時計をちらっと見れば、夜の八時。
手元に目を落として、何もないところをぼんやり見つめて。また時計を見る。その繰り返し。時計は一向に進まない。
わかってるけど、そわそわする。
三月二日。明日は、自分と妹の誕生日。
共に生まれて、俺の身勝手で離れてる愛する妹との大切な日。
そんな日を前に、俺はまた妹と離れている。
自分で選んでいる道なのに、矛盾した思いが頭を巡った。
また泣いてるかな。
やっぱり、傍にいようか。
逢いたい。祝いたい。
けれど、俺が傍にいても、カリナは幸せになれない。
カリナには笑っていてほしい。矛盾した思いが巡って、テーブルに頭を預けた時だった。
コン、と窓の方で音が鳴る。
いやそれはおかしいなとすぐさま突っ込んで窓を見やった。
そうしたら小さなおててが窓からこんにちはしてるじゃないですか。
ホラーかな??
まぁでも隣に金髪が見えているので答えはすぐにわかり。窓へと近づいて、そっと開ければ。
「なにしてんの、リアス、クリスティア」
今世、少し近い距離に住んでいる親友たちがいた。
「お節介に来た」
「おせっかい」
「またどうせ誕生日を悩んでいるんだろうとクリスティアが」
な、とリアスが笑えば、クリスも微笑んでうなずく。
それにに苦笑いをこぼして。
「なに、妹のとこに連れてくみたいな?」
「いや?」
リアスは首を振り、クリスティアがバッグから何かを出す。
そうして、はい、と出してきたのは。
「……便箋?」
「むじゅんばかりのあなたにこんなおせっかいをしに来ました…」
「そりゃどーも……」
苦笑いのまま受け取って。
「なにかひとつあるだけでも、うれしいよ」
小さな親友に、目を向ける。
「そばにいないことを選んでも、なにかひとつ、繋がりみたいなのあると、うれしいの」
それはきっと、愛の言葉が言えないクリスティアと、それを受け入れているリアスの体験談。リアスを見れば、うなずく。
「お前が選ぶ道に否定はない」
けれど。
「その矛盾で苦しいなら、変えてみるのも手だろ」
逢いたいこと。
でも、逢いたくないこと。
幸せになってほしい、笑っていてほしい。
そして、願わくば。
「……」
それを、伝えていいんだろうか。この矛盾ばかりの想いを。
その言葉は声に出していないのに、目の前の二人は「いいよ」と言うようにうなずいて。
「あとはお前次第だ」
そう言って、歩き出す。
その背を見送りながら。
「妹には手紙届けてくんないの」
冗談を口にする。振り返った二人は、いたずらっぽく微笑んで。
「「忙しいから」」
なんて言って、また歩き出す。
きっとこの後、妹の方にも何か仕掛けるんだろう。その足が無駄にならないように。
「……書きますか」
受け取った便箋で、妹への手紙を。
喜んでくれたらいいと、一度便箋を抱きしめて。
当日、できれば日付が変わる頃に届けられるようにと、机に向かった。
『綴るのは、いつだって変わらない、君への矛盾した愛』/レグナ