恋人がむかむかとしている。
「…」
あまり表情に出ないタイプだが、長年一緒にいれば雰囲気でわかる。
「どうした」
「…」
しかし聞いてみるも、ぷいっとそっぽを向かれた。それすらかわいいが、今それを言うと逆効果なので。
「クリスティア」
「…」
ごきげんをよくするためにと手を伸ばす。頬に触れたところで睨まれるが、こいつは俺に対しては拒絶をしない。いや拒絶はしたいんだろうが、自分の中の取り決めで、することを許していないらしい。
レグナ達相手なら「やっ」とそっぽを向くんだろう。それもかわいいから見たいが、これはこれで特権ではあるので。
「…」
「不服そうだな」
「…」
抱き寄せて、膝に乗せる。
眉をこれでもかというくらい寄せているが気にしない。
「何かに納得がいかないか」
「…なんか」
「うん?」
「…なんでもないことなのに、その一言に、いらっとくる、みたいな…」
その言葉に、昼間のことを思い出す。
学園での授業中。
グループとなっている生物が、よく俺とかかわりを持つように行動するのは知っていた。
最初こそ、クリスティアも普通にしていたけれど。
だんだんと、相手はエスカレートしていき。俺の隣にいることを「当然」とするようになってきていた。
本来の隣の「当然」はもちろんクリスティアなので。
俺もクリスティアを優先するし、クリスティアも、少しずつ恋人の主張をしていっているけれど。
相手は、どことなく「普段一緒にいるから授業のときくらいいいだろう」という雰囲気を出していて。ついには今日、それを口にした。
こちらからしたら決して良くないんだが。
恋人は心優しいから。
「…心、狭い」
まるで自分の方が悪いように、こぼしてしまう。
こてんとうなだれるクリスティアの髪を梳いてやって。
「狭くないだろう」
「んぅ…」
「友人でもない、クラスメイトがしていい行動や言動じゃない。ましてや恋人のお前を邪険にするなんて」
「…」
「お前の心が狭いんじゃない。相手の行動が悪いし、お前の感情は正しい」
な、と。
頭を撫でてやれば、ぎゅうっと抱き着いてくる愛しい恋人。そうして、小さな声で。
「…ありがと」
礼を言う彼女に。
「どういたしまして」
微笑んで、抱きしめ返した。
『もちろん相手にはきちんとわからせておいた』/リアス