久々に罰ゲームのないゲームをした気がする

2019-09-28

「おはよ…」
「おはよクリス、よく寝れた?」
「んー…」

おはようございます、夜中に起きたレグナです。あの後すんなり寝れて、起きたのは朝9時頃。俺たち双子とリアスは同じくらいの時間に起きて、クリスティアが最後に目を開けた。眠そうではあるけれど、一応快眠はできたらしい。

「やっぱり大荒れですねぇ」

眠たそうに目をこすってるクリスティアから、カーテンを開けた寝起きで髪を下ろしてる妹の方に目を向ける。外は夜中と変わらず暴風で、大雨。ついでに言えば目の前に見える海も大荒れ。

「今日は部屋だね」
「ですね」
「暇つぶしのものは持ってきているんだろう?」
「ええ、いくつかは」
「今日はじゃあ着替えなくていっか。外でないでしょ?」
「もしかしたら緊急罰ゲームで買い物に行くかもしれませんよ?」
「この大雨の中でか」

命を懸けた罰ゲームになりそうなんですけど。

「まぁ冗談はさておき」
「冗談に、聞こえない…」
「とりあえず朝ご飯やらを済ませて一日ゲーム、という流れでいいです?」

カリナの提案に頷いて、俺はとりあえず朝ご飯かなと執事たちが用意してくれてたおにぎりを取りに冷蔵庫に向かう。

「なんか食べる人ー」
「私梅のおにぎりで」
「パン」
「パンが良いー…」

言われたとおり、冷蔵庫に入ってた俺たちのおにぎりと、その冷蔵庫の上に置いておいたカップル用のパンを手に取り、またベッドに向かう。各自に渡して、ベッドに座って食べ始めた。

うん、すげぇ平和。外全く穏やかじゃないけど。

「4人でこんな静かな環境、俺初めてかもしれない…」
「そうでもなくないですか?」
「お前がいつも問題を起こすんだからレグナの言うことも間違いじゃないだろう」
「フォローはありがたいんだけどお前も問題起こしっぱなしだからね?」
「俺よりクリスティアの方が問題起こすだろう」
「ああ、うん、それもわかる」

話ながら俺とリアスは軽めの朝食を食べ終えて、先に洗面所に向かう。

「そしてお前は被害がどうたらと言うがお前だって問題起こしているからな?」
「そんなことなくね?」
「常識人は上級生に千本向けたりなんてしないだろう」

先週のことを掘り返されて思わず歯磨き粉を強く出し過ぎた。どうすんだこれ。

「…なにしてんだ」
「リアスが嫌なこと思い出させるからじゃん」
「大事な妹のことになると本当に周りが見えなくなるな」
「お互い様だろ」
「あら、何のお話です?」

歯ブラシに水を付けて歯を磨き始めたら、食べ終わったらしい女子組も洗面所へ。リアスが歯磨き粉を出してからカリナに渡す。

「先週の武煉とレグナの喧嘩について」

あ、カリナも歯磨き粉出し過ぎた。

「…何してるのカリナ…」
「あまり掘り返してはいけないことをこの男が掘り返すからいけないんですよ」
「さすが双子、やることは同じだな」
「レグナも歯磨き粉、出し過ぎたの…?」

カリナから歯磨き粉を渡されたクリスティアに頷く。今めっちゃ口の中辛い。

「というかなんでその話題になるんですか…」
「問題を起こす起こさないの話でレグナが被害を受けてばかりだと言うから、妹のことになるとお前だって問題起こすだろうとなってその話に行き着いた」
「レグナはまだ自分を常識人だと思っているんです?」
「最近はなんだろうね、お前ら3人よりかはまともじゃないかなって認識に改めた」
「それなら、納得…」

4人でシャカシャカ歯磨きをしながら話して、だいぶからくて<ruby>辛<rp>(</rp><rt>つら</rt><rp>)</rp></ruby>いので俺から口を濯ぐ。

「割とまともなのはわたしだと思うの…」
「寝言は寝て言え」
「びっくり行動するだけで、いろいろまともじゃない…?」
「この4人で誰がまともかなんて言っても仕方ないでしょう、みんな同レベルですわ」
「まともじゃない部分が違うだけでレベルは一緒だわ」

そう言ったらカップルがすごい不服そうな顔をした。同レベルだけど結構ひどいのはお前らだからな。

「まぁまともだとかそういう話は置いておいて。今日は何するんだ」

各々口を濯いで顔を洗って。着替えはそのままにまたベッドに戻る。リアスが聞けば、カリナがにっこりと楽しそうな笑みで言った。

「またチェスなんていかがかな、と思いまして」
「物語チェス…?」
「それもいいんですが、前回の時に次回は”お見合いチェスなんてどうですか”と言ったじゃないですか」
「あー、難しそうだから没になってたやつ?」
「それをきちんと練ってきたので、どうかなと」

考えちゃったのかよ。

「とりあえず案だけ聞こうか?」
「あらリアス、今回は素直ですわね」
「どうせ聞く羽目になりそうだからな。それに前回も中々面白かったし」
「わたしも、楽しかった…」

ノリノリだったもんね。
カリナは2人の言葉にうれしそうに笑って、大きめなバッグから前回と同じチェスセットと、メモ帳を持ってきた。ベッドの間にあるサイドテーブルを引っ張って、その上に置く。

「ではとりあえず、概要説明から参りましょうか。聞いた後に意見などあればご容赦無く願いますわ」

チェスを並べるのを手伝いながらカリナの言葉に頷く。並べ終わって、カリナは口を開いた。

「前回同様、特殊ルール込みのチェスになりますが、駒の役割は変わりません。今回大きく変わるのは、バトル方式です。後ほど勝利条件などもお話ししますわ」
「戦う前に、一声、みたいな…?」
「一声、というよりは”一手間”ですかね。今回のテーマは集団お見合い。よくあるでしょう、合コンみたいなお見合いみたいな、あの出会う系のイベント」
「カップル成立がどうとか、という奴か?」
「そうです。なので今回は敵を討つのではなく、”カップルを成立させること”が目的のチェスになります。さて、お見合いといえば?」
「ご趣味は? ってやつ?」
「大正解ですわレグナ」

あれ、でもこれって前回ネックな部分じゃなかったっけ。

「趣味合わなそうだからって没になんなかった?」
「そこをきちんと練ってきましたわ」

誇らしげに言って、カリナはメモ帳を数枚破る。何かを書いて、俺たちの前に置いた。
同じ内容が2枚ずつ、で計4枚。

「まず同じ内容のものを対戦者同士で分けます。今書いたものですと”手芸”と”料理”が2枚ずつあるので、たとえば私とレグナが対戦するのであれば、2人とも手芸と料理、同じ手札を持つことになります。で、いざチェスでのバトル、本来の攻撃の意思表示をした際、互いに自分の手札から好きなカードを出しますわ」
「じゃあ俺が手芸を出したとして?」
「私も手芸を出したとしましょう。見事趣味が合致したのでここはカップル成立。本来のチェスと違うのは、”趣味が合致した場合、両者退場”となります」

ってことは攻撃しかけた方も駒を失うってわけか。

「で、次に趣味が合致しなかった場合。たとえばレグナが手芸を出したのに、私は料理のカードを出してしまった場合ですね。その場合は、ここに運命の人はいなかったということで”攻撃を仕掛けた方が退場”となります」

お相手探しにきたのに忍耐力なさ過ぎない??

「もうちょっと根気よく探すとかって言う選択肢はないのこの駒たちには」
「3回目まで粘る、というのも考えたんですが、それをすると時間もかかる上に管理が大変になりそうだったので」
「1人だめだったらすぐ帰っちゃうんだ…」
「そうなりますわ」

現実だったら相手見つけるのに数年掛かりそうだな。

「バトルの説明は大丈夫そうです?」
「おっけー…」

頷けば、カリナは続けた。

「先ほども言ったとおり、目的は”カップル成立”。というわけで勝敗もカップル成立件数で決めたいと思います。バトル方法上、自分から仕掛けない限り成立件数は稼げませんが失敗すれば自分の駒を失うだけ。今回は戦術よりも運の良さがものを言うでしょうね」
「リアスラックアップ解除しとけよ」
「相手と意志疎通するものではないから大丈夫だと思うがな」

まぁ今回のはカードを引き当てるタイプじゃないからそこまで大きくは関わらなさそうだけど。

「ちなみに前回同様、全滅にて試合終了ですわ」

全滅とか言うから一気に殺伐としちゃったよ。でも面白そうかも。なんて思ってたら、カリナが思い出したように声を上げた。

「どしたの」
「大事なことを忘れてました」

そう言って、カリナはポーンたちをひとつずつ取り上げ、台座の中央に並べた。

「せっかく駒の種類もあるので設定も決めてきたんです」
「ほう」

わかりやすく一つずつ手にとって。

「まずはポーンですね。まっすぐ突き進むので一途な子です。ただし目の前の子に思いを伝えたくてもアタックできないので初恋が成就しないタイプです」

なんか始まった。

「次に同じ直線型のルーク。この子は好みの子にまっしぐら、横だろうが縦だろうが好みの子がいればすぐに駆けつけますわ」
「ナイト…」
「俗に言う白馬の王子様、という感じで。君の元に飛んでいくよ、がコンセプトです」

確かに数マス飛んで行くけども。

「ビショップはちょっと斜めからのアプローチ型ですね。まっすぐと言うよりはちょっとゆがんだ愛の持ち主です」
「クイーンはどうなる」
「役職としては女王。この会場の中で2番目に顔面偏差値の高い方になります」

待って顔面どこ?

「その顔面偏差値の高さを生かして縦横無尽に駆け回る、いわゆる肉食系のお方ですわ」
「じゃあキングは?」
「もっとも地位が高いと言うことで会場の中で一番の人気者、という設定ですわ。ただし奥手なので一歩ずつしか歩み寄らないというギャップがあります」

相変わらず妹の設定が壮大すぎる。

「ついでに本来のチェスである、ポーンの変化について。相手の陣地まで行きますと、自分の思いの伝えられなさに嫌気がさして肉食系に大変身しますわ」
「ポーンが一番なんか狂気じゃない?」
「まぁ最後までたどり着ければ、だがな」
「その前に恋が実るといいね…」

全くだ。

「ルール説明は以上になりますわ。ご意見やご質問などは?」

言われて、全員首を振る。特に大丈夫そうだし。
要は攻撃しかけてカップル成立しろよ、ってこと。
俺たちを見て、カリナは楽しそうに笑って。

「では始めましょうか。一応合コン的なお見合い的な感じなので、駒は白が女性陣、黒が男性陣、と分けようと思うのですが」
「いいんじゃない?」
「対戦どうするー…?」
「ならここも男女で分けるか? どうせ掛け合いだなんだとするなら自分の性別の方がやりやすいだろう」
「よい案ですわねリアス。そうしましょうか」

じゃあ俺とリアスペア、カリナとクリスティアペアか。対戦しやすいように俺とクリスが入れ替わって座り直す。

「ご趣味カードはどうします? 1枚増やしますか?」
「そうなると退場者が続出しそうだな…」
「2枚でいいんじゃない?」
「料理と、手芸…?」
「そこは適当だったので変えましょうか。あ、あとカップル成立後に多少掛け合いしてくださいね」
「成立後にしなきゃだめなの?」
「無言で去っていくカップルがどこにいるんですか」

そのカップルは相手のステータス目当てなだけかもしれない。

「じゃあ会話しやすいもの…」
「それぞれの好きなものとかか?」
「リアスとクリスなら読書、いいかもしれませんね」
「俺とカリナは? ゲームしか思い浮かばないんだけど」
「良いじゃないですか。ではゲームと読書で。会話盛り上げてくださいね」

最後にすげぇ無茶ぶり来ちゃったよ。

「では始めていきましょうか」

カリナが笑って言うそれを合図に、ゲームスタート。

ーゲームスタートー

「私たちが白なので先行いただきますね」
「おっけー」

前回と違って俺とリアスが黒だから、盤面の番号逆になるのか。横列は右からAが始まって、Hまで。縦はこっちが8で、向こうに行くに連れて1、かな。
カリナはE-2にあったポーンを直進させて4へ。

「とりあえず無難にこんな感じですわね」
「今回はどっちかっていうとガンガン攻めていった方がいい感じだよね」
「そうなるな。仕掛けても駒がなくなるが仕掛けないと勝利すらできない」

毎度思うけどよく考えてくるわカリナ。感心してる間に、リアスがB列にいるナイトをC-6へ。

「これ、今回は名前付けなくていいの…?」
「クリスネーミングセンスないじゃん」
「あんなに素敵な名前なのに…」
「そっちの女共にたろーだごろーだ付けていくのか?」
「そっかこっち女の子か…新しくぽんたろーとか思いついたのに…」
「男女に分けて大正解だったな」
「分けてなくても却下したわ」

なんだぽんたろーって。次はぽんじろーか?

そう話ながら、初めのナイトとGにいたナイト、カリナたちは初めのポーンとCにいたポーンをメインにして動かしてく。カリナたちのCのポーンが5列まで来たとこで。

「カリナ、だめ…」
「えっ」
「こっち、取られちゃう…」

状況把握役らしいクリスが指さしたとこを追えば、同じく5列目に来てた最初のEのポーンが、俺たちが最初に動かしたナイトの射程範囲内に。

「クリス、言わなきゃよかったんじゃない?」
「どうせリアス様気づいてるでしょ…」
「わかってるじゃないか」

言いながら、リアスはCの位置にいたナイトをEのポーンのとこへ。でもまだ取らず、小さなマスに詰めるように置いた。

「で? 仕掛けたらカードだったな」
「そうですわ。ではお2人方、ご趣味は?」

とりあえずこれは悩んでもしょうがないと、俺がカードを持ってたので読書のカードを抜き取る。同じくカードを持ってたクリスがカードを用意したので、せーので一緒に出した。

「お」
「あ…」

結果は、見事に合致。ということは?

「これでカップル成立?」
「そうなりますわ、おめでとうございます、ご退場願いますわ」
「すげー成立したのに何もうれしくない」

おめでとうって言われて退場願われたのなんて初めてだわ。

「あと、掛け合い…」
「あ、そっか」
「読書ですよね、ではリアス、最近読んだ本はなんですか?」
「エンドレスクレイジー」

なんだその狂ったタイトル。

「待ってリアスさん、それどんな内容?」
「狂った博士が延々と狂った行いばかりする内容だな」
「もっとまともなの読んで」

親友が心配。

「ではこんな感じで次行きましょうか」
「ここ…取れる…」
「あら」

女子のターンで、クリスが指をさした。そこにはG-4まで移動してたナイト。よく見てみるとクイーンの射程範囲。

「リアス珍しいね、ミス?」
「そういえばあまり見ていなかったな」

ほんと珍しいな。

「油断です?」
「いや? 相手の射程圏内に入ったとしてもこっちは取られる確率は二分の一。仕掛けた方は確実に退場。全滅エンドで終了なら相手より成立件数が多い状態で仕掛けられるのを待っているのも一つの手だ」
「リアス様無駄に頭良いからやだ…」
「隙のない男はよくないんじゃないですか?」
「それどっちかって言うと女の子の方で聞かない?」
「あー男性だとクールでかっこいい、ってなりますか…」
「…これだからイケメンは…」
「さっさとやれ」

リアスが促したら、不満そうな女子組はクイーンをナイトの元へ。

「んじゃ、ご趣味は?」
「こちらで」

お互い手札のカードを選んで、せーので相手に見えるように出す。

俺が選んだのはゲーム。
カリナが選んだのは…

「こっち、読書…」
「残念だったな、退場だ」
「運命の相手はいなかったということですか…」
「顔面偏差値第2位、諦め早すぎじゃない?」
「次はこの良さを生かせる合コンに参加しますわ」

だから顔面どこ。

「このままナイト進めちゃう?」
「数件取っておけば後が楽そうだしな。いいんじゃないか」

お許しもでたので、生き残ったナイトをF-2のポーンへ。

「ご趣味は…」
「ん」

リアスとクリスがカードを出す。出したのは、

「クリスがゲームで?」
「リアスが読書、不一致ですわね」
「二分の一でも結構はずれたりするね」
「トランプみたいなものだろう。上がり直前でも延々とジョーカー引き続けることだってある」

あ、わかりやすい。
カリナたちがBのナイトを進めてきたので、誘うようにDのポーンを前へ。

「これ普段のチェスなら絶対やらないよね…」
「わざわざ自分の駒を失いたくはないからな。その点では面白い」
「自分から狙われに行くっていうね」
「恋の駆け引きみたいな感じですわね」

なんか違う気がする。

「ではこちらも成立件数を稼ぎたいのでしばらくは攻めましょうか」
「ん…」

カリナたちは誘いに乗って、俺たちのポーンの元へ。

「趣味はなんだ」
「これですわ」

お互いカードを出す。

「あら」
「一致だな」

今回はゲームで一致して、カリナたちが初のカップル成立。

「おめでとう、退場だね」
「うれしくないですね」
「なんのゲームしてるんですか…」
「おいゲーマー、何かないか」
「俺そこまでゲーマーじゃないけどね?」

なんかあったかな。記憶を探って。

「面白かったのはあれかな、”カリカリアドベンチャー”」
「だいぶコミカルなネーミングだな」
「あれですよね、借金で追われながらもさらに借りて大冒険、っていうやつ」
「そうそれ」
「…内容が全然コミカルじゃなかった…」
「カリカリって借り借りか」
「そうそう。ギャンブルで負けた主人公が色んな人から金借りまくってその借りた金でどこまで生きていけるか」
「金返せ」
「最終的にどうやって終わるの…?」
「大冒険してく過程で色んなスキル覚えてさ、最終的に無人島で一人暮らし」
「金が必要なくなるのか」
「そうなりますわ」
「返してあげて…」
「結局誰にも見つからずに死んでいくエンドだったよ」
「ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからないな」
「本人的にはハッピーなんじゃない?」

話しながらも駒を進めて、カードを出して、不一致で退場、を何度か繰り返す。

「強制退場3名ずつ、カップル成立1組ずつですか」
「不一致続いたね」
「運任せだからな」
「ではここで一大イベント…」

俺たちのターンが来て、クリスが言った。

「何一大イベントって」
「これか?」

気づいたリアスが指をさした方向に目を向ければ、俺たちの方にある顔面偏差値第1位、人気者のキングの先に、向こうのビショップが。

「一番人気の人と、カップルになれるか…」
「つまり王を逃がさず事の行き先を見守れと?」
「そういうことになりますわ」

言われたとおり王を庇うことはせず、全然関係ないAのポーンを5に進めた。

「んじゃどーぞ」
「はいな、ご趣味は」
「これかな」
「これ…」

俺とクリスが同時にカードを出す。結果は。

「俺ゲーム」
「わたし読書…」

不一致だった。

「イケメンを落とすのはまだ早いということですわね…」
「心が折れた少女は、退場していきました…」
「顔面偏差値高い同士で行けばくっつくんじゃないか」
「それ現実の話ね」

確率で決まるお見合いだもんなこれ。とりあえずそろそろもう一件くらいは増やしたいのでHのルークを隣のGへ。カリナたちもAにいたルークを横のCへ。お互い攻めの状態。

「こっちからね、ご趣味は?」
「はいな」
「ん」

Gにいたルークをそのまま直進させて、同じGにいたポーンに仕掛けた。リアスとカリナが出したカードは、

「読書ですわ」
「こっちも読書だな」
「ラッキー、一致じゃん」

カップル成立ということで相手側のポーンとルークを俺たち側に持ってくる。その間にリアスが掛け合い。

「最近面白かった本は?」
「兄の書庫にあった本でしょうか」

あっぶねルーク落としかけた。

「カリナさん?」
「どんな本なんだ?」
「リアスさーん話進めないでー」
「掛け合いしろと言われたしな」
「その前に相談タイムを要求したいんだけど」
「この場にお兄ちゃんはいないと思うので却下…」
「まじかよ」

確かに妹の合コンに兄がいても困るけども。

「あ、大丈夫ですよ、秘密の書庫の方ではないので」
「むしろそっち読んでたらお兄ちゃんびっくりだよ」

でもまぁよかったわ。カリナはうーんと悩んで。

「ある…?」
「はい、あれですね、”星空の下で”という本ですわ」

それ俺が間違えて買ったR指定のやつ。

「なんでそれチョイスしちゃったの!?」
「あら、多少過激な部分はありましたがお話は素敵なものだったでしょう?」
「どんな話なんだ?」
「余命数年の主人公がそのことを隠して愛する人に色んな思い出をあげる、という感じですかね。そしてもうそう何日もない頃、愛する人が見たがっていた星空を見せてあげるんです」
「素敵な話…」
「別に焦る必要のないものじゃないか」

うん、そこだけ聞いてるとね? その星空の下でいろいろしちゃってるから焦るんだよ。

「色んな部分は置いておいて、レグナが好きそうなお話ですよね」
「レグナ病気系やっぱり読むよね…」
「目は引かれるよね。ねぇもう次行って良い?」

内容をこれ以上掘り下げられたくない。クリスがいるから大丈夫だろうけども。

「ではわたしたちの番ですね」
「さっき置いといたルークで、あたっく…」

カリナも空気を読んでくれたのかすんなり引いてくれて、Cのルークをこっりのポーンへ。

「えー、ご趣味は?」
「はい…」

俺とクリスがカードを出す。あ。

「読書…」
「一致かぁ」

せっかく一件上回ったと思ったのに。中々差開かないな。

「んじゃクリス、最近気に入ってる本は?」
「んー…」

景色とかそういう系かな。悩んでるのを見守ってたら、あっと声を上げる。

「たろのすけとじろじろの仁義無き戦い…」

前半と後半のミスマッチ感なにそれ。

「たろのすけとじろじろが色んな勝負で戦い続けるの…」
「リアスも読んだんですか?」
「読んだ。古典的な勝負から現代の勝負まで幅広くあって面白かった」
「それ時代設定いつなの?」
「古代から現代まで…長生きな2人の物語…」

長生きしすぎだろ。人のこと言えないけど。

「今度遊びの参考にするのもいいと思う…」
「あら、では今度お借りしましょうか」
「うん…」

「これ買ってって持ってきたときどうだった?」
「吹きかけた」
「だよね」

俺でも吹くわ。

話しながら進めていって、お互い成立2件から進まないまま。駒もあと半分かな、ってところでカリナがそうだと声を上げた。

「どしたの?」
「ご趣味のカード内容、そろそろ変えます? 同じ内容ばかりになってしまうので」
「いいんじゃないか」

結構本のタイトルとかも面白かったけど。後半だれてきそうだし良いかも。

「なんか趣味ある?」
「掘り下げていけそうな趣味か? 読書以外特にないが。あとはクリスティアの遊びに付き合うことだな」
「クリスはなんかある?」
「トランプとか…あやとりとか…?」

掘り下げていけそうにない。

「あ、じゃあこういうのはどうです?」

カリナの声に全員でそちらを向く。

「あくまでもたとえですが、じゃんけんで仕掛けた側が勝てばカップル成立、という感じにして、カップル成立後にたとえば好きな食べ物は、とか嫌いな食べ物は、など好きなことを聞く、みたいな」
「あ、いいじゃんそれ」
「たまにはまともなこと言うんだな」
「その口縫い止めてあげましょうかリアス」
「断る」

そこの仲良し2人組は置いといて。

「カップル決定方法はどうする? カリナの言ったじゃんけんにする?」
「さすがに味気なさすぎないか?」
「手っ取り早いといえば手っ取り早いですが…ちょっと面白味がないですよね」
「だよねぇ」

さてどうしようか、と悩んでいれば、今度はクリスが声を上げた。

「トランプは…?」
「カップル成立させるために一勝負するのか?」
「違う…ずわって並べて引いて、みたいな…」

なんでこの子は大事なとこの説明が下手なのか。うんわかるけども。

「適当に並べてその中から一枚取ればいいってことだよね?」
「なんでみんな確認するの…」
「お前の説明が下手すぎるんだ」
「こんなにわかりやすいのに…」

どこが??

「まぁいいや…で、男子が赤引いたらカップル成立、的な…」
「ああ、男性が女性の赤を、女性が男性の黒を引けばいいと言うことですわね。いいじゃないですか。確率も二分の一で変わらず」
「じゃあトランプ出さなきゃ」

確かトランプは俺のとこだったはず。持ってきたバッグのゲーム用バッグを開ければそれはすぐ見つかった。

「じゃあこっちのベッドでいい?」
「ええ」

俺とリアスが座るベッドに、軽く円を描くようにトランプを裏にして広げる。これで勝負の時に引けばオッケー。

「さっそくやってみるか」
「よし来い…」

俺たちのターンで、ちょうどDにいたルークが前にいるポーンを狙えそうだったので直進。さっきと変わらず同じマスに置いて、いざ。

「これかな」

俺がトランプを真ん中らへんから一枚抜く。裏返してみたら。

「お、赤」
「あら、おめでとうございます、退場ですね」
「相変わらずその言葉だけは嬉しくないわ」

見事カップル成立と言うことでルークとポーンは退場。

「で? 質問だったな」
「はいな。なんでもどうぞ」

駒を進めつつリアスと悩む。決まってないのは決まってないで結構困るな。

「リアスなんかある?」
「考えている」

あ、進めてる間にこっちのポーン一個強制退場しちゃった。次のターンでカリナたち仕掛けてきそう。とりあえずなんか適当に。

「ここ最近で楽しかったことは?」
「楽しかったことですか」
「と言っても俺たち基本的に一緒にいるじゃないか」
「うんまぁそうなんだけど。次のターンでカリナたち成立したら詰まっちゃうし」
「楽しかったこと…」

ある? と聞けば、クリスが口を開いた。

「リアス様がね、お出かけ連れてってくれた」
「え、よかったじゃん。俺たちいないとき?」
「うん」
「どこ行ったんですか?」
「隣町…ショッピングモール連れてってくれてね、一緒に買い食いもしたの」

へー、リアス外だしてあげるようになったんだ。

「えらいじゃんリアス」

隣の彼に言ったら。

「その話俺が初耳なんだが」

とんでもない答えが返ってきた。

「え? お前お出かけ連れてったんじゃないの?」
「俺が行くと思うのか?」
「だからレグナがほめたんじゃないですか。え、じゃあクリスは誰と行ったんですか?」
「リアス様と行ったよ…?」
「どっちか嘘ついてるってこと?」
「俺は嘘はつかん。基本的に」
「わたしも…ちゃんと行ったもん…」

「夢の中だけど」

まさかの夢オチ。

「そりゃ本人も知らないわけだわ…」
「予想はついたがな」
「真顔でいつもの感じで話されたらほんとかと思うじゃないですか…」
「一応ほんとの話…」

うんあながち間違いじゃないけどね?

「じゃあ今度こっちね…」

こっちのびっくりも意に介さず、クリスはFにいたポーンでこっちのEにいたポーンに仕掛ける。ただカードは赤で不一致。その後俺がビショップをDに動かして、向こうの王の斜め前に移動。クリスたちのターンで、Fにいたナイトでさっき仕留め損ねたポーンにもう一回アタックしてきた。

「黒…」
「何聞きましょうかね」

今度は黒を引いて、めでたくカップル成立。また3対3。クリスたちが考えてる間にさっきのビショップで仕掛けてみたら、黒を引いてしまったので強制退場。

「決まったか?」
「そうですねぇ。お休みの日は何をして過ごしているんですか?」

休みの日…。

「ゲームかな」
「恋人と読書」

リアスそれ合コンじゃ言っちゃいけないやつ。

「なんで合コンなのに恋人のこと言うわけ?」
「いや普段何してるかと考えたらぽろっと出てきた」
「しかも趣味の時と変わりませんでしたね」
「質問から考えるのも難しい…」

今度もしやるときは何個か質問決めとこう。やるかわかんないけど。

「んじゃまたカリナたちのターンね」
「はいな。イケメンさんに再度アタックですわ」

ちょうど俺たちの王の列に向こうのルークが。さて次は落とせるか。

「あら」

ルークを同じマスに置いて、カリナがカードを引く。にっこりと笑って裏返されたカードは。

黒。

「2連続成立…」
「おめでとー退場してね」
「成立した瞬間に一気に冷たくなりますわね。ではご質問ですわ。クリス、あります?」
「んー…恋人と、してみたいこと…?」
「まぁかわいらしい。合コンっぽいですね」
「参加したことないけどな」

お前が参加した瞬間クリスが暴走してこの世が終わるわ。

「してみたいこと…とりあえず恋人できたことないから恋人らしいデートをしてみたいかな」
「手繋いでいちゃいちゃ…?」
「そんな感じ。ウィンドウショッピングとかさ」
「あら楽しそうですわね。今度行きますか?」
「兄妹で??」

恋人で行きたいわ。いや別に兄妹で行っても良いけど。

「リアス様は…?」
「恋人としたいこと…と言ってもある程度している気がするんだが」
「男的にしたくてもできないことは?」
「黙ってろレグナ」
「ごめんなさい」

いっそもう強行しちゃえばいいのに。

「もう、わたしに求めるの、ない…?」

クリスさん、たぶんめっちゃある。

「あるにはあるが…」
「なぁに…?」

食い気味のクリスティアに、リアスは言いづらそうに悩む。言うか。言っちゃえ。

「あってもお前ができないものはする気はない」

その願いはむなしく、結局優しいリアスの答えはそれ。

「できそうなもの…」
「大体はした」
「えー…」

この胸のもどかしさはどこにぶつければいいんでしょうか。カリナを見てみたら何とも言えない顔してる。お前も同じか。

「もういいだろう、次行くぞ」
「納得行かない…」
「なら後で抱きしめさせろ。それがいい」

その先をもっと頑張れよリアス。無理なのも知ってるけどももうちょいなんか言い方とかあるじゃん。言うだけならタダじゃん。

「もうほんっとにリアスはヘタレですわ…」
「なんだいきなり」
「なんで大事なとこで引いちゃうんだよ残念すぎるよリアス」
「俺はクリスティアができないことをしないだけで一応実行には移せるからな? ヘタレじゃない」
「一緒ですよもう…」
「ほら終わった。俺たちの負けだ」
「え、嘘」

カリナとうなだれてたらリアスとクリスが進めてたらしく、俺たちの残ったポーンが王に仕掛けて、リアスが引いたのが黒のカード。盤面には対面してるポーンが二組と向こうの王が残ってるけど、仮に王が強制退場してもポーンはどっちも動くことができないため事実上終了。ってことは。

「カリナたちの勝ち?」
「みたいですわね。なんでしょう、勝ったのは嬉しいんですが最後の最後で納得行かない」
「同感だわ」
「案外面白かったぞ」

面白かったけどリアスの優しさが不完全燃焼起こしたわ。

「また今度、やる…?」
「今度また違う設定が浮かんだらやりましょうか」
「そうしよっか」

とりあえず不完全燃焼だろうが終わったものは終わったので、片づけていく。時刻は午後1時。結構じっくりやってたんだなぁ。

「お昼食べた後はどうします?」
「トランプタワー作ってみる?」
「さんせー…」
「豪邸でも作るのか」
「あら、挑戦してみましょうか」
「本気か。別に構わないが」

なんだかんだ許すリアスに笑って、まずはお昼ご飯ということで食堂に向かった。

『久々に罰ゲームのないゲームをした気がする』/レグナ