類は友を呼んでいました

 こんにちはカリナです。合宿二日目、午後二時になりました。スゴロクを終えお昼を食べて約束通り出かけた先は、私が住む南地区の大きな公園。外周四キロほどの大きな公園で、中はアスレチックや砂場がある子供用スペースと、大人も楽しめる球技場スペースできれいに二等分されています。ゲーム大会の息抜きに罰ゲームなしで体を動かしたいとレグナが言うので、球技場スペースの近場にある貸し出し場からバスケットボールを借り、今私たちはバスケのコートにいます。

 先ほど男女混合で軽くバスケをして、私とクリスティアは一度休憩のため抜けてきました。二人でバスケを続けている彼らを、クリスティアと共にコート内のベンチに座って見ています。もうそこで考えることはただひとつ。

 龍蓮いいなぁ。

 リアスは本当にもうチートなので運動神経も抜群。レグナも悪い方ではありませんがリアスには中々歯が立ちません。ボールを取ろうとすればリアスは軽々避け、時にはフェイントをかけ、まるで弄んでいるよう。必死になってるレグナかわいいなぁとか思いながら遊んでいるんでしょうか。もう遊園地の時以降から彼らがほんとに両片思いであればいいのにという思いが強まってます。腐女子怖い。できればこの合宿でなにかあればと思いますが、自然にハプニングを起こすというのは難しいもの。

 強化合宿という名のお遊び会も早二日ですが、これといってテンションが上がるようなイベントもまだないです。

 昨日リアスとレグナを一緒の布団で寝かせて、寝入ったフリをして少し観察してましたがいい意味でも悪い意味でもなにもなかった。リアスがクリスティアとレグナを間違えて抱きしめてしまうというハプニングを期待しましたがそんなことも起こらず。スゴロク大会も危機が起きてしまうとレグナよりクリスティアの安全を優先してしまうので良いハプニングなんて見れず。

 あの遊園地でのお化け屋敷でも思い描いたようにはならないし。結局妄想に頼るしかありませんが、もう少し現実から供給が欲しいです。

 けれど今私たちが引いてまだ実行していない罰ゲームでも、中々供給を受けられそうなものはありません。レグナの一日メイド服がどう転がるかですかね。リアスが引いたのは”苦手なことをする”。これは確実にクリスティア絡みですから期待はできそうにないでしょう。

 さぁどうしようかとリアスとレグナのバスケを見ながら考えしばらくしていたとき。突然左側の袖が引っ張られました。

「だいじょうぶ…?」

 ちょっとびっくりしてぱっと左を見れば、クリスティアが小首を傾げています。なんてかわいらしい。ときめきながらも笑顔で「大丈夫ですよ?」と返しました。私今の妄想やらなんやらを口に出してませんよね。大丈夫ですよね。

 なんて思っていたら、彼女から衝撃発言が。

「…供給、足りない?」

 ……はて彼女はなにを言っているんでしょうか。
 ここで「クリスティアが供給なんて言葉を使うのは珍しいですね」と全く違う思考に至ったのは仕方ないと思います。それくらい彼女が中々使わない言葉ですもん。え、ていうかちょっと待ってくださいね。この子なんて言った? 供給? 龍蓮の供給のことですか?? いやきっと私の考えているものとは違う。だってこの子はこの四人の中では無知の方だもの。

「えぇと、いきなりどうしました?」

 とりあえず平静を保って、笑顔で聞き返してみます。きっとお昼ご飯の供給足りなかったとか飲み物の供給足りなかったとかそんなお話ですよね。

 ──しかしそんな願いは儚く。

「リアス様とレグナのBL供給が足りないのかなって」
「待ってくださいほんとにちょっと待ってください」

 急いで彼女の口をふさぐ。さぁ彼女がなにも言えなくなったところで状況を整理しましょうか。

 彼女はなんて言いました? BL? リアスとレグナの? え、待って知ってたの? この子が?? いつから?
 どうしましょう考えれば考えるほど疑問しか浮かばない。結局すぐにクリスティアの口を解放してあげて、一言。

「何で知ってるんですか…」

 BLという単語ももちろん、何故私がそっちのことを考えているかも含めて。聞けば、クリスティアは口を開く。

「なんか、腐女子が出始めた頃、ちょうど四人学校同じで、そこでリアス様とレグナがくっついてるって噂があったから」

 まじですか。ていうかもう少しオブラートに包んでクリスティア。

「え、でもなんで私がそっちだと?」
「あれだけくっつけようとしてればバレる…」

 そんなバカな。リアスはまぁわかりますがこの子には絶対バレない自信があったのに。

「どうせバスケ見ながら次はどういう風にしようかなとか自然にくっつけるの難しいなって思ってたのかなって…」
「その通りなんですがあなた今日よくしゃべりますね」

 いつも拙いしゃべりだったり基本的に無口な彼女は今日はまぁよくしゃべる。BLってすごい。

「待ってくださいね、クリスティアがそのことに関して知っていることはわかりました。もう一つ質問があるんですが」
「なぁに…?」
「えっと、あなたはそっち系OKなんです?」

 あくまでオブラートに包んで、聞いてみる。中には苦手という方ももちろんいらっしゃいますから。この子が苦手だというのならばこれからはなるべく自重をしたいので、と返答を待っていれば、ゆっくりと動く右手。私の顔の前に出された手は、親指を立てる。

 出ましたOKサイン。

「まじですか」
「まじです…。わたしとカリナがくっついてリアス様とレグナがくっつけば運命乗り越えられるんじゃないかなって思ってる」

 考えていること一緒だった。けれどそこでまた疑問がよぎる。

「でもあなたリアスに縛られてるじゃないですか。携帯制限とかされてるでしょう?」
「ん…?」

 過保護が加速していっているリアスは、変なことに巻き込まれないようクリスティアに色んな制限を設けています。携帯はネットができないようにしているし、束縛彼氏のように連絡先はリアスのしか入っていないし。

「情報とかってどうしてるんです?」
「紙」
「紙」
「わたしは本読むの好きだから…。そっちで情報得てる…」

 なるほどその手がありましたか。

「リアスが読んでバレたりしません?」
「がっつりそういう要素入ってるのだったら、よくわかんなかったって言えばなんとかなる」
「嘘でしょう?」

 この子こんなに計算高い子だったかしら。ああでも、先回りしてレグナを道連れにするあたり案外そうなのかもしれない。女子って怖い。

「ふぅ……ではちなみにどっちがいいです? 攻めと受け」

 もう隠しても仕方ないと、だいぶ精神的にも落ち着いてきたのも相まってお互いに再びレグナとリアスのバスケを見ながら話を広げる。今度はレグナがボールを持っていますね。でもリアスのように余裕はなくて逃げるのに必死そうです。

「わたしは割とどっちでも…。最初は龍蓮だったけど、蓮龍もよかった」

 わぁこの子思ってた以上に腐女子だった。

「この前龍蓮を知ったばっかりなのでまだ蓮龍には踏み入れてないですわ」
「じゃあ想像してみて」
「はい?」
「今、ああやってレグナの方が追い込まれてるでしょ」
「そうですね」
「普段からレグナってリアス様に敵わないでしょ?」
「そうですね」
「でも恋人らしい展開になったとき、その立場が逆転するの」
「つまりはいつも追い込んでいるリアスが恋人関係ではレグナに追い込まれると?」
「Yes」

 言われて、想像してみる。いつもはなんでも勝っているリアス。隙のないリアス。けれど、レグナと二人きりになってなんとなくまぁ恋人らしい雰囲気になって。だめだと言っていても段々段々レグナのペースに墜ちていく──あ、やばい。

「新境地ですね」
「でしょう」

 強いリアスが恋人の前だとどうしようもできなくなるのも中々萌えますね。今バスケでリアスがガンガン追い込んでいても二人きりになったら甘い言葉とか言われちゃって負けてしまうということですか。いいですね蓮龍もはまりそう。若干にやけるのを抑えながら、ふと、またよぎった疑問をクリスティアに投げかけてみる。

「ねぇクリス?」
「なぁに」
「もしこのまま本当に彼らの中が進むとします」
「ん」
「本来の恋人であるあなたとは別れてレグナと付き合いたいと言ったらどうするんです?」
「それはいいんじゃない?」

 いいんですか。この子リアスのことちゃんと想っているのか時々心配になりますね。

「レグナと付き合いたいって言ってるのに無理に止めたらかわいそう」
「まぁそうですね」
「それに本当に付き合うことになったら妄想だけじゃなくてちゃんと供給があるからそれはそれで」
「あなた思った以上にしっかり腐女子ですよね」
「知ってる」
「ではもう一つ、レグナとクリスティア、どちらも選べないと言われたら?」
「話し合い…」
「するんですか?」

 普段リアスもだけど言葉より行動派のこの子からびっくりな発言が聞こえて思わずクリスティアの方を振り返って聞いてしまう。そうしたら、クリスティアは至ってなんでもないように続けた。

「そりゃ選べないって言われたらお話はする…気持ちを伝えてって言われると不利だけど…」
「あなたの呪いリアスに想い伝えられないことですもんね」
「ん…まぁでもあそこの二人がくっつくなら身を引いてもいいかなとは思う…」
「確かに彼らも幸せになって私たちも幸せですもんね」
「さすがカリナ、わかってる…あ」

 恐らく実際そうなったら大泣きするんでしょうけども。そこは黙っておいて、なるべくいつも通りの表情を保って話していれば、ボールが転がってきました。それを追うように、少し汗をかいたリアスとレグナがこちらに帰ってきます。あとで「お前のにおいがする」「やめろよ」とか言うんでしょうか。

「何話してんの?」
「リアス様はやっぱり運動神経いいねって話…」

 この子さらっと嘘言いましたよ。今日で私の中のクリスティアのイメージが変わりすぎています。でもまぁさっきの話は言えはしないので話には乗っかりますが。

「レグナはリアスには敵いませんね、と」
「だってこいつチートだもん」
「魔力は使っていないが?」
「使ったら俺この世からいなくなる」
「大袈裟だ」

 こんないつもの掛け合いも本当に仲がいいなぁと微笑ましく思う。もうくっつけばいいのに。

「そろそろカリナたちも混ざる?」
「それとも違うものをするか?」

 クリスティアが転がったボールを拾いあげれば、二人が汗を拭いながら尋ねてきました。その言葉に、クリスティアと自然に目を合わす。その目で、恐らく互いに言いたいことはわかったはず。

 二人同時に頷いて、リアスとレグナに向き直る。そして一緒に口を開いて、こう返しました。

「「もう少し、休んでる(ます)」」

 あなた方の話がしたいので。

『類は友を呼んでいました』/カリナ

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