たぶん過去最高のご褒美だったかもしれない

 十月三十一日、ハロウィン。

 リアスが上級生と交渉して、なんだかんだ当たり前になりつつあるメンバーでハロウィンパーティーをすることになったので、お菓子と服を持って家を出る。

 途中で待ち合わせしてた妹を拾って、向かった先は。

「よぉ」

「やっほ」

 会場ではなく、リアスの家。

 結界とドアを開けてもらって中に入れば、家の中がハロウィン仕様になってた。

「家でもやんの? ハロウィン」

「帰るときにうちに寄るんだろう? ついでだ」

「ごろーがはりきってて…」

「意外ですわね……」

 かぼちゃやコウモリのガーランドで彩られた廊下を歩いて行って、キッチンで飛んで料理してるリヒテルタにまず挨拶。

「やっほ、冴楼」

『お久しゅうございますおふた方……』

「お邪魔しますわ」

『ごゆるりと……』

 言いながら、リヒテルタは用意してくれてたらしい飲み物をローテーブルへ。それにお礼を言って、時間も限られているので本題へ。

「んじゃこれ」

「悪いな」

「んや? 楽しかったし、むしろギリギリでこっちがごめんね」

 そう言って出したのは、今日のハロウィンで着る全員分の衣装が入った紙袋。

 中にまとめて入っているので、俺がそのまま開けて出してく。まず一番に手に取ったのは、水色のリボンがついた袋。

「えーと、これクリス」

「わぁい」

 次は紅いリボンで、

「リアス」

「ん」

 最後はピンクのリボン。

「んでカリナ」

「ありがとうございます」

 それぞれに渡して、最後に緑のリボンがついた自分のも出す。ひとまずテーブルに置いてから、三人を見れば。

「ウサギ!」

「おっと」

 真っ先に声を上げて喜んでくれたのはクリスティア。タタッと走ってきて、バッと俺に衣装を見せてくれる。

「ふわふわウサギ!」

「かわいーでしょ」

「うんっ!」

 そうして服を嬉しそうにぎゅっと抱きしめて――おっと待った待った服脱ぐの待って、いや慣れてるけども。

「せっかくなんだから部屋で着替えておいでクリス」

「むずかしい?」

「すぽんと着れるから」

 とくにお前のは。

 今回はワンピースじゃなくて短パンとセーターなので、手伝いも必要ない。途中で服をめくるのをやめたクリスの背を押して。

「一緒に行きましょうかクリス」

「はぁい」

 カリナも自分のを見て、少し大切そうに抱えてクリスに声をかける。それに微笑んで、二人を見送ってから。

「俺らもひとまず着替えよっか」

「あぁ」

 残ってるリアスと一緒に、普段書庫になってる部屋に着替えに行った。

「珍しいな」

「んー?」

 自分のセーターを脱いで、衣装のワイシャツを手に取る。

 その中でリアスの方に向けば、リアスも着替えながらこっちを見てた。

「なにが?」

「クリスティアの服」

「服?」

 そこまで言って、自分でもあぁ、と。リアスの言いたいことがわかって、口角を上げた。

「いつもはワンピースが多いのにって?」

「あぁ。コンセプトがうさぎとは言え、あのふわふわな生地でワンピースで来ると思っていたが」

「それもよかったんだけどね」

 ちょっと意地悪かなとも思ったけど、せっかくだし。

「たまには違った服でリアスをドキッとさせよう作戦を」

「クリスティアとか?」

「んや、俺の独断で」

 笑えば、リアスも「なんだそれ」と笑った。

 でもよくない?

「恋人の違う服ってドキッとするじゃん」

「体験談か」

「遠い昔のことなんではっきり覚えてないでーす」

 なんて、わかりきった嘘をついてから。

「たまにはいいでしょ」

「この抑えが効きづらくなってる時にかとは思う」

「俺はお前が聖人君子になるところが見たい」

「ばかじゃないのか」

 お互い笑いあいながら着替えて、俺は猫なのでスコティッシュの耳を装着。リアスがオオカミの耳をつけたのを確認して、最終チェック。

「大丈夫そうか」

「うん、ばっちり。かっこいー」

「どーも」

 あ、これよくわからんってときの返事だ。まぁかっこいいのは確かなのでもっかい言っておいて。

 こっちの準備はできたので、二人でリビングに向かった。

 そしてちょっとリアスにはほんとに申し訳なくなった。

「いかがでしょう?」

「かわい?」

 リビングに行って少しすれば女子たちが出てきて。

 二人の姿――というか主にクリスの姿に、ちょっと親友に申し訳なさが募ってしまう。

 俺とお揃いにしてるカリナはいいんだよ。

 俺と違う部分、スカートは気持ち長めに作ったら、実際に履いたらちょうどよくて悪い虫もつかないだろうし、似合っててかわいい。これはもういつも通り完璧にかわいい妹なので問題なし。

 問題なのはクリス。

 別に間違ってるわけじゃない。

 カリナもいるからかわいく服着てるよ??

 でもごめんリアス。

 ちょっとクリスのおへそ見えすぎたわ。

 ほんとごめんって、わざとじゃないからじとっとにらまないで。

「あの、ほんとに、手をね? 伸ばしたら腹チラするくらいにしようと思ったんだよ」

「俺には手を伸ばさずとも腹が見えているが?」

「クリス胸盛った?」

「ナチュラル…」

 ナチュラルに成長したのかな一か月で。カリナの時みたいに気持ち大きくしとけばぴったりだったのか。

「……ほら、いつもと違う、ね。姿にドキッとするでしょ?」

「いろんな意味でしたわ」

 わかる。

 リヒテルタが二人をほめたり記念撮影してるのを遠い目で見つつ。

 隣のリアスの軽い溜息を聞く。

「ごめんって」

「別に。怒ることでもないが」

 かわいいし、とこぼした言葉に気に入ってくれたのは確信。んじゃ何のため息? と隣に目を向けたら。

「他の奴に見せるには惜しい」

 なんて歪んだ目で言ってくれるじゃないですか。俺がドキッとしちゃったよ。

「クリス、今日俺お互いにとって最高の働きしたかもしれない」

「? いつも最高…」

「ありがと」

「ちなみにお兄様、スカートほんの少し長いと思うのですが」

「それはその長さが一番合うから」

 お菓子を持たせてくれるリヒテルタにお礼を言いつつ、カリナにはそれがいいと念を押して。

 ちょっと今日のハロウィン楽しみだなと、一人にやついてしまった。

『たぶん過去最高のご褒美だったかもしれない』/レグナ

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