三月二十七日は、結構いろんな記念が重なる日だと思う。
 四人で出逢った日。

 四人で、死んだ日。

 繰り返すことを決めた日。

 再び四人で歩いていくことを決めた日。



 あとは――。


「あら」

 何度も繰り返してきた、三月二十七日。
 けれど消滅日じゃない今日は、妹は元気に動いている。

 今日も笑顔を絶やさず紅茶を淹れてくれる妹の背に、頭を預けた。

「どちら様かしら」
「……わかってるくせに」
「とりあえずリアスではないことは絶対わかりますわ」

 あの男はやりませんもの。
 そう笑う妹の揺れを心地よく感じながら。

「あらあら」

 細い体を、少し強く抱きしめる。

「お湯がこぼれますわよ」
「別に感じないんで」
「あなたが切れるのは痛覚でしょうよ。熱さは無理でしょうに」
「熱さも痛みも一緒じゃなかったっけ」
「それ確かかゆみと痛みじゃありませんでした?」
「そうだっけね」

 軽く流しながら、あたたかい体温を堪能して。

 目を閉じて、暗闇に堕ちる。
 そうしたら、この日は感じづらいはずの痛みが、心臓の後ろから出てきた気がした。


 三月二十七日。


 たくさんの記念日が重なる日。

 出逢い、死に。
 決意し、また出逢う。

 再び歩き始めた、そんな大切な日。

 そして忘れちゃいけない。



 俺が、カリナを殺そうとした日。



 あのときはきっと精一杯だった。
 誰もがわかるくらい、全員がいっぱいいっぱいだった日々。

 きっとカリナも、リアスもクリスティアも、これを話せば「そのくらい気持ちがいっぱいいっぱいだった」と許してくれるんだろう。


 けれど、自分じゃ当然許せない。


 追い詰めていくほどに、戒めとして残した傷跡が痛んだ気がした。


 それを甘んじて受けながら。


 愛する妹を、抱きしめる。

「……カリナ」
「はいな」

 ほんの少しだけ、泣きそうだけど。それは気づかせないようにして。


「ごめんね」


 妹が言えない謝罪の言葉。それを俺が言うのはずるいのだけど。
 今日だけ、その日のことだけ。

 そこだけ自分に言い訳をして、ぽつりと謝れば。

「なんのことでしょう」

 知っているくせに、妹は明るく言った。
 俺も、妹はそれについて知らないふりをしてくれるのを知っているから、笑って。

「何でもない。愛してるよカリナ」
「私もですわ、レグナ」

 今度は通じる愛の言葉を、めいっぱい気持ちを込めて抱きしめながら言って。

 妹が用意してくれる紅茶の完成を待った。


『いつかこの許されない日々がまた望みを絶つとしても、君と隣を歩く未来を望みたい』/レグナ





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