四人の思い出が欲しいな

閃吏達にものすごく驚いた顔をされたHRを終え、夜。
恋人は今日も機嫌が良い。

それのおかげか行動療法にもそこまで抵抗がなく、現在は左腕の肩まで上がって来れた。クリスマス効果は絶大だなとこれを機にもう少し進めていくことを風呂の中で決め。

「♪」

風呂上がり、ソファに座っていれば恋人はすりすりと俺にすり寄りながら抱きついて来た。彼女が膝に座ったのを確認してから腰を支えてやり、ひとまずはもう一つ風呂場で聞こうと決めたことを口にする。

「クリスティア」
「んー」
「そろそろプレゼントを決めないか」

そう、言えば。

「♪」

ご機嫌な顔にさらにぱぁっと花が咲いた。あぁとても癒される。思わず綻んでしまう笑みのまま、どうすると腰を緩く叩きながら促してやった。

「決まりそうか?」
「んー…」

問いには小さく首を傾げる。それすらも愛おしいと思うのは恋人ならば当然か。
なんてバカなことを思いつつ、できればそろそろ決まって欲しいというのも本音である。

クリスマスシーズンは混みがそれはもうものすごい。街もそうだが配送も早めに注文しなければ遅れる可能性がある。
それだけはいただけない。せめて当日には彼女の手元にあるようにしたい。配送なら遅くとも来週半ばくらいまでが待てる限度になる。

が、

「今年はどうする」
「…毎年、いっぱいもらってる…」

愛しい恋人ははあまり浮かばないと、申し訳なさそうに緩く眉を下げてしまう。まぁ確かにこの何千年共に入ればレパートリーは減るだろうけれども。
やはり中々出ては来ないか。ソファに肘を預けたところで、クリスティアが聞いてきた。

「サンタさんのも、そろそろ、決めなきゃでしょ…?」

一瞬喉がぐっと詰まったのはできれば見なかったことにして欲しい。
実はあの後からまったくもって打開策が浮かんでいない。そちらもどうするかそろそろ決めなければならないのに。

「……そうだな」

ただその焦りは彼女には見せぬように頷く。幸いにも気づかなかった恋人はそのまま話を進めていった。

「サンタさんに、言わなきゃだもんね…」
「あぁ」
「どうやって連絡取ってるの?」

”どうやって連絡取ってるの?”?

思わぬ言葉が聞こえてクリスティアを見るが、彼女は先ほどと違って興味津々と言った目で俺を見ている。
そして俺の驚いた顔を、”何故その発想になった”ではなく”何故連絡を取れると知っているんだ”と捉えた恋人は小さな口から言葉をこぼした。

「サンタさんと、お友達なんでしょ…?」

誰だ俺の交友関係を勝手に広めた奴は。

「……誰に聞いたんだ」
「レグナ」

あのやろう。

「レグナが、リアス様とサンタさんは友達だから、ちゃんとおうちに来てくれるって」
「ほう……?」
「杜縁先生もね、いい子にしてたらプレゼント豪華になるって」

何故そこで杜縁もやって来る。

しかもちょっと待てよ?

俺の知らない間にサンタのハードル上がってないか。

勘弁してくれただでさえ毎年大変なんだ。クリスティアの「サンタはいる」という夢を壊さぬよう、比較的毎回仲の悪い親にその日だけはと口裏を合わせてもらったり、クリスティアが俺を探して夜中起きないようにと毎年家に泊まらせてもらったり。過保護で傍を離れないからとクリスの親や双子に協力してもらってプレゼントを買いばれないよう隠したり。

けれど今回は親の助力は受けられないと来た。

その上でサンタは友達説といい子にしていたら豪華説か。

どんだけハードル上げる気だお前らは。

なんて心の中のレグナと杜縁に悪態をつきつつも。

「…?」

こんなあどけない少女のような恋人の夢を壊さないでいてくれたことには感謝しかなく。
ひとまずレグナには詳しく話を聞くとして、いつものごとく溜息を吐き、頷く。

「……そうだな。いい子にしていれば豪華にしてくれるだろう」
「!」
「ただ、友人だからと言ってあまり待ってもらうわけにもいかない」

わかるな? 小さな子供に言い聞かせるように問えば、こくりと首を縦に振った。

「サンタとしては、遅くとも来週末には聞いておいて欲しいと言っていた」

それなら今年のサンタ(双子)も用意できると。
毎年サンタさん違うのなんて問いには担当場所が違うだのと適当に返し、クリスティアを見る。

サンタに興味津々と言った目の奥に見えるのは、期待。

「……何かプレゼントの希望は?」

とりあえず用意できるか聞いてやる。そういかにも友達なんだと信じさせるように言えば。

彼女の目が、さらに輝いた。

きらきらと輝く瞳が大変かわいらしい。俺の首に腕を回して、どうしよう、何がいいかなとわくわく考える姿。これが愛おしいから毎回頑張ってしまう。

「決まりそうか?」
「んー」

再度、とんとんと背を叩いて促してやると。

クリスマスシーズン特有のきらきらとした目がこちらを向く。ん? と優しく尋ねてやれば。

「用意できるか、聞いてくれる?」
「あぁ」

頷いて、その口から。

「四人の、たのしい思い出」

過去最高にハードルが高い要求が飛び出してきて固まってしまう。

「……思い出か?」
「思い出」

確認するように聞いてみるも聞き間違いではなかったらしく、彼女は頷く。そうして、こてんと俺にもたれ掛かりながら紡いでいく。

「たくさんプレゼントもらってるの…」
「そうだな」
「クリス今、欲しいって思うものない…」
「あぁ」
「でもサンタさん、いきなりいらないって言ったらびっくりする」

その発想に俺がびっくりしたわ。
動揺を抑えてなんとか「そうだな」と頷く。

「だめだったら、いいの…思い出っていうのも、どこか行くとかじゃなくていい…」

緩く身を離した彼女は、残念がる様子もなく、ただただ幸せそうに。

「なにかをもらうより、どこかに行くより…四人で一緒にいるってことが、クリスにとっての一番のプレゼント」

なんて、言われてしまったら。

子供なのに、俺のこともさりげなく考えているどこまでも大人な彼女の、小さな願いを叶えてやりたくなってしまって。

クリスティアの肩に、頭を乗せて。

強く強く、抱きしめて。

「……今年のサンタへの願いは、それで通す」

珍しく、約束のようなことを口にした。

俺のその約束か、それとも願いを伝えてくれることか、どちらかはわからないけれど。
抱きしめた彼女からは嬉しそうな雰囲気が出ていて。

「うんっ」

抱きしめ返してきた子供のような彼女に、心の中で頑張る誓いを立てて。

冷えた体を温めるように、さらに強く抱きしめ返した。

『12』/リアス

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