文化祭準備:1組による会議

 

「どうしましょうか」
「テーマは男子も入れるファンシーだったね」
「そうなのよー」

三連休を終えた火曜日。

「波風くんはどんなのだったら入りやすい?」
「えぇ、俺?」

向かいの道化に聞かれては考えてはみるけれど、正直ずっと妹やら隣の親友と生きてきたので特に抵抗はなく。

「俺だったら結構なんでも入っちゃうからなぁ……」
「むしろ喜んで入るじゃん…」
「刹那さんそれは誤解生むからやめて」
『ですが蓮殿、女性コーナーでは……』
「冴楼もやめて」

今回多少の自由を許す代わりにクリスティアのお付きとなった冴楼にも釘を刺し。

手元にある布には、糸の通った針を刺した。

学校終わりの放課後。いつもなら、リアスたちが迎えに来るのを待って、武煉先輩、陽真先輩と一緒に帰るのだけれど。

今日からは、少し違う。

本日からエシュトでは文化祭準備期間となりまして。

文化祭までの間、放課後は準備に使うのでこうしてクラスに残って、文化祭に向けて準備中。

うちのクラスでは道化提案の異種族交流お話喫茶、「フロイント」というものをやることになり、前回のHRで担当やら準備期間中の班やらを決めた。俺は当日キャストに準備中は衣装班、クリスは当日会計で準備は看板やらのデザイン班。そして目の前にいる祈童は当日会計、道化は当日キャストで準備中は二人とも内装班。

って感じで班がばらばらながらも何故こうして四人で集まっているかというと。

「今日やる内装班会議で他の男の子の意見集まるかしら」
「ビーストのイスの高さとかの情報も欲しいところだね。冴楼のように飛べるものでなければふつうのイスはきついだろう」
『翼が飾りの種族もおります故……配慮は必要かと存じます』

様々な種族、性別。その全員を楽しませるために、それぞれがいろんな意見を聞けるように。そしてこの期間中に新たなスキルへの興味が湧くこともあるだろうっていう、杜縁先生のエシュトらしい考えから、同じ班の人だけで集まらず。それぞれが担当のことをしながら周りの助けもしている。ってことで、このクラスだと最近自然となっているこの四人で今現在集まっているんだけれども。

若干内装の方は難航気味。

「ファンシーって言ったらやっぱりピンクとかなんだけれど……全部ピンクだと男の子って入りづらいわよね」
「ふつうに入れない?」
「波風、一般論で頼む」
「超一般論じゃん」

どこが?? って顔しないでくんない?
俺をあてにできないと思ったのか、祈童は何もなかったかのように道化に向く。

「それに道化、女子全員が必ずしもピンクを好きとも限らないな」
「そうなのよねー……。ねぇ、刹那ちゃんは何色がファンシーだと思う?」
「あかー…」
「氷河、今聞いているのは好きな色でなくファンシーな色だ」
「えぇ…?」

言われて、やっとファンシーを考えたのか。デザイン案とにらめっこしてたクリスティアが顔を上げて首を傾げる。

んーって言って、また首を傾げて。

出した答えは。

「蓮が作る服はファンシー…」
「だから刹那さんや、今色の話だって」
「してるじゃん…」

的が大きすぎる。

「俺の作る服の色がファンシー?」
「いえーす…」

頷いて、クリスティアは自分のスマホを取り出す。

取り出して。

あ、と声を上げた。それに、俺もあ、と気づく。

「どうしたの刹那ちゃん」
「このスマホには入ってないんだった…」
「主に龍と華凜のとこに入ってるんだよねお前の写真」

だいたい目線が合ってないやつが。

三人のメサージュにいくつか入ってたかな。俺もスマホを取り出して、メサージュを開いてスクロールしてく。

うわクリスティアが押したスタンプ多すぎてたどるの超めんどくさい。

「刹那もう少しスタンプ控えめにしてくんない」
「かわいいと連打しちゃうから…」

いやお前の連打の仕方以上だろ。秒で60とか越えるじゃん。

メディア欄から行くか。そう、タップをしていっている間に。

「そういえば、波風たちの連絡先は知らないな」

そう祈童が言ったので、んー? と曖昧に返しながらスクロールしていく。お、ここらへんかな。

「そうね、文化祭もあるし連絡ついた方が助かるわ!」
「休みも遊べるしな」

そーねと返して、クリスティアが俺の作った服を着ている写真をいくつかスマホのアルバムへ。

「とりあえず氷河、メサージュの交換をしようか」

そう、祈童がスマホを差し出したところで。

クリスティアが、立ち上がった。

そうして、彼女にとっては当然で、ふつうのやつにはびっくり発言。

「龍の持ってくる…」
「え」
「炎上?」

わぁこういう反応新鮮。なんだかんだ武煉先輩たちって驚きはしつつもすんなり受け入れてくれるし。一般的にはこういう反応するよね。

ただ刹那さんや、恐らく次言おうとしてる言葉は言っちゃいけないかな??

「龍と一緒にす──」
「すとーっぷ刹那さん、それ以上の言葉はまず龍の許可取ってからにしよう」
『お呼びいたしましょうか』
「大丈夫、とりあえず祈童道化、俺と交換しよう、刹那のはちょっとあれだ、手順が必要だから」

いや手順あっても無理なんだけれども。とりあえず追々ばれるかもしれないけど今回はこれ以上リアスに負担かけるのはよろしくないので。

「あとで龍に言ってみるから、ていうかなんなら俺だけでこと済むから、いい?」
「お、おお」

一気にまくし立ててしまえば、気圧されたのか二人は頷く。よし頑張った俺。未だびっくりしてる二人に促して、ひとまず二人の連絡先を入れてから。

最後の一押し。

「はい道化」
「え」
「刹那の」

衣装、と最後まで言うこと無く。

道化は奇声を上げた。
一気に話がそれたのはいいんだけどやっべ耳いってぇ。思わず片耳を抑えて、たった今道化宛に送った画像の他にいくつか送っていく。

「何これ!!!」
「刹那が言ったファンシー衣装」
「誰よ撮ったの!!」
「うちの妹以外いないでしょ」
「最高よ!!!」
「あとで華凜に伝えとくよ」

恐らく「そうでしょう!!」と目を輝かせるのが目に浮かぶ。ひとまずうちのカップルから話がそれたということで、そのままファンシーの方へ路線を修正。

「色はそんな感じかな。水色、紫……たまに緑?」
「結構パステル系が多いんだな。あとはピンクや赤がメインになっている服もない」
「紅はアクセサリーの方が結構喜ぶからね」

微笑みながら見ると、こてんと首を傾げて。必要なことをやり終えた彼女の興味は再びデザイン案の中へ。

「刹那が全体的に色素薄いし、きれいな水色だから。なじむように基本的にはパステル系使ってるかも。あとは龍とお揃いで服作ったりもするし」
「お揃い!? 炎上くん着るの!?」
「いやさすがにワンピースは着ないけれども」

俺も着るなんて言われたら目が飛び出るわ。

もっかいスマホに目を落として、確かあったはずとスクロール。お、あったあった。

「ほらこれ」

タップで拡大して、パステルグリーンで同じデザインの服を着てる二人の写真。春だったからこっちはお揃いのパーカーで。

「これも波風が作ったのか?」
「うん、羽織る物が欲しいって言ってたから。刹那のを少しかわいい感じにしてるけどお揃いにしたやつ」
「炎上が恋人とお揃いを着るという事実は一旦置いておいて」
「あとで掘り下げなくても大丈夫だよ」
「いやぜひ心境は聞きたい」

ごめん親友、止めない俺を許して。

心の中でとくに申し訳ないとは思ってないけれど謝って、本題へ。

「パステル系ならかわいいし、こうやって緑とかなら以外と男も平気だったりするんじゃない? うちの龍も一般的じゃないからちょっと参考になるかわかんないけど」

おっと若干寒気がしたぞ。後ろにいないよなあいつ。
仮にいたとしても気づかなかったということにしておいて、祈童を見る。顎に指を添えて悩んでる祈童は、少ししてから頷いた。

「確かに彼も一般的とは言えないだろうが……だが色には賛成だな。僕もこういった色の服なら着やすいし、手に取りやすい。店の雰囲気に置き換えたとしても入れないということはないだろう」
『パステルカラーというのも優しい雰囲気があって良いかと思いまする』
「だそうだ道化、そろそろ氷河を堪能する旅から帰ってきてくれないか」
「このまま探さないでくれてもいいのよ!」
「それだと刹那の新しい写真が見れなくなるんじゃない」
「それはいけないわ!」

旅から帰ってきた道化はスマホを閉じて、ノートにペンを走らせていく。

「とりあえず、パステルカラーをということよね」

堪能しながらも話はしっかり聞いてた道化に頷いて。

「緑あたりがたぶん無難なんじゃない。白でも良いと思うけど。いろんな衣装の子がいるから浮いたりはしなさそう」
「ふむ……わかった、こちらではその案で話し合ってみよう」
「参考になったならよかったよ」

微笑んで、ようやっと手離していた布へ再び手をつける。緩く糸を通していきながら、また話し始める二人の会話にも耳を傾けた。

「あとはもう少し凝った演出が欲しいのよね」
「あぁ、待ち時間も楽しくなるようにというやつか。やはりパフォーマンスとかが無難なんじゃないのか?」
「でもそれじゃあキャストとは別にパフォーマンスの子も選出しなきゃいけないじゃない? もっと大変になっちゃうわよ。内装に組み込めるようなものが欲しいわ」

内装に組み込めるようなものねぇ……。

壁に楽しめるような絵とか? あとは待ち時間何かしてれば特典ーとか……あぁでも特典とかってなるとまた管理が大変なのか。

隣でうなっている二人の議題を考えつつ、糸を通し終えて顔がほころぶ。

緩く通していたものを絞るように、針を引っ張った。

手の中の布は真ん中あたりがきゅっと絞られて。

フリルがついた、紅いリボンのできあがり。

それを、デザイン案に夢中になっている親友へ。

「刹那ー」
「なーにー」
「ほい」

目の前に来るように見せれば。少しうつむきがちでも顔が明るくなっていくのがわかった。それに、俺の口角も上がってく。

「紅!」
「当日つけような」
「龍の前っ?」
「そうそう」

仮ってことでヘアピンをつけて、彼女の左耳あたりへ。
少し大きめのリボンは、嬉しそうなクリスティアが動くたびに揺れる。

「後ろか横につけてあげるから」
「うんっ」
「下もとびきりかわいくしてあげるからね」
「♪」

一気にご機嫌になった彼女は、リアスとつながっている冴楼へ目を向ける。そうして「似合う?」だとか「かわい?」といつものように尋ねて、冴楼もそれにうなずき返していた。

『主にまだ見せられないのが心苦しいものでございまする……』
「おたのしみ…ごろーも内緒」
『御意に……』

とりあえず写真だけ撮っとこ。机に置いてたスマホでカメラを起動して、冴楼に微笑んでいるクリスティアを一枚。

お、きれいに撮れたかも。でもこれ見せれるの文化祭終わった後か。すげぇ今すぐ送りたい。けど我慢して。

「蓮っ」
「はいよ」

大事に保存をして、名前を呼んできた親友へ目を向けた。
その子は未だ嬉しそうな顔で、普段幼なじみとは触れ合いなんてしないけれど、リアスとつながっているからか大事そうに冴楼を抱きしめて。

「ごろーとおそろいがいいっ」

とんでもない注文をされてしまった。
見てクリスティア、お前の腕の中の冴楼が『えっ』て顔してるから。今見えてないね、嬉しいもんね。

「リボンもう一個っ」
「いや刹那さん、次龍が冴楼召還したときびっくりしちゃうから」
「一緒に写真だけ…ね?」

あ、ごめん冴楼俺この顔超弱い。

いつもの癖で、「わかったよ」と、

言おうとしたのと、同時だった。

がたんと隣で音が鳴ったのは。

何だとクリスティアたちとそろって隣を見れば、HRのときと同じように立ち上がった道化と、びっくりしてる祈童。
俺たちだけじゃなく、近くにいた子たちも道化に注目してる。そんな中で、道化はクリスティアを凝視。けれど黙ってるので、

「……どしたの道化」

そう、聞いて。

「……よ」
「ん?」

初めて聞く小さな声に、思わず聞き返したら。

「それよ刹那ちゃん!!!!」

今度は鼓膜が破れるくらいの大声いただきました。

いや、ていうか。

「「どれ!?」」

当然のごとく聞く俺と祈童。けれど道化はクリスティアを見つめて俺たちの言葉が入っていない。思わず、視線の先のクリスティアを見たら。

「…!」

彼女の顔は「そうか!」と輝いている。待ってクリスティアさん何受信したの?

そんな俺の疑問をよそに、クリスティアは立ち上がる。

「刹那ちゃん!」
「みおり…!」

待った待ったミュージカル風に二人で近づいてってるけど俺たち何も追いつけてない。
さすがに手を取り合うことはなかったけれど、二人向き合って頷いて。

「祈童くん!」
「蓮…!」

それぞれが、俺たちに向いた。

そうして、同時に発した言葉は。

「「おそろい!!!」」

結局理解はできませんでした。

『説明を聞いたら案としては最高でした』/レグナ

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