃんは隣に座った。ほんの少しだけ緊張したけど、なんとかいつも通りを装って、それでね、って切り出した。
「わかんないとこ、あって…」
「どこ」
「ここ…」
ペンを挟んでおいたところを開いて見せる。引き寄せてくれたローテーブルに乗せて、指をさした。高校二年生の数学、応用問題。
「この応用だけか?」
「まだいっぱい…」
「ならこれを後回しにして、他のところに時間割けばいいだろ」
なんて言いながらも一回自分で解くためにお兄ちゃんは教科書を自分の前に持って行った。
「ちょっと、今回は、がんばりたくて…。ここ、絶対出るってゆってたから点数落としたくない…」
「珍しいな。いつもはそれでもいいやとほったらかしていたのに」
図星で、固まる。
突然黙ったわたしに、お兄ちゃんは視線を教科書からこっちに向けた。
「何かあるのか」
「じゅ、じゅけん…」
「嘘吐け、進学しないくせに」
「き、気が変わったかもしれないじゃん…」
「進学の話を聞いたのはつい二週間前だが」
よく覚えていらっしゃる。
「い、妹みたいな恋人が、勉強できるお兄ちゃんを見習ってたまには勉強がんばろって思ってるでよくない…?」
「散々勉強している姿を見せてきて今更か?」
でっすよねー。わたしでも思うかもしれない。「今?」みたいな。
お兄ちゃんはずっとわたしを見てる。
早く言え、って目で。
え、でもどうしようまじでさらっとは言えない。
テストがんばったらちょっと大人なスキンシップ教えてくれますか、なんて。
子供ながらに大好きだった幼なじみのお兄ちゃん。昔からお父さんじゃなくて「いつかお兄ちゃんと結婚する!」って言ってたくらい。お父さんごめん。
まぁふつうなら子供の言葉ってことで、誰もが本気にしないようなものなんですけれども。
なんとこのおにいさま、わたしが中学二年生のときに「約束したよな」とおつきあいの申し出をしなさったではありませんか。
もちろんわたしは、お兄ちゃん大好きだったし、なんなら成長するにつれて見えるようになった男らしさにも惹かれて、この頃には男性としても大好きだったので。
そりゃ二つ返事でオッケーを出しまして。晴れて恋人同士になったのですが。
付き合いだしてから約三年ほど。
全然手を出されていないわけでして。したのは軽いちゅーまで。
そりゃあね? 子供体型ですよわたし。
身長なんて小学生並みの140センチ、それで世間で話題のロリ巨乳なんていうお胸が大きい感じならよかったかもしれない。
そんな願いは儚くわたしのサイズはAカップ。魅了すらできやしねぇわ。
できやしねぇんですけれども。
恋人なのだから、しかもそちらから告白したのだから、少しくらい、手を出してくれてもいいと思うのも乙女心なわけでして。
そう悩んでいたところに、同じクラスの閃吏とか雪巴が教えてくれたのです。
テストがんばったらごほうびにっていうのはどう、と。
少女マンガをよく読む美織も入ってきて、こんな展開があるよ、とかこんなのもどう? とか話を聞いていき。それだ! ってなりまして。
がんばってお兄ちゃんともうちょっと進もう計画が始まったわけなのです。
本当なら、お兄ちゃんに教わらずに、いつも中の中だった成績をがんばって上げて驚かせて、ごほうびちょうだいっていうのが理想だったけど。
あまりにも問題解けなさすぎてだめでした。だって数学難しいんだもの。
さて回想が終わったところで。
「…」
「クリス」
声に、圧がかかる。無意識に、体に力が入った。
え、まじでどうしよう。
回想の旅に出てたら解決策なんて一切出てこなかった。閃吏、雪巴助けて。
なんて思っても助けにくるはずもなく。頭の中のあの人たちはがんばってねーって笑ってました。
……………正直に言う?
もちろんそれも考えたよちゃんと。
一番始めに言って、テストがんばるのもありかなって。でもそれはすぐにやめた。
まず引かれたらどうしようっていうのと。
許可が出なかった場合のわたしのテストへのモチベがだだ下がりになるので。
なのでできれば今も言いたくない。
なんとか見逃してもらおうと、ずっと黙ってると。またお兄ちゃんの声が落ちてくる。
「……言えないことか?」
わぁすっごい冷え切ってるこの声。
「い、えない、わけじゃ、ないんですけれ、ども…その…」
何度か視線をさまよわせて。
目が、合う。
「っ!」
お兄ちゃんの目は、声よりももっと、冷え切った目をしてた。
あ、これ言わない方がもっとやばいやつだ。
うん、言おう。
この状態が続く方がわたし無理だ、死んじゃう。
そう決意したら、すぐに口が開いた。
「あの、ね」
「ん」
「ごほうび、ほしくて…」
「褒美?」
言った瞬間に、お兄ちゃんの目が、ふっていつも通りに変わる。あ、一番怖いのは回避できたかもしれない。けれど無意識に入ってる力はまだ抜けない。
「……別に褒美が欲しいと隠す必要なんかないだろう」
「いや、その…」
問題なのはその内容でして。
「あの、もしね」
「うん?」
「いつも以上に、点数、取れたら…なんだけど」
口が震える。嫌われちゃったらどうしよう。でももうちょっと、進んでみたい。
がんばれわたし。ぎゅって目をつぶって、口を開いた。
「そ、の…そういう、こと、少しくらい、して、ほしい、なって…」
言ったーーーわたし言えたよ閃吏、雪巴ーーー。
「………………は?」
そして空気固まったーーーーーーー。
やばい死にたい。
前確認したいんだけど目開けられない無理。
「……」
「…」
「……」
「…」
空気が、重い。
「……」
「…」
「……」
「…」
今何分経ったんだろう。すっごい時間経った感じするんだけど。
お兄ちゃんなにも言わないんだけど。
やっぱりだめだった?
はしたない子って呆れちゃった?
とりあえず、
逃げようか。「ごめん冗談今日は帰るね!」なんて。
けれどさすがに目をつぶって逃げることはできないので。
このまま目を開けて、お兄ちゃんの反応がよろしくないものだったら全力で逃げようそうしよう。
意を、決して。
ゆっくり、ゆっくり目を開けた。
「……」
そこには、まぁ呆れたお顔のお兄さまがいらっしゃるじゃないですか。
おっと予想外すぎるぞ??
準備してた体の力が抜けちゃって、そのまま口を開く。
「なんで呆れてるの…」
「いや、いや、いろいろと……」
お兄ちゃん頭抱えちゃったよ。
そのままあーってうなったあと、きまずそうに名前を呼ばれた。
「クリスティア」
「はい」
「ちなみに拒否権は?」
うぇいまじですか。
「あるは、あるけど…」
「けど?」
目が、合う。
がんばってまっすぐ見て。
「そんなに、みりょく、ない…?」
そう首を傾げながら言うと。
お兄ちゃんは思いっきりため息をついてしまった。やばい泣きそう。
「クリスティア」
「はい」
無意識に、ぴしっと背筋を伸ばす。
これはおとがめか。もういいどんとこい。
と思ってたけれど、お兄ちゃんの口から出た言葉は予想と違った。
「一応こっちも我慢をしている」
「…がまん…?」
あきらめたように、うなずく。
「お前が高校生になって、段々女らしくなってきて、思わずこちらががっつかないように」
「この体を女らしくと言うならお兄ちゃんは眼科に行った方がいい…」
「悪いが視力は両目2.0だ」
そうでなく、と。
「……可愛い恋人に幻滅されないよう、いろいろ耐えてんだよ……」
とても悔しそうに、どこか恥ずかしそうに目をそらして、言った。
その言葉を飲み込んで、一生懸命頭を回転させて、
理解する。
瞬間に、ぶわって体温が上がった。
お兄ちゃんは別に魅力がないからってわけじゃなくて、わたしのために、そういうことをがまんしてたと。いきなり手を出して、怖がったり、もうイヤってならないように。
どこまでイケメンなのこの人は。
その気持ちは、とても嬉しい。
けれどどうしても、”そういうこと”を知りたいと思ってしまうのも、たしかで。
「ね、ぇ」
「ん?」
服の裾を引っ張って、まだちょっと恥ずかしそうな目を見て、聞いてみる。
「幻滅しない、ってゆったら、ごほうびに、してくれる…?」
”そういうこと”。
ほんの少しだけ、目を見開いたお兄ちゃんのほっぺが紅くなった気がした。
気まずそうに何回か目をうろうろさせたあと、また、大きくため息を吐く。
「……卒業してからと思ったがまぁいいか」
「…? わっ」
小さくこぼされた言葉に首をかしげてると、抱き上げられて。
あぐらをかいたお兄ちゃんの上に、座る。いつもしてるみたいに、後ろから抱きしめられた。
けれどすぐに、いつも通りじゃなくなった。
「! えっ」
普段は絶対来ないところに感覚が来て、すぐにその方向に目を向けた。
場所は、太ももの内側。
お兄ちゃんの、手が。
手、が。
スカートの中に入り込んで、わたしの、太ももを、撫でていらっしゃる。
「あ、の…」
「望んでいるのはこういうことだろ?」
「っ!」
ゆっくり、手がこっちに向かってくる。すすすって、触れそうな、でも触れなさそうなそんな感じで手が上がってきて、変な感覚がする。
待って、待って。
「い、いまじゃ、ないっ」
「確認をしているだけだ。認識の相違があったら困る」
合ってるのか、って耳元で言われた低い声に、肩がはねた。
あってるけども、あってるけどもっ!
「それともこっち?」
「へ、…っ!」
頭が追いつかない中でいきなりあごをとんとんってされて、お兄ちゃんの方に向かされる。
そのまま、口を塞がれた。
「、んっ!?」
いつもならすぐに離れていたのに、今日は。
唇を、なめられて、
「ふ、ひょっと、まっ、!」
口が開いたすきをついて、舌が、入ってきた。ぬるってしたお兄ちゃんの舌に、背中が反る。
歯の裏側を舐められた瞬間に、内股のあたりに変な感覚が走った。
「ふ、んむ」
「、……」
くちゅくちゅ口の中で音が鳴って、ときどき、歯の裏以外の部分でも、変な感覚が走る。それを、追っていこうとしたときに、
「ぷはっ」
「はっ……」
舌が出ていってしまった。
「…」
頭がふわふわする。苦しかったのにきもちいときがあって、離れたら、なんとなく、口がさみしい。無意識に、口の中のだえきを飲み込んだ。
「クリス」
「へ…」
まだ頭が回らない中で呼ばれて、顔を上げる。また、さっきのしてくれるのって思ってたら。
「わ、あ!?」
視界が、反転。
背中にちょっと衝撃があって、反射的に閉じた目を開けると。
楽しそうに、意地悪そうに笑ってる、リアスお兄ちゃんがいた。
「あ、の…」
「改めて聞くぞ」
ゆっくり、ゆっくり。きれいな顔が、近づいてくる。
「おにい…」
「試験で良い点を取ってきたなら、褒美は与えてやる」
目が離せずに見つめて。
「ただしお前が望んでいることの場合」
近づいてきたお兄ちゃんの口は、わたしの耳元。
「これよりもっとすごいことになるのでいいなら、な?」
「っ!」
甘く、甘くそう言って、耳の裏を、ぺろりと舐められた。声は出なくて、体だけが跳ねる。
「俺も散々我慢はしているんだ。こっちへの褒美も兼ねて好きにする」
「え、え…」
背中に回った手が、焦らすみたいに、上にあがってく。
それに釣られるように、自分の腰も少し浮いた。
その、ときに。
「!」
太股に、なにかが、当たってしまう。
聞かなくたってわかる。
そっと目を上げると、いつの間にか、さっきみたいにわたしを見下ろしてるお兄ちゃんと目があった。
その視線は、なんとも色っぽくて。
今にも欲しい、そう言いたげな目をしていて。
「条件が飲めるなら、その褒美にしてやるよ」
不敵に笑ったお兄ちゃんに、ぞくって背筋をなにかが駆けめぐった気がした。
条件が、飲めたなら。
さっきの、きもちいの、もっとすごいことをしてくれる。
──わたしが望んだ、以上のもの。
手を、伸ばされる。
さっきみたいにいやらしい感じじゃなくて、愛おしそうに、壊れ物を触るように、ほほに触れられた。
「クリスティア」
返事が欲しいときの、圧のこもった声に、反応する。
「勉強、始める?」
答えなんてわかりきっているような顔で聞いてくるお兄ちゃんに。
「……はじめる」
好奇心が勝ったわたしは、素直にうなずいた。
『お兄ちゃんと楽しいお勉強(if年の差パロ)』/クリスティア