頑張る君たちへ

「祈童くんの家ってご褒美制なの?」

 そんな声に顔を上げれば、いつもの笑みは絶えぬまま、目だけは興味津々といった道化がいた。

「なんでだ?」

「だって妙にご褒美推すから」

 それに、あぁと思い至って。ゆるく首を横に振る。

「そういうわけじゃないさ。僕の家は逆にご褒美という感じはないんじゃないかな」

 すべては神にささげるもの。掃除を頑張れど、毎日祈りをささげど。ご褒美なんてものは出ない。当然のことをしているのだから。

 そう言えば道化はふぅんと言って、前の席へと座る。意外としとやかに座る彼女が腰を落ち着けたのを見計らって。

「ただ」

「うん?」

「……少し、その方がいいかと思っただけさ」

 思うのは、頑張り屋なのに自分を苦しめてしまうそのヒトたち。

 己の考えで、己を苦しめていく。

 そして本当に「頑張った」という努力は、ただのタスクとしてカウントされ、自分を褒めることもない。逆に己を卑下してしまう。

「たとえば推しているから、続きが出たから、というものでなく。……心から欲しいとか、食べたいとか、そういうご褒美をつけた方がいいと思った」

 ずっと頑張っているのだから。

 そして。

「その頑張りは、タスクとして数えていいものじゃない。他の誰にもできないであろう、立派な偉業だ」

 諦めず、続けること。目的をもってやり遂げること。

 簡単にできることじゃないから。

 だから。

「必要だろ、ご褒美は」

 窓から外を見てそうこぼせば、心地いい笑い声が聞こえる。

「そうね」

 そうして、穏やかに肯定してくれて。

「祈童くんのその考え好きよ」

 心地よく紡がれる言葉に、礼をこぼした。

『頑張る君たちへ』/結

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