君がいたから、ずっと生きてこれた

俺と共に生まれた君の人生は、どんな日々でしたか。

「カリナ」

痩せてしまった手に、自分の手を重ねる。

月明かりが綺麗な夜。窓から差す光が、ゆっくりと開く妹の瞳を照らした。

明日は、三月二十七日。
俺達が、出逢った日。そして。

大好きな親友たちが、夫婦の契りを交わす日。

「……もうちょっとだよ」

骨ばっている手を撫でて、声を掛ける。
頷いた彼女は、力無く笑った。

「頑張ったね」

そう、告げたと同時に。まだ終わりじゃないのに、何故かこれまでの日々を思い出して。
喉元が熱くなった気がした。

小さな村で、共に生まれた。
成長する毎に気付いた最悪な親の中でも純粋に笑う妹。
リアスと一緒に泣いていた妹は、大好きだと言えるような女の子に出逢って、たくさんたくさん笑うようになって。
それを見ているのが、幸せだった。

その笑顔を見るのが辛くなったのは、ここ最近。
病気でも、辛くても。ずっとずっと笑ってる妹。

辛いよね。痛いよね。そう声をかけても、大丈夫と笑ったね。

今日はクリスティアがこんな話をしてくれた。リアスがまたムカつくことを言った。
でもとても楽しかったよ。
明日、また逢えるかな。
明日はどんな話を聞かせてくれるのかな。

そう、あの頃のように無理して笑ってた。

それを見て、わき上がるのは。
どうしたって後悔ばかりだった。

「ねぇカリナ」

病気になるのなら。
短い人生だと、知っていたのなら。

もっと、色んな場所に連れてってあげればよかったね。
カリナが欲しいと言ったもの、もっとあげればよかった。

もっともっと、たくさんの思い出をお前にあげればよかった。

気付いたら、涙がこぼれていた。
ぽたぽたと、重ねた手に滴がこぼれ落ちる。

「俺と共に生きてきた人生は、どんなだった……?」

虐げられて、病気になって。
明日だって保つかもわからない。

見たいものを見れないまま、終わるかもしれない。

この先の、彼女が見守っていたかった愛する人たちの人生も、見れないかもしれない。

振り返れば、悲しいことばかりだったと思う。

それなのに。

「……とても、とても。幸せな日々だった……」

また、そうやって笑ってくれるの。
俺の、大好きな笑顔で。

瞳を幸せそうに歪ませて、愛おしそうに、大切だと言うように。

「明日、クリスティアを見たら……元気になるわ」

もう力の入らない手で、それでも強く強く、俺の手を握った。

最後まで、親友のように諦めない彼女の手を、俺も、強く握って。

「……そうだね」

涙がこぼれるのなんて気にせず、頷いた。

──ねぇ神様。

明日、奇跡を起こしてくれませんか。

「レグナは……?」

花のように短い人生を、一生懸命、満開の笑顔で笑ってくれた妹に。
少しだけ時間をくれませんか。

「……決まってるじゃん」

そうして、四人で、たったほんの少しだけでも、笑いあえる未来をいただけませんか。

「カリナがいて、あの二人がいて」

心の中で何度も何度も祈りながら。

「今までも、これからもずっと、幸せな日々が続くんだよ」

笑って。妹の手を、強く強く、握りしめた。

『君がいたから、ずっと生きてこれた。』/レグナ

 

 

 

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