夏休みのメインとも言えるエシュトの行事・交流武術会を終え、今年の夏も終わりへと差し掛かってきた、八月最後の日曜日。
我々双子は今日も今日とてクリスティアとリアスのお宅にお邪魔させていただいており。
「合ったー」
「だいぶ仕上がってきましたねぇ」
一昨日頃からお泊りをして、クリスマスに愛しい親友へと差し上げた桜のパズルを作っております。
ぱちんとピースがはまったのを確認して、クリスティアはまたうきうきと次のピースを探し始める。それに倣って私も探して。
「これですかね」
「合ったー?」
「えーと」
合いそうなものを手に取り、中心だけがぽっかりと穴の空いたパズルにそっと添える。形が近いそれをぐっと押し込めてみるも。
「……あら」
残念ながら隣の少女のようにぱちんとははまらず。
この子の出番はまだですか。そのピースを持ち上げて、クリスティアへと困ったように笑いました。
「違ったようですわ」
「そっかー」
「なかなか難しいですね」
「まぁ桜ってことでほぼほぼピンクだしね」
出来上がってきた部分を見れば、レグナの言う通り満開の桜。しかも桜並木というようなものではなく、満開の桜の中に入っているような風景。
「この中から合うピースというのは少々至難の業ですわ」
隣の親友はいとも簡単にぱちんとピースを当てはめましたけども。あっその隣の男もですね。
「なんですかコツでもあるんです? 私この三日でまったくもって上達しないんですけど」
「形見てればはまるだろう?」
「絵に当てはめてけばよくない…?」
次元が違いましたわ。
ちょっと悔しげに歯を食いしばってから、再びぽっかりと空いたパズルへ。残り数時間も経たずに終わるでしょうか。
「終わる前にあと一ピースくらいはめたいですわ……」
「思った以上に目標低くね」
「今までの自分を分析した上での最適なものだと思います」
「ゲームでもしながら、やってく…?」
「ひとつ当てはまるごとにクリスティアの写真」
「お任せくださいなっ!」
あっ、意気込んだ瞬間にあてはまりましたわ。違いますよクリスティアパワーじゃないですって。今リアスが言う前に私ピース持ってたじゃないですか。たまたまですよ、そう。
「偶然ですよれっきとした」
「れっきとしたクリスティアの力でしょ」
「あがめてもいい…」
「今ちょうどピースを持っていたので不問としましょう。リアスあとで写真は送ってください」
「不問なんだからそこの報酬もあるわけねぇだろ」
なんて笑いながら、ぱちんとパズルのはまる音を聞いて。
またひとつピースを取り、それっぽいところにはめようとし、失敗し。違うピースを手に取ってははめようとパズルに添える。
またはまりませんね。
「……」
違うものを取ってもまた。惜しいというようにパズルはそこにきれいにははまってくれません。
「……」
隣のクリスティアを見るとじっとパズルのピースを見て、一度製作途中のパズルを見て。そっとそれらしい場所にピースを持って行きます。
そうしてそっと、押し込めば。
ぱちんと、きれいにはまりました。
その後クリスティアはご機嫌なお顔。それにぱしゃりとスマホのシャッターを切ることは忘れずに。
「魔法の手です?」
「俺はその流れるような手つきで写真を撮るカリナの手の方が魔法な感じがするんだけど」
「これはれっきとした物理なんですけども」
「物理の方が恐ろしさが増すわ」
「あなたにはこの素敵なお写真はあげません」
リアスにそう言ってから、隣のクリスティアの手を見て。
またぱちりとはまっていくピースに、ただただ感動を覚える。
「まぁみるみるはまっていきますのねぇ」
「もうちょっとだから…やりやすい…」
「楽しいです?」
聞けば、クリスティアはそっと口角を上げて。
「たのし」
かわいい笑みいただきました。
「お力になれなくてもとても素晴らしいものをいただきましたわ……」
「素晴らしいものもらってんなら力になれよ」
「なったじゃないですかこの一ピース。これまでにも十分の一ほど!」
「貢献度が低いからさっきの写真よこせよ」
貢献度二位の男には文句が言えないっ。
ぎりっと歯を食いしばり、わかりましたというように溜息を吐いて。ほんの少ししびれてきた足を助けるように、立ち上がる。その直後、隣に裾を引っ張られました。見なくてもわかるクリスティア。けれど見たいのでそちらを見れば、少し悲しいお顔。
「カリナ、楽しくない…?」
まぁなんてことを言うのクリス。
「とんでもございませんわ、とても楽しいです」
「主にクリスの写真撮ってね」
「一番最高に楽しんでるのはお前の親友だぞクリスティア」
「あながち間違えでもありませんが残念なものを見るような目で言わないでくださる?」
ちょっとクリスティアも何故「あぁ…」って納得した顔するの。違いますよ。いや全く違うとかでもないんですけど。
「なかなかやらないことをするので新鮮で楽しいですよ?」
「…」
「本当ですよ」
未だ見つめてくるクリスティアに再度「本当です」と念を押して。
「私はラストスパートの気合を入れるために飲み物をいただこうと思っただけですわ。今までの態度がなければあなたたちのも淹れましたのに」
「ココア…!」
「コーヒー」
「俺紅茶がいいな」
「私を信じてくれないお方たちはご自身で淹れてくださいな」
その”この件で信じる要素はどこに?”って顔ですよ。そういうとこですよそういうとこ。
クリスティアを咎めるように軽く小突かせてもらって、ひとまずキッチンへ。食器棚を開けて、置かせてもらっている自分のマグカップを取り。
「紅茶とコーヒー、ココアでしたっけね」
同じ場所にある幼なじみ全員のマグカップも手に取ってから扉を閉めて、台所へと並べる。お湯が入っているポットを持ち上げればほんの少し足りなさそう。ついでに多めに沸かしておきますか。
クリスティアがやけどしないようにと採用されている電気式のポットに水を少し多めに入れて、スイッチオン。待ってる間に食器棚の隣にある棚に移動し、勝手知ったる戸を開けました。そこには紅茶のティーパックが入った缶にココアの粉の缶、コーヒーの粉の缶。その全部を取って、また台所へ。
お湯が沸くのを待ちながらそれぞれのマグカップに材料である粉を入れていく。クリスティアのは濃いめに。砂糖もしっかり入れてから、レグナと私のマグカップにはティーパックをひとつずつ入れて。
「あら」
お湯はまだかしらと待っていれば、視界に金髪の男が。
「ご安心を、あなたのも作っていますわ」
「知っている」
「まだお湯はできませんけども。運んでくださるのなら少し早いですよ」
「だろうな」
――”だろうな”?
この言い草的にリアスはそれを見計らって来たと?
そうですよね恐らくは。長年の経験から行くと運ぶとなったらだいたいクリスティアも一緒に来ますものね。リアスとクリスがこっちに来るからおのずとレグナも揃ってやってきますわ。
本日はそれがない。
まずレグナたちの方を見てみましょうか。
可愛いクリスティアはパズルに夢中。そしてさりげなく。そうさりげなく。
「クリス見つかりそう?」
「こっちー」
「おーすげぇじゃん」
レグナがクリスティアへ話しかける回数が増えている。そういうときは決まってますわ。
レグナにクリスティアの気を引いてもらっている。
ということは。
「……クリスティアの件でなにかお話でしょうか」
「お前のその分析力をそろそろ尊敬するべきか畏怖するべきか大変悩む」
「あなたの説明する時間を省いているんですから感謝をしてください」
「ご苦労」
「お湯ぶっかけますよ」
ちょうどお湯ができましたね。頃合いですか??
「この音って”いざ出陣!”みたいなものですよね」
「出陣するのはマグカップの中にだろ。決して俺に向けてじゃない」
「向けられて欲しくないなら言い方を考えなさい」
冗談で向けたアツアツのお湯が入っているポットはきちんとマグカップへと向けて。ゆっくり、マグカップへとお湯を注ぎながら。
「で? 何かお悩みでも?」
「悩みというか知恵を借りたい。言い方の」
「珍しく素直に申し出ますのね」
「最近は一人で悩むより相談するのもいいと学んでな」
「あら」
だんだんと良い方向へと言っている幼なじみに、自然と顔がほころんで。心持ちが穏やかな状態で、他のマグカップにもお湯を注いでいきます。
「もちろんお力になれるのであれば全力を尽くしますわ。それでどういったご用件でしょう」
ゆっくりと、中身がこぼれていかないようにお湯を注いでいき。
「これ以上興奮をして手出しをする前にキスの仕方の方向転換をしたいというのをクリスティアに伝えたいんだが」
そのお湯が勢い余ってどばっとマグカップから出陣していきましたわ。待って待ってお待ちになって。リアスもですけどそのお湯はいただけませんわ。
「何してるんだお前はっ」
「あなたのせいでしょう!? バカなんですか!? 言うタイミングをわきまえなさいな!!」
「これは今だろうと」
「ほんとにお湯ぶっかけますよ」
わざとですかこの男。本当に刺したい。
湧き上がる殺意を何とか抑えて、一瞬こちらを向いたクリスティアの気をすぐさま逸らせてくれたレグナには心の中で大変感謝をして。
「……とりあえず、なんておっしゃいました?」
リアスと共にこぼれてしまったお湯を拭きつつ、疑問を投げかけてみる。
「その前にやけどは」
「ありませんけども」
「驚きで感じないとかではなく?」
「驚かせた自覚をしているならもっと反省してくださいな」
ひとまず自身の安否を確認せねば話を進めてくれなさそうなので、リアスが台所を拭いている間に手元を拝見。手のひらを裏返したりして見てもとくに異常はなさそうですわね。
「命拾いしましたねリアス。何かあったらお兄様の千本が飛んでましたわ」
「何事もなくて何よりだ」
何事かを起こそうとした男が何をのうのうと。
いつものことで慣れているので、リアスが布巾を絞っている隣で私は紅茶のティーパックを揺らす。少しずつ濃くなり始めているマグカップの中を見ながら。
「……興奮をして手出しをしそうなのでキスの方向転換をしたいと?」
ようやっと、本題へ。
そっと隣を伺えば平然と頷く幼なじみ。えっこれ戸惑ってるの私だけです?? レグナこの会話聞こえてますよね。えっ私だけですか戸惑ってるの。レグナの方見てみます?
あのお方肩震えてますわ。笑っていらっしゃる。
ということは。
「……男性陣のお話はそういうこと」
「察しがいいお前は好きだ」
「私はそういう上から目線のあなたが大嫌いです」
もっとあがめなさいよ。
どうせ無理だと知っているので、話が逸れることのないように戻していく。
「それで、要はキスの方向転換をしたいとのことですよね」
「あぁ。少しまぁ、そのなんだ」
「遅かれ早かれ行く方向ではありつつも、ひとまず今現在の目標である方向ではなかったらしいと」
「……みたいだ」
苦笑いのリアス。それを見てから、私の視線はマグカップへ。
「話を聞いていた限りではそんなやらしい感じではなかったように思えますがね」
「俺もやらしいようにはしていないしな。思った以上に反応があるというか」
「実はプレイだったんですか?」
「お前にまでそう言われるとだんだんそういう風にしか思えなくなってくるんだが」
「声が上がると言われるとちょっとそっちの方かなと思いますよね」
「ちなみにお前はキスされて?」
「声は上がりませんねぇ」
あ、リアスがだんだん「ほんとに一般的ではないのか」って顔してますね。これはいけない。
「そのお声が上がるのにはもしかしたらほら、理由があるかもしれませんわ」
「理由ねぇ……」
「場所的に声が上がりやすい部分だったとかかもしれませんし」
「腕だが」
「腕になにかポイントがあるかもしれないでしょう。誘発するポイントが」
マグカップからティーパックを抜いて。お皿に移し、リアスを見る。
「ひとまずは方向転換もしつつ。その理由も見ていく必要はあるかもしれませんわ」
「単に反応がいいだけというのは」
「あるかもしれませんがそれも立派な理由でしょう。ただ正直なところクリスティアのそういった部分はとくに予想ができません」
「他は恐ろしいくらいできるのにな」
「そろそろコーヒーに砂糖突っ込んでもいいですか?」
人の親切をなんだと思ってるの。
睨んだらようやっと真面目になってくれたのか、悪かったと言うように両手を上げるので今回も許すとして。
「とまぁ、それはのちのちでもよいとして。目下の課題はその方向転換の仕方ですよね」
「あぁ」
この男が聞いてくるということは何かしら「そのままで言ってはいけない」というのがあるはず。嫌ですわどうしてこの男のこともこうしてわかってしまうんでしょうね。
「クリスティアのことをもっとわかりたいのに……」
「何をどう思ってその結論に至ったかは知らないがもう十分だと思うぞ。自信持て」
「もう少し手に取るようにわかりたいです」
「十分だろ……もう少しそれを他の男からの想いに気づくという方向に割り振ってやれ……」
「それこそ十分じゃないですか?」
あなたのそんな「は?」ってお顔本当に久しぶりに見ましたわ。
「もう少しレグナのこと考えてやれよ……」
「十分考えております。笑顔にするために日々奔走していますわ」
「恐らくもう少しそっちの鈍感さを直すために奔走してやればなお笑顔になるだろうよ」
「考えておきましょう」
言っておきながらどうしていいのかわかりませんけども。
「それでクリスティアのこと。直球で言うのは避けたいというようなことですよね?」
コーヒーの中身を混ぜてから一足先にリアスへと渡し、自分のとレグナの紅茶にまずお砂糖を。かき混ぜながら問えば、コーヒーを飲んだ後に「あぁ」と同意の声。そのまま息を吸った音も聞こえたので続けるのだろうと判断し、クリスティアのココアもしっかり混ぜていく。
「ひとまずは”今の方向も間違いではない”というような感じに伝えたいんだが。今のタイミングで方向転換を申し出ると少しまずいかもしれない」
「もう少し折を見て、というのは」
あぁあなたの我慢的にダメなんですねわかりましたわ。ちらっと見たお顔が大層「無理」と訴えているのでわかりました。
では。
混ぜる手を止めずに、ほんの少し思考へ。
クリスティアは腕にキスをしていくと少々そっちの方を彷彿とさせるお声が出てしまう。一応それも最終的な目的であれど、今現在彼らが目指している方向とは少々ずれてしまっているそう。
そしてリアスも限界が近いので、”それ”をしないのであれば方向転換をしていきたい。けれど今のタイミングだとクリスティアが気を負ってしまう可能性も高い。それを回避するような言い方――。
え、なくないです??
「なくないですか??」
「難しいか」
「ぱっと思い浮かんだのは”今の方向ではない”という部分を抜いて、ひとまず”興奮して自分がやばいから方向を変えたい”、というのが浮かびましたが。クリスティアがどう捉えるかが謎なので後押しが難しいですね」
「ちなみにお前が言われたら?」
「正直言われたことがないのでどう答えればいいかもわからないんですけれども」
ちょっと視界に映っているレグナが笑っていらっしゃいますわ。こっちは真剣ですよお兄様。随分楽しそうですわね。じとっとにらんであげてから、解決策をもう一度考えてみる。
考えてはみるけれど。
「……どのみちあなたの興奮がどうたらからは逃げ出せる感じはしませんね」
「別にそこはもう本人が知っているからいいんだが」
「あっ、言っちゃってるんですね??」
「この先はやめようかというところは興奮して歯止めが利かなくなりそうだからと素直に伝えた」
「その思いを今すぐまたあの子に伝えてあげなさいな」
たぶん解決しませんこれ? いや解決しなさそうだと踏んだから私に聞きに来たのもわかってるんですけどね?
「その場で一度ストップと、方向自体を変えるとなると話が変わってくると思ってな」
「それは同意しますが……」
うーん、クリスティアがこう、負担に捉えないような言い方……もしくはやり方?
ぐるぐるとココアをかき混ぜていき、クリスティアを思い浮かべて。
粉が完全に溶け切ったであろうココアからスプーンを取り出したとき。
ふと思い浮かびました。
「条件付きですが、さりげない方向転換ならもしかしたら行けそうではと」
リアスがこちらを見た気がしたので、私もリアスを見て。
「ひとまずいつも通りにやってみまして」
「あぁ」
「ギリギリのライン当たりでほっぺでもおでこでもいきなりしてみるのはどうでしょう。もちろん拒絶がなければの話なので少しハードルが高いかもしれませんが」
「……」
「できたら、のお話ですわ。それだったら、”こっちの反応もどんなものか見てみたかった”ということは言えそうかと思ったんですが」
「なるほど……」
リアスが考えている間に、私はできあがって少し冷めた飲み物をトレーに。三つ乗せ終わったところで彼を見れば、顔を上げました。
「なぁ」
「はいな」
「寝る前のキスとして頬とかにしてみたいというのはありか?」
いきなり言われたことが予想と全然違ったので一度止まってしまう。けれど止まったままではいけないと、脳を動かしました。
えぇと、要は興奮どうこうは置いといて、寝る前のキスもしていきたい、みたいな? 考えていると、それを情報が足りないと取ったのかリアスはまた口を開いていきます。
「一年らしい」
「一年」
「この八月で、行動療法を始めて」
言われてカレンダーを見る。あぁそういえば本当にあと少しですね。早いものですわ。って感傷に浸っている場合ではなく。リアスに目を戻す。
「その一年を区切りで、寝る前のキスの方向にしてもいいかと言うのはありかと。元はそっちでやる予定だったし」
「あぁ……節目で変えるのはいいんじゃないでしょうか。ただあなたの言うタイミングが微妙であるならば、合間合間に今までの療法も挟んでいくのはありだと思いますわ」
それならば”今までのも間違っていなかった”と思えるでしょうし。笑ってあげれば、リアスは顎に手を添えて考えるようなそぶりを見せて。
数秒。頷いて、私を見る。
「わかった。もう少し考えてからやってみる」
「考えすぎて先延ばしにならないように」
「あぁ」
柔らかく笑ったリアスにまた笑って。
「ありがとなカリナ、助かった」
そう言ってクリスティアのお菓子を取りに私を通り過ぎていったリアスを見届けてから。
私はクリスティア達のもとへと、歩いていく。
「クリスー」
「はぁい…」
手に取りやすい温度まで下がったマグカップを彼女に渡してあげれば、その顔は綻んで。
お礼を言うために、私を見ました。
そうして共にやってきたレグナと一緒に、一瞬驚いた顔をする。
「どうしました?」
そう、尋ねれば。クリスティアはふわりと笑って、聞いてきました。
「いいこと、あった…?」
と。
え、この短いお時間で? いいことなんてなくなかったです?
リアスがまたわけのわからないことばっか言っただけですよ。そうですよね。
そう、振り返りながらも。
自分の顔が思った以上に綻んでいたことを知る。
そんなに綻ぶ内容だったかしら。いえ決してそんなことはないでしょうね。
けれどもしも、この顔の綻びに理由をつけるとしたら。
「……特段いいことというわけではありませんけれども」
前よりもっと、それこそ「良い方向」で。
たくさんのことを考えるようになったなぁと、その成長が。
「少々嬉しくは、思ったかもしれませんね」
そうしてきっと、二人笑って良い報告をしてくれるのだろうと。考えるだけでまた顔がほころぶから。
とりあえず。
ふわふわと嬉しそうなクリスティアへ。
「よかったですね」
そう言ってあげれば。
「?」
当然ながら首を傾げる小さな少女。それにまた笑ってあげて。
「こちらの話ですわ」
「なーにー…」
「きっとリアスからいずれお話があるでしょう」
「何がだ」
「良いお話です」
「新しいおかしの発売日…?」
「もっと甘い話かもよ」
「?」
「レグナ」
「さークリス、飲んだら続きやろーね」
「? はぁい…」
まだ内容は秘密ということで。
それぞれ、飲み物を飲んでから。
「……♪」
どうか良い方向へと進みますように。願いを込めて、パズルのピースへ手をかけた。
『リアスが成長しました』/カリナ
おまけ

ちょっと食事の療法落ち着いてからにしよう親友

何故

大問題かもしれない

そんなにか??
夏休みコミック
リアクリと陽真
夏休み中に双子ちゃん意外にリアクリ宅を訪ねてきたのは陽真先輩でした

よー

♩

今日の土産コレな

おかし…ありがと
別の日

オマエらに似合いそうなストラップ

♩
また別の日

饅頭好き?

うんっ

……よく来る……というかこいつ、二、三日おきに来て土産くれるが一体どこまで行ってるんだ??
四組メンバー
ゲームの試作でたびたび集まる四組。波風邸にて
ピンポーン

!

あら

あらぁ、今日ダメだったかしらぁ

夢ヶ崎先輩? どうしたのかしら?

蓮に試作のチェックしてもらいたくてぇ。薬ぃ

毎回言うけどアポ取ってよ……

その時間も惜しいのよぉ。ここうまくいかなくてぇ

どれ?

……家に頻繁に来る仲だったのか

お互い医療系で話が合いますからね。頻繁ってわけじゃないですが、ああやって薬のチェックで時々来るそうですよ

ぉ、おうちからも先輩からも頼られてますね……!

さすが御曹司……!

ん? フィノア先輩、髪

んー?

なにくっつけてきてんのこれ……。ほら

さぁんきゅー

……なにか、もやっと?

! どうした雫来

え

すまない、お前の魂というか、何かがモヤッとしたのを感じたような

え、そうですか!?

まぁ……なにかありました!

え、いえ……! 別に! ……ただ、こう……とあるシーンを見てちょっともやっとした気はするんですが……! き、気のせいですよ! ゲーム再開しましょう!

詳しく聞かせてくれてもいいのよ!

気のせいだと思うので!

気のせいではないでしょうに……

罪な男だな波風……

……しっかり聞こえてたんだけど。なにあんたらそういう感じだったのぉ? 家来るの控えよっか

それこそ気のせいなんでお気になさらずにっ!!

雫来めっ……!!
リアクリ宅のもふもふ会
やっぱり彼女はお嬢様

毎回お邪魔させてもらって申し訳ないですわ。ゲームなど、できることが豊富でついお邪魔してしましますね

気にするな。……むしろ、俺はこの豪華な菓子を毎回もらうことの方が申し訳ないんだが

そんな……たいしたものではなくってよ

金箔のついた菓子のどこがたいしたものではないと??
季節の楽しみ

いつかユーアのおうちにも来るですっ

♩

ビーストは基本縄張りで生きてっから夏にゃきついかもだけどなぁ

秋になると場所によっては栗とか獲り放題だよー!

栗ごはん…

存分に腕をふるいましょう……

栗の下処理は俺の仕事か……痛そうだな……

春は自然と戯れられますしね。涼しい時はお越しくださいな

あぁ

ごろーもいっしょ

もちろん。お待ちしておりますわ

ぜひに…
カナリアの家は伊達じゃない

エルアノのおうちはすごい豪華なイメージ…

まぁ……そんなことありませんわ

豪華ですっ

きらきらしてたよー!

広くてなぁ。いつ行ってもそわそわしちまうぜ

そんな……。そうだ、もしよければお写真をお持ちしましょうか。お越しになる際、どんな場所かわかっていれば安心でしょう

助かる
後日

わくわく…木とかいっぱいな豪華なおうちのはず…

こちらですね

……

わぁ…

すごいです……

レグナ達の家と大きさが大差なく見えるのは気のせいだろうか……

目立つですっ

そりゃ、そうだな……
リアクリと後輩さん

お邪魔しますっ!

します……

どうぞ

♩

お菓子、作ってきた……

わぁい

……今日ご機嫌だね刹那先輩

“きっとみんなも楽しめる”、だそうだ

?

先に向こうで座って待ってろ

う、うん
♦︎

……

…紅茶、きらい…?

いえ……、あの……

……

ぼく、……紅茶三つ置かれても、こんなに、飲めません……

イリスとしゅいの

え

イリスはわかるけど……あたしは飲めないよっ?

祈童から聞いてな。お前らが来ると言ったらぜひ飲食を出してやれと言われた

珠唯たちにも……ですか

霊の類も食べることはできるらしい。正確には食べ物の生気だから、直接食すわけではないが

いっしょにもっと、たのしめる…?

たしかに俺達が感じているような味はわからないかもしれないが、同じ空間で同じものを食すのはどうかと——刹那がな

……

……じゃあ、これから、珠唯の分もお菓子……作れる……?

!

いっしょ、つくろ

……うんっ

うぅ、ありがとうっ
おまけ

お菓子は、ホールケーキ作ってきました……

おいしー

美味しゅうございます

刹那先輩大半平らげてる……どこに入ってるんだろう……
ルク宅のお話

ルッくーん!

!

先輩だっ!

迎えにきたよ

行こうぜー

うん……
♦︎

どした、ちょっと出てくんの遅かったな

まだ準備できてなかった? 早かったかしら

えっと……

家の人に、みんなのこと、聞かれて……恩人って話したら、今度家に連れてきなさい、と……

おや、それなら全員で行かなきゃかな?

びっくりしちゃうから少しずつにしてあげてね……
自分が一番
ティノに武器の手入れをしてもらっている同級生組

そうだ、氷河サンに肉球おすすめなのずっと言いそびれてたや

!

ボクの肉球人気なんだよー! はい!

もちもち…! すごい、魔法の手…!

気に入ってもらえてよかった!

♩

……

? ユーアもティノの肉球さわる?

……

どうしたの座って…ユーアはもふもふだよ…

♩ ですっ

さりげなく嫉妬してたな今……

……

? りゅー?

ん

? ハグッ

♩

すごいな、あの独占欲の塊たちを簡単にいなしていくとは

うちのヒーローの愛される秘訣ってね

……意外とユーアくんって男だな〜……

下手な張り合いは身を滅ぼしそうだ……
たまには君に構ってみたい

……

……

おお、珍しいね〜武煉くん

なかなか見ない組み合わせだな

俺もたまには構ってみたくてね

あそぶ?

あぁ

…

……

あそぼー

!(きゅんっ)

不覚にもときめいてしまった……構いたくなるのがわかるな……

——!

刹那のあんなふわっとした笑いを一発で……!

あたし間近で見たことないのにぃ……!

めったに見れないのに……!

ぅ、うらやましい……!

そこの女子、ジェラシーはもう少し可愛げのあるものでお願いしたいな。武器に吹雪に洒落にならない