また逢う日まで 先読み本編second May

 みおりたちとのあっという間な旅行が終わって、四人で過ごすゴールデンウィーク最後の日。

「クリス体調平気だった?」
「へいきだったー」
「リアスは?」
「だいじょうぶそう…」

 毎日じゃなくなったけどまだ続いてるレグナのチェックに答えて、ついでみたいに聞かれたリアス様を指さす。
 ソファに座ってる恋人様はなんか考えてるみたいだけど、旅行とか行った割にはいつもみたいに不安とかは出てなさそうで。

「帰ったときも前みたいに“生きてるー?”みたいなハグはしなかった…」
「なに、今回は愛してるーって?」
「そんな感じ…」

 昨日家についたときのこと思い出してちょっとほっぺが緩む。
 前だったらすっごいぎゅーってして、ひどいときは寝てるときも心臓に耳当ててわたしのこと抱きしめてたのに。

 昨日は、「楽しかったか」って聞かれて。うんって頷いたらそれはもう、こう、あまったるく「そうか」ってほほえんでくれて、よかったな、みたいにやさしく抱きしめてくださいまして。

「クリスお顔がにやけていますわ」
「♪」

 そのあともいっぱい話しながら、わたしたちなりの甘い夜を過ごしたんだもの。

「ほっぺがゆるんでしまう…」
「その緩みきったお顔もぜひ思い出に」
「あ、結構です…」

 カリナの言葉ですっと無表情に戻して。

 カルテにいろいろ書き終わったレグナがほほえんでくれたのに、わたしもほほえみ返す。

「回復も順調だねクリス」
「おかげさまで…」
「これならお薬の出番はありませんね」
「わーい…じゃあレグナのコレクションに加わるだけだね…」
「小瓶に詰めて飾っとくよ」

 なんて、嘘にちょっとほんとを混ぜた言葉に笑って、チェックが終わったからリアス様のとこに走ってく。

「終わったか」
「うんっ」

 手を広げてくれたリアス様のひざの上にぽすんって乗って、肩にうりうりすり寄る。こういうスキンシップならほとんど前みたいにすんなりできるようになったのがうれしくて、ほっぺがすごいゆるんだ。
 リアス様もすり寄ってくれて、一通りリアス様をたんのうしてからこっちに歩いてきたカリナとレグナの方に向いた。
 ここからはみんなであそぶ時間。

「今日どうしよっか」
「なにか映画でも見ます?」
「ホラー…? サスペンス…?」
「えっその二択なの」
「ちょうどこの前見ようねって言ってたのがその二つだった…」

 ね、ってリアス様を見上げたら。

「……」

 リアス様はこっちを見てる。

 けど、

「…?」

 いつもみたいにすぐには返事せずに、ただただわたしを見続けてるだけ。

「? なーにー」
「……」

 最近なんか考えごとみたいの多いなーって思いながら、返事のないリアス様をなでつつ待つ。

「リアス?」
「どうかしました?」
「……」

 レグナたちが声かけても、リアス様はなんか言おうかなーみたいに考えてるまま。

 これ大丈夫? ってカリナたちと目を合わせて、またリアス様を見て。
 リアス様の前でゆるく手を振ってあげた。

「リアス様ー…?」
「意識はある」
「じゃあなーに…」

 どーしたのって首をかしげれば、またちょっとだまって。
 わたしやカリナ、レグナを順番に見てく。

 みんなで首をかしげながら待ってたら。

「……その」

 小さく、口を開いて。

「俺と、付き合ってほしいんだが」

 なんてことをおっしゃいました。

 ちょっとシンキングタイムを要請したい。

「考えても…?」
「もちろん」

 うなずいてくれたのでカリナたちみたいに頭はよくないけど言われた言葉を考えてみる。

 つきあってほしいとな。
 なにに、じゃなくて「俺と」。

 なんとなくみんな見ながらだったからこれ全員に言ってることだよね?

 全員に「俺と付き合ってほしい」って言ってるんだよね?

 ちょっといろいろつっこみたいけどまずすっごい重要なこと聞いていい??

「…この約一万年、わたしはリアス様の恋人ではなかった…?」
「お前の飛躍した考えだけはこの一万年本当に理解できない」

 失礼すぎるでしょ。自分にも絶対原因あるじゃん。

 ねぇカリナもレグナも見えてるからねめっちゃお腹抱えて笑ってんの。

「思うじゃん、いきなり全員のこと見て“俺とつきあってほしい”なんて…。え、このヒトついに四人でおつきあいしたいのみたいな」
「お前くらいじゃないか」
「カリナー…」
「リアスの言い方ですと一瞬迷いましたわ」

 ほら、って不満げに見れば。

「俺はお前以外を愛する気はないしお前以外と恋仲になるつもりもないから安心しろ」

 さらっと最高な告白いただいたので今日は許すことにする。
 照れてほっぺがゆるみそうになったのを隠すようにリアス様に抱きついて。

「で? リアスはなにに付き合ってほしいの」

 冗談はそこまでにして、本題に入ったレグナの言葉に、抱きつきながらリアス様を見上げた。さっきまでと違って言おうかなーっていうのはなくて。リアス様はすぐに口を開く。

「……過保護の改善」
「……」
「……」
「…」

 ——え。

「え、リアスさまどうしたの…」
「リアス頭でも打った?」
「どうしたんですかそんないきなりご自分のアイデンティティーを捨てるような発言を」
「過保護なくなったらリアスさまはどうなるの…」
「お前ら覚えてろよ」

 いやわりとまじめなんだけども。

 わたわたしてるわたしたちとは反対に、リアス様は落ち着いてて。
 こっちもまじめなんだろうなって思って、首をかしげる。

「…どーしたの、急に」

 真剣な感じをカリナたちも受け取ったのか、ソファの前に集まって。リアス様の前で座る。

 その間にリアス様はちょっとだけ考えてるようにだまって、カリナたちがしっかり座ったら、また口を開いた。

「……いろいろとしてくれているだろう。周りが」
「まわり…」
「お前達ももちろん。俺とクリスティアが気兼ねなく遊べるように、と」

 遊ぶ場所ひとつとってもそうだって、リアス様はぽつぽつこぼす。

 人混みが怖いから、あそぶところはいつだって遊ぶヒトたち以外のヒトがいない場所に。もしくは魔術でわたしに結界が張れる場所に。危険なものもなし。事前に調べるのも必須。それもだいたい、リアス様が断らないようにみんながあらかじめ調べてくれる。
 最近は当たり前のように貸し切りとかしてくれてるけど、たまたまみんながそういうことをしやすい家庭ってだけで、簡単なことじゃない。

「……去年の夏、旅行に行ったときから今にかけて。思い返さずとも周りがいろいろとしてくれているのはわかっている」

 この前の事件のことも。

 みんなが助けてくれた。

「……その、多くの手助けに、ちゃんと応えたいと思う」

 何個も、何十個も準備をしなくても気兼ねなく遊べるように。

 そうして、

「……クリスティアの、お前達全員の。笑った顔が増えるように」

 頑張っていきたい。

 最後の方はとても小さな声だったけれど。静かな家だからはっきり聞こえた。

 頭の中でリアス様の言葉を繰り返しながら、カリナたちの声を聞く。

「……我々は、その空間でももちろん楽しんでおりますが……。でも、そうですね」
「リアスがそうしたいなら、いいんじゃない」

 ね、ってかけられた声にうなずいて。

 リアス様を見る。
 ちょっとだけ不安げな目には、ほほえんだ。

 そうして、口をゆっくり開いていって。

 もちろん賛成、なんて簡単な言葉じゃなく。
 しっかりとリアス様の言葉を聞いて思うことを、こぼしていく。

「…リアス様」
「……ん」
「クリスも、いっしょにがんばる」

 ちょっとだけ開いた紅い目の近くに、指をそえて。あぁそういえば去年もこのくらいの時期だったなぁなんて思い返す。でも去年とは、気持ちが違う。

「…行動療法…」
「……!」
「クリスも、がんばりたいって思うから…」

 たくさんのことを思い出した今だから。きっとこわいこともたくさんあるし、イヤって思うこともあると思うけれど。
 それでも、カリナにレグナ、それにがんばれってたくさん応援してくれて、たくさん解決策考えてくれるみんなに、応えたいから。

「こわいこと…がんばろ?」

 いっしょに。

 笑ったら、リアス様も笑ったから。
 強く抱きしめられたあなたが「YES」って言っているのがわかる。

 リアス様を抱きしめ返しながら、カリナとレグナを見れば。

 二人も笑ってくれてるから、今度こそ。きっと大丈夫かなって思える。

 その二人に、一番にそのがんばった成果を見せられるように。

「…♪」

 今度こそ。

 わたしなりの「愛」を伝える手段を増やそうと、そっと心に決めて、目を閉じた。

『たとえどんなに、時間がかかったとしても。』/クリスティア
新規 志貴零

小ネタ
ゼアハード夫妻はもうお帰りになりました
レグナ「うわぁ逢いたかったなぁ」
クリスティア「ぱぱも逢いたかったって言ってた…あとこれゲーム…」

カリナ&リアス(レグナとアシリア(さん)が親子みたい)