だってもう都合のいいように考えてるとしか思えない

2019-06-24

「来たか」
「お疲れ華凜…」
「ええほんとに…」

 カリナとレグナの妨害守護合戦が終わりに近づいた頃。リアス様と一緒にお昼前にいた場所で2人の演目を見てたら、校庭の真ん中に出たおっきなモニターに”14時30分よりミッション遂行走”っていうメッセージが出た。
 リアス様に集合場所まで送ってもらって、一緒に出る予定のカリナが来るまでリアス様とおしゃべりして。時間ちょっとぎりぎりのとこで、やっとカリナが来た。

「連続演目って中々鬼畜ですよね」
「まぁ1年で初めに終わったのが幸いだったな」
「あれ2年とか3年になったらもっときついよね…」
「来年は連続の演目にならないことを祈りますわ」

 心なしか疲れたようなカリナにもっかいお疲れって言っておいた。

「じゃあ俺は向こうに戻る」
「わざわざご苦労でしたね龍」
「別に。刹那、怪我するなよ」
「はぁい…」

 これから受付けもするからリアス様とは別れて、カリナと先生のとこに向かう。時間ぎりぎりなのもあってちょっと混んでた。

「1年2組の愛原と、1組の氷河ですわ」
「はいはい。じゃあこれ引いてね」

 100メートル走のときと同じように、先生に渡された箱からくじを引く。とりあえず後ろがつっかえないようにその場を離れて、みんなが並んでるとこに向かいながらくじを開けた。

「何番でした?」
「んっと、7…」
「あらまぁ、離れちゃいましたね」

 言われてカリナの方に向く。いつもみたいに笑って、カリナは番号をわたしに見せた。

「4…」
「場所もちょっと離れましたね」
「ん…」

 100メートル走の時はリアス様も陽真もすぐ近くだったけど、今回は離れちゃった。

「龍が飛んでこないといいんですが」
「さすがに番号わかんないし大丈夫でしょ…」
「他に知り合いで参加者さんはいません?」
「んー…」

 言われて見てみるけど。そいえばわたし、クラスの人ってほとんど知らないな。いっつもレグナと一緒にいるし。

「クラスの人わかんないから誰がいるとかわかんないや…」
「さすがに6月なんですから覚えましょうよ…」
「華凜は覚えてる?」
「まぁそれなりには」
「すごいね…」

 話しかけられたりすれば覚えるけど、自分から話しかけないからクラスの子は覚えてないや。

《これよりミッション遂行走を始めます》

 歩いてたら、受付をしてくれた先生がそうアナウンスする。

「あら。では刹那、行きますわね」
「ん…」
「何かあったら呼んでくださいな」
「わかってるよ…」

 若干リアス様化してるカリナに頷いて、ちょうど地面に7って書いてるとこで別れた。並んでるとこの一番後ろについてもっかい周りを見てみるけど、すぐそばに知り合いはいない。武煉も陽真もいなさそう。これ知ったらリアス様ほんとに飛んできそうだな。若干笑いそうになる。

《では演目の説明を始めます》

 吹き出しそうになるのをこらえて、先生を見た。

《ミッション遂行走は、一般の学校で言う障害物競走、借り物走を合わせたような種目になっています。走る距離は200メートル。その間20メートルごとに障害物やミッションが書かれた紙が用意されているので、各自それをクリアした上でゴールを目指してください。障害物、ミッション併せて全部で10個あります。ミッションでは借り物や撃破、騒動鎮静など様々ありますのでがんばってクリアしてください。判定が可でない限り前には進めませんのでご注意を》

 ルールは単純…。これならわたしでもできそう。100メートル走の二の舞はしない。

《なお、180メートル地点では全員に借り物ミッションが課されます。借りるものは同レース内では同じもの。たとえば第1レース目で”メガネをかけた生徒”と指定された場合、1レースにいる生徒はみなメガネをかけた生徒を連れてくること。レース毎に最後の借り物の内容は変わりますので第2レースではまた違う内容になります。借り物にかけられる時間は道中・ラスト関わらず5分。他ミッションはそれぞれ制限時間がありますので自分なりに工夫してがんばってください。ちなみに、この演目も妨害可能なので自身の能力を思う存分駆使し1位を目指してください。ただし自分のコースから出ることは不可とします。術やものを投げるなどして妨害に当たってください。ヒューマンは自身の武器がない場合は貸し出しもあるのでご安心を。以上、順にレースを始めていきます》

 先生はメガホンを置いて、銃を上に向ける。

《よーい》

 引き金を引いて。

《スタート!》

 合図と一緒に、レースが始まった。
 わたしの身長じゃちょっと目の前は見えないけど。もっと身長あればよかった。あとでカリナの見えるかな。

「スカート履いてる人いますかー!!」
「メガネかけてる男子ー!!」

 ぼんやり空とか地面とかに目を移してたら、始めの方で借り物に当たった人の声が聞こえる。あんなおっきな声出さなきゃだめなのか。

『誰か私と同種族はおりませぬかー!!』

 わぁこれは中々いなさそう。この学園広いからいるにはいそうだけど。探すの大変だろうな。

 なんて思ってたら。

「ね、氷河さん?」
「…?」

 突然肩を叩かれた。ちょっとびっくりして、後ろを振り向く。そこには、右目の下に雫のペイントをした、ピンクの髪の女の子。

「こんにちわ」
「…どなた?」

 名前を呼ばれはしたけど、わたしは知らない子。あれ、でも見覚えある気がする。うちのクラスだっけ? なんて思って聞いてみれば、その子はカラカラ笑った。

「あはは、やっぱりわからなかった!」
「うちのクラス…?」
「そうよ、道化。道化美織みちのかみおり。出席番号も近いんだけどな」

 名前聞いて、手であ、か、さ、た、なって順を追ってけば、ま行だから私の近く。全然知らなかった。

「ごめん…?」
「いいの、さっき討伐合戦で波風くんとも氷河さんは覚えてなさそうねって話してたから」

 本人のいないとこでなんて失礼な会話してるのあの幼なじみは。あとでちょっとお咎めしよう。今一旦それはおいといて、目の前、順番的には後ろの美織に聞く。

「美織はわたしの次…?」

 後ろにいたから、わたしと同じじゃないことは確か。そしたら、カリナとは違った明るい笑顔で答えてくれる。

「そうね、8番目。ていうか氷河さんは案外フレンドリーなのね」
「ふれんどりー?」

 首を傾げたら、また楽しそうに美織は笑った。

「いきなり下の名前で呼ぶのって中々なさそうだから」
「嫌なら上で呼ぶ…」
「あ、そういうのじゃないの。新鮮よ」
「そ…?」
「あなたの周りはみんな名字呼びじゃない?」

 たしかに。カリナは基本名字にさんとかくん付けだし、リアス様もレグナも名字呼び。

「下の名前の方が呼びやすい…」
「氷河さんらしいのね」
「そう…?」
「イメージは結構サバサバしてて面倒なのが嫌な感じかしら」
「サバサバしてるかはわかんないけど…。面倒が嫌なのはそう」
「当たった」

 にっこりとうれしそうに笑う。なんだろう、よく笑う子。カリナはお姉さん、って感じで笑うけど、この子は年相応? って感じで笑う。

「氷河さんはみんな下の名前で呼ぶの?」
「下の方が短そうなら下で呼ぶ…」

 あと嫌いじゃなければ。閃吏は上で呼んでるし。

「楽なのが好きなのね」
「上でさん付けとか長いし面倒じゃん…」
「それはまぁ確かに? でも高校に入ってからは”くん”とか”さん”付けるようになったわ」
「面倒じゃない…?」
「んー、どうかしら。女の子っぽくを目指したらそうなったわ」

 十分女の子らしいけど。かわいいし。

「でも別にわたしはさんとか付けなくていいよ…」
「あら、いいの?」
「ん…」

 頷いたら、美織はんーって悩んで。

「じゃあ刹那ちゃんね」
「ご勝手に…」
「はーい、よろしくね」

 また美織はカラカラと楽しそうに笑った。そんなに楽しいかな。不思議な子。

《第3レース、準備してください》

 美織と話してたら暇つぶせたみたいで、もうカリナの前。前に目を向けたら、ちょっと隙間からレースが見えそう。カリナのとこ見えるかも。

「ねぇ、刹那ちゃんたちは幼なじみなの?」

 聞かれて、美織に目を戻す。

「そう…」
「で、えーと炎上くんと刹那ちゃんが付き合ってる?」
「なんで疑問系…?」
「あら、知らない? 炎上くんがあなたたち3人と付き合ってるって噂」

 なにそのおいしい噂。カリナどうして言ってくれなかったの。絶対知ってたでしょ。

「知らなかった…」
「あとは1組ペアと2組ペアで付き合ってるとかかしら」
「あ、それは知ってる…」
「それが発展して炎上くんが全員と付き合ってる、ってことになってたよ」
「へぇ…」

 あとでカリナに問いつめとこう。なんでそう発展したのかはわかんないけど。

「実際波風くんのことはいいなって思ったことないの?」
「ないかな…兄妹みたいだし」
「結構波風くんもモテそうなのにね」
「モテてはいるんじゃない…? 告白とかされてたよ」
「やっぱり」

 あれ、なんとなく返してるけどこれもしかしてよくある女子トークってやつ? 恋愛トーク? リアス様たちとしか基本的に一緒にいないからこういう会話すごい新鮮。

「炎上くんは無条件でモテそうよね」
「顔だけは完璧だから…」
「中身は残念なのかしら」

 それはもう。楽しそうに笑う美織に一個ずつ言ってやろうかと思うくらいにはもう。そこでふと。

「…美織も、龍みたいのが好み…?」

 顔だけは完璧なリアス様。わたし的にはなんだかんだ性格も愛しているけれど。そこはおいといて、やっぱり顔がいいからリアス様もよく告白される。美織も好みなのかな。それは困る。

 そう思ったけれど、予想は外れて。

「んーん、あたしはかわいい顔が好みだから炎上くんは違う」

 結構ばっさり言った気がするけどちょっとほっとした。ていうかかわいい顔ってどんな顔? かわいいって言ったら閃吏みたいなタイプ…? まじか。

「まぁ仮にあたしが炎上くんを好みだとしても告白はしないかな」

《これより第4レースを始めます》

 あ、カリナのとこだ。目線はカリナのとこに向けて、美織には言葉を返す。

「そうなの…?」
「だって彼女にご執心じゃない? 恋人いる人に告白する気は元々ないけど、あそこまでご執心だとなおさらだわ」
「ふぅん…」

 走り始めたカリナに心の中で声援を送る。障害物を軽々乗り越えてくカリナは同じレースの人たちよりやっぱり速い。順調なら1番になれそう。

「個人的には波風くんの方が顔は好みよ」
「まぁ龍よりはかわいい系に入るもんね…」
「あの2人でって言われたらだけどね」
「じゃあ蓮も好みじゃない感じ…?」
「んー、そうね。ものすごくかわいい系かって言われたらそうでもないじゃない?」

 うん、カリナと似てるから若干女の子っぽさもなくもないけど。やっぱり男の子って感じはする。あ、カリナミッションに当たったのかな。テレポートしてった。

「じゃあ娘がつくくらいなかわいい男の子が好みってこと…?」
「んー、行き過ぎかな」

 美織の加減がわからない。なに、男の子らしさも残ってるかわいい顔ってこと? なおさらどんな顔。

「美織は現実に恋できなさそうなタイプだね…」
「あは、わかっちゃった?」

 当たっちゃったよ。

「二次元の男の子は好きなんだけどね。現実だと中々いないわ」
「美織の好みを探すのは大変そう…」
「そうなの。だから恋なんてしたことないわ」
「まじですか…」

 すごい恋多き女の子って感じするけど。人は見かけによらない。…あれ。

「華凜悩んでる…」
「あ、愛原さん? 今走ってるんだ」
「そう、もうラスト…」
「早いね!」

 さっきの借り物はなんか小物だったみたいで、すぐクリアしてゴール手前。でもラストで出されたお題で悩んでるみたい。あ、またテレポートしてった。決まったのかな。なんだったんだろ。

「そう言えば話戻すけど、刹那ちゃんと炎上くんはどのくらいの付き合いなの?」
「付き合い…?」

 もうカリナがゴール確実かななんて思って、ずっとカリナの方に向けてた目線を美織に戻した。

「恋愛的にってこと…?」
「そうそう」

 言われて、考えてみる。もうつきあい始めたのなんて太古の昔。でもさすがにそんな昔すぎるのは言えないから、あのころ今でいう「お付き合い」を始めた年齢を思い出す。えーと、付き合ってからあの日が来るまでそう長い時間も経ってないんだよね。告白されたのって今で言ったら高校途中くらいの年齢だっけ。わたしが16歳の誕生日にリアス様に告白されたから…。あれ?

 待ってその年齢だと今付き合ってないことになるな。

「えっと、だいたい中学2年くらい、だったかな…?」
「今で2年目くらいかぁ、恋人としては結構浅いのね!」

 さすがにその年齢のまま伝える訳には行かないので若干さばよんで伝えれば、嘘だとは気づかれなかったみたい。よかった。あとリアス様にも口裏合わせしとこう。

「すごいお互いのことわかってるよね」
「幼なじみ的に付き合い長いから…」

 そりゃ何千年も一緒にいればお互いのこと丸わかりだよね、って言うのは言わない。

「あたしたちから見ると淡泊そうに見えるけど、2人きりのときはやっぱりいちゃいちゃしているのかしら」

 のぞき込むようににやにやして聞いてくる美織。そんな淡泊そうに見えるんだ、っていうのはおいといて、首を振る。

「そんなに変わんないと思う…」
「あら。家だとキャラが変わって好きだとかお前を離さないっていう感じを期待したのに」

 二次元の見すぎなんじゃないかな。

「あんまりそう言うのも言わないよ…。龍は時々告白みたいの言うけど」
「刹那ちゃんは言わないタイプなのかしら」

 言わないタイプって言うか言えないんだけどね。

「まぁそんな感じ…」

 ほんとのこと言うともっと深く聞かれそうだからごまかしとく。それに、美織は「ふーん」って笑って。

「恥ずかしがり屋なのね、刹那ちゃんは」
「間違ってない…」

 結局あの日だって恥ずかしがって最期まで言えなかったし。引きずってここまで生きてるし。

「でも炎上くんはすごいのね」
「すごい…?」

 ちょっとネガティブに入りかけた手前で、美織の声で引き戻された。

「言わなくても伝わるのなんてすごいじゃない。理解されてるのね」
「ちょっとアレだからあの人…いろんなもの超越してるから…」
「チートなのかしら」
「やばいくらいチート…。たまに読心術でも持ってるのかなって思う…」
「あはは、今度聞いてみようかしら!」

 なんて笑いあってたら。

《第7レース、準備してください》

「あ」
「次ね」

 時間があっという間に過ぎてったみたいで、自分の番になった。

「刹那ちゃんありがと、待ってる間楽しかったわ」
「わたしも…。向こうで応援してるね」
「あたしはこっちで応援してるね。がんばって」
「はぁい…」

《よーい》

 話は切り上げて、美織と言葉を交わしてから、前を向く。人で隠れて見えなかったけど、結構な障害物がいっぱい。

「楽しそう…」

 やりがいがありそうだから、ほんの少し心が弾む。

《スタート!》

 銃声の音と同時に、走り出した。

「ほっ…」

 一緒のレーンにいた9人の人から距離を離して、初めに第1地点につく。走るのは得意だからこのまますんなり行けば1位になれるかな。そう思いながら、5メートルくらいのアスレチックみたいな高台に登って、その勢いのまま下に着地する。ここでつまづく人多そう。ハーフとかビーストなら楽だけど。

「ん…」

 ヒューマンがんばって、って心の中でエールを送りながら、第2地点につく。そこに置いてあるのは、紙。これがミッションかな。拾って、2つ折りにされた紙を開く。

”30秒以内に敵を10体討伐せよ”

「!」

 それを確認したと同時に、わたしの周りに簡易結界が張られる。その中に出てきたのは、今日はよく見るおどろおどろしい敵たち。

「討伐なら、楽勝…」

 襲っては来ないらしいその子たちに向けて、魔力を練る。捕縛は難しいけど、撃破なら得意。手をかざして、まとめて殲滅できそうな術を紡ぐ。

【弾けて。”氷刃リオートリェーズヴィエ”】

 敵の周りにはいっぱいの氷刃。かざした手を下におろせば、それは敵に発射されて。

「…終わり」

 砂埃が晴れた先には、もういない。結界の中に「○」って出たから、クリアみたい。結界もなくなって、また走り出す。

 向かった先には、わたしのレーンだけに3メートルくらいの池。

「…きれいに掘れてる…」

 むしろここだけ池ってどうやって作ったの。水もあるし。次の走者どうするの。このまま?

「えいっ…」

 まぁなんでもいいや。池なんて氷張っちゃえば簡単。手をかざして凍り付けにしてあげれば、そこはわたしにとっては他のレーンと同じ”道”。スケートするみたいに滑って、第3地点を越えた。

「で、また紙…」

 また走って第4地点。他の人と距離開いちゃってるから妨害くるかな、なんて思ったけど。周りは自分のミッションに必死だから。難なくここまで来た。ここにまた紙ってことは、アスレチックがあって、紙があってって交互なのかな。とりあえず置いてある紙を拾って、開く。

「…」

”銀髪の生徒を連れてくること”

 開いた紙を、閉じた。

 なに? 今銀って見えたよ? 金なら心当たりありまくりなんだけど。いや銀色も心当たりあるけども。え、見間違いだよね?

 閉じた紙を、もっかい開いてみる。

”銀髪の生徒を連れてくること”

 だめだ変わんねぇや。

「銀髪なんてあの人じゃん…」

 この前わたしが一方的に怒ってさっきお菓子もらってこれでチャラだねってなったけども。今なの? もう少しほら、運動会終わった後になんやかんやあってあのときはごめんねっていう展開じゃないの。心の準備なんてできてないよ。

「…!」

 なんて、その場でもだもだしてれば後ろから足音。それとよくよく見てみれば、紙には280って数字。たしか5分だっけ。5分以内に連れてくるんだっけ。とりあえず動かなきゃまずい。

「…行こう」

 まずはあそこから。決めて、テレポートした。

「刹那」
「あれ、借り物?」
「刹那ちゃんじゃん」
「さっそくですか氷河」

「2人もいたの…」

 リアス様とレグナがいるところに飛んだら、武煉と陽真もいた。

「ここの方が楽しそうだからさ」
「お邪魔してるんですよ」
「ふぅん…」

 男子4人の会話とか超気になる。あとでカリナとネタにしよう。

 って今はそうじゃなくて。

「何かあったか」
「うん…」

 座って聞いてくるリアス様に近づいていって。

 ガシって肩をつかむ。

「龍、今だけ銀髪になる気はない…?」
「全くもって状況が理解できないがする気はないな」

 ちくしょう。ダメ元できたけどほんとにだめだった。

「借り物で銀髪の生徒でも当たったんですか?」
「武煉正解…」
「銀髪ならいるじゃん刹那。龍のクラスに」
「知ってるよ…知ってる」

 リアス様なら今だけ銀髪になってくれるかもしれなかったじゃん。断られたけど。

「俺のところに来るだけ時間の無駄だったな」
「新しい髪色だって似合うと思うよ…」
「刹那ちゃん必死すぎるだろ」
「こちとら制限時間内に銀髪を捕獲しなきゃいけないんだよ…」
「捕獲になってるんですね…」
「ていうかそれこそここにいちゃだめだろ、その生徒のとこ行かなきゃじゃね?」
「ん…」

 苦笑い気味の2年2人組にそう言われるけど、駄々をこねるみたいにリアス様を揺する。それに、一つため息をつかれて。

「蓮」
「演目見たいタイプって言ってたからレーンの近くにいるんじゃない?」
「わかった。ほら行くぞ」

 レグナにそれだけ聞いて、リアス様は立ち上がる。手を引かれて、わたしも歩き出した。

「さっすが彼氏様ぁ、かっこいいじゃん龍クン」
「ああいうところは完璧なのになんで普段残念なのかな」
「そんなに残念なんですか…」
「蓮余計なこと言うなよ」
「はいはーい」

 後ろで茶化してくる3人にくぎを差して、リアス様はわたしに目を向ける。

「制限時間は」
「5分…残りあと3分くらい…」
「なら飛んだ方がいいな。さっきいた地点の近く」
「ん…」

 指定されて、魔力を練る。2人同時に、その場を後にした。

「ほらいたぞ」
「嘘でしょ」

 テレポートで、第4地点の観客席に飛んだら先にもうリアス様がいて。いつもみたいに服の裾をつかめば、ある方向を指さした。

「ほんとだ…」

 指さした方向を見れば、ちょうど第5地点らへんに見覚えのある銀髪翡翠の人。探すの早すぎでしょ。どんだけ目いいの。こっからその地点まで一応20メートルくらいあるよ?

「時間ないんだろう、行くぞ」
「リアス様も行くの…?」

 歩き出すリアス様の裾を反射的に引っ張ったら、足を止めてこっちを見る。その目は当たり前って目。

「お前1人だとリタイヤになりそうだからな」

 ありえそうだけども。なんでわかってるんだろ。伝わってるって言うのは長年の付き合いでわかってるけど、その理解力はたまに疑問。たぶん聞いたら「何年一緒にいると思ってる」って言いそうだから聞かないけど。時間も決まってるし、歩き出すリアス様に続く。

「閃吏、少しいいか」
「あれ、炎上君に氷河さん」
『また会いましたなお2人方!』

 ちょっと早足で向かえば、お目当ての銀髪、閃吏と、仲良しらしいユーアがいた。もふもふしててかわいいんだけど今はそうじゃない。

「ほら刹那」
「ん…」

 リアス様の後ろに隠れるようにしてたら促される。ちょっと前に出て、閃吏の前に立って。紙を見せた。

「銀髪の生徒…俺?」
「何も言わずについてきて…」
「そうじゃねぇだろうが」
「あたっ…」

 どうしても出してしまう不機嫌っぽさのままぶっきらぼうに言ったら、リアス様に頭を小突かれた。わかってるもん。でも言葉は出なくて。小突かれた頭をさすってもだもだしてたら、閃吏が笑った。

「あはは、俺ご指名ってことでいいのかな」
「頼めるか」
「もちろん」
「刹那」
「………お願い、します」

 閃吏の服の裾をつかんで、小さな声で言った。そしたら、閃吏はわたしの目に合わせるようにしゃがんで、笑う。

「喜んで。行こっか」

 優しく笑う閃吏に頷いて、裾を引っ張って走り出す。紙を見れば、残り時間は120秒。

「えっと、時間大丈夫?」
「ん…」

 そんなに遠くないし。いつもよりは遅めだけど、たぶん普通の人には速いわたしのペースにも着いてきてるし、大丈夫。

「ここでいいのかな」
「ん」

 お互い無言で走れば、すぐ第4地点のわたしのレーン。裾を持ったまんまその場にとどまること数秒、頭上には「○」の文字。

「あ…」
「おっけーみたいだね」
「うん…」

 閃吏を見て頷けば、にっこり笑う。美織もそうだったけど、ここの人たちは笑う人が多いなって的外れなことを思った。

「じゃあ俺戻るね、氷河さん」
「あ…」
「ん?」

 ○も出たからってその場から離れようとする閃吏の裾を、また引っ張る。優しい顔で振り返った閃吏に、ちょっと言葉が詰まるけど。

「あ、の…」

 言わなきゃ。言えることくらいは、きちんと。息を吸って、口を開く。

「あり、がと…あと、あの、…ごめんなさい……いっぱい、怒って…」

 たぶん、わたし不安そうな顔してる。思いを伝えるのは苦手だから。でも言わなきゃ。リアス様もチャラにって言ってたし。

「ごめん、なさい…」

 もっかいそう言ったら、閃吏はさっきみたいにわたしに視線を合わせるようにしゃがんで。

「じゃあお互い様ってことで、この話はこれで終わりにしよっか」

 そう優しく笑う。その雰囲気が、どこかリアス様に似てる気がした。優しくて、包むような雰囲気。思わず、頷く。

「これからは仲良くできるといいな」
「それは、また、考える…」
「そっか」

 閃吏は笑って、じゃあって言う。そうだ演目中だって思い出して、手を離した。

「がんばってね氷河さん」
「ん…。あ、お菓子…おいしかった」
「よかった。じゃあまたね」
「ん…」

 そう言葉を交わして、閃吏が走ってったのを見届けた。

「リアス様…」

 その方向に、リアス様もいる。閃吏と言葉を交わして。

「!」

 わたしと目が合った。びっくりしたわたしにほほえんで。テレポートで消えてく。

「…」

 なんとなくその感じが誉めてるような感じで。これでよかったのかなって思いながらまた走り出した。正しかったのかはわかんないけど。
 これで終わりってなったから、きっと大丈夫だよね。あとでリアス様わたしの頭撫でるんだろうな。がんばったなって。がんばってないけど。目の前の平均台をペースを変えずに走りきって、また下に置いてある紙を取った。

 瞬間。

「!」

 魔力を感じて、飛び退いた。直後に、目の前に水の柱。

「びっくりした…」

 今ものすごくいい話の流れだったじゃん。すごいびっくりした。ほっとしてたからなおさらびっくりした。そう言えば妨害ありだった。忘れてた。

「あの人…?」

 前にはまだ誰もいない。から後ろを向く。わたしの隣のレーンにいたケンタウロスみたいなビーストが、わたしに向けて手をかざしてた。あの人か。場所的には第4地点と5の中間くらい。他も続いてるかな。やられたらやり返すのが基本。1人やるなら全員まとめて。後ろ全員巻き込んじゃお。その前に。

 さぁどうしようか。

 妨害だから、けがはだめ。たとえばこの辺一帯の地面を氷にしたら? 楽だけど滑ってけがしちゃう可能性高そう。なんだろう、妨害ってどこまでが妨害? 攻撃はたぶんだめ。なんかこう、乗り越えられそうででも邪魔って感じなのかな。あのカーレースのバナナみたいな? 難しい。基本討伐派だし。でも早く決めないと。向かってきてる。

氷狼リオートヴォールク

 指を鳴らして、そう唱える。そしたら、わたしの周りにはいっぱいの氷狼。もふもふはしてないけれど、かわいい子たち。

「遊んでおいで」

 その子たちに命令を出せば、一斉にかけだした。

「うわ、なんだ!?」
「じゃれつかないでー!」

 命令通り、1匹1人を担当して、氷狼たちは遊んでくれる。その隙をついて、次のお題。

”真ん中を狙え”

 開いて確認したと同時に、結界。次の地点との中間くらいまで結界が張られて、奥に的。

「的当て…」

 リアス様の方が得意そうなんだけどな。目いいし。わたしも別に悪い訳じゃないけれど。

【リグレット】

 名前を呼んで、愛銃を出す。リアス様と構造を覚えて、わたしが氷で作ったお気に入り。銃口を向けて一点集中。よく狙って。

 撃つ。

「おーわり…」

 確認しなくても真ん中。よく的当てで言ったら100点のとこを打ち抜いたのがわかって。結界が解ける前に走り出す。その間に頭上には「○」って出て。案の定結界が解けた。
 後ろをちらって見れば氷狼が戯れて足止めもできたみたい。そのままずっと妨害はさすがに勝負にならなさそうだから、指を鳴らして解いてあげる。たぶんまた必死に追い上げ計るだろうから妨害は来ないかな。ヒューマンの武器はもちろん、術だって、的が遠くにいればいるほど当てにくい。妨害受けるのは面倒だから、今のうちにスピードを上げた。

「…ここ、ラストかな…」

 おっきな跳び箱を越えて、運良く被った討伐ミッションを一瞬で終わらせて。どうやって作ったのかわかんないけどわたしのレーンだけ足場が少ない地面もパパッと越えて、10個目の地点。ラストのところ。後ろは跳び箱でつっかえたり、ミッションが騒動鎮静で手こずってたり。追い上げは来てるけどまだ平気そう。さっさとここ終わらせれば1位。

 なんだけど。

「なんもない…」

 その地点についても、紙はなかった。そう言えば違うレースの人のラストは見てなかったな。なんか特別なのかな。まさかの全員そろわなきゃだめな感じ? いやそれはないか。競争だもん。

「!」

 とりあえず足を進めてみたら、目の前に煙幕。ちょっと飛び退いて、それが晴れるのを待つ。

「…長老犬…?」

 晴れて見えたのは、ものすごくおじいちゃんな真っ黒犬のビースト。ヴァーチャルかな。なんかよぼよぼしてるけど大丈夫? この人運んで来いよみたいなお題? そう思ってれば、おじいちゃん犬は口を開く。

〔よくぞここまでたどり着いた…。ぬしに最後のみっしょんを与えよう…〕

 わぁRPGのラストみたい。

「何すればいいの…?」

 おじいちゃん犬に目を合わせるようにしゃがんで、首を傾げてみる。楽なのがいいな。じっと見つめ合ってたら、おじいちゃん犬が口を開いた。

〔主のもっとも大事な部分をさらけ出すのじゃ〕

 それこの公衆の面前でやって大丈夫なやつ??

「大事な…部分…?」

 どうしよう腐ってるのかな、R指定がつきそうな想像しかできない。だって言い方悪くない? 明らかに現代高校生が勘違いしちゃいそうな言い方してない? わたしが変なの?

〔主のもっとも大事な部分をさらけ出すのじゃ〕
「二回も言わなくていいよ…」

 わかってるよ内容は。

「…質問おっけー?」
〔内容によっては答えてやれるぞい〕
「大事な部分って…?」

 思いっきり核心だけど。ヒントみたいなのがほしい。今のままだといけない。そしたらおじいちゃん犬は表情変わらず、ゆっくり口を開く。

〔生物には必ず大事な部分というものがあるであろう…〕

 そう言う風に言われると思いっきり変な想像しますけど大丈夫ですかこれ。

〔なにもそれは体だけではない…〕
「最初からそれ言おうよ…」
〔心、体…主が生きてきた中で大事だと思う部分をさらけ出すのじゃ…〕
「心、体…」

 言い方にものすごく語弊があるけど、要は大事なものを持ってこいってことでいいのかな。生きてきた中で、心でも、体でも。自分の一部になるくらい大切なもの。それを見せろってこと?

「…わかった」
〔制限時間は5分じゃ〕
「ん」

 300って書かれた時計を渡されて。それがカウントダウンを始めたと同時に、またテレポートで飛んだ。

 わたしの大事な一部分なんてたった一つ。

「今度はどうした…」
「また借り物? 忙しいね刹那」

 飛んだところは、またリアス様のところ。さっきのこともあって、リアス様はちょっとあきれ顔。

「ラストはみんな借り物なんだって…」
「ああ、そうみたいですね」
「結構難関だって去年のヤツら言ってたよな」
「で? 今度のお題はなんだ」
「ん…」

 リアス様の前で座って。

「大事な部分をさらけ出せと…」

 言った瞬間、みんなが吹き出した。うん、気持ちは分かる。

「お前はそのさらけ出す許可でも取りに来たのか…?」
「違う…。来て…」

 事情はあとにして、リアス様を引っ張る。

「自分じゃなくて龍の大事な部分でもさらけ出すの刹那ちゃん」
「それはさすがに…公衆わいせつになっちゃうよ…」
「いやどっちがやってもそうなりますけどね」

 あ、たしかに。じゃなくて。

「とりあえず来て…恥ずかしいから」
「待て何させる気だ」
「何もしなくていい…」
「何もしなくていい大事な部分をさらけ出すとはどういうことだ…?」
「時間ないから飛ぼう…?」
「説明を頼みたいんだが」
「行きながら説明してくれるだろ、がんばれ龍」
「まじでか」

 ぐいぐい腕引っ張ってたら、レグナが助け船出してくれて、仕方なさそうにリアス様は立ち上がる。ぐっじょぶレグナ。説明はしたいんだけど向こうに行けばリアス様もわかる。今ここで言ってたら時間のロスだし二度手間。

「いこ…」
「わかったから。ゴール前のところだな?」
「そう…」
「刹那ちゃんのために頑張れよ龍」
「あとで感想聞かせてくださいね炎上」
「黙ってろ」

 促して、2人でテレポートをする。今日は茶化されてばっかりだねって言おうとしたけどわたしのせいかって思い至ったから口は閉じておいた。

「で? 俺はどうすればいいんだ」
「こっち…」
〔来たか…〕

 2人でゴール前のとこに飛んで、リアス様の腕を引っ張っておじいちゃん犬の前に行く。渡された時計の秒数は200。うん、十分。

「持ってきた…」
〔それが主の大事な部分か…〕
「そう、心の方でも、体の方でも、一番大事な部分…」

 もしも、この世で大事なものを聞かれたら。

 自分より先に浮かぶ、リアス様と双子。その中で、一番大事なものって聞かれたら。

 一番大好きな、リアス様。

〔主の命よりもか〕
「ん」

 まっすぐ目を見て、頷く。おじいちゃん犬も頷いて。

〔では如何にしてその”大事”を証明する〕

 言われた言葉に止まった。

「証明…?」
〔主の命ならば大事だということは明白。しかし他人となると判断は難しい。如何にしてその”大事”を儂に証明する〕

 ミスった、ここで証明くるなんて思わなかった。

「数学の証明みたいのじゃだめかな…」
「今ここで合同だなんだって証明されても困るだろう…」

 確かに。なんだろう、証明。大事なものって言う証明。恋人だからキスみたいな? だめだ無理だ。しかもそれは恋人の証明であって一部分として大事っていうことかどうかわかんない。

 自分の中の”大事”の証明。

 なんだろう。

 時計を見たら、残り110。時間もない。頭が回んない。どうしよう。

「刹那」
「はいっ、え、わっ…」

 若干パニックになってたら、体が浮く。反射的にその人に視線を移せば、いつもは見上げてるリアス様の顔が、下にある。

「りゅう…」

 その顔を見て、ちょっとほっとした。リアス様はそれを見て、口を開く。

「答えなんて簡単だろう。最も大事なものが壊れたら、お前はどうする」

 言われて、少し冷静になった頭で、考える。

 もしも。
 もしも大事なものが、リアス様が壊れちゃったら。修復不可能な状態になったなら。

 この世からいなくなって、もう逢えないんだとしたら?

 ーそんな世界に意味なんて、あるんだろうか。

「わたしは…」

 陽真の時にあなたが言ったように。お互いがいない世界なんて意味はない。あなたがいてくれるのなら、たとえ地獄だってその世界は色づく。

 そう、答えは簡単。迷う事なんてなかった。

 利き手に愛銃を出して。

 その銃口を、心臓に当てて、おじいちゃん犬の目を見据える。

「この人がいなくなるなら、自分で心臓を撃ち抜いて地獄でも追いかける…」

 ハンマーを引いて、今すぐでも撃ち抜けるように、トリガーに指をかけて。少しずつ力を入れていった。覚悟が伝わるように。

 それを、あと少しで引ききる直前。

〔よろしい〕

 おじいちゃんの声がかかった。その声に、トリガーから指を離す。

〔主の覚悟はわかった〕
「いいの…?」
〔その引き金が引かれた瞬間にそこの小童に殺されそうじゃからのぅ、引き金を引く力も見て、主の覚悟も嘘ではなさそうじゃ。クリアとする〕

 リアス様と目を合わせてクリアしたことを飲み込んで。降ろしてもらった。

〔この紙とその小童を連れてゴールに向かうとよい〕

 時計を返したついでに渡された、「済」ってはんこが押された紙を受け取って、頷く。そしたらおじいちゃん犬はちょっと笑って、消えてった。

「消えた…」
「行くぞ」
「ん」

 いつも通り自然に手をつないで、走り出す。後ろを見てみたら、やっぱりおじいちゃんのとこでつまづいてる人が多かった。あれ絶対難しいよね。がんばってってエールを送って、前を向く。いつも見る、リアス様の背中。

「1位だね…」
「よかったな、体育祭中に1位になれて」
「100メートル走だって1位の予定だった…」
「あれはお前が勘違いしたから悪いんだろう…」

 あきれた声してるけど、どこか機嫌が良さそうなリアス様となんだかんだぶっちぎりでゴールを果たした。そのまま係員のお姉さんのとこにいく。

「これ…」
「はい、確認しました! お疲れさまでした」

 もらった紙を確認してもらって、走った人が並んでるところに向かえばカリナが手を振ってるとこが目に入る。同じ1位の旗。カリナも1位だったんだ。

「カリナと一緒に帰って来いよ」
「わかってる…。…ねぇ」
「ん?」

 そこに向かって歩き出そうとする前に、まだ機嫌が良さそうなリアス様に声をかけた。

「なんか、機嫌良さそうだよね…」
「そう見えるか」
「ん…」

 顔はそんなに変わんないけど。雰囲気がすごく機嫌良さそう。答えを知りたくて待ってたら、それはそれはきれいにほほえんで。

「そりゃあれだけ大胆な告白をされれば機嫌もよくなるだろうな」

 そう言って、リアス様はわたしの頭を撫でて、去っていった。その後ろ姿を見つめる。

 なんて言った? 告白?
 わたし告白なんてしたっけ。好きなんて言ってないけど。

「あれって告白なの…?」

 とりあえず見送って、カリナのとこに向かう。

 うん、リアス様の基準がいまいちよくわかんない。でもよくよく考えれば遠回しに”この人大好きです”って言ってるような感じか。いや大好きだけども。あの言葉だって大好きだから、愛しているから出た言葉だけども。

 いつも思うけどよく伝わるよね。あの人の頭の中ってどうなってるんだろう。美織とも話してたけどほんとに読心術とか持ってるんじゃない? 閃吏とのことちょっと解決したとかもわかってたし、嫌いだけどでも、認めてる部分があるって言うのもたぶんわかってるし。なんなの。あ、でもいきなりの行動だとびっくりするから読心術とかじゃないのか。わたしの言葉の理解力がやばいよね。ていうか変換機能がやばいよね。「嫌い」って言ったら「愛してる」って伝わるし。どう解釈したらそんな風に変換できるんだろ。

「お疲れさまでしたわ刹那」
「華凜…」

 考えながら歩いていって、一位だったカリナの横に座る。

「どうかしました?」

 考えてるのが顔に出てたみたいで。カリナがのぞき込むように聞いてきた。

「華凜は、わたしが嫌いって言ったらその、恋愛的な意味に変換できる?」
「嫌いを愛してる、ということですか?」
「そう…」
「まぁ嫌よ嫌よも好きの内、と言いますからできなくもないんでしょうけど…。正直突然言われたら変換はできないですね」
「そっか…」

 やっぱわかんないよね。じゃあ、

「龍の脳内変換機が壊れてるのか…」
「何があったのかはわかりましたがとりあえずあの男の壊れていない部分を逆に聞きたいですよ」

 そう笑いあって話してたことをあとでリアス様に言ったら「喧嘩売ってるのか」って怒られた。

『だってもう都合のいいように考えてるとしか思えない』/クリスティア

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