また逢う日まで初稿版 Second grade October

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第二話
 金曜日。珍しく誰とも被らない休講時間が終わるころ、広い学内を歩いていく。
 ヒールなんてないけれど、踵を鳴らすように歩いていって。
 目的地に行くために通る、玄関付近まで行けば。
「あら」
『華凜先輩だっ!』
「……こんにちは……」
 そこにやってきたのは後輩さんたち。
 私を見つけて嬉しそうにやって来てくれる珠唯さんとルクくんに微笑んで。
『こんにちはっ!』
「こんにちは」
 お二人の挨拶には言葉で返し、ルクくんの首にいるイリスくんの会釈には同じく会釈で返しました。
 自然と三人、並んで歩き出す。
「実地研修帰りですか」
『そうだよっ! 華凜先輩はこれからお昼っ?』
「えぇ。お昼兼、武闘会の対戦者発表の確認を」
 そう言って、手に取ったスマホを緩く振りつつ二人へと微笑んだら。
『き、緊張するよ』
「……ぼくも……」
 今年初の珠唯さんとイリスくんの顔が少々こわばってしまいました。それに「大丈夫ですよ」と笑って。
「なんだかんだ楽しいものですから」
『それ絶対華凜先輩たちだけだよ……』
「そんなことありませんよ」
 ちょっとお三方、首を揃って横に振らないでくださいよ。ほんとですよ結構楽しいものですよ? ねぇ?
 なんて今は同意を求める方がおりませんけどもっ。
 このあとそれはいただけるだろうということで、彼らに向きなおって。
「よければご一緒に見ますか? 対戦者」
『! いいのっ!』
「もちろんですとも。これからみなさんで一緒に見ましょう」
『じゃあこれから体育館っ?』
「……刹那先輩たち……いる……」
 先ほどより安心したような顔の彼らには、また笑いつつ。
 首は、横に振る。
 すぐにきょとんとしたような後輩さんたちに、スマホを顔の横にかざしながら。
「私はこれから道場に参りますわ」
 本日のもうひとつの目的である場所へと、足取り軽く歩を進めました。

「珍しいじゃなぁい、あんたがこっち来んのぉ」
 あのあと、珠唯さんたちから「どうして」だとか「刹那先輩はいいの」だとかの質問は延々と笑みを浮かべるだけでお答えしまして。
 誰かが投げられるような音も響く道場へとやってくれば、現在待機中らしいフィノア先輩が迎えてくれました。それににっこりと笑って。
「皆様と一緒に対戦者発表を見ようと思いまして」
「へーぇ? 刹那のとこにも行かずにこっちぃ?」
「はいな」
 探りを入れるような目にもにこにことした笑みを張り付けて頷き、ひとまずフィノア先輩のお隣りへと失礼させていただきそっと腰を下ろしまして。
 授業終了時間ギリギリまで対戦を行っているこの時間のメンバー――

 武煉先輩と陽真先輩へと目を移す。

 今日も今日とて本気で闘っているお二人は、いたるところに汗をにじませながら互いに攻防。あ、武煉先輩の突きかすりましたわ。陽真先輩悔しそう。そして武煉先輩のその勝ち誇った顔。こっそりとお二人が映るように写真に収めておきまして。ほうっと息を吐き。
「なんて素敵な武陽(ぶれはる)……」
「あんたそれ目当てで来たのねやっぱり」
 しまった息と一緒に口からお声がこぼれてしまった。
 それと同時にフィノア先輩とは反対側のお隣にいる後輩さんたちから残念そうな気配が。
 そちらへと目を向けると。
「……」
『なんか、こう……もっと学園のこと知ってる人のとこまで連れてきてくれて……武闘会のこと教えてくれるのかなって……』
 違ったんだねって言う珠唯さんのお声が本当に残念そう。
「そこはその……大変申し訳ないんですけれども……」
「否定……しない……」
「元から今年の発表はここに来るのが目的でしたので」
『龍先輩のとこにいなくていいのっ? なんか最近顔死にそうだったけどっ!』
「あの男にはかわいらしい刹那と我が兄がいらっしゃいますから大丈夫です」
 それに今年は他にもメンバーがいらっしゃいますし。この時間、彼らが取っている体育試合の授業は結構メンバーいるんですよね。
「まぁ正直なところ対戦者発表を見ている刹那を見たかったのも本音ですが」
「それを蹴ってでもオレらのトコ来たって?」
 聞こえた声に顔を上げれば、時間ということで試合は強制終了にしたんでしょう。胴着姿で汗ばんだお二人がこちらにやって来ていました。それに笑って、頷く。
「はいな」
「君に刹那より優先することがあったなんてね」
「あら、私はいつだって刹那が一番ですわ」
「ということはぁ、ちゃぁんと刹那のかぁわいい写真があんたの手元に来るようになってんだぁ?」
「えぇ。ちょっと気が早いのですがこれも交渉期間の一環ということで」
『それ見習って大丈夫なやつ……?』
 そこまでストレートに疑われると思いませんでしたわ。大丈夫ですよ見習えるやつですよ、たぶん。うん、たぶん。
 自分で言い聞かせて。
「あら」
 チャイムと同時に、スマホにメールが届いたので。
 疑いの目をとりあえずなかったことにするようににっこりと笑いまして。
「ほら、通知来ましたよ後輩さん。一緒に見てまいりましょう?」
 あ、ちょっとまだなんか訝しげというかそんな雰囲気が抜けませんね。大丈夫ですって。
「そんな疑わしい交渉なんてしてませんよほんとに」
「……あやしい……」
 普段喋らない子が言うとすごい心にずしっと来ますわ。ほんとですって。
 メールボックスを開きつつ。
「刹那と同じ授業の雪巴さんはかわいい刹那を、この時間フリーな私は上級生の素敵なBLを写真に収めるというとても正当な交渉ですから」
『華凜先輩ってほんとに残念……』
 オブラートに包まれない本音が心に刺さる。
「そこの上級生方、肩を震わせて耐えるのであれば一気に笑ってくれた方がよいのですよ?」
「いやぁ、かわいい後輩がっ、ふふ、かわいそうじゃなぁい?」
「あながち間違えでなくてもっ、ふはっ、笑ってしまうのは、ねぇ?」
「失礼だよな、ハッ」
 こらえきれてませんけども。しかも武煉先輩さりげなくあながち間違えじゃないとか失礼。
「これはしっかり武陽を堪能させていただかなければいけませんね」
「悪かったって、勘弁な」
「お断りしますわ」
「かりぃん、刹那の写真あたしにも送ってぇ」
「笑ったあなたにその権利はございません」
 むくれた顔で返しつつ、開いたメールボックスの「武闘会対戦者」をタップ。ご挨拶はスルーさせていただきまして。
「これは私が読み上げていけばいい感じですか?」
「オレら華凜ちゃんの後ろにまわるわ」
「後ろ失礼するよ」
「はいなー」
 ”対戦者一覧”と書かれたところまでスクロールしつつ、壁から気持ち距離を取る。後ろに気配がしっかりあることと、私の持つスマホに全員の視線が集まったことを確認して。

 では、と。

 一日目から、身内メンバーの名前探しをするため、画面をゆっくりスクロール。
 その、数秒で。
「あら」
『あっ、あっ、あたしいる!!』
「珠唯一日目じゃなぁい」
 一日目の第一バトルに、まずお隣にいる後輩さんの片割れが。
 そして少しスクロールしたところに。
「シオンもいるね」
『えっ!? し、シオン先輩とバトルってこと!?』
「んや、コレは別枠だわな」
「……珠唯が、第一……シオン先輩が、第二、バトル……ですか……?」
「そうなりますね。よかったですね珠唯さん、閃吏くんと直接バトルはないようですわ」
『よかったぁああ……射貫かれるかと思った……』
 いやそんなことはしないでしょうよ。彼コントロールはいいですけれども。
 心の中でツッコみつつ、スクロール再開。
 一日目には身内メンバーはもう無し。では二日目。あらここにも見知ったお名前が。
「龍がいますわ」
「あの子後半の方に名前が出てほしぃとか嘆いてなかったぁ最近」
「ちょっといろいろありまして」
 これはまぁハイゼルお義父様の観覧は必至でしょうね。有名人ということでまた文化祭のような感じにするかもしれませんけれども。心の中でリアスに合掌しておきまして、次。
「三日目ぇ……は淋架先輩ねぇ」
『あっ、下の方に蓮先輩いるよっ!』
「ココも別枠だわな。第一で淋架ちゃん、第二で蓮クンか」
「四日目は……第一にユーアとトリスト先輩がいるね」
「あらぁ、協定組めるじゃなぁい」
「もふもふ協定……ですか……?」
 なんてクリスティアが喜びそうな。
 そして少しスクロールしたところにさらに喜びそうな生物が。
「四日目の第二戦にはティノくんがいますわ」
「あのチビ助四日目は大興奮だわな」
 これはカメラしっかり用意しないと。あとでスケジュールにしっかり〇を付けておくことにして。
『五日目が誰もいなくてー』
「六日目にルクいるわよぉ」
「!」
「美織と同じ回だね」
「お、んじゃルッくんは味方できて頼もしいわな」
「でも勝者……一人……」
「ソコはみおりんと交渉か」
「それか問答無用で蹴落とすか、だね」
 ちょっと好戦的なお二人方のせいでイリスくんがすごい緊張しちゃったじゃないですか。後ろにいる男性陣にフィノア先輩と揃って肘で軽い突きをかましまして。
「七日目ぇ、に雪巴とエルアノねぇ」
「あら、フィノア先輩もいますよ。第二戦に」
「えぇざんねぇん、あたしも雪巴たちがいる第一戦いきたかったぁ」
 それ問答無用で蹴落とすやつですね。ここの方々つくづく好戦的な人しかいない。私もですけど。
 から笑いをして、次へ。
「八日目……ウリオス先輩だけ……」
「オレら今回あとの方だな」
「また俺はラストかな?」
「ですかねぇ」
 相槌を打ちつつゆっくりとスクロールしていき。
 九日目の第二戦で見えた名前に、ぴたりと指を止めました。
「あらぁ」
 九日目の第二戦。
 そこには、今ちょうど「ラストか」と話していた先輩の片割れ、「木乃武煉」の文字。
 普段なら、きっとテンションが上がるような雰囲気が後ろからしたんでしょう。
 けれど今回は、それはほんの少しだけ。
 どちらかと言うと、納得いかないというような雰囲気の方が強いかしら。
『な、なんか先輩たち怒ってない……?』
「怒ってはないと思うんですけれどね」
「不満たぁっぷりって感じよねぇ」
 だって。

 その第二戦。
 「木乃武煉」の隣に「紫電陽真」の文字があるのだから。

 勝ちあがって二人で闘うことが楽しみなのに、それが潰されてしまった。それはもう不満でしょう。そっと目を向ければ。
「「……」」
 やはり不満げにスマホをにらみつけているお二人が。位置的に私が睨まれているようですね。こわくないのでそれにはにっこりと笑って。
「残念でしたわねお二人方」
 雪巴さんと交渉になっている写真を忘れずに、画面を一瞬切り替えて、不満げなお二人にシャッターを切る。それにいち早く切り替えて笑ったのは武煉先輩。
「これは雪巴が喜ぶようなものかい?」
「あら、彼女の想像力はたくましいですから。きっと素敵な想像をしてくれるでしょうね」
「さいですか」
 その想像力を知っている武煉先輩は肩をすくめて、未だ納得いかない陽真先輩を見る。
 そうして、小声で。
「……俺としては今年、納得は行かないけど好都合かな」
 なんて言葉をこぼしました。
「……?」
 それに首を傾げていたら、
「華凜いるわよぉ」
「! はいな」
 引き戻されるように声をかけられて、意識は再び画面の中へ。とりあえず想像していた先輩方の掛け合いはありませんでしたが、雪巴さんがいろいろ補完してくださるでしょうということで。
 珠唯さんが小さな指でさしてくれてる部分へと、目を向けました。
「あら」
 日にちは最終日前日。
「ハロウィンの前の日、三十日ですか」
 そこには、言われた通りの「愛原華凜」の文字。
 そして。
 隣には、同じ刀の武器を持つ「祈童結」の文字。
 発見した瞬間。
 先ほどの疑念は飛んで、自然と口角が上がりました。
『うれしーの?』
「えぇ。一年の演習で甘く見てしまったお返しができますもの」
 それに。
「できればこれからは多く、身内メンバーと当たりたいと思っていましたので」
「……? みんな、と……?」
「はいな」
 だって楽しいでしょう?
 本音は隠して、後輩さんたちにそう笑ってあげる。
「去年と比べて身内も増えて、力もついて張り合いも出てきましたし……。時間は演習よりも長いですから。闘えるのがとても楽しみですわ」
 ね、と。
 上級生たちに向けて少々好戦的な目で問えば。
 同じく好戦的な三人は、楽しげに笑う。
「どうかぁん」
「まぁ、今年は陽真は上にあがれないだろうからその点は残念ですけれどね」
「おい相棒、ソレは聞き捨てならねぇわ」
 あらこれは素敵な予感。
 全員の分を確認できましたということで、今度は心おきなくカメラの画面に変えまして。
 今からもう一度闘いそうなお二人に向けてシャッターを切り始める。
 これは雪巴さん大歓喜ですね。想像して笑いをこらえつつ。
「ねぇ華凜、武煉と陽真のいい感じの写真上げるから刹那の写真ちょうだぁい」
「後ほど見せていただいた上での交渉ですわ」
「乗ったぁ♪」
『……やっぱり先輩たちって……変だね……』
「……いつか珠唯も……同じになる……?」
『うぅん……?』
「おいでませこちらの世界へ」
『あ、華凜先輩たちの世界は大丈夫』
「そう言ってた時期があたしにもありましたぁ、ってねぇ」
「あら詳しくお聞きしたいですわフィノア先輩」
「交渉ねぇ」
 胸倉をつかみあってる男子の先輩方を見て会話をしながら。
 そっと、今度はしっかり口角を上げる。
 思うのは、これからの武闘会のこと。
 戦場で楽しむなんて、不謹慎だというのはわかっているけれど。でもやはり楽しみでもありました。
 言ってしまえばイベントでもある武闘会。今年はメンバーも増えて、身内の力も去年より増している。
 だからこそ、できれば。
 できればたくさん勝ちあがって、めいっぱい闘って。
 たくさん楽しみたいなと、思ってしまう。
 だって、私は。

 きっと来年、そこに立つことは許されないだろうから。

 そう考えてしまうとほんの少し、寂しくはあるけれど。きっと親友ならば、「それまでに」とのほほんとした笑みで言ってくれるでしょう。
 それに倣うように、寂しさには今は蓋をして。
 それまでに増えるであろう思い出をひとつずつ切り取るように。
 私はまた一枚、シャッターを切った。
『武闘会発表日!(志貴零)』/カリナ

//おまけ
珠唯『身内とあたりたいって言ってたけど……刹那先輩はいいのっ? 今年おやすみでしょっ?』
カリナ「残念ではありますけどもね」
陽真「カワイイ親友には本気はムリってか?」
カリナ「いえ、我々が本気でやると兄と龍が本気バトル始めてしまうので。自重しているんですよ」
他(過保護とシスコンか……)