おそらくさらに近寄られなくなるのでは

「あ、氷河さんたちだ」
『ご無沙汰ですなっ』

 昨日旅行から帰ってきて、おそらく男性陣はぐったりしたまま次の日、初日は1年生強制参加の交流武術週間がやってまいりました。参加時間は自由なのでお昼を食べてからレグナやカップルたちと集合し、動きやすい私服でエシュト学園演習場へと行けば、たまたま入り口付近にいた閃吏くんとユーアくんと遭遇。軽く挨拶を交わして周りを見渡すと、すでに手合わせや交流を始めている1年生組とちらほらと見ない顔。おそらく上級生ですね。

「えっとね、これに目通しておいてだって」
「紙です?」

 一通り見回したあと、閃吏くんの言葉で彼に目を向ける。差し出されたのは一枚の紙。タイトルには、「交流武術会 概要」。そして下にはまぁ事細かな詳細が。これ書いたの杜縁先生かしら。とりあえず一番上のところを読み上げていく。

「”この武術会は上級生との交流を深めつつ、1年生のさらなる向上を目指す企画となる。上級生と手合わせするもよし、戦闘を見て学ぶもよし、この期間を経て、1年生が何かよいきっかけを掴むことを期待する”…だそうですわ」
「つまりは戦わなくてもいいわけか」
「うん、来たらこの紙に目を通して、各自好きなようにしていいって言ってたよ」
「閃吏たちは最初から来てたの?」
「そうだよ、俺たちやっぱりぜんぜん弱いから」
『学びにも来たですっ』

 このお2人は向上心が高いですね。うまくやれば良い戦力になっていくんじゃないかしら。なんて感心をしていたら。

「おっ、龍クンみーっけ」
「げっ」

 最近ではもう聞き慣れた声が。そちらに目を向けると、そこにはリアスの肩に腕を回す陽真先輩、そしてその後ろには武煉先輩。

「やぁ、2週間弱ぶりですね華凜たち」
「武煉先輩たちも来てたの? 2年からは自由参加なんでしょ?」
「そりゃ今日なら龍と確実に戦えそうだから来たに決まってんじゃん」
「俺は付き添いですね」
「話を聞く限り見るだけでも良いそうだが」
「オマエを見つけてオレがそれ許すと思ってんの? 今日こそ這い蹲らせてやるから手合わせしよーぜ」

 リアスが心底面倒くさそうな顔をしています。おそらく頭の中で打開策を考えている中。

「あ、あの」

 閃吏くんが声を上げました。全員でそちらを見る。

「あの面白かった後輩クンじゃん。閃吏クンだっけ。どした?」
「は、はい、あの、強い炎上君と、去年の武闘会で1位だった紫電先輩の戦い、俺見たいですっ」

 言った瞬間、リアスが「は?」って顔しちゃいました。私やレグナは思わずい苦笑い。

「だってさ龍クン?」
「待て閃吏、お前が陽真と手合わせじゃなくてか」
「オレ弱い子の相手苦手なんだわ」
「お前に聞いてねぇよ」

 ご機嫌良さそうになった陽真先輩を押しのけるリアスに、閃吏くんがさらに。

「えと、だってせっかく強い人たち同士が戦うかもしれないんでしょ? だったら俺見たい! 客観的に見て勉強になることだってあると思うし!」
「おい刹那」
「閃吏が絡まなきゃなんでもいい…」
「薄情者がっ」

 いつもなら閃吏くんに敵対心を抱くクリスティアも、特に今日はリアスにどうこうというわけではないので反応を示さず。むしろ彼女の視線はさっきから下のユーアくんに行ってます。もふもふな彼に釘付けなのでさらにどうでもよさげ。
 そこで最後の畳みかけは、陽真先輩。

「オマエが嫌なら刹那ちゃんに手合わせしてもらうけど?」
「誰が許すか。さっさと場所確保してこい」

 クリスティアの名前を出してしまえば早いもので。あまりそこで手合わせはさせたくないリアスは即座に了承。最近陽真先輩、リアスの扱いわかってきたのかしら。武煉先輩やレグナと笑いそうになるのをこらえながら、機嫌良さげに場所確保をしに行った陽真先輩を追うようにこちらはゆっくりと歩き出す。

「お疲れ龍」
「全くだ」
「ごめんね炎上君」
「お前に関しては本当にな」
『でも興味深いです炎上っ』
「俺は見せ物じゃない」

 前を1年生男子陣、そしてリアスの後ろ、いつもの定位置にクリスティア。その後ろを、私と武煉先輩で歩く。その間もクリスティアはユーアくんに釘付け。下向いてばっかりで怪我しませんよねあの子。

「陽真がいつものごとく迷惑をかけてしまったね」

 なんて思っていれば、お隣から武煉先輩がそう言ってきた。言葉ではそう言っているけれど全くもって悪びれた様子のない彼に笑って。

「いいんですよ。龍だってなんだかんだ悪い気はしてないんですから」
「6月の時点では大層嫌いだったようだけれど?」
「まぁ刹那が陽真先輩に懐いてしまってますからねぇ。絆されていったんでしょう」
「あはは、相変わらず刹那には甘いんですね彼は」
「それはもう」

 過保護さに加えて甘さも加速して行っている気がしますわ。

「まぁ陽真が楽しいならこれからもよろしくお願いしたいですね、俺としては」
「こちらもですわ。なんだかんだ楽しんでいそうですので」

 そうお互いに笑いあって。前の5人が止まったのでこちらも止まる。陽真先輩いましたかとのぞき込めば。

「うぜーっつのもう!」

 そこにはさっきと打って変わって大層不機嫌な陽真先輩が。

 そして。

「あー、武煉じゃーん」

 先輩に抱きついた、薄紫の髪に左目に眼帯をした女性が。その女性は武煉先輩を見て手を振る。

「おや、夢ヶ崎先輩じゃないですか」
「相変わらず生意気な顔してるねぇ」
「お互い様ですよ」

 お互いにこにこしているのにものすごい辛辣。

「離れろっつの!」
「やぁだぁ陽真つめたぁい」
「つか何でいんだよ!」
「そりゃぁ陽真のお気に入りが1年生で? ちょー強いって楽しそうだったからぁ、1年生は初日強制参加だし陽真もいると思ってぇ」

 嫌がる陽真先輩などお気になさらず、ゆったりと眠そうな口調でにこにこと話す、えーと夢ヶ崎先輩? でしたっけ。すると彼女はこちらを向いて。

「陽真がいつもお世話になってまぁす。エシュト3年、夢使いのハーフ、夢ヶ崎フィノアでーす」

 まぁとても可愛らしい顔をこてんと横に倒して、そう告げてくれた。3年生でしたか。

「後輩さんたち、気を付けた方がいいですよ。夢ヶ崎先輩は見てわかるとおり、好きな者にはものすごく面倒な愛情表現をする方ですから」
「武煉に言われたくないんですけどぉ。つーかあんたの方が面倒でしょぉ?」
「オレもそれは否定しねーわ」

 私たちも否定しませんわ。

「んーと」

 武煉先輩が若干納得行かないような顔をしている中で、夢ヶ崎先輩が私たちを見回す。一通り見てお目当ての人が見つかったのか。やっと陽真先輩から離れてこちらにやってきた。その向かった先は、リアス…

 ではなく。

「…?」
「あなたが陽真のお気に入りちゃん?」

 彼の後ろにいたクリスティアの元。

「フィノアちゃーん、その子はオレのお気に入りのお気に入りの子な」
「あら、違ったぁ?」
「陽真のお気に入りは、こっち…」

 クリスティアが指をさした方向に目を向けて、リアスを見る。ふーんと見てみるも、興味がないのかすぐにクリスティアに視線を戻して。

「フィノアはこっちの子の方が好みぃ」

 クリスに多少視線を合わせるようにしてまた可愛らしく笑った。

「ねぇ、名前はぁ?」
「刹那…」
「刹那ちゃん、かぁわいい名前」
「おーいあんまその子に手出すなよ。殺されるぞ」
「あんたみたいに傷つけるーとかないからいいでしょぉ? ねぇ?」

 なんていいながら、彼女は幼い子を愛でるかのようにクリスティアに触れようとした。

 あ、まずい。

 そのまま行くと手をはたき落とされる。声を上げて止めようとしたところで。

「触るな」

 いつもなら女性には強めに注意しないリアスが、夢ヶ崎先輩の腕を取って止めた。

「…なぁにぃ、お触り禁止?」
「”意識干渉型”は厄介だ。こいつに触るな」

 そう言えば、今までにこにこしていた夢ヶ崎先輩の顔が、むっとする。

「あたし意識干渉型なんて言ってないんですけどぉ」
「夢使いなら十中八九そうだろう? 獏の血統だったか」
「かわいくない名前で言わないでくれなぁい? ゆ、め、つ、か、い!」
「可愛らしく言おうがなんだろうが獏は獏だろう。刹那に触るな」

 リアスの殺気のこもった言い方に、先ほどのかわいい笑顔はどこへやら、夢ヶ崎先輩は心底いらついた顔になった。
 あらまぁ珍しいですね、女性にそこまで殺気を放つなんて。特性的にはまぁああなるのも仕方ないんでしょうけど。

「むっかつく…。あたし、あんたみたいに勘が鋭い奴きらぁい」
「嫌いで結構、余計なことをしたらただではおかないからな」

 お互い殺気を隠さずにらみ合う。一触即発。そのただならぬ雰囲気に閃吏くんたちがおろおろし始めちゃってます。心なしかリアスが腕を掴む力が強くなってきているので、彼女の腕が折れる前にレグナと共に前に出た。

「すみません先輩、このお方、ちょっと過保護な方で過剰なんですの」
「ほら龍、手離してやって」
「ちっ」

 レグナがそう言えば、至極不機嫌そうにリアスは手を離した。夢ヶ崎先輩も不機嫌そうに離れる。そんな中で明るく言ったのは、武煉先輩。

「おめでとうございます夢ヶ崎先輩、龍に嫌われましたね」

 うわぁこの人最低。

「武煉うっざぁい。さっさと浮気バレて全員の女と別れればぁ?」
「生憎俺は女性と付き合ってるわけではないので。ほら、同級生に呼ばれてますよ、行ったらどうですか?」
「ほんっとあんたもむかつく」

 武煉先輩が指さした方向を見れば、彼の言うとおり、夢ヶ崎先輩のお友達らしいお方が名前を呼んでいました。まぁナイスタイミング。それを見て、夢ヶ崎先輩は武煉先輩を舌打ちをしながら睨んで、私たちにも向き直る。

 さっきのいらついた顔が嘘のように、にっこりと笑って。

「じゃあ後輩ちゃんたち、またねぇ。暇があったら手合わせしよぉ」
「さっさと行けっつの、龍がマジで機嫌わりぃから」
「どーでもいいしぃ。陽真もまたねぇ」
「二度と来なくていいわ」

 呆れたよう言った言葉に夢ヶ崎先輩は笑って、去っていった。

 なんか色んな意味で嵐のような方でしたわね。

「陽真」
「あーハイハイお手合わせね」

 去ったのを見送ってから、リアスが機嫌悪そうに陽真先輩を呼ぶ。運動会以来、ストレス発散の相手になるのか、時々こういう手合わせをすることが多くなってきたお2人。適当な場所にリアスが結界を張りました。あ、やる気満々。

「華凜、俺とどうですか?」

 陽真先輩頑張れとエールを送ったら、私の元へは武煉先輩が。にっこりと笑って私に手を差し出す。あらどうしましょう。というかあなた、たぶん私にあまりお誘いをしない方が。

 なんて思ったのもつかの間。

「武煉先輩俺が相手なるよ」
「おや、こういうのもだめなのかい?」
「むしろなにが良いと思ってんの?」

 すかさずレグナがやってきて、武煉先輩の腕を取る。きっとわかっていたのか先輩も笑って、「では行きましょうか」とレグナと共にリアスが張った結界の中へ入っていった。

「我々はここらへんで見ていましょうか」
「うん、そうだね」
『嵐のようでしたなっ』

 それを見送って、結界の近くに座る。ちょっと前をユーアくんとクリスティア。その後ろで私と閃吏くんが腰を下ろした。中ではすでに乱闘とも言えるような4人対戦が始まっていて、ユーアくんが食い入るように見ています。そのユーアくんをクリスティアが食い入るように見ています。リアスを見てあげてクリスティア。

「ねぇ、愛原さん?」
「はいな」

 武煉先輩、武器持ってないのによく応戦してますね。レグナの斬撃軽々かわしてます。それを見ながら、閃吏くんの声にも耳を傾けた。

「さっき炎上君が言ってた、あの、意識なんちゃらって何かな」

 意識なんちゃら? ああ。

「意識干渉型のことですか」
「そうそう」

 きっと閃吏くんも結界の中を見ていると思うので、視線は変えず。なるべくわかりやすように。

「言うなれば”特殊な個体”、ですかね」
「特殊?」
「ヒューマンから見れば我々ハーフやビーストの存在自体が特殊ではあると思うのですが、ひとえにハーフやビースト、と言っても様々な種族がいますわ。その中でもさらに特殊なのがさっき龍が言った”意識干渉型”の方々。その名の通り、人の意識に干渉する力を持っている種族ですね」
「えっと、じゃあそういう人じゃないと、人の意識には干渉できないってこと?」
「そうなりますわね。我々を仮に一般型と称するなら、一般型は”触れられるもの、周りから見えるもの”、意識干渉型は”触れられないもの、周りからは見えないもの”に力を行使できる、と言う感じでしょうか」

 だいぶかみ砕いてみたんですが大丈夫ですかね。これ難しいんですよね。私もはっきりわかるわけではないし。

「先ほどの夢使いの先輩であるなら、夢。夢は他人から見ることはできないでしょう?」
「うん」
「おそらく彼女はその夢を操ったり、夢の中に入れたり、という力を持っていると思いますわ。あくまで推測ですが」
「意識干渉型ってすごいんだね」
「まぁ2番目に神に近い存在とされているそうですからね」
「1番目は天使様?」
「そうですわ。時代が進んでも唯一、神が自分で作り出す存在。その次が意識干渉型。目には見えない現象に干渉できる、ということで神に近い存在と聞いたことがあります」

 そこまで言うと、閃吏くんはそっかぁとつぶやいて。

「ハーフとビーストって、こう、奥が深いんだね」
「複雑ですわね。ほかにも種族で言ったら混合種、純血種、さきほどの意識干渉型で言えばもっと事細かに分かれるはずです」
「うーん、頭痛くなりそう」
「ふふ、難しいですわよね。私もものすごく詳しいわけではありませんわ。こう言ったことは龍の方が事細かに説明してくれますよ」
「あはは、そうなったらまた氷河さんにお願いしなきゃだね」

そのお願いは果たして通るのかしら。おそらく無理でしょうと前に座る親友へ視線をずらす。彼女の視線はユーアくんへ向けられたまま。

「…さっきからずっとユーア君のこと見てるね」
「気になるんでしょうねぇ」

 あのもふもふが。
 稽古事件ではユーアくんもいたからあまりよくは思ってはいなかったようだけれど、閃吏くんのようにしつこかったわけではないし、あのもふもふもあってユーアくんにはそこまで嫌というわけではないように伺えます。事実あのクリスティアが自らあまり話したこともない人と隣に座っているもの。ずっとそわそわしたように見つめるクリスティア。それがやっぱり気になるのか、ユーアくんがクリスティアの方へ目を向けました。
 思わずことの成り行きが気になって、閃吏くんと共に2人を見守る。

『氷河、我に何かご用ですかっ』
「ご用…?」
『先ほどからずっと我を見つめてますっ』

 言われて、じっとユーアくんを見て。

「もふもふ…」
『もふ?』
「ユーアのもふもふ…ずっと見てた…」

 こてんと首を傾げて言うクリスティアがかわいい。

『我の毛ですかっ』
「そう…とってもきれいで、ふあふあ…」

 そうクリスティアが言えば、ユーアくんの目が輝いた。

『氷河、お目が高いですっ!』

 どこぞの通販ですか。

『我が一族は毛並みには自信があるですっ。手入れも頑張っておる故!』

 確かに見てみるとつやつやしていてふわふわ。手入れ頑張ってるって女子みたいですがあの容姿で手入れしているのを想像すると可愛らしいかもしれないですわ。

『もし良ければ触れてみますかっ』

 言って、ユーアくんが手を差し出す。行きますかクリスティア。差し出された手を見て。

 クリスティアはそっと手を伸ばした。

 行った。パーソナルスペースが広い彼女が手を出した。きっとこれは可愛らしい顔を拝める予感。ポケットからスマホを出し、前の2人を捉えるように構えて、録画ボタンを押した。

 そのクリスティアの手が、差し出されたユーアくんに触れた瞬間。

「…!」

 滅多に見ることのない、クリスティアの衝撃的な顔。その後、とても幸せそうな顔に。

「ふあふあ…」
『そうでしょうっ』
「ふあふあ…めっちゃもふもふ…めっちゃもふもふ…」

 あまりのもふもふ具合に語彙力がなくなってますよクリスティア。

『お気に召しますか氷河っ』
「やばい…ほんとにやばい…もふもふ…」

 その幸せそうな顔に満足したのか、ユーアくんも嬉しそうな顔になって。

『氷河はお話がわかる方ですっ。あとはおでことしっぽが自信があるですっ』
「さわって、いいの…?」
『どうぞですっ、ぜひ堪能するですっ』

 ユーアくんのもふもふがあって一気に距離縮めましたね。自分からなら多少お触りはするけれど基本は服の裾や鞄などの私物まで。彼女が他の生物の体に直接触るのなんて私たち以外にはそうそうない。ユーアくんすごい。そうこう驚きを隠せない間に、クリスティアの手はユーアくんのおでこに伸びる。

「っ…もふもふ…すごい…!」
『お手入れ頑張ってるです』
「さいこうユーア…ほんとやばい…」
『お気に召して何よりですっ!』
「できればぎゅってしたいですユーア…」
『さすがにそれは勘弁願いたいです』
「えー…」

 すごく残念そうな声だけど幸せそうなお顔のクリスティア。

「一瞬だけ…」
『お断り申すですっ、その代わりしっぽのもふもふ権をあげますっ』
「わぁここも超やばい…」

 どうしようすっごいかわいい。かわいい容姿の子たちがかわいいことしてる。クリスティアすごい幸せそうだしユーアくんもにこにこしているし何ですかここ天国。

「ねーやっぱり1回ぎゅー…」
『それはお断り願うですっ』
「どーしてー…」
『しっぽでは満足なさらぬかっ』
「大満足ですけど…」

 なんて言いながらクリスティアは手を広げる。おいでとしてみるけれどユーアくんは応じない。

「ユーアー…」
『我も漢ですっお断り願うですっ』
「1回だけー…」

 ちょっと身を乗り出すクリス。ユーアくんは身を引く。ジリジリとにらみ合いの攻防が続き、

 お互い走り出すか走り出さないかのところで。

「わっ」
「何やっているんだお前は…」

 結界から出てきた、少し汗をかいたリアスがクリスティアのお腹に手を回し保護しました。そこまででとりあえず動画を取る手は止めておく。軽快な音を立てながら終了し、画面はデスクトップへ。スリープにして再びポケットへとしまった。

「氷河さん、止められちゃったね」
「あのまま走り出しても面白かったんですがねぇ」

 走り出したらたぶんクリスティアが圧勝しそうですけど。

「もふもふなの…ぎゅってしたい…」
「お前相手は男だからな?」
『そうです氷河っ』
「抱き心地絶対さいこーなのに…もふもふに男も女も関係ない…」
「断られているんだからやめてやれ。それと俺も怒るからな」

 リアスにそう言われて、しょんぼりとするクリスティア。それを見てユーアくんがしっぽで彼女の手をなでてあげる。そんな器用なことできるんですかそのしっぽ。

「じゃあ時々…もふもふ撫でさせて…」
『それならば良いですっ氷河はほめてくれるので嬉しいですっ』
「龍も…」
「合意ならまぁ…」

 若干あの男も複雑そうですが恋人に甘い彼は断ることはせず。そこで、リアスが結界から出てきたときに出来た、人1人は通れそうな通路からレグナたちが顔を出しました。

「龍クーンもう終わり? オレぜんっぜん足んねぇんだけど」
「俺ももう少し手合わせ願いたいです」
「バトルロワイヤルしよーだってさ」

 呼ばれて、おそらくまだやるのかと呆れた顔をして。クリスティアに再度迷惑はかけるなと言ってから中へと戻っていきました。あなたも結構他人に迷惑かけていると思うのですがまぁいいでしょう。

 中で再びバトルロワイヤルが始まり、クリスティアがユーアくんを撫でているのを視界に入れながら、隣の人へ。

「途中刹那たちに目が行きましたが、なにか勉強になることありそうです?」

 種族や能力の種類の話、リアスたちのバトルロワイヤル。短い時間ではありますが濃密な内容に、向上心の高い彼には学ぶことは多かったはず。そう聞けば、閃吏くんはうーんと唸って。

「俺ももふもふになれば氷河さんと仲良くなれるかなぁ」

 予想した答えのだいぶ斜め上の答えが返って来て思わず笑ってしまった。ただ閃吏くんへの返答は、心の中にしまっておきましょう。

『おそらくさらに近寄られなくなるのでは』/カリナ