合同演習クリスティアvs結

 

ブンブン振ってくる刃をひょいってかわしてく。

「あたんなーい…」
「ほんっとに身軽だ、ねっ!!」
「♪」

顔色悪そうなレグナを見送ってからゆいとの合同演習。始まってすぐにわたしの方に向かってきたゆいの日本刀は、一撃が重たそうだけどはるまみたいに早くないから軽々よけられる。

「っ」
「大振りなんだもん…」
「これでも早くはっ、なったよ!」
「モーションおっきいからそんな風に見えない…」

それに攻撃も単純。上から振り下ろして、下から振り上げて。次は左か右のどっちかから。そうしてまた上から。

これなら簡単によけられるもん。後ろに下がりながらひょいひょいかわしていって、方向を変えてまた後ろに下がってく。

「これならっどうだ!」

同じことずっと繰り返してたらゆいがおっきく踏み込んできた。刃は横から。

「♪」

じゃあわたしも、って地面をけり上げて。

ふわっとうしろに一回転。

「ほっ」

きちんと両手を横にのばしてポーズ。どう? って笑ったらゆいはほんの少しぽけっとして。

「っとに身軽なっ……!」

ものっすごく悔しそうにまた踏み込んできたからわたしもかわしてく。

「つかまえてごらんなさーい…」
「そういうのは炎上とやるべきじゃないかっ」
「逃げる前につかまるよね…」

すごい、ゆいがものすごく「あぁ……」ってなにかさとった顔してる。

じゃあすきができたってことで。

今度はわたしが思いっきりふところに踏み込んだ。

「っぅわ!」
「すきありー…」

ちょうど振り上げてたところに入り込んで、ぱっとしゃがむ。

そうして足をひっかけるために伸ばしたら。

「氷河待ってくれ折れる」
「超心外なんですけどっ…!」

むかつく言葉いただいたのでいつもより思いっきりなぎはらった。

でも読まれてたそれはゆいがジャンプしてかわされる。ぷくってほっぺふくらましてから、次。腕と軸にしてる足にぐって力入れて、こっちもジャンプ。

「なっ」

ジャンプして身動きできないゆいのちょっと上に飛び上がって。

「そぉい」
「うぐっ」

そのままゆいに向かってダイブ。バタンってゆいが背中から倒れていって、痛そうにしてるのは気にしない。

上に乗ったまま持ってる氷刃を、喉元に突きつけた。

「っ」
「おーわーり?」

なにもしてなかったら起きあがったときに吹き飛ばされちゃうけど、のどに刃持っていってたら動けない。
ゆいもどうすることもできないのかどんどん悔しそうな顔になっていって、

「……降参だ」
「♪」
「勝者っ、氷河!」

ゆいも審判も認めて、わたしの勝ち。それに口角を上げて、ゆいと見つめ合ったままその人が来るのを待つ。

「……なかなかこれは恐怖だね」
「もうちょっとー」
「終わりにしても良いじゃないか」
「龍が心配しちゃうから…」

もうちょっと、って首をかしげたら苦笑い。うん、うちの過保護がほんとにごめんなさい。

早く来てーって心の中で思いながら、

「刹那」

大好きな声が聞こえて、反射的にぱっと顔を上げたら。

大好きなヒトではないけれど最高なものが見えてしまった。

カリナたちと入れ替わりで入ってたところ。

ユーアとウリオスの試合。

なんと二人もふもふしながら押し合いしてるじゃないですか。なにこれ最高なんですけど。

「ゆいっ、ゆい見てあれっ」
「どうした氷──待て待て待て氷河それはいけない刃がっ刃が僕の首に進んできている」
「すごいの、あれかわいいのっ!」
「気持ちはわかった氷河、ちょっと落ち着こう落ち着いてその刃を収めよう」
「あっ、見て、見て! ユーアがっユーアがねこぱんちっ、ぺしって! やばい、やばいのっ」
「氷河僕の首もやばいんだ見てくれこっちをっお前興奮して揺れる度に刃が僕の首にサクサク当たってるんだっ!」
「首のけぞって見てっ」
「首のけぞったらもれなく刃が刺さってくるんだが!?」
「そんなことしないからっ」
「現に手前まで来ているからっ!」
「何しているんだお前達は……」

指さしながら感動を伝えてたら、後ろからおなかに手が回ってきてぐいって引っ張られる。前に夢中だけど引っ張られたのはわかって、それから逃げようとした。

「まだ終わってないのっ」
「炎上頼む痛い頼むから痛い」
「刹那」

大好きな声がもっかい聞こえて、もふもふな二匹からぱっと後ろに振り向く。

目の前には大好きなヒト。

自然と口角が上がって、

「もふもふ…」
「残念ながら俺はもふもふではないからな。終わりだ」

言われたとたんにすとんと力が抜けた。

「おわり?」
「終わり。俺とエルアノの番」

ぱちぱちまばたきしてから、言葉を飲み込んで。

「おわり…」

魔力を解除して、氷刃を消す。下に目を向けたらゆいがとってもほっとした顔してた。

「だいじょーぶ?」
「基本的には大丈夫だったんだが氷河の最後の大興奮でやばかったね」

そうだよそれ。

「そうもふもふ見て…」
「炎上、僕は氷河とどう意思疎通をしたらいいのかよくわからなくなってきたよ」
「安心しろ、長年いる俺でもときどきわからん」
「話はちゃんと繋がってる…」

ねぇどこがって顔しないで。ちゃんとつながってるじゃん。

というかそんなことより。

ゆいの上からどかされながらまた前を見る。

そこには天国。

もふもふ二匹がまだぺしぺししながら戦ってるじゃないですか。

「ねぇあれ最高じゃない…?」

指をさせば今度は二人とも見てくれる。二人とも口ゆるみそうになってるよ。ゆるめていいんだよ。

「本能のままに口をゆるめてごらんなさい…」
「そういう氷河も緩めてみたらいいじゃないか」
「今ゆるっゆるですけれども…」

わぁゆい、うそだろって顔しないで。地味に傷つく。

『炎上さん』
「ん」

ぷくってほっぺふくらませながらまたもふもふ天国見てたら、エルアノの声が後ろで聞こえる。
あ、待ってやばいちょっとあの押し合いなにあれ。

あっ、あっ、やばい。

「見てあれやばいしりもち、ユーアしりもちっ」
「氷河気持ちはわかった、とりあえず交代だ」
「写真とりたいっ」
「氷河ー移動だぞー」
「待って待ってあと十秒っ」
「炎上」
「好きにしろ」

後ろでほらってリアス様が言ったから、反射的にリアス様がいる方を見た。足元のエルアノから視線をあげてったら、あっちって言うみたいに指さしてる。

それを、追うと。

なんと試験官のヒトもユーアとウリオスのところガン見じゃないですか。見るよねあれ。わかる。

『ちなみに試験官だけでなく他のスペースの方々も見ておりますわ』
「わ、本当だ」
「もふもふは世界を救う…」
「バカなこと言っていないで目に焼き付けたら早めに移動しろよ」
「ちょっとあれをバカのことって言うのはよくない…」
「俺はあれではなくお前の発言をバカなことと言っただけだからな」

それはそれで大変心外なんですけど。

「あとで覚えておいて…」
「安心しろ、俺はお前に関することは忘れない」
「それはよいこと…」
「仕置きをしたいなら移動して向こうで作戦でも練ってろ」
「んっ」

頭ぽふってなでられて、うれしくなって口角あげながらうなずく。冗談で言ったお仕置きは置いといて、リアス様に言われるがままに歩き出した。

「ゆい、行こー」
「うん」
「祈童、出口付近まで行けば蓮か華凜がいる」
「わかった」

後ろで「お願いしますね」ってエルアノがあいさつしてるのを聞きながら、目はもふもふ天国へ。やばいあれさっきからやばいしか言ってないけどほんとにあれはやばい。

「あの押し合いやばくない…?」
「僕はさっきの尻餅が良いと思うけれど」
「あれも最高…。おしり着いたときにもふって効果音聞こえるよね…」
「残念だがそれは聞こえないな?」
「えぇ…?」

たぶんゆいも向こう見ながら、二人でゆったり出口の方に歩いてく。あっ、ウリオスがっ。

「あれなに羊パンチ…?」
「対抗してユーアも猫パンチし出したぞ」
「ウリオスも負けてない…」

二匹で交互にパンチしてってるなにあれ最高なんですけど。

「かわいい…一生見てられる…」
「氷河見ろ」
「見てる…」
「そうだなすまない、ただしっかり見ろ、あの二匹のパンチのタイミング」
「タイミング…?」

言われた通り二匹の手をじっと見る。

お互い交互にパンチしてたのが、たまたまユーアが連続でパンチモーションに入って。

向かい合った手を上げて、二匹ともそれをそのまま振り下ろしたら。

なんとタイミングが合いすぎてハイタッチになったじゃないですか。

静まりかえった演習場の中でさりげなく「ッパァン」みたいに鳴ったじゃないですか。

天国ですか??

「奇跡のハイタッチ…」
「氷河、僕は今腹筋がやばい」
「わたしは表情筋がやばい…かわいすぎる最高…」
「もう一回見たいねあれは」
「わかる…龍にも見せてあげたい…」

たぶん見てないよねってリアス様の方を見る。

あ、後ろ姿だけど肩震えてるな?? 奥のエルアノも羽で口元隠してるな? しっかり見てたね最高だったね。

「みんなしっかり見てた…」
「今審判も釘付けだから演習自体止まってしまったな」
「やっぱりもふもふは世界を救うよ…」
「あのもふもふに埋もれればどんな悪者でも改心というわけだね」

それは改心せざるを得ない。

「わたしが悪者になったらユーアかウリオスつれてきて…」
「炎上はいいのか」
「龍もふもふしてない…飛び込むけど…」
「改心はしないと?」
「その前に龍だったら進んでわたし側につくよね…」
「あぁ……もれなく愛原も行くね」
「蓮は誘ったら”おもしろそー”って来そう」
「お前たち四人では世界が危機だな」
「わたしがやめるって言えばたぶんやめるから崩壊する前にもふもふつれてきて…」
「全国のもふもふ種族を集めよう」

二人でユーアとウリオス見ながら笑って。

「あっ奇跡のハイタッチ二回目っ」
「まじかスマホ持ってくれば良かったな」

奇跡のハイタッチ第二回をガン見しながらスタジアムを出て、ゆったりした歩きでカリナかレグナがいる出口に向かった。

『新規』/クリスティア