何て素敵な日でしょう、ハロウィン。
「♪、♪」
目の前を歩くカップルはいつもより密着し、リアスはなんとクリスティアの肩に手をまわしている。
その理由はクリスティアの服。
我が兄レグナが作ってくれたハロウィンの服はそれはもう最高でしたわ。とてもかわいらしい。もちろん私のも、かわいらしく、それでいてどこか上品でとても嬉しかったです。そこは今置いときまして。
件のクリスティアの服はなんとおなかがちらっと見えるという、兄にしては少し珍しいチョイス。
「あれって計算です?」
「んや、誤算」
それは嬉しい誤算ですねと隣を歩くレグナに笑う。
「腹チラはしようと思ったんだけど、こう、手を挙げた時になるようにしてたんだよね」
「それが想定外に見えてしまったと」
「クリスのバスト測りなおさなきゃ」
恐らく測りなおしても時にずれますよ、というのは女性だからこそ知っているもの。下着によって変わるのでそこは大丈夫ですと伝え。
前を歩くカップルに癒されながら、見えてきた会場へと目を向ける。
「みなさんいますかね」
「祈童とかはいるんじゃない」
行きはどうしてもテレポートは無理だということで、ひと気の少ない道を四人、歩いていく。少しだけ大通りから離れた会場に近づいていけば、そこは木々に埋もれていることから少しハロウィンらしさを感じられました。
飾りつけもされている道に入って、歩いていくと。
「あ! 華凜ちゃんたち!」
よく通る声が聞こえて、顔を向け――おっと目の前に大蛇がいらっしゃる。あらあらどなたです??
「えーーーーっと」
「あら、わからない?」
あ、声でわかりましたわ。
「美織さん?」
「正解よ!!」
ぱっと上げた顔、大蛇の口から美織さんが見える。あらあら友人が蛇に食べられてますわ。
「……個性的ですね、蛇とは」
「コブラよ!」
あ、同じ蛇だけどそこにこだわりを感じる。
「クオリティがすごいよな」
「俺たちもびっくりしたよ」
から笑いして応じていれば、大蛇でよく見えなかった祈童くん、閃吏くんたちもこちらにやってきていました。
「お二人は……」
「僕はアメジストをモチーフに」
「俺はシルフだよ。――で」
と、下を向いた閃吏くんの視線の先にはユーアくん。視線が集まったと同時に、ばっと彼は手を広げて。
『吸血鬼ですっ!』
「まぁかわいらしい」
これはクリスティアが大喜びでしょう。本人は兄と一緒に美織さんにくぎ付けですが。
「他のメンバーはまだなのか?」
うきうきと美織さんを見ているクリスティアを後ろから抱きしめながらリアスが言いました。それに辺りを見回してみると、ちょうどよく先輩方が。
「いるぜ。受付済ませてきた」
「こんばんは、後輩さんたち」
「そろったぁ?」
鳥姿の武煉先輩に、ペンギン姿のフィノア先輩。
「陽真先輩は……恐竜です?」
「そ、男のロマン」
嬉しそうに言う陽真先輩に笑って、受付を済ませてくれたことにお礼を言ってから再び周りを見回す。あと来ていないのは――
「雪巴さん、エルアノさん、ティノくん、ウリオスくんですかね」
吸血鬼のユーアくんに意識が行ったクリスティアを横目で見つつ、入口の方へと目を向ける。会場内で違う部屋を使うであろう方々の中から、見知った顔がいないか探してみました。
「います?」
「んや……。あ」
すると兄が目ではなく耳で見つけたんでしょう。他の耳がいいメンバーも拾ったのか、そろって入口の方へ目を向けたので、私を到着を待つ。――と。
「あら」
現れたのは、ふわふわな服を着た雪巴さん――羊ですかね、つのを見るに。
そして魔女帽子をかぶったエルアノさんと、警察棒をかぶったウリオスくんがいて――
『ゴメン待った!?』
その後ろになんとパンダさんがいるじゃないですか。待って我々のメンバーにパンダさんはいない。
でも声を聞く限り――。
『お待たせ! なんか注目集めちゃって!!』
ティノくん?? え、いつも茶色いクマさんのティノくん??
「ギリギリですみません……!」
「大丈夫ですけども」
「全身でパンダ表現とかすごいわぁ」
「おっきなドワーフなパンダ…!?」
クリスティアが語彙力を失っていますがちょっとわかる。衝撃過ぎるビフォーアフターでは??
「とりあえず中に入るかい? ここは暗いし、人も増えてきましたよ」
ものすごいじっくり見たい欲は武煉先輩の言葉で一度抑えることにし。
「パンダ…!!」
「行くぞ」
きらきらと輝く目で今日一のクリスティアの感動を奪ったティノくんに地味にリアスが嫉妬しているのを見ながら、中に入っていきました。
♦
「中で見るとなおさらすごいですわね」
『何時間だっけか坊ちゃん』
『四時間かな!』
中に入り、武闘会お疲れ様の乾杯をかわして、それぞれがお菓子をつまみながら談笑している中。
やはり話題の中心はティノくん。普段茶色の毛は真っ白となり、ところどころ黒い部分がありますわ。
「本格志向だね」
「職人でしょうこれはもう」
隣でお菓子をつまむ武煉先輩に返して、私も一つお菓子をつまむ。ジャムになっているクッキー。
「!」
あらこれおいしい。
「あんたら双子ちゃんはおそろいなのね」
「えぇ、刹那の希望で」
「絶対的だなアイツ……」
気に入ったクッキーをまた一つつまみながら、一度クリスティアへと目を向ける。彼女はリアスのお膝に座って、ユーアくんや美織さんたちと談笑中。
「刹那の服は龍の希望ですよ」
「君は希望しなかったのかい?」
「負けたんですよ戦いに」
あぁ今思い出しても悔しい。
「次は絶対猫にしたい……」
『姉さんクッキー割れるぜ』
「口の中で割れるのでいつ割れても同じですわ」
「えっと、そういう問題かな……」
苦笑いの閃吏くんにはそういう問題ですと返し。
「龍に猫刹那が見たぁいって思わせればいいんじゃなぁい?」
そう言うフィノア先輩に、自分の目を輝かせる。
「ナイスアイディアですわ先輩!!」
「大変そうだな波風」
「んや? 服作るなら俺も便乗する」
「大変そうだね炎上君……」
「ご安心ください閃吏くん、龍が一番喜ぶ形にしますから」
「そう……」
同情の目に「大丈夫ですよ」と再度返し、クッキーへと手を伸ばせば。
「あら」
隣に、先ほどから気に入って食べているクッキーがお皿に乗ってやってきました。
お皿の先を見れば、武煉先輩がいらっしゃる。ぱちくりと目を瞬かせていると。
「好きなのかと思ってね。他にもあったから」
あらまぁ少女漫画ならときめく行動。
「俺も華凜の好きなものくらい持ってくるよ」
けれど兄の殺気で心をときめかせてあげられない。張り合わないでお兄様。
「心遣いでしょうよ」
「次は俺が持ってくるよ」
「あなたは私とどうなりたいんです??」
あなた私がクリスに本気じゃないのって聞いてましたけど最近あなたが私に本気じゃないかと聞きたくなる。けれど真顔で愛してると言われる未来しか見えないので。
「ほらお兄様、あっち楽しそうですよ」
いまだ殺気を出す兄を武煉先輩からそらすようにリアクリ側を指さす。大変だねと言う閃吏くんには心の中で大きくうなずいておいて。
「トリックオアトリート!」
なんて、お菓子がたくさんあるのにそう言う美織さんや雪巴さんへと目を向けて。
「ほら、楽しそうなことしてますよ」
「……」
「シャッターチャンスですわ、まいりましょう?」
笑えば、あなたは数秒おいて笑う。
「わかったよ」
仕方ないなという風に、肩をすくめて。差し出した手にレグナの手が重なって。
「我々も混ぜてくださいな」
そう言いながら、もう一つの集まりの方へと歩いていきました。
『素敵なイベントは、あなたが笑ってこそ』/カリナ