また逢う日までFirst 本編先読み March

三月三日はひなまつり。おひなさまとおだいりさまを並べて、女の子の成長をお祈りする大事な日。

でももうひとつ、大事なこと。

大好きな親友たちが生まれた日。

なんだけれども。

「みんな誕生日はなにもいらないって言う…」

そんな大事な日を明日にひかえた金曜日の夜。わたしはみけんにしわを寄せている。

何故か。

双子の誕生日プレゼントが決まらないから。

誕生日が近づけば、必ず聞く。「誕生日に何が欲しい?」って。
もちろんわたしたちも同じで、毎回聞くのだけれども。

長年生きてきてここ数百年。

今回誕生日の双子も、そして隣にいる恋人様も。毎回「いらない」って言うようになった。

「お前だって物は迷っただろう。長年生きてきてたくさんもらったからと」
「そうだけど…。いらないっていうのも困る…」
「物をあげるだけがすべてじゃない」

自分の誕生日のときにも言ったことをまた言って、わたしの頭をなでる。

でも、わたしの気持ちも前と一緒。

「…二人が生まれた日に感謝して、お礼ができる日…」

こぼせば、変わらないなって笑った。

「だってみんながいたから今があるもん…」

リアス様が引き留めてくれたから繋がれたわたしの命。
カリナが笑ってくれているから楽しいわたしの毎日。
レグナが分かち合ってくれるから軽くなるわたしの心。

ひとつでも無かったら、わたしはここにいない。

「お礼が、したい…」
「言葉で十分だろう。お前の言葉ならとくに」
「んぅ…」

ソファに座ってるリアス様の膝の上に寝ころんで、みんなみたいに頭いいわけじゃないけどなにかできないか必死に記憶を探ってく。

カリナとレグナが喜びそうなこと。カリナとレグナが。

「んー…」
「おめでとうでいいじゃないか」
「なんかもうちょっと…」

特別感、みたいな。

レグナはゲーム? みんなでゲームしたら楽しいかな。いつも通りだなそれ。
じゃあカリナは? カリナは、わたしのかわいい格好とか好き。なんかかわいい服着て…だめだそれもいつも通りだ。

なんかないかな。

喜びそうな…。

膝の上でごろごろしながら記憶を探っていって。

思い出す。

「カリナだけかもだけど喜びそうなのあるかも…」
「何だ」

カリナ発案。

「わたしがプレゼント…」
「それだけは本気でやめてくれあいつは冗談じゃ済まない」

名案だと思ったのにリアス様がすっごい苦い顔してしまった。

「絶対”持ち帰りますね”とか言うだろ……」
「どうせ持ち帰られてもついてくるじゃん…」
「そうだが」

言葉も濁さず否定しないところがさすがすぎる。

「あいつの前でリボン巻いてそんなこと言ってみろ、大歓喜だぞ」
「誕生日なら良いことじゃない…?」
「そのあと俺に見せつけるようにしてくる」
「誕生日なら許してあげなよ…」
「それに仮に、万が一それにするとしてだ」

すっごい”万が一”強調した。

「レグナはどうするんだ」
「レグナはわたしがプレゼントって言っても逆に遠慮されそう…」
「笑顔で言うよな」

ちょっと傷つきそう。

あ、でも待って。

「わたしがプレゼント的な感じをレグナが喜ぶ感じに変えればいい…」
「例えば」
「レグナが喜ぶものと言えば、コスプレ…」

となれば。

「誕生日にレグナの自由にコスプレさせてあげるって言えばすっごい喜ぶ」
「互いにお前を取り合って喧嘩する未来しか見えないんだが」
「どうしてリアス様は自分もコスプレさせるってならないの…カリナがわたしといるときレグナにコスプレさせてあげればいい…」
「一応言っておくがあいつは男のコスプレで喜ぶわけではないからな??」
「誕生日に秘密の扉をあけても…?」
「よくない却下だ」

わたしとカリナにとっては最高のプレゼントになりそうだったのに。心の中で舌打ちをして、振り出しに戻ってしまったので起きあがる。リアス様がなんかとがめるようにほっぺつねってきてるんだけどこの人まさか心の舌打ちまで聞こえるようになったの?
その手はちょっとどけさせてもらって、リアス様のひざの上にちょこんと座った。

「わたしは真剣に考えてる…」
「恋人とその親友の新たな扉を開けるというifルートの前にお前と俺の正規ルートにもっと真剣になって欲しい」
「今年の誕生日プレゼント…?」
「願えるなら是非そうしたい」
「考えとく…」
「それこそ真剣に考えておいてくれ」

頭をなでられながら笑って。

話は本題へ。

「双子の誕生日プレゼント…」
「俺は言葉で十分だと思うが?」
「んー…」
「プレゼントだなんだは日曜日の誕生日パーティーで知らない奴からももらうだろ」
「それちょっと恐怖だよね…」
「顔も知らない奴からおめでとうだけでなく愛していると来たりするからな」

お金持ちならよくある話なんだろうけどなんか影で見られてる感じがして背中がぞっとしてしまった。

ぞわっとしたのは腕をさすってごまかして。

また考えようとしたときだった。

あごを指でトントンって叩かれて、リアス様を見る。

「なーにー」

そのまま抱きかかえられて、リアス様とご対面。首をかしげたら、こつんっておでこが合わさった。

「……特別なものは別にいらない」
「…」
「俺は、俺達は。お前がいつも通り笑ってくれて、いつも通りの思い出を作れればそれでいい」

背中をさすられながら、やさしい言葉を落としてく。

長年いっしょにいるから、その思いもちゃんとわかってた。わたしだって、たくさんのプレゼントより、たくさんのサプライズより。みんなとただただいつも通りの思い出が好き。

でもどうしても。

「…大切なヒトたちに、お礼がしたい…」

生まれてくれて、いっしょにあそんでくれたことにも。

わたしのわがままにつきあって、ここまでいっしょに生きてくれてることにも。

言わなくてもきっとわかってくれてるリアス様の声は、やさしい。

「礼は別に何かをあげることだけじゃないだろう?」
「…うん」
「いつも通りでいい。レグナも、カリナも。それが一番喜ぶ」
「…」

今までだってそうしてきたのに、やっぱりいつもと同じく「本当に?」ってリアス様を見て確認してしまう。
それにリアス様はほほえんでうなずいてくれた。

なにかをあげたいって気持ちはまだあるけれど、押しつけになっちゃうのもいやで。

ちいさく、うなずいた。

リアス様はいい子だって言うようになでてくれて、体を離してく。

「ほら」
「ん」

そうして代わりにわたしの前にやってきたのは、リアス様のスマホ。お昼にカリナには決まったら連絡するねって言ったから、スマホを手にとって電源を入れる。
パスコードはリアス様の親指をお借りして解除させてもらって。

メサージュをつけて、カリナをタップ。そこからメッセージじゃなくて、電話ボタンを押した。

「…」

リアス様がすかさずスピーカーに切り替えたのを確認してから、前を向いてリアス様によりかかって画面を見る。

二、三回音が鳴った後。

《はいな》

画面が通話中に変わって、カリナの声が聞こえた。リアス様と思ってるっぽくてちょっと不機嫌そう。このあとのことが目に見えてるので笑いそうになりながら。

「カリナー」

名前を呼べば。

《まぁクリスっ!!》

予想通り大変ご機嫌がよくなったのでリアス様と笑う。

《あなたからお電話が来るなんて素敵な誕生日ですわっ!》

あ、気が早い。

「お前の誕生日は明日だろ」
《前倒してもいいくらい幸せです》
「さいで……」
「でも当日はもっと幸せ…プレゼント決まった…」
《まぁ……! クリスティアがプレゼントですか?》
「絶対やらないからな」
《とても嬉しいことですのに……レグナにはリアスのコスプレがいいじゃないですか》

ほらやっぱり望む物はこれじゃん。

「わたし間違ってなかった…」
「俺とレグナには大間違いだ。それだけは却下だからな」
「プレゼントは本人が喜ぶ物を…」
「レグナが喜ばない」
《わかりませんよ、新たな扉が開くかもしれません》
《カリナほどほどにしとけよ》

わぁレグナもいたの。レグナの冷たい声に一気に体温下がってしまった。

《冗談はさておきまして》
「レグナがいなかったら冗談とか言わないだろ」
「リアス様今だけは口閉じてあげて…」

今レグナに一番近いのカリナだから。なんかあったらカリナから行くから。

電話越しの咳払いのあと。

《プレゼントが決まったと!》
「そー…」
《お聞きしても?》
「うんっ」

さっきのはなかったことにして、リアス様の言葉を思い返しながらスマホをにぎる。

いつも通りが一番幸せ。

わたしができる”いつも通り”。

息を吸って。

「明日、あそぼ?」

言葉をこぼせば、後ろでふっと笑ったような雰囲気がわかった。そのままぎゅって抱きしめられながら、返事を待つ。

ほんとにたったの数秒。

すぐに、電話越しからも笑ったような音が聞こえて。

《……えぇ》

うれしそうな、声で。

《最高のプレゼントですわね》

そう言ってくれたから、わたしの顔もほころんでく。

《明日学校終わってからそっち向かうよ》
「あぁ」
《そしたらたくさん遊びましょう?》
「うんっ」

電話越しの、大好きなカリナとレグナにうなずいて。

お知らせはしたから、今日はもう終わり。

あとは。

「またあした…」

そう言えば、二人のうれしそうな声が聞こえて。

《また明日》
《おやすみなさいクリス、リアス》
「おやすみー」
「おやすみ」

小さな約束とあいさつをして、電話が切れた。

電源を切って真っ暗になったスマホから、リアス様の方を向いて紅い目を見上げる。

顔は、きっと双子たちもしてくれてたであろうほほえみ。

「…うれし?」
「あぁ」

カリナたちの代わりにうなずいて、わたしを抱きしめる。そのあったかい体温に埋もれながら。

「…あした、たくさんたのしもうね…」

そう、言ったら。

「……そうだな」

約束が苦手なあなたが珍しくすぐにうなずいたから。

自分の誕生日じゃないのにうれしくなって、あったかい体温を強く強く抱きしめた。

『新規 志貴零』/クリスティア