また逢う日までライト版 First grade July

七月に入ってすぐの水曜HR。今日はテストの説明会ということで全クラスで体育館に集まった。
ひとまずクラス毎にまとまって座るとのことなので、いつものごとくクリスティアと一緒に後ろの方へ。
同じく後ろの方にやってきたリアスとカリナと隣り合うようにして座り。

「はい、波風くん」
「どーも」
「氷河」
「はぁい…」

「炎上君、どうぞ」
「どうも」
『愛原、どうぞですっ!』
「えぇ、ありがとうございます」

俺たちは前に座っている祈童・道化から。ついでにリアスとカリナは、二人の前に座ってる閃吏とユーアからプリントをもらって。

一番上をちらっと見る。

”護衛パーティー”。

うん、なんかもうものすごく面倒そうな予感しかしないかな。俺なんでこの学校来ちゃったんだろうね。妹いないと思ったしハーフってこと隠さなくてもいいからだね。見事に妹の方はいたけどな。

「配られましたか~? 始めますよ~」

全員が座って、プリントが配られたのを確認してから、のほほんと間延びした声で江馬先生は説明を始める。

「集合時間などはプリントに書いているので、各自きちんと目を通しておくように~。今日はテスト内容についてと、チームを組んで欲しいのでそれを決める時間になりま~す」

静まりかえった体育館で、それでですね~と続ける江間先生の声が響いた。

「まず~、テストと題してはいますが、笑守人には”卒業”という概念もないことから成績などはありませんね~。よってこれであまり貢献できなかったからと言って、今後の進路に影響があるわけではないのでご安心を~。一種の刺激だと思ってくださ~い。それでテスト内容ですが、本来ならば~、それぞれの進路に関連するテストを受けていただくのですが、一年生は初回ということで、毎年パーティーでの護衛などをやらせてもらっています~」

のほほんとした様子で、続けていく。

「初回はこういった形で実技をしていきますよ~というデモンストレーションも兼ねていますので、あまり気負わずに頑張ってくださいね~。けれど時折ほんとにトラブルも発生するので、気の抜きすぎにはご注意を~」

「……どっち?」
「いつもあんな感じなのでお気になさらず」
「あ、そう……」

続けますよ~と声が聞こえて、再び意識を前に戻した。

「え~、パーティーなどでの護衛となると、単独行動というのが多いのですが~、このテストでは、有事の際も考慮して六人一組になって行動してもらいます~。その六人で、当日に言い渡す各ポジションでパーティーの様子をきちんと観察していてください~。もちろん、パーティーに参加しながらの警護なのでお偉い方々と話したり、お食事を楽しんでいただいて結構です~。こういった護衛や警護任務では、いかにしてその場に紛れて警護に当たるかが重要になりますからね~」

これなら結構得意分野かなぁ。

「くれぐれもお食事やお話に気が逸れていってしまわないように気をつけてくださいね~。あと重要なことは~、あ、一応ないとは思うんですが~」

思い出したように、プリントから顔を上げて、首をこてんと傾げる。

「皆さんには当日無線と不審者撮影用のスマホをお渡しします~。警備はしっかりしていますが、もしも仮に、変な人が入ってきたらそれを使って早急に私に連絡してくださ~い。状況を見て指示をするので、きちんとそれに従うように~。いいですね~?」

体育館のあちらこちらから返事が聞こえる。江馬先生はそれににっこりと笑って頷いた。

「では、簡単な説明は以上です~。各自わからないことがあれば各担任へ聞いてくださ~い。ここからの時間はチーム決めにしますので、自由に歩いてチーム作りをしてくださいね~。私に報告した後は自由解散とします~」

はじめてくださ~いと、のんびーりとしたその声を合図に、体育館内のほとんどの生徒たちが立ち上がる。それを見届けて、

「とりあえずここは四人もう決まりでおっけー?」

右に座ってる幼なじみと妹に声を掛けた。

「当然ですわ」
「異論なし」
「さんせー…」

三人とも即答ということで、六人中四人はこれで決定。

「んじゃ残り二人──」

と声を発した瞬間。

「ねぇ!」
『皆様方っ!』
「うぉびびった」

今まで黙って前を向いて座っていた四人が、同時に振り返った。

そして、びっくりした俺たちと同じように驚いた顔をして。
目の前の四人は、顔を見合わせる。

何がなんだかわからず、こっちの四人で見守っていると、少しして口を開いたのは、閃吏から。

「えっと、もしかして……美織ちゃんたちも炎上君たち誘うつもりだった?」
「そう言うならシオンたちもかしら!」
『閃吏とユーアでお声かけすればぴったりかと思ったですっ』
「奇遇だな、僕たちも同じ考えだ! 波風! こうなった場合はどうする!」
「ここで俺に聞くの??」

ようやっと事態を飲み込めた直後に話を振られ、思わず苦笑いをして後ろに手を着いた。

「どうするってもなぁ……」

予想外のダブルブッキングが起こった場合。
正直言ってしまえば、

「任務に使える人間を選ぶのが、基本なんだけど」

ただ今回は、能力値がわからないので。

「今回は公平にじゃんけんかなぁ」
「あら、戦って決めるとかじゃないのね」
「時間かかるじゃん」

俺としては、

「変な下心で任務に支障が出ないのであればなんでもいいよ」

さりげなく周りを見つつ、少し大きめの声で言った。
視線の先の、「下心があるやつら」は、肩をびくつかせて目をそらす。
男が多いな。月曜のこともあったし、クリスティア狙いが多かったかな。

「あまり牽制してやるな」
「刹那に害が及ばないだけいいでしょ」
「そして蓮が刹那のことを好きだという疑惑が確定になりますね」
「あーー……まぁどうでもいいや……」

親友として愛してるのは変わりないし。
周りからクリスティアに視線を落とすと、きょとんとした目と合った。それに微笑んで頭を撫でて。クリスティアが嬉しそうに笑いリアスの膝上へ移動していくのを見届けてから、目の前に座る四人に目を移した。

「というわけで、閃吏たちはそういうわけじゃなさそうだし、じゃんけんかな」
『任せるですっ!』

笑って言うと、頷いて。
四人で座ったまま円を描く。

「じゃーんけん」

道化の声でそれぞれが振りかぶり、

「ほいっ!」

と、声が響いた。

「それではメンバーはこの六人で決まりということですね」
「改めてよろしくお願いするわ!」

じゃんけんの結果、道化と閃吏がパーティに加わることになり。祈童とユーアとはその場で別れて、カリナと道化の声を聞きつつ、再び視線は周りへ。

こっちを見ていた下心があるであろう輩たちは、六人決まったことで少し悔しげに他のところへと歩き出していく。
カリナたちの方に顔を戻しながら視線をほぼ一周すれば、似たようにこちらを見ていた輩は散っていった。

「蓮」
「わかってるって。見てるだけ」

どこがだ、と言いたげな雰囲気が隣から漂ってるけど気にせずに。

「江馬先生に報告に行きますよ」
「了解」

カリナに言われて、立ち上がり、決まった六人で前の方へと歩き出す。

「よろしくね刹那ちゃん」
「うん…」
「えっと、よろしく、氷河さん。改めて、閃吏シオンって言います」
「せんり、よろしく…」

後ろでクリスティアに挨拶しているのを聞きながら、歩みを進めている途中。

「あ、そういえば聞きたいことがあるのだけれど」
「んー?」

道化が思い出したように声を発したので、軽く振り返った。

「さっき下心っていうのが話題に上がっていたじゃない?」
「うん」
「刹那ちゃんの可愛い格好を間近で見たいというのは下心かしら?」

言われた言葉に、俺も、カリナもリアスも止まる。
俺たちが止まったことで、後ろを歩いていた刹那たちも足が止まった。

だめだと思ったのか、道化はあわててしゃべり出す。

「あっ、よこしまな気持ちじゃないの! ただ、パーティーと言えば普段と違った格好でしょう? 可愛いドレス、それに合った髪型……それを見たいと思うのは下心かしらと思って!」
「えっと、下心じゃないかな……」

その言葉に、三人で首を傾げてしまった。

もちろん道化の方の言葉ではなく、

閃吏の言葉に。

「下心じゃなくない?」
「えっ」
「大丈夫です道化さん、正常な思考ですわ」
「ほんと!」
「もちろん任務が始まったら別ですけれど」
「始まる前なら拝むくらい構わないだろ」
「炎上君まで……」

え、当然の思考じゃないのこれ。
そう思って首を傾げてみるも、閃吏は苦笑い。そして、隣にいたクリスティアへ顔を向けて。

「えっと、いつもこんな感じなのかな……?」
「うん、いつも…」
「そっかぁ……」

苦笑いがさらに苦くなっていったのにまた首を傾げてから、歩き出す。
可愛い子に可愛い服着せたいっていうのは正常だと思うけど。

「道化さん、刹那をとびきり可愛くするのでカメラを忘れずに持ってきてくださいね」
「わかったわ!」
「炎上君たちの方が下心満載じゃないかな……」

後ろでそんな話をしているカリナたちに、思わず笑みをこぼして。

江馬先生の元に、歩みを進めた。

『あと少しで、夏休み。その前にもう一息。』/レグナ