武闘会前編
【一日目 第一戦:誓真珠唯 第二戦:閃吏シオン】

今年もやってきたわ! 武闘会!

き、緊張する……!

応援してるね…

う、うんっ……!!

……

何故か隣に義父のロボが……俺も大変緊張する……

……応援してるよ龍

ファイトですよ龍

苦笑いしかでねぇわ……
いつも君を見てる、2

やぁ諸君

お邪魔するヨ

こんにちはっ!

しばらくの間またよろしくね

こちらこそぉ

いや~、いつにもまして大所帯だねー

ご希望ならもう二人ほど呼んでさらに大所帯にできるよ

もう二人、ですか?

なかなか顔は出せないんだけれどね

まさか

ん

……?

上……は、教師方がいる待遇席……

あそこに来たか……
意気込んで行こうと思ったら

じゃ、じゃあ行ってくるね……!!

勝ったらごほうび…!

えっ、えっ、負けたら!?

おつかれさまのごほうび…

結局どちらも褒美があるのか……

だから、ムリしないで、がんばって…?

きゅんっ

みんなで応援してるからね!

しっかり見ているからな

安心して闘ってきてねー!

頑張れよ嬢ちゃんっ!

ファイトですっ!

みんなっ……! うん、がんばるよっ!

誓真

龍先輩も……!

とりあえずこのロボットも身内が見てると思って戦ってこい

いつの間にあたしは身内が増えた……!?
最後の最後で疑問いっぱいになってしまった
これ、知ってる
SIDEスタジアム

緊張するけど……いつも通りに……! でもそわそわする……みんな見てくれてるってなんか不思議な感じ……どきどきもあるけど、なんだろ……こう、むずがゆいって感じ……? なんとなく知ってるような……
第一戦開始

頑張ってー!

ファイトー!!

ハッ……!! わかった……!! 身内からの多くの声援、見守り……授業参観だこれっ……!! ルクの漫画で読んだことある……!! うわわ、気づいた途端なお恥ずかしくなった……!

ううっ、ええーい!!

……すごいな、大量の真珠を出して速攻で勝利して終わらせたぞ

なでなでパワー…?

たぶん違うわ
普段穏やかな人ほど
SIDE観覧席

お疲れさまでしたわ

ぱ、パワーアップしてましたね真珠……!

う、うん……! なんかこう、気恥ずかしくて……

わかる

次シオンくんか

わぁっ、シオンっ? 楽しみ!

そういえば……シオンは今回よく映像室にこもっていたね

あぁ――対戦者の今までの映像見てたそうよ!

真剣……でした……

なかなか勉強熱心と見受けられるな

今年はガチで上がってくる感じかな~?

! 始まったですっ!

おお! ……おお、すげぇな坊ちゃん

わぁ……相手のパターン全部読んで場外に追い込んでる……

なんて的確なクロスボウ……

ほんとにガチで上がってくるやつだなこれは

oh……シオンはすごいね!

スコアゲームとか高得点取りそうだネ!

すごいな、未来予知並みに相手の動きを読んでる

いやあれもうヒューマンの域超えてね……

よかったねしゅい…今回いっしょじゃなくて…

そんなことありませんよって思ってましたけどあれは撃ち抜かれるかすれすれで矢が飛んできますわね

運がよかった……

運も実力のうちよぉ、誇っておきなさぁい

パズルをやってるみてー……ぞっとするわ……
おまけ
後輩組の恐れリストに新しく閃吏が追加されたそうです
閃吏も勝利で第一次予選突破

わぁ緊張したよー

祈童

黒だな、余裕だったようだ

したよ緊張!! 間違って当てないかなとか!!

感覚がもう違う……
【二日目 炎上龍】
ハグでわかる、あなたの精神状態

来たかこの日が……

リアス様すでに顔が死にそう…

エイリィめっちゃ期待の目向けてるね…いろんな意味でがんばってね

いろんな意味で行きたくねぇわ……。とりあえず抱きしめさせてもらえるか

もちのろーん

わぁ、ハグの力強い…
追い打ちをかける生物ばかり

お呼び出しだよ親友

あぁ――と

見回りロボじゃないか、どうしたんだ?

手、合わせてなんかもぞもぞしてますね……
――パァン

! 開いた両手から旗がつるされてますわ

えっと、「が、ん、ば、れ……」あはは、応援してるね

種も仕掛けもないわ!!

マジックですっ! すごいですっ!

もう一回……

恥ずかしくて死にてぇ

頑張ってね龍先輩っ

あぁ……

授業参観みたいですごい恥ずかしいけど頑張ってね!

お前とどめでも刺しに来たのか??

龍クンになにこっそりしてたの珠唯ちゃん

頑張ってねって! 授業参観みたいだから恥ずかしいよって伝えておいた!

あはは、授業参観だなんておおげさな――

そうでもないわよ先輩

ん?

あちら、恋人を見たい氷河さんです

その隣には氷河サンの両親と、炎上クンのお姉サン

ロボも見てるですっ

そんでお守り要員兼写真係の双子さんだ

授業参観だ……

? 何か同情されている気がする……
記録は更新していくもの
バトルスタート

お~、ガンガン特攻してく……去年と違って攻めるねー

最短記録更新であろうか

そ、そうですね、あとは――

がんばれー! お姉ちゃん見てるよー!!

龍の恥ずかしい思い出も最高記録になるんじゃなぁい?

スタジアムからずっと死にたいと聞こえるですっ

苦手そうですものねこういうの……
おまけのスタジアム視点

龍かっこいいー! エクセレント! 自慢の弟だよー!
フランス語ながらとりあえず「龍」とは聞こえるのでスタジアムからも観戦席からも視線と「このヒトの身内?」みたいな声が聞こえる

帰りたくない
初めてクリスティアの元へ帰りたいよりも「帰りたくない」の思いが勝った瞬間
さすがに写真は気恥ずかしかった

華凜写真なら、俺動画撮っとこうか?

お願いしますわ

……
SIDE特別席

……

さりげなくスマホ見ている……

あとでカリナにお写真もらうように言いますか?

――! 結構だ!
血筋を感じる

♪、♪

……親子っつーからさりげなく隣にしてみたケド

意外と話さないねー。文化祭のときもエイリィさんたちみたいに「刹那ー!」ってならなかったんでしょ?

家族仲は良くないのか

それもあって同棲なのかあの二人は

別に仲悪いわけじゃないよ

!

むしろ刹那にとってはいい環境。俺ら含めて過保護が多いから、さっぱりしてる関係って珍しいんだよ

氷河さん的にはあれがちょうどよい、と……

でもこう、積もる話とかないん? 親子水入らずで話したいこととか大丈夫なのかな~

決してないわけではないんでしょうけどね

?

三者三様で今とてもお楽しみ中ですから

龍かっこいい

あいつまた新しい魔術会得しているな……

あのモーションがゲームの参考になりそう……

家族揃ってマイペースだな……
義兄姉のハイテンションに本気で帰るか否か迷った
リアス特攻のおかげで予想よりも大幅に早くバトル終了

終わった……

きゃー! リアスが勝ったよセフィル!!

さすが僕らの義弟だねエイリィっ!

帰りたくねぇなあそこ……
君には昔から撃ち抜かれてる

あ、珍しくテレポートじゃなくて階段上がってくるみたい

よほど恥ずかしかったのか……

……学校は楽しいかい刹那

お

話し始めた

たのし

それならよかったヨ。体調はどうかナ?

…

おぉ、コッチ来てどした

♪ 手

? ん

みんなのおかげで、ぜっこーちょー…♪

そうか

それはよかった!

あらあら

……っ

今日もヒーローは罪深いですのね

陽真先輩も刹那教入信?

とっくにしてるわ……

?
君もなんだかんだマイペース

せっかくならもうちょい話したら

…

と言われてもそんなにない…だいたい「今日楽しかった」、「よかったね」ぐらいでお互い納得できる…

…。…! そういえば…

うん?

龍と話してた…意外と泊まりに来ないんだねって…。エイリィたちも…

あぁ……行こうとは思ったのだけれどね。アシリアとセフィルが止めるんだよ

恋人のひとつ屋根の下に侵入するなんて無粋だヨ!

それにきみにはまだ刺激が強いからねぼくらとのお泊りは

?

あれフランスでしてなかったっけ…

さすが愛に生きるフランス人……

淫らだわ……

き、聞きたい……!!

でも残念…

残念?

お泊りないの…

ク――じゃなかった刹那……! お姉ちゃんいなくて寂しかった!?

練習してたから…

練習?

なんだあの小僧を水に沈める案件か刹那

そこはほどほどにしてあげて…

いやソコは阻止してやれよ

そうじゃなくて…

?

行動療法…少しずつ、進んでて…あの…ちょっとでも進んだら、安心、するかもねって、話してたから…

! ……話で聞くだけでもぼくらはとても安心だヨ刹那。少しでも愛する恋人とのスキンシップができてるなら嬉しい限りダ

♪ うんっ…

――ところで刹那?

はぁい…

どんな行動療法をしてるんだ

どんな…、――! ぉ、おやすみの、おでこのっ、キスっ…!

明らかにそれだけではないなこれは

そうか

あの小僧一回沈めよう

おい誰か炎上にまだ来るなと伝えてやれ、ただならぬ気を感じる

陽真とシオンと珠唯が走ってったわよぉ

兄貴たちはいいんですかい行かなくて

いやたぶん伝えてもムリ

え
♦

なんかやばかったぞ刹那の母さん

今行かない方が……

なんか殺すような目してたよっ!

知っている、聞こえていた

そう言う割に平気な顔してっケド……、あ、おい刹那呼んでくっからココで待ってた方が良くね?

いや

すごい殺気だったよ!?

炎上君っ

とりあえず額のキスと言ったときの刹那の照れた顔を華凜が写メ撮っているだろうからそれを回収しに行きたい

オマエんとこの身内ホントに己の欲に忠実なヤツばっかだな!!
おまけ

おい龍

あとでな

待ちなさいっ!! あ、こら!! スルーして華凜のところに行くな!!

すみません、今この男は刹那の写真に執心しているもので……

先輩……

強い……
【三日目 第一戦:色世淋架 第二戦:波風蓮】

りんかがんばれー…

ファイトですーっ!

そういや淋架ちゃんのって見んの初めてだよな

あぁ確かにぃ

? 去年とか……フィノア先輩は俺らが入学する前とか見てないの?

いや、学園に色鬼がいるとは聞いていたけれど……体育祭とかでも見たことないんですよ

あんなに目立つのに?

えっと、トリスト先輩……

うむ、答えよう。淋架はあの見た目から人前に出ることを嫌う

じゃあ毎回お休みしてたの?

それでは結局ペナルティで外に行くことになる。そうではない

んじゃあ?

常に真っ黒いフード付きのパーカーとグラサンをかけて参加していた

逆に目立つのでは……

そう言えば体育祭は黒い服着てたわぁ

体育祭は目立たず過ごし、武闘会も人前に出たくないからと即リタイアをしていた。バトルは基本小さな色鬼の使役のみ。だからほとんどの者が淋架の実力を知らぬだろう

め、めちゃくちゃ物理が強い、とかですかね……!?

いや

逆に防御力が低いとかですか?

それも違う

?

お、バトル開始

!
対戦者1「色鬼は小鬼の使役だ!」
対戦者『物理は弱いぞ! 一気に叩けー!』

えーと……
バチバチっ

対戦者が次々倒れていくわ

実は本体である淋架の持つスタンガン警棒が一番威力が高く触れただけで気絶ものだ

こっわ

淋架先輩以外全員気絶だね
初の武闘会第二予選進出
実はやる気満々

頑張ってね蓮先輩っ!

ファイト……です……

しっかり見てるからねー蓮!

応援しているよ!

はいはい

……

リアス笑ってる
それぞれの場所へ

お、先輩おつかれー

お~ありがとー

いいなぁ、淋架先輩とちょっと闘いたかったかも。楽しそう

あはは、そんな~。もったいない言葉だよー。蓮くんも頑張ってね~

どーも
類は友を呼ぶ

おぉ、去年と全然違うわ。警戒心マックスだね
バトルスタート
対戦者1「心因性の闇魔術持ちだ!」
対戦者2「一気にかかれ!」

♪
SIDE観覧席

ごきげんだな波風。闇魔術打てないんじゃないのか

そうだな

大丈夫なのかしら!

もちろんですわ
SIDEスタジアム
リーダー『闇魔術が打てないならここで降参してもいいんじゃないのか

!
リーダー『なんならここで交渉しても構わないぞ?
SIDE観覧席

明らかに見下した感じですっ

やったな

え

あ、思いっきり蹴飛ばしました

え!?

うっわアレいてぇだろ……しかも壁作って場外出さねぇと来た
SIDEスタジアム

いいねそういうの
リーダー「っ」

俺そういういきがってんの潰すの大好きだよ

ドSスイッチ入っちゃった

交渉したいんだっけ。どうする? このまま潰してほしい? それとも逃げたい? 俺今年リベンジしたい奴がいるから本気だけど。――それなりに楽しませてくれるなら応じてあげてもいいよ
SIDE観覧席

もうみんな怖くなって逃げ出してしまっているね

ね? 大丈夫だったでしょう?

蓮はテンション下げたら闇魔術……

テンション上げたら尋問笑顔で追い込んでくるぞ。本人が戦うことを嫌がってるぐらいが一番ちょうどいい

付き合い長くなってくほどにアイツが一番めんどくせぇって思うのオレだけ??

ここはほんとにめんどくさいのしかいないね

人のこと言えないでしょうよ
ちょっと勝ち上がったことを後悔した淋架ちゃん

ただいま

ほんとに君と当たんなくてよかったよ……

えぇ? 俺は当たりたかったけど。ここの身内ならちょっと笑ったくらいじゃ逃げないし

あれでちょっとか~

まぁでも

?

俺も予選突破だし。当たった時は楽しませてね

い、いえっさー……?
【五日目 第一戦:トリストvsユーア 第二戦:ティノ】
彼女と彼女を取り巻く不思議な空間

大本命もふもふ会…!!

おぉ、君のそんな大興奮な顔初めて見たな

かわいい刹那♡

スタジアムはもっとかわいい!

そんな! 刹那に勝るものなんてないよ!!

存在がかわいいと顔がかわいいはベクトルが違うっ!

顔がかわいいという自覚はあるのか……

言われ慣れてるので

始まるヨ刹那

!!

……もふもふに釘付けな刹那にくぎ付けなエイリィたちを始めとしたヒト型エシュト学生組女性陣……これはどんな会だ?

えっと……

もふもふを見守る嬢ちゃんを見守る会だな!

見事に女性しかいない……
後日見たらしっかりきれいに大興奮のクリスティアが写真に収まっていたそうな

もふもふがっもふもふ乗せたっ!!

語彙力がおかしくなっている……かわいい……

華凜、華凜っ

もちろん動画撮っておりますからね

ついでにそのボタンに仕込んでるカメラで?

刹那のお写真も――ハッ

……あとでお話なさいますか?

平和のためです、平和のためですっ!!
しっかり去年からの体育祭見てたので

トリスト先輩が走り回って突進したり、背中に乗ってるユーアクンが爪で撃退したり……うわぁあのペア強いね~

あそこはしっかり協力関係で来たのねぇ

でも勝者どうするんだろっ? そっちも交渉で決めたのかなっ

トリストもあんまり武闘会とか進んで行くタイプじゃないしね~。これは後輩に譲るんじゃ――

? トリスト先輩、止まったわ

! 大きく振りかぶってー

ユーアを?

ぶん投げました!

ユーアー!!!

わ、炎上君ナイスキャッチ

せめて先に言え!!

すまぬ

しっかりいたずら好きの悪魔の血は引いていらっしゃるのですね……
そのもちもちは、魅惑

もふもふいっぱい♪

坊ちゃん今年はどうすんのかね

ほ、本人的には一応頑張れるとこまでは頑張ると……!

まぁ非戦闘員希望でも戦闘力あって損はないしねぇ。感心感心
SIDEスタジアム

力強いからさすがにちょっと全力はなぁ……骨折れるじゃすまないし……、一番ふかふかな肉球で叩くならいいよね……?

えいっ!
もちっ
もちっ

な、なんで戦意喪失してるっぽいのにこんなにこっち来るの!?
SIDE 観戦席

僕の気のせいかな龍

……

なんかこう、だんだんみんな幸せそうにティノに向かってってない?

肉球の魔力に吸い込まれて行ってるのか……

なんかみんな幸せそうにティノ君に向かって行ってる……
♦

リタイアしちゃった……みんななんかボクの腕めがけて来て怖かったんだけど……

この肉球はもうバトルじゃ使用禁止だね……

わぁもちもちだっ! これは虜になっちゃうよ!!
以降肉球は身内のみの特権になりました
本当の家族は、よくわからない。
どこに行ってもずっと過保護なところだったし、近い存在のリアス様たちも、家庭環境はよくなくて。
わたしたちにとってはそれが当たり前で。
周りを見ても、どれが”ふつう”の家族かは、ずっとわかんなかった。
ただ。
「食事会も見送りもいらないさ」
今世お世話になってるおうちが、とてもあっさりしてることだけはよくわかりまして。
言われた言葉に。
「「……はい?」」
リアス様といっしょに、思わず首をかしげてしまった。
武闘会が始まってから最初の土曜日。
明日、おとーさんやおかーさんはフランスに帰るねってなってた。ほんとはもっと、とくにリアス様のおとーさんは研究結果も自分の目で見たいし長くいたかったらしいんだけど。
おとなはやっぱりいそがしいらしくて。今のこと以外にもやることいっぱいあるし、もうギリギリだからって、明日帰ることになってまして。
じゃあ、と。
その話を聞いたときからリアス様と話してた。
今までお世話になってたおうちにもしてきたように。
礼儀として、お見送りと食事会をしようかと二人で話してまして。
帰る前日になった今日。身内は誰も武闘会の出場はないからってことで、たまたま帰り際に逢ったわたしの義両親をおうちに呼びまして。
明日の最終便って言ってたから、その前に忙しくなければお食事会はどうですかって誘ったんですけれども。
「見送りも食事会も大丈夫だヨ。ハイゼル達もそう言うサ」
まさかのお断りということでリアス様といっしょに首をかしげてしまってます。
えっ、えっどういうことなの。
「離れてたおうちの人が帰るってなったらお見送りするんじゃないの…」
「最後に食事会をするものではないのか」
「そこでいっしょにいた時間どうでしたかってお話しあって…」
「話が盛り上がってアルバム見せる羽目になるのでは」
「君ら、というかクリスティアは今までどんな家にいたんだ……」
えっふつうじゃなかったのこれ。でもおかーさんたちにとっては違うみたい。
えっ、今までのあげてきますか??
リアス様といっしょに指を折ってくねちょっと待ってね。
えぇと。
「リアスの言った通りアルバム必須…」
「とりあえず現像もしておくことに越したことはない」
「帰るってなったらたくさん豪華な料理用意して…」
「食べ終わったら見送りに行き」
「なんならその前の日から泊まりに来てたし…」
「俺は追い出されるわそのせいでクリスティアは起きるわ互いに寝不足だわ」
すごかったよねもう。
「わたしの親族が来たときは心労寝不足そのあと下手したら体調不良…」
「気疲れで熱出るなり過眠したりな」
目合ってないけど今絶対リアス様も遠い目してるでしょ。わかってるからね。
絶対空笑いしてるでしょ。わたしもしてるよ。
思い出し疲れで凝った気がした肩をさすったら。
「すさまじいね天使様は……」
「心中お察しするヨ……」
「どうも……」
すごい、顔見なくても同情もらってるのよくわかる。
顔向けたらやっぱりすごい同情の顔してた。主にわたしに向けられてるそれに、リアス様は「大変だったな」って言うみたいに頭をなでてくれる。いや大変だったけども。
リアス様も大変だったでしょって返すように寄り添えば、あったかい手がわたしの手を包んでくれた。
それにほっと息を吐いて。その顔を見たおかーさんたちも、安心したような顔になる。そうして穏やかに笑って。
「安心なさいな。我々はそういったものはいらないよ」
「見送りだってリアスにとっては辛いダロ? 食事も準備が大変じゃないカ」
「君の過保護さでは外食に行けるわけでもあるまい」
「……そうだが」
「我々の思う家族というのは、そういう無理をせず自然体でいることを求めているのだよ」
「…」
だから大丈夫、って笑う二人に。
心が、ほんの少し軽くなった気がした。
たぶん、ほかのところから見たら。
この二人は二人で、あっさりしすぎに見えるんだと思う。自分がお世話になったことはなくても、ちゃんとわからなくても。知識としてくらいは、家族のことは知ってる。
愛されて、愛されて。
でもときには成長のために突き放すこともあって。それなのにちゃんと続く、信頼関係や愛情。
きっとわたしたち四人で築いてきたものともちょっと違う感覚。
そしてこの二人がわたしにくれるものとは、全然違うもの。
――でも。
「…」
なんとなく。
うん、なんとなくだけど。
わたしはその違うものでも、今までにない感覚に、どことなく安心していて。
うん、リアス様の言う「居心地の悪さ」みたいなのがちょっとわかるかもしれない。
なんとも言えない不思議な感覚。ただ別に嫌な感じじゃないのはわかった。きっと、うれしいっていうのがある。
閉じ込められた世界。
みんなが、ときにはあがめるような、変にかわいがりすぎるような。
怒ることもない、本当に愛することもない。”わたし”を見ない。
変な愛情ばかり向けられてきた家族の日々。
距離が近い、入ってほしくないラインまで踏み込んでくる。何もかも管理してないと、自分の思い通りに動かないと気が済まないような家族たち。
人形みたいな、そんな時間。
きゅうくつで、嫌で。リアスやカリナ、レグナの時間が、わたしにとっては「家族」の時間だった。
怒るときには怒ってくれる。ちゃんとわたしを見てくれる。愛してくれる。
幸せな家族の時間。
それが、今。
「…」
もうひとつだけ、増えた感じがした。
ちっちゃい頃から研究とかで家を空けてばっかりだったけど、ほどよい距離感で見守ってくれてる感じ。あっさりしてて、踏み込んでこなくて。必要なことだけ最低限で聞いてくる。
きっと。
居心地が、良いって言うんだと思う。
今のわたしには、良いからこそ、逆に居心地悪く感じてしまうけれど。
ほんの少し心の中がほわっとする感じに、自然とほっぺがゆるんでた。
それに気づいてくれてるリアス様が、よかったななんて言うみたいに手をなでてくれる。それに頷くようにしながら、またほんのちょっとだけ寄り添った。
お互い今回は、不思議と良い「家族」に逢えたのかもしれないね。
そう、心の中で伝えて。
リアス様がずっと感じてたはずの気恥ずかしさをバレないようにしながら。
食事の話は終わったって言わんばかりに楽し気な顔に変わった二人に目を向けて。
「そうだ聞いてくれクリスティア」
「新しいゲームの話もあるヨ」
「あっ新しいと言えばリアス! 君また新しい魔術手にしてたな!?」
「どれの話だ……」
おとななはずなのに、自分たちよりも子供みたいに楽しげに話す二人に。
思わず笑って。
二人が帰るって言うまでの少しの時間、だんらん、って言うのが合うくらい。
穏やかな時間を、リアス様といっしょに楽しんだ。
『クリスティアの家族の時間』/クリスティア
おまけ

別に食事会とまではいかないが、家に来たなら食べていったらどうだ

お気遣いなく。ぼくらはもうそろそろ帰るヨ

実は家族の食事派じゃない……?

そういうわけじゃないわ。きみとの食事も魅力的なんだけれど

捩亜が体力なさ過ぎてね。食事という運動ですぐへばってしまうんだよ

ひどいときには食べてるときに寝る!

そろそろ体力くらいつけたらどうだ