1日目・トランプ大会

 名目・強化合宿一日目。レグナがお送りします。

 全員で十時過ぎ位に起きて、朝昼兼用の飯を食い終わりさぁ何をしようかとなった十三時。

「トランプ、チェス、スゴロク、お題サイコロ、あとはレグナが持ってきてくれたゲームが数点ですね」

 ゲームが入ってる袋やらバッグやらを開けて、全員で今できるゲームを確認する。強化合宿じゃなかったっけっていう疑問はこの幼なじみ’sには通用しないからもう気にしない。

「何やる?」
「トランプ…」
「チェス」
「ではスゴロクで」

 うわすげぇバラバラ。

「意見まとめて」
「ならトランプでいいんじゃないか」
「私はクリスティアがやりたいものがいいです」
「なんでカリナは最初にスゴロクって言ったの?」

 時々意味のわからない妹にツッコみつつ、全員一致のトランプを手にして他のものを一旦片す。リアスは向かい合い、右にカリナ、左にクリスティアと四人で輪になって座り、トランプを開けた。赤い裏地のトランプを取り出して、適当に切り始める。

「ゲームは?」
「私はババ抜きで」
「ポーカー」
「…神経衰弱」
「だから意見まとめて!?」

 なんで悪事を働くときには異常なまでに息がぴったりなのに、こういうときでは合わないの。ひとまずそれは黙っておいて、十分に切り終えたトランプを配っていった。

「とりあえずババ抜きでいい?」
「ジョーカー抜いたか?」
「抜いた」
「…同じ色? 同じ数字? 同じマーク?」
「クリスは今までどんなババ抜きをしてきたの?? 同じ数字だよ」

 四人分配り終えたところで、手札を見る。同じ数字を捨てていって、俺が六枚、クリスティアが七枚、リアスが五枚、カリナが九枚……カリナ多いな。

「全部捨てた?」
「準備オーケーですわ」
「いつでも」
「…だいじょうぶ」
「んじゃじゃーんけーん」

 ほいっとみんなで手を出せば、勝ったのはリアス。時計回りが楽だからということで、リアス→カリナ→俺→クリスティアの順。

<ゲームスタート>

「「「「……」」」」

 一周目。四人無言で引いていく。全員ペアが見つかったらしく、揃ったカードを山へ捨てた。

「クリスティアがなかなかそろい辛そうですわねー」
「リアス三枚だもんな」
「そして俺はカリナの手札が多いから揃えやすい」
「…わたし、不利…」

 相手の手札から引いて、揃ったら山へ捨てていく。クリスティアはリアスの手札が少ないから不利と言うけれど、なんとなく彼女が不利なのはリアスの手札だけじゃないよなと思う。

「…」

 それはクリスティアがリアスの手札からカードを一枚引いたとき。

「…!」

 あからさまに、彼女の纏う空気が変わる。ショックのような、衝撃のような、そんな感じ。

「大丈夫かクリスティア。俺の手札からカードを引いた後から雰囲気が違っているが」
「…なんでもないもん」

 そう強がっては見るけれど、明らかに悔しそうなクリスティアに思わず苦笑いがこぼれた。

 もちろん表情は変わらない。でもこう、なんだろう。嬉しいときは後ろに花が見えて、悲しいときはマンガであるようなどよんとしたものが見える。本人はわからないようにしているけど、申し訳ないがこっちにはバレバレだ。

 だから今俺は彼女がジョーカーを持っていることを知っている。

「えーと」
「…!」

 俺がクリスティアの手札からカードを引く番が回ってきて、左から二番目のカードに手をつける。すると、彼女の周りには花が舞った。

 あ、これジョーカーか。

 試しにその右隣に手を移せば、表情は同じだけど悲しい空気が漂う。どうやら普通の数字カードらしい。

「……じゃあこれで」

 スッと抜き取ったのは、一番初めに手に取ったジョーカーのカード。裏返して見れば、本当にジョーカー。いやわかりやすすぎるだろ。

「…♪」

 ふとクリスティアに視線を移せば、ジョーカーが去ってとても嬉しい模様。うん、俺にはこの子に悲しい顔はさせられないわ。大人しく手札にジョーカーを混ぜた。

「!」

 そして俺のジョーカーはカリナが持って行く。ラッキー。にこにこはしてるけどほんの少し”あっ”て顔をしたのは見逃さない。勝ち誇った顔になりそうになるのをなんとか抑えて、自分の出番を待った。

「リアス、上がりませんねぇ」

 引いて捨てての繰り返し。みんなの手札が減ってきて、俺が二枚、カリナとクリスティアが三枚ずつ、リアスが一枚。

「中々合わないからな」

 リアスは最後の一枚にはなるけれど、上がることはない。ババ抜きって最後になってくると合わないよね、なんて話しながら、また引いていく。

「あら、合いませんわ」
「残念だったな」
「えぇまったく」

 隣で揃ったり揃わなかったりでうんうん唸ってるクリスティアを見てから、目の前の親友と妹を見る。こうして比べるとカリナもリアスも本当に顔が変わらないよなぁ。無表情のリアス、にこにこしてるカリナ。対照的だけど、ポーカーフェイスなのは一緒だ。さっきは自分の手札から持ってかれたからわかったけど、初めは誰がジョーカー持ちかなんてわからない。今もだけど。とりあえず隣のクリスティアではないことは確か。ということは今のところ俺にジョーカーが回ってくることはないので、安心してクリスティアのカードを引こうと手を伸ばした。──お?

「クリスあと一枚じゃん」
「ん」

 また選んで引こうと思ったら、クリスの手札は一枚になっていた。唸ってることしか気付かなかったわ。ってことは、これ俺が引いたら……

「上がった…」

 クリスティアが一抜け。

「よかったですねクリスティア」
「ん」

 最後のカードを彼女の手から抜き取ると、勝利というようにクリスティアは両手をあげた。恐らく全員がさりげなくクリスティアを勝たせるようにしたであろうことは本人には黙っとこう。嬉しそうだし。

 ──ん? 待って? クリスティアが一抜けしたってことは……。残った二人を見据える。

「俺お前らの相手??」
「ですねぇ」
「マジか」

 ひとまずジョーカーはこの二人のどっちかなわけで。俺持ってないし。二人ともポーカーフェイスすぎてわかんねぇよ。特にリアス。

「では続きと参りましょうか」

 とりあえず、一番の難関のリアスがジョーカー持ってないことを祈って、ポーカーフェイス二人に立ち向かうことにした。

「……」
「……早く引け」
「待って悩む」

 そんなこんなしてる内に俺がリアスからカードを引く番が回ってきてしまいまして。リアスの手札は三枚、俺は一枚。仮にリアスが俺のペアのカードを持っていればあがりなわけで。透視する気迫で、カードを睨みつけた。

「潔く引いた方がいいだろう」
「だって俺がペア引いたらお前負け確定だもん絶対引きたい」
「”だもん”じゃねぇよさっさと引け」
「うー……絶対上がってやる」

 どんなに睨みつけてもカードは見えないわけでして。リアスの言うとおり潔く行くかと意を決し、リアスの一番右端のカードを引っこ抜いた。
 ただ、このとき俺はすっかり忘れていた。

 ──自分がフラグ回収者だと。

「ジョーカー持ってたのお前かよ!!」
「そして引いたのはお前だ、残念だったな」
「あらあら」

 見事にジョーカーを引いてしまった。思わずカードを叩きつけたくなるが、勝負はまだ決まっていない。シャッフルでジョーカーをわからなくして、再び勝負に臨んだ。

「……お前らどんだけ強運なんだよ……」
「残念だったな」
「運も実力のうち、ですよ」
「くっそ」

 あの後も攻防を続けるがやつらはジョーカーを引くこともなく。最終的に俺が負け。今度こそカードを床に叩きつけた。こちらを向いたジョーカーがあざ笑っているようでムカつく。なんであのとき三分の一の確率で引くかな。ちくしょう。

「では負けたレグナにはこれを」
「は? 勝った人がご褒美じゃ──って何そのBOX」
「お仕置きBOXです」
「罰ゲームBOXじゃなくて??」

 叩きつけたのと一緒にトランプを片していれば、カリナがスッと黒いBOXを出してきた。それ今どっから出した。ていうか負けた上にさらにお仕置きされるってどういうこと。疑問がどんどん出てくる間にも、カリナはもう一つの白いBOXを持ってきてクリスティアに差し出す。

「勝者にはこれを」
「…ごほうびBOX」
「お前わざわざ両方作ってきたのか」
「楽しめるかと思いまして」

 いや敗者楽しめない。でも負けてしまったので大人しくBOXに手を入れて一枚カードを引く。紙を見れば、達筆なカリナの字でこう書かれていた。

 ”リアスと就寝(レグナ専用)”

「レグナ専用って何!?」
「見たとおりですが」
「さりげなく俺も巻き込まれているんだが? というか貴様まだ諦めてなかったのか」
「私だってクリスティアと寝たいんですもーん。あ、実施日はゴールデンウィーク中で」
「「勝手に決めるな」」
「恨むなら罰ゲームになったレグナを恨んでください」

 見事罰ゲームになった自分をとても恨む。ていうか、

「数ある紙の中で”レグナ専用”引くのってどんだけだよ……」
「そのBOXは全部レグナ専用ですよ。引いたときわかりやすいように書いてあるだけです」
「待って」
「では次のゲーム行きましょうか」
「カリナさん待って!!」

 俺のその声は妹に届くことはなかった。

<ポーカー>

「次はポーカー行きましょうか」
「俺今度は絶対負けない……」
「俺も」
「わたしも…」

 さっきのでだいぶテンションが上がったのか、全員やる気満々だ。

「ちなみにクリスは何引いたの? ご褒美BOX」
「リアス様が甘いもの買ってくれる券…」
「なぁ何故さりげなく俺を混ぜる?」
「恋人からのプレゼントはうれしいと思いまして」
「さっきの仕置きBOXは」
「三位も多少なりともペナルティがあった方がおもしろいかと」

 リアスが一位で俺がビリだったときはなんて言うんだろうこの異常に口が回る妹は。口には出さないけど。カードを切って、中心に置く。

「チェンジは?」
「一回でいいだろう」
「普通のルールだとおもしろくないですし独自ルールでもやります?」
「独自、ルール…?」

 なんだろう、カリナが口を開くと嫌な予感しかしない。

「一位の方はもちろんご褒美BOX、それとは別に、ノーペアの方はお仕置きBOXを引くのはいかがでしょう」
「…楽しそう」
「いいんじゃないか」
「お前ら一応自分の身に降りかかることわかってる?」

 お仕置きBOX見る感じ巻き込まれ事故が多発しそうなんだけど。まぁでもペアがあればBOXは回避。何回かはしのげるはず。フラグよ立つなと念じつつ、五枚ずつカードを引いた。

「準備はいいですか?」

 チェンジが必要な人は終えた後。カリナの言葉に頷いて。

「では、せーの」

 かけ声で一斉にカードを出す。

 俺:ワンペア
 カリナ:ツーペア
 クリスティア:スリーカード
 リアス:ロイヤルストレートフラッシュ

「リアスすげぇ」
「ロイヤルストレートフラッシュって確率ものすごく低いですよね」
「チェンジしたら揃った」
「マジか」
「ではリアスはご褒美BOXですね。お仕置きはなしで。BOXの中身は夜に一斉開封にしましょうか?」
「さっき開けちゃったけど」
「それは初回なので。内容によってはチェンジの声が殺到しそうですし」
「チェンジの声が殺到しそうなもの入れてんの??」

 どうしよう中身が不安。

「では二回戦。いきますよー」
「…せーの」

 まぁ罰ゲームだしと割り切り、もう一度切り直して、準備を整える。んー、今回は引きが悪い。でもチェンジはしたしもう変えられないから、クリスティアの掛け声で手札を見せる。

 俺:ノーペア
 カリナ:ノーペア
 クリスティア:ストレート
 リアス:ロイヤルストレートフラッシュ

 双子がノーペアか。罰カード一枚ならまぁいいか。それよりも、

「リアスすごくない??」
「確率の壁を越える男ですか」
「なんだその言い方は……」
「クリスも中々引きいいですよね」
「ん、でも一位になれない…」

 なんとなくリアスの引きに疑問がありつつも、各々がBOXからカードを引いて、第三回戦をする。

「これ何回戦まで?」
「人数分で四回戦でいいんじゃないですか?」
「おっけー」
「いくぞ。せーの」

 あ、今回は結構いい引きかも。あわよくば一位を狙って、リアスの掛け声で手札を見せた。

 俺:スリーカード
 カリナ:ワンペア
 クリスティア:ノーペア
 リアス:ロイヤルストレート──

「ストップ」
「どうした」
「リアス、イカサマしてない?」
「していないが」
「なんでこんなにロイヤルストレートフラッシュ連発なの」

 三回連続なんて奇跡すぎるだろ。

「さすがにすごいですわね……」
「トランプはこれしかないしイカサマはしていない。が」
「が?」
「いつ何時クリスティアに何があっても運良く守れるように常に幸運上昇ラックアップはかけている」
「そういうのをイカサマって言うんだよ、解け」

 リアス、イカサマによりご褒美BOX没収。

<神経衰弱>

 トランプ三戦目、神経衰弱。独自ルールとして、ペアミス三回でお仕置きBOXから一枚引くこと。順番は面倒なのでさっきのババ抜きと同じ、リアス→カリナ→俺→クリスティア。最初はやっぱり揃わないよなぁとめくってはまた裏返す。ちなみにリアスのラックアップは解かしたので標準モード。

「あった…」

 そこで真価を発揮したのは、まさかのクリスティア。俺たちがなにげなくめくって裏返したカードを覚えて、確実に取っていく。

「……クリスすごいね?」

 めくる回数が多くなるほどカードは取れる。けど、それは覚えていればの話で、もちろん間違える確率だって高くなる。だけどクリスティアは間違えることなくカードを取っていった。せっかく覚えた場所もとられていくので俺たち三人は間違えるばかり。そしてクリスはそこを覚えてさらに取っていく。悪循環だ、ていうかこの子の記憶力はどうなってるの?

「記憶は得意だからな」
「いやこの記憶力は異常でしょう。私偶然で取れた一組だけですよ」
「俺も」
「写真がない時代に風景を思い出に残したいとかで、帰ってきたら紙にその風景を描いていたからそれのおかげじゃないか」

 なにそれ初耳。そりゃ記憶力もよくなるわ。

「3はこっち」

 その間にも、クリスティアはどんどんカードを取っていく。6は向こう、とかキングはここ、とかそこめくったところだっけ? ってとこも全部覚えてる。

 あっという間に場のカードはなくなっていって、残り四枚。俺とカリナは二組ずつ、リアスが四組、クリスティアが十七組。クリスティアの勝利は確定。そして現在クリスティアの番なので、当然のことながらその残り二組も取っていく。全部で十九組。

「おめでとうございます、クリスティア」
「楽しかった…」
「俺神経衰弱は苦手だわ」
「クリスティア相手だと本当に嫌になるぞ。全部持って行かれる」
「それは嫌になる」

 リアスでも勝てないものあるんだなぁと思いながら、クリスティアがご褒美BOX、俺たち三人がお仕置きBOXからカードを引いて、テーブルのカード置き場に伏せて置いていった。

 今のところクリスティアがご褒美二枚、お仕置き一枚。俺とカリナがお仕置き四枚。リアスがお仕置き二枚。

「意外とクリスティアが優勢だな」
「リアスはイカサマ使わなければよかったんですがね」
「常時つけていれば忘れる」
「初めに確認しとけばよかったね」
「次は勝つから安心しろ」
「なにその自信」

 また全員で座って、カードを切る。最後は7並べ。うわぁリアスが得意そう。

<7並べ>

 全員にカードを配り終えて、何故か俺が7を全部持ってたので並べていった。手札が減ってラッキー。確かスペードの7持ってる奴が一番最初だっけ。

「俺から時計回りでいい?」
「いいですよ」
「だいじょうぶ…」

 順番はさっきと変わって俺→クリスティア→リアス→カリナ。まずは隣接してるところ──って。

「──ない! パス!」
「早くないですか!?」
「なかった」

 手札を見れば、6がない。8もない。何も出せないのでパス。今ので思いっきり手の内知られた気がする。

「じゃあわたしから…」

 結局クリスティアからみたいになって、全員順番にカードを出していった。

 そして三周目。

「……」

 手札とフィールドを、交互に眺めてみる。

 場に出てるのは7と8が四枚、スペードとダイヤに6、ダイヤに9。そして俺の手札は3が四枚、Aが二枚、5が一枚、クイーンが一枚。

 あれ? 詰んだ気がするよ?

「──パスでっ」

 しかも5ですら俺はクローバーなので出せない。もうどうしようもないからパス。

「手札事故りました?」
「わかんない。終局で覆したい」
「7並べって意外と難しい…」
「そうか? 俺は好きだが」
「性格悪そうだもんな」
「悪いの間違いでしょう?」
「お前ら覚えておけよ」

 なんて話していれば、カリナがクローバーの6を出してくれる。ありがとうございますありがとうございます。

「性格の問題じゃなくてこれは頭を使うものだろう」
「自分は頭使えますよアピール?」
「喧嘩売っているのか。バカ正直にカードを出すなと言っているんだ」

 そうして自分の番が回ってきてまた手札とにらめっこする。……ない。

「パス!」
「あなたの手札大丈夫です?」
「わかんないだめかもしんない」
「明らかに端の方ばっかり持ってるだろう」
「わかんないじゃん戦略かもしれないじゃん」

 リアスさんの言うとおりなんですけどね! あ、カリナ4出してくれたありがとうございます。

「でも末端でなければ止められるからそれはそれで有利ですよね。先に上がれますし。あ、パスで」
「そうかぁ? バランスよく持ってた方が相手にも手札ばれないだろ」
「お前の手札ほとんどバレてるようなものだしな」
「そんなことないはず」

 話しながらも進んでいき、手札のカードが減っていく。すげぇみんなほとんどパスしてない。なんでそんなにすらすら出てくんのカード。俺もう3とAしか残ってないよ。

「ん」

 そこでリアスが出してきたのが、ジョーカー様。自分が持ってないところに出せば強制的に相手にそのカードを出させる優れもの。リアスはクローバーの2にそれを置く。こいつはどんだけ引きがいいんだ。ラックアップほんとに外したよな?

「…わたし」

 そしてそのジョーカーの効果で強制的に出させられたのは、クリスティア。しぶしぶと言った様子で2を出せば、リアスは僅かに口角を上げた。

「じゃあ、ここ」
「ちっ」

 その次の周で、今度はクリスティアがジョーカーをダイヤの10のところに置く。そしたらリアスがダイヤの10を出してきた。なんでこの子たちはこんな引きいいの。

「ねぇだれかスペード止めてない?」
「あとクローバーの後半もですわ」

 ゲームが進めば進むほど、後半出しづらくなる。カリナはちょっと詰まってるみたいだ。俺は元々だけど。うーん、どうしてもスペードの3が出せない。

「止めてると言ったらリアスでしょう」
「何故」
「クリスティアがそんな止めるなんてできると思います?」
「お前今バカにしてるだろう」
「そんなわたしはパス…」
「ほら、リアスが止めるからですよ」
「原因はお前と言うこともあるだろう」
「なきにしもあらずですが」
「なくもないんだ?」

 ただ俺のは後半には強いカードたちだから、ひとまずスペードの3は置いといてAを出す。ということで俺の手札は残り1枚。でもこの残りのスペードの3がどうしても出せない。誰だ4を止めてるのは。

 そこでリアスがクローバーの9を出した。

「ほらやっぱりクローバー止めてたじゃないですか!」
「止めてたのを出してやったらハートのクイーン出したくせに文句を言うな」
「ねぇ俺のスペード誰が止めてるのぉぉぉ! パス!」
「わたしもパス…」
「なら俺はこれで上がりだな」

 パッとカードを出されてリアスが上がり。そこで最後に出されたのは、

 ──待ち望んでいたスペードの4。

「やっぱお前じゃん!」

 最後のスペードの3を叩きつけるように出して、二番目に上がった。

「誰も止めてないとは言っていない」
「そうだけども!」
「負けちゃった…」
「ごめんなさいね、クリス」

 止められてたカードが出されればそのあとは早いもの。俺が抜けて、次にカリナ、クリスティアと終えた。あの手札で二位は頑張った。

「で、三時間以上もトランプで遊んでいたのか」
「時の流れは早いものですわね。さ、カード引いてくださーい、開封しますよ」

 一通り遊び終わったのでトランプを片し、ふぅと息を吐いて時計を見れば、すでに五時過ぎ。なんだかんだ熱中してた気がする。

「では開封どうぞ」

 カリナに促されるまま全員がご褒美BOX&お仕置きBOXからカードを引き終わって、自分のところに並べた。俺は最後に勝っても負けてもいないから、お仕置きカードが四枚。増えたのはリアスがご褒美一枚、クリスティアがお仕置き一枚。

 正直に言うとすごい引きたくない。リアスと就寝の時点でもう帰りたい。でもルールなので、仕方なくカードに手を置く。俺は一枚開封しちゃったから、残り三枚。恐る恐る、伏せたカードをめくった。

 ”全員にお菓子づくり”
 ”掃除”

 あ、なんだこういう普通なのもあるんだ。ほっとして最後の一枚もめくる。

 ”1日メイド服”

 おい待て。

「カリナさん!!」
「はぁい」
「メイドって何!? 俺が着るの!?」
「あらあなたが引いたんですの? リアスが着たらおもしろいのにと思って作ったんですが」
「視覚的暴力だよ!」
「おいその通りだが本人の目の前で言うな!」

 だってその見た目でメイドとかねぇじゃん!

「そもそもメイド服なんて女子用で俺たちのサイズは──」

 と言いかけたとき。カリナがバッグを漁る。待って。

「一応全員当てたようにオーダーメイドで作らせてみましたが」
「サイズなんで知ってるの!?」

 出てきたのは四着のミニスカメイド服。嘘でしょ? 全員分あるの? これだから金持ちは。

「あ、大丈夫ですよ、なりきるためにちゃんと黒髪のウイッグも用意してあるので」

 何が大丈夫かが全く持ってわからない。妹の用意周到さに、もうため息を吐くしかできなかった。

 ♦

「ねぇほんとにお前と寝るの」
「決まったことだろう。俺だって嫌だ」
「待ってまだ嫌なんて言ってないけど。確かに嫌だけども」

 それから。罰ゲームでリアスが晩飯を作ったのでそれを平らげ、カリナが風呂掃除をしてくれたので風呂に入り、夜十時。主に男子がぐったりとした様子で就寝準備に入った。

 ちなみにさっさと終わらせようということで俺は今日リアスと寝ます。まだ布団には入ってきてないけど。リアスさんはクリスが寝入ったのを確認してからならっていう条件付けたのでベッドヘッドに腰掛けてます。ぶれねぇなほんとに。

「もうそのままクリスと寝ればいいじゃん……なんで俺リアスと一緒なの?」
「罰カードを引いたからですよ。たまにはいいでしょう?」
「よくないよ」
「というかあのデパートのは本気だったのか……」
「もちろん。クリスティアとも一緒に寝たいですし。そしてどうせあなた方のことですから、口約束だとどちらかがリビングのソファ使うだろうと思って仕込んでおきました」

 どんだけ用意周到なの。もはやクリスティアと寝たいじゃなくて俺とリアスを寝かせたいって見えるのは俺だけ?? 女の子が二人で寝るのもかわいいけども。代償がでかすぎる。

「でもリアスなら寝相良いし布団取られないからまだいいや」
「カリナ、お前どんだけ寝相が悪いんだ」
「寝相は悪くないです布団を取るだけで」

 世間ではそれを寝相悪いというのでは。

「カリナ足上げないで寒い…」
「あらごめんなさい」
「俺との対応の差」
「男の子なんだから暑さに負けず寒さに負けず、ですよ」
「違う気がする」

 一瞬反論しようかと口を開きかけたけど、どうせ言いくるめられるかと諦めてスマホのゲームを開いた。ログインしてなかったわ。

「おい明日もこんな感じなのか」

 片耳だけイヤホンを着けて、残った耳で幼なじみたちの声を聞きつつ会話に入った。

「こんな感じとは?」
「罰ゲームとかあるのか、ってこと…」
「そりゃぁ強化合宿ですから」
「ごめんなんの強化合宿?」
「精神面ですかね」

 確かに鍛えられそうだけども。あ、すげぇ強いフレンドさんいるわ。借りよ。

「明日はスゴロクでもやってみましょうか」
「晴れたらおでかけしたい…」
「それもいいですねぇ」
「すごい、明日の会話ができる…」
「悪かったないつも明日の会話をしなくて」

 クリスティアがカリナと明日の会話ができることにすごい感動していて、思わず笑った。まぁリアスしないもんなぁ未来の会話。仕方ないけど。

「明日は予定がいっぱいですかね。スゴロクやってお出かけして」
「うん…。体力つけなきゃだから、早めに寝るね…」
「えっ」

 カリナが引き留めようとした直後、聞こえる寝息。

「……寝たな」
「早いですね相変わらず」

 まさにおやすみ三秒な幼なじみにまた笑って、デイリーミッションを終わらせた俺はゲームを切ってスマホを枕元に置いた。

「俺も寝るわ、今日疲れた」
「俺も寝る」
「えーもうちょっとお話ししましょうよー」

 小さくあくびをしていたら、クリスティアが寝たからとリアスがこっちの布団に入ってくる。うわぁ狭い。

「明日は予定が山積みなんだろう。寝ろ」
「おやすみー」
「うー……おやすみなさい」

 少し大きめな布団を一応取られないように持ちつつ強制的に話を終わらせてしまえば、なんだかんだカリナも了承して電気を消した。
 直後、隣から聞こえる寝息。こいつも寝るの早いな。

 かく言う俺もツッコミ疲れと精神疲れですぐに眠気が来た。

 明日スゴロクだっけ。なんかまたカリナ仕込んでんのかな。とりあえずろくなものではあってほしいと無駄かもしれないと祈って、意識を手放した。

『1日目・トランプ大会』/レグナ

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