「♪、♪」
笹の葉を飾りながら、恋人の紡ぐ七夕の歌を聴く。心地よいその音色に、自然と頬が緩んだ。
「♪、♪」
ゆったりとしたテンポで紡がれる歌が終わりに近づいていくのを名残惜しく思いつつ、庭に笹を立て、倒れないようにしっかりと支柱で支えていく。
「こんなものか」
「わぁい」
ちょうど恋人の歌が終わる頃、立派な笹の葉が我が家の庭にそびえ立った。何度か揺らして、倒れないことを確認。
「大丈夫そうだな」
「うんっ」
じゃあ、と恋人は俺の手を引っ張る。この後のことはもう決めているので、クリスティアに手を引かれるまま家へ入っていき。
「帯結んで…」
「あぁ」
リビングに出していた浴衣にそでを通し、準備をしていく。
甚兵衛を着終わってクリスティアに向けば、白を基調とした浴衣に身を包んだクリスティアが俺に背を向けていた。
「髪上げろ」
「前も押さえなきゃ…」
「あぁそうか……」
ならばと一時的に恋人の髪をポニーテールにしてやる。うなじがさらされて、夏特有のそれに口角が上がった。
「そそるな」
「えっち」
「髪を上げて俺の呪術が施されているきれいなうなじが見れるなんて最高だろ」
「さいで…」
俺が「意味わからん」というときに言う言葉をこぼすクリスティアに笑って、渡された帯を締めてやる。
「きつくは」
「なーい」
それを確認して、紫の帯を後ろで花のように結んでやった。
「ん」
「♪」
完成と言うように背を叩けば、クリスティアはぱっとこちらを向いて嬉しそうに俺に抱き着いてくる。
「崩れるぞ」
「だいじょーぶ」
ご機嫌な恋人に笑いながら、ポニーテールにしている髪を手に取り。結び目に毛を巻き付けていってだんごにしてやる。髪をいじっているとわかっている恋人はただただ俺に抱き着いてじっとしていた。
毛を巻き付け終わったら、恋人が背をトントンと叩く。ただそれは恋人の手ではないとわかったので、そっと背に手を差し出した。何かが乗ったのを確認してから握り、前に持ってくれば、手にあるのは紅い花のかんざし。
「痛くは」
「なーい」
気を付けながら、それを髪にくくってやれば。
「かわい?」
「もちろん」
夏。大変かわいらしい恋人の完成である。
少し身を離して、その愛らしさを確認。
「似合っている」
「♪」
再びハグをしてきたクリスティアを受け止めて、時計を見れば午後七時。そろそろか、と思ったと同時に。
「!」
家のインターホンが鳴り、クリスティアと目を合わせた。この訪問者はもうわかっているので、二人で笑い。
「行くか」
「うんっ」
テーブルに用意していたものを手に取ってから外の結界だけ外して、二人。リビングの窓から外へ出て。
「お、浴衣じゃん」
「まぁクリス!! かわいいですわ!!」
同じく浴衣に身を包んだ双子と合流し、星が落ちてきそうな夜の中。また今年も願いを込めるために、手に取っていた短冊を、指で撫でた。
『この変わらない願いが、叶いますように』/リアス