類は友を呼ぶとはこういうことか

 ヒューマンとビーストと別れてからしばらく。全員がやっと落ち着いてきた時だった。脱力感と同時に、どっと汗が噴き出す。

「……死ぬかと思った」

 思わずしゃがみ込み、そうこぼした。

「なんか、うん、お疲れ」
「さすがに同情しますわ」

 俺の気持ちを察した双子の親友は苦笑いをしているような声でそう返してくる。あまりのことに顔も上げられない俺に、今回ばかりはカリナも茶化したりなんてしなかった。

「リアス様、だいじょうぶ…?」

 ただ一人、クリスティアだけは俺がどうしてしゃがみ込んだのかはわかっていなくて。俺の目の前にしゃがんで心配そうに聞いてきた。ああ、と返しながらも実際は全然大丈夫ではない。今回の問題児である目の前のこいつに対してこう言いたくなる。

 お前のせいだろう、と。

 ヒューマンとビーストの争いが起きたのは言っちゃ悪いが別にどうでも良かった。普段から争いなんてどこにでもあるわけだし、最悪強行手段を使えばいい。俺が焦ったのは、クリスティアの行動だ。

 こいつまじか、と本気で思った。

 俺のトラウマ知っているか? あの日俺を守ろうとしたお前の手を掴めずに目の前で失ったことだぞ。貫かれて崩れ落ちていくお前を、呆然と見ていることしかできなかったことが俺にとっての人生最大のトラウマなんだぞ。それを何とか回避しようと、あれ以来合意を得た上でなるべくお前の傍にいて、どんなときでもお前を守れるようにしてるんだぞ。

 その恋人にトラウマを再現するか?

 なんか、こう、一言くらいあっただろう。今からテレポートするねとかもう強行手段で間に入った方が早いねとか何か一言。普通無言で行くか?

「リアス、大丈夫か。色々と」

 頭の中で駆け巡るその思いを言い出せずぐったりとしている俺にレグナは気遣いの言葉を掛けてくれる。カリナも同情の目を俺に向けているのが雰囲気でわかった。が、それにいつも通り返せる元気もなくて。

「……なんとか、生きている」

 ただただそう絞り出すことしかできなかった。

「具合悪い…?」

 それでも尚わかってはいないクリスティアが聞いてくる。恐らくいつもみたいに首を傾げているんだろう。具合は悪くないが心臓に悪かった。まじで。正直怒り任せに色々と言ってやりたいところだが、結局恋人に甘い俺は必要なことだけを紡ぐ。

「具合は悪くない……が、頼むから、何かする時はせめて一言頼む」
「? 何か…?」
「テレポートするなりなんなり一言言ってくれ……」
「………あぁ…気をつける」

 ようやく顔を上げてそう言ってやれば、やっと思い至る節があったのか、納得したように頷いた。頭をなでてやりながら、恐らく次には忘れているんだろうと予想する。何千という歳月の付き合いだ。俺はこの忠告が無意味なことを身を持って知っている。

 目の前で困っている奴は放っておけないから。俺を助けたあの日のように。

 そこがこいつのいいところだし、もちろん愛している。一言告げるというのはそろそろ覚えて欲しいところだが。

 まぁ無理なものはもう仕方ないと、だいぶ復活したところで立ち上がりクリスティアの手を引いて立たせてやった。

「大丈夫そうです?」
「ああ、すまない。とりあえずは平気だ」
「あと半分くらいだから頑張れ」
「……ああ」

 気遣ってくれた双子に頷き返して再び歩き出した。クリスティアは可愛いビーストがいないかとカリナと共に少しだけ前を歩く。俺とレグナはそれを見守るように後ろから後を着いて行く。四人でいるときの、割と決まった歩き方だ。

「……まじで焦ったな」

 ゆっくりと隣を歩きながら言うレグナに頷く。

「正直嘘だろうと思った」
「俺もまじかって思った。こいつリアスのトラウマえぐったなって」

 それはもう見事に抉られました。

「……あいつのテレポート封印するか」
「有事の際に困るからやめて」
「抱えれば一緒に飛べるだろう」
「なんかすんでのところで掴めなくてまたトラウマ深くなる気がする」

 なんて恐ろしいことを言うんだこいつは。だがものすごく予想できる。身震いしてそれはやめておこうと決心した。

「あ」

 話していれば、カリナが声を上げ、立ち止まった。

「あちらの方でまたヒューマンとビーストのトラブル起きてません?」

 つられて立ち止まり、彼女が指さした方向に目を向ければ、確かに言い争っているのが見える。またか。

「嘘だろ、またかよ……」
「多くないか? ──ってちょっと待て」

 けだるい足を争いの方角に向けたところで、気付く。

 クリスティアが、魔力を練り始めたことに。

「………刹那さーん」
「…二度あることは、三度ある?」

 あってたまるか。

「…早めに解決した方がいいってさっき思ったから、行く」
「待て待て待て」

 ダッシュでクリスティアの元に行き、魔力を練りきる前に解魔術かいまじゅつでテレポートを解いた。間に合ったことに、ほっと胸をなで下ろす。しかし止められたクリスティアは少し不服そうで。

「一言、言ったよ?」
「そうじゃない、違くてだなクリスティア」

 何故こいつはGOサインを待たないのか。小さな子供に言い聞かせるように、目線を合わせて言ってやる。

「距離が離れているからテレポートするのはわかる、さっきのことで早めに解決した方が得策なのもわかる。だがとりあえずお前は”全員で”ということを覚えてくれ」
「言うより行動の方が早い…」
「気持ちは分かるがこっちが焦る。割とまじで」
「…わかった」

 未だ不服そうだが、それでも素直に頷いてくれる彼女の頭を撫でて立ち上がり、振り返る。待機しているであろう双子にさあ行くかと言おうとしたが。

 そこには双子の姿がなかった。

 再びクリスティアに振り返る。

「クリスティア、あの双子がどこに行ったか知っているか」
「わたしとリアス様が話してる間にテレポートしてった」

 おいお前らもか。俺の言葉聞いてたか? ”全員で”ということを覚えろと。まさかその時すでにいなかったのかよあいつら。つーか目立たないようにするんじゃなかったのか。

「……もういい、行くぞ」
「ん」

 もうどうにでもなれと溜息を吐いて、魔力を練り始める。クリスティアも魔力を練り始め、二人ほぼ同時に目的地へと飛んでいった。

 人のことは言えないが、何故俺の仲間は勝手に行動していく奴らばかりなんだ。

『類は友を呼ぶとはこういうことか』/リアス

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