また逢う日まで 先読み本編second June

クリスティアが構っているカリナの様子を視界に入れつつ、時計を確認する。時刻は三時過ぎ。そろそろだろうかと校庭の方に顔を向けた。

「ビンゴだね龍」
「あぁ」

そのちょうどのタイミングで、校庭の中央に「バトルリレー選手 集合」の文字。レグナには笑って、今度はこちらのメンバーの方に目を向ける。

「集合だそうだ。バトルリレーのメンバーは俺と刹那、閃吏に?」
『アタシも出るよっ!』
「うち(赤)からは俺と華凜に雫来、祈童と道化で」
「赤はあと武煉とオレな」
「はいはぁい、青からはお姉さんとユーアが出るわよぉ」
『頑張るですっ』

大所帯な上に厄介なメンバーばかりだな。さすがというかやはりというか。めんどくさそうな戦いになりそうだと空笑いし、集合ということで。

『ボクらはあとで近くまで行くねー!』
『ご武運をお祈りしていますわ』
『頑張って来いよフィノアの姐さんっ、ユーア!』
「珠唯……頑張ってね……」

残るメンバーからの見送りにはそれぞれ手をあげて返し、ぞろぞろと集合場所へと歩き出す。

手を繋いで歩いているクリスティアとカリナの後ろを歩きつつ、背後から全員を見渡し。隣のレグナへ。

「……赤は身内からは全員参加か」
「あー確かにそうかもね」
「本当に厄介な奴らばかりだな」

赤は割かし身体能力やら個人が磨いた能力やらが少々厄介なものばかり。

「……当たらないことを祈りたい」
「フラグ立てとく?」
「結構だ」
「そう言ってフラグ立つよな炎上」
「あは、頑張ろうね炎上君」
「いやさすがに全員とは当たらないだろう……」

たぶん。
おい「やっちゃったな」みたいな目線向けてくるな。

「一応半分に分かれるんだぞ」
「その分かれるってので去年身内全員当たったじゃねぇか弟分?」

そういえばそうだった。

いらないフラグを立ててしまったかもしれない。来るかもしれない未来に苦笑いしていると。

「今回全員当たったらフラグ回収者の名前あげるね」

なんてレグナが肩を叩いてきたので。丁重に断って足を進めた。

そうして受付を済ませ、くじを引いた結果。

「なんか、分かれた分かれてないのかよくわかんない感じになったね」

フラグ回収者の称号は免れたものの。閃吏の言うとおりの結果になったことに、チームの集合場所で周りを見渡しながら頷いた。

まず走るグループが大きく二つに分かれるバトルリレー。ここで出場者が半分にされるわけだが。

第一グループは赤から雫来、祈童、道化が行き、青からは夢ヶ﨑とユーア。厄介な奴らが半分ほど向こうに行ったのはまあ幸いだろう。
次に俺達がいる第二グループ。俺達黄組からはクリスティアに閃吏、珠唯と、黄から参加の身内全員、赤からは残ったレグナにカリナ、陽真に武煉。青はなし。

そしてそこからさらにグループ分けされ、色ごとに六人チームを「ランダム」で組まされるわけだが。

なんとこちらの第二グループ、身内は各色全員が同じチームである。

「……身内が全員固まっているとなると分かれた気分ではないわな」
「あは、確かに」
『アタシは安心だよっ!』
「初だもんね…」
「それに炎上君も安心じゃない。氷河さん一緒で」
「まぁその件に関しては願ったり叶ったりではあるが」

腰に抱き着いている恋人を撫でてやりながら、問題のチームを見て。

「……あの蓮率いる身内グループが厄介すぎるだろう」
「たぶん向こうも同じこと思ってる…」

あぁ、レグナの絶望顔が目に浮かぶ。

条件はまぁ同じかと、とりあえず納得させて。

「それに」

と、こぼすクリスティアを見た。
少女のような恋人は楽しそうに笑って。

「本気の頭脳戦なら、龍負けない…♪」

そう抱き着いてくる。いや今回は向こうも頭脳強化されてるだろと思うけれど。

勝ち続けてきたプライドも少なからずあるわけで。

「……そうだな」

少しだけ上がってきたテンションの中、頷いて。

「わぁっ、ここ当たりグループ?」

聞こえた声に、クリスティアと体を離してそちらを見やった。

「……!」

そこには、瞬きする度に目の色が変わる女と、紫の角――ではなく首にある悪魔の羽の模様が特徴的な鹿のビースト。

思わぬ種族に少々目を瞬かせたが、そんな俺達に構わず、前髪をみつあみにして流しているその女は笑った。

「こんにちは~、2-5のメンバー、色世淋架(しきせりんか)でーす。大学生でーす。こっちは同じクラスのトリスト」
『よろしく頼む』

会釈をするトリストには緩く会釈を返し。

ぱっと一歩踏み出したクリスティアの首根っこを捕まえた。

「…かわいい恋人はトリストの毛をもふもふしたい…」
「上級生相手に一発目それはやめてやれ」
『せ、刹那先輩通常運転だね……』
「あはは、さすがだね氷河さん」
「りんかの目も見たいの…」

そんな切なそうな目で見るな俺が悪いことしてるような気分になるだろ。

かわいらしい目からそむけるように、上級生の二人を見れば。

「『……』」

今度は向こうの二人が目を瞬かせていた。しまった。

「すまない、連れが失礼を」
「あっ、ううん!」

即座に誤れば、我に返った色世がぱっと首を横に振る。そうして苦笑いをして。

「……いやぁ、正直ちょっと気味悪がられるかなぁと思ってたから、ちょっとびっくりしたかなぁって。ねぇトリスト」
『……』
『ここの二人もなんかアルの?』

こっそりになっていないが耳元で問うてくる誓真に頷く。

「人としては知らないが。種族であればお前ら同様心当たりは」

まずトリスト。こちらは模様が入っている時点で言わずもがな悪魔の種族。この種族の特性は「いたずら好き」。ハロウィンでは異種族交流の接点となって良く語られてはいるが、もとは厄介すぎるいたずらをするからその抑止として契約があっただけ。つまりは厄介者として有名である。トリストを見た感じはそうは思えないが。

次に色世。こちらは相当珍しい種族。

「色の鬼で色鬼(しき)と読み、見てわかる通り目や爪……生物によるだろうが髪や毛の色がよく変わる」
「せいか~い。噂に違わぬ博識さんだね~」
『あんまりよくないの?』
「良くないわけではないがな」
「まぁヒューマンにはなじめないよねー」

本人は笑っていうが、その笑みはどことなく寂しげ。しかし事実でもあるわけで。

どうフォローすればいいか悩んでいれば。

「♪」

その悩んでいる間に緩んだ手から抜けたクリスティアが、二人のもとへと楽しげに駆けていった。

「あは、ヒーローのおでましだね」
「……みたいだな」

閃吏に苦笑いをこぼしてやりながら、クリスティアを見やると。

恋人は二人を交互に見てどちらから堪能しようか悩んでいる様子。きょろきょろと交互に見ては、興味が強いのはトリストなんだろう。じっと彼を見つめた。

『……』
「毛、もふもふ?」
『少女よ』
「刹那ー」
『……』
「先に言い忘れたがまともな会話は無理だと思ったほうがいいぞ」
「失礼…」

いや大正解だろうが。
本人と違って納得してくれたらしいトリストは軽く息を吐いて、クリスティアを見る。

『刹那よ』
「なーにー」
『私は悪魔である』
「?」
『世間では厄介者扱いされる悪魔だ』
「…」

言外に「自分のことが嫌ではないのか」というような発言。大体の奴ならば察して何か言うだろう。

だがクリスティアが察せるはずもなく。

「…?」

だから? と言うように首を傾げてしまう。思わず閃吏と二人、噴き出してしまった。

『……刹那よ、私は悪魔である』
「うん…聞いた…」
『嫌ではないのか』
「なにがー」

トリストの顔がだんだん迷宮入りというような顔をしてきていてだいぶ腹がきつい。すまないとは思うが言葉が出るのはまだ先になりそうだ。
未だ首を傾げてしまっているクリスティアに、答えへの道しるべを出してくれたのは色世。

「関わるの、嫌じゃないのーってトリスト聞いてるんよ」
「?」
「いたずらされたら嫌じゃなーい? って」
「…」

そこでようやっと腑に落ちたのか、クリスティアはトリストをじっと見る。

そうして数秒。

小さな少女は、口を開いた。

「…うちにも、いたずらっ子いるの…」

トリストと色世の目が開いていくのにも構わず、恋人は続ける。

「みんなでねー、そのいたずらいっぱい楽しんでるの」

だから、

「トリストも、いっしょにあそぼー」

ね? と。おそらくほとんどの者が触れてくることなどなかったであろう毛並みに、クリスティアはいともたやすく触れた。驚いて固まっているトリストに笑ってから、恋人は次なるターゲットへ。

「りんかも」
「え」
「目、かわいいー」
「……爪も、変わるよー」

そっと伸ばした手を、小さな手が取り。
恋人はまじまじと、本日は赤らしい爪を見て。

恋人は、大好きな赤もあってぱっと顔をほころばせた。

「華凜がねー、ネイル最近ハマってるの」
「……」
「りんかも今度いっしょにやろー」
「……いいの?」
「?」

だめなの? と聞くように首を傾げるクリスティアに、色世は呆けて少女を見やる。その顔を見て、クリスティアは何度か瞬きし。

最終的に。

「りんかも、あそぼ?」

いつものようにこてんと首を傾げて、笑った。

それに止まってしまっている二人に、閃吏と顔を見合わせて笑い。

『ねぇ、アタシもっ! アタシもネイルしたいよっ!』
「やろー」
「その前に作戦会議とバトルリレーからだからな」
「そろそろ始めないと時間なくなっちゃうよ」

話が脱線しそうなのをすかさず戻して。

「色世達も」
「えっ、うぇっ!?」
『!』
「遊ぶ話はまた今度でも?」

やっと我に返った二人に聞けば。
一度顔を見合わせてから。

「よ、喜んでー……?」
『……』

未だ不思議そうではあるが了承はいただいたということで、ひとまずは作戦会議のためにと恋人の背を押してその場で輪になった。

第一グループが走り出したと同時にこちらでは輪になり、改めての軽い自己紹介の後作戦会議へ。

そして。

「……構わないならやるが」
「ぜひぜひ~」

上級生がいるにも関わらず、指揮権は何故か俺達へと渡されている。

「えっと、大学生だったらバトルリレーのこと、俺たちよりわかってるなぁ、とは思うんですけど……」
「”わかってるー”、と”できるー”は違うのだよシオンくーん。それに」

色世は言葉を託すようにトリストを見た。その目を受け取ったトリストは頷いて。

『知り合いが多いのであればそなた達の方が対策は立てやすい。私も淋架に異論ない』
「……まぁ知り合いは確かに多いな」
「チーム含めて八人だもんね」

言う通りレグナやカリナがいるのであればこちらでやらせてもらうのは好都合。
それと、「上級生だから」ではなく「目の前の敵に勝つために」という思考は正直大変好ましい。

ここは言葉に甘えさせてもらって。

「……わかった」
「じゃあリーダー、お願いしまーす」
「閃吏リーダー、頼むぞ」
「冗談きついよリーダー炎上君」

リーダーなんて柄じゃないだろ。
けれどこれで言いあっていても時間の無駄。

溜息を吐き、リーダーの件は置いておいて。

作戦会議より第一グループのユーア達にくぎ付けになっている恋人を膝の上に乗せてから。

「始めるか」

頭を切り替えて、今回の勝利のための作戦会議へ。

「えっと、やっぱり今回愛原さんが結構厄介、だよね? 心理戦頭脳戦はお手の物でしょ」
『ソレって武煉センパイもでしょっ? すごいめんどくさーいってフィノアセンパイも言ってたよ!』
「武煉君はそうだねぇ」
「知り合いか」
『その辺りの者は武闘会で有名だ。遠巻きにするものも多いが、誰もが嫌でもチェックはしている』
「なるほど」

確かにあのタッグはなかなか厄介。

「加えて言うなら細かく見渡せる蓮もいるしな」
「うわぁ……あのこれ、作戦考えて意味あったりする……?」

あるんじゃないか、と言おうとしたところで。

ずっと第一グループを見ていたクリスティアが動いた。

小さな恋人を見ると、嬉しそうに俺を見ている。その顔は「もちのろん」と言っているようで。

笑って、閃吏に頷いた。

「なんとかなるだろ」

言いながら、頭の中でレグナ達のチームを考えていく。

できればうまい具合に”当てて”切り抜けていきたいのが本音。

「……」
「えっと、ラストはどうする? 足の速い氷河さんがいいのかな。去年氷河さんと当たったところは”捨て”って言ってたし」
『刹那先輩足ホントに速いよね』
「五十メートルは五秒ー」
「うわぁ、早いね~」
「一気に切り抜けられる?」

伺うようにのぞき込んできた閃吏に。

「……いや」

恐らく去年のレグナと同様に、首を横に振る。

「刹那は去年同様ラストには行かせない」
「え、逃げ切りできそうなのに?」
「まぁできなくはないんだろうが」

こちらを見上げてくるクリスティアに笑って、小さな頭を撫でてやる。

「相手は華凜だ。ラストに刹那が来た場合の対策は必ず入れてくる」

そもそも、

「逃げ切りができるのはこちらが一位で通過していた場合だけだしな」
『しかし去年、何名か抜いていなかったか』
「去年は華凜がいなかったし、そもそも知り合い自体ほとんどいなかったから意味をなさなかっただけだ」
「えっと、問題は……」

問うてきた閃吏を見て、またクリスティアを見る。

「まず刹那は挑発にめっぽう弱い」
「え」
「相手が目の前に立ちはだかった場合、抜けなくなってくるとだんだんむきになる」

相手がレグナだった場合は最悪である。今回はケガの危険性を考慮して睡眠魔術は無しと考えてもクリスティアの扱いは非常にうまい。挑発をするとあいつもつられてしまうという欠点はあるものの、鍵になる言葉も踏まえてクリスティアを足止めする役割は十分ある。

「加えてその身軽さゆえに吹き飛ばされやすい。逃げ切りはたしかにできるが一度捕まればそれで終わりというオプション付きだ」

飛ぶのも手だがスピードは格段に落ちるため本末転倒。

「よって刹那のアンカーはなし」
「よ、容赦ないね炎上君……」
「バトルだもーん…」

なぁ、とクリスティアと笑いあって。

「まぁラストに蓮が来ることはないんだろうが」
「あれ、でも去年にいなかったけーあの黒髪くん」
「一年チームだったからな。刹那をアンカーから抜くということで一番の戦力になる自分に回ってきたんだろ」
「だいせいかーい…」
『じゃあ武煉先輩か陽真先輩っ?』

誓真の問いに、一瞬考えて。

また、首を横に振った。

「ラストは華凜だ」

瞬間、閃吏が目を見開く。

「え、愛原さん?」
「だろうな」
「戦力的に陽真くんたちじゃなくてー?」
「陽真はトップで来るはずだ」

あそこは知り合いが四人なので他二人が読めないのが痛手だが。戦力は申し訳ないが少々下に見させてもらうとして。

「トップに陽真、二番手で知り合いでないどちらか、武煉が入ってまた知り合いじゃない者、蓮、華凜の構成だろ」
『えっ、えっなんでそんなにわかっちゃうの!?』

何故。
何故かと言われれば。

「まず一つ。こっちの身内が四人入ったことであそこのチームの決定権は一番采配のうまい華凜になる」

不良が四人も集まればそりゃあ決定権は自ら譲るだろう。あいつの性格だからうまく意見は取り入れるだろうが。

「武煉も入るだろうが、華凜の方が俺達のことをよく知っているからな。最終的な決定権は華凜。で、トップから何故そうなったかと言えば」

一人ずつ、指折っていって。

「陽真は妨害魔術持ち。トップの走り出し一発目で妨害魔術を使えば距離が開けられるな」
『そ、そうだね』
「一回二番手は飛ばして武煉。ここは中間地点というのもあってある意味大事な点でもある。陽真と同等な能力を持っている武煉が適切だろう。五番手の蓮は刹那対策。仮に刹那が来なくても風魔術で加速できる上、あいつは魔術の保有量も多い。状況を見て適切に対処ができるからそこに来る。合間に知り合いでない者を挟むのは能力が未知数だから。足が速ければ当たり。仮に少々遅くとも武煉と蓮で挽回ができる」
「で、最後はその華凜ちゃん、っていう子? 女の子?」
「一番厄介の、な」

今回も細かい行動は予想できないだろうと思わず空笑いが出てしまった。

「まぁラストに来るのは先入観をあおるだけのものだろうが」
『せんにゅー、かん?』

そう。

「自分は光魔術であなたたちを妨害できます、というのを”見せるだけ”のもの」

その言葉に引っかかったのはさすがの閃吏。

「見せる、だけって……あれ、愛原さん光魔術は使える、よね?」
『使ってたよね!』
「あぁ」

ただし。

「今回のこのバトルリレーであいつは光魔術は使えない」

瞬間、クリスティア以外のメンバーは目を見開いた。
まぁそうだよな。

けれどそれが”心因性魔術”と呼ばれる魔術の最大の弱点。

「華凜と蓮がときおり出す心因性魔術――光と闇の魔術は、簡単に言えばテンションの高さ・低さで強さが変わる。ただそれはわかりやすく説明するためだけのもので、実際はもっと複雑だ」

心の状態、現在の環境、周囲の状況。

「いろいろな条件が複雑に絡み合ってあの心因性魔術は発生する。今のあいつには悪条件が揃いすぎた」
『悪条件とは』
「……でかいものは二つ、だろうな。一つはミッション遂行走でのラスト」

本人的には明るく保っているが記憶はいいばかりのものでもない。精神的には結構来ているはず。

「それと本人の性格だな。あいつは笑っているが不測の事態にめっぽう弱い。加えてプレッシャーにも精神はあまり強くない」

ただただそれを見せないだけで。

「ラストでは戦況をずっと見守っていることになる。追い抜かれた追い抜かした、予想と違う、恐らく俺に読まれたというのも踏まえてあいつには相当ストレスになる。そのストレスは、蓮だったなら闇魔術を撃つのに最高な状態だが、華凜にとっては最悪な状態になる」
「え、でもラストに来るってことだよね、愛原さん」
「そうだな。基本的には撃てないだろうが、もちろんその場の状況はわからない。思わず好調に進んで本人のテンションが上がれば撃てることもある」

だからこそラストにあいつは来る。

「光魔術を撃てる場合、あいつはラストでしか撃てない」
『あ、頭がこんがらがっちゃうよ! ラストだと撃てなくて、でも撃つんだったらラストしかないの!?』
「そういうことだ」
「なんか矛盾ー。妨害で撃つんだったら陽真くんと交代で一発目に行っちゃったほうがいいんじゃない?」
「それができないからラストなんだろう」
『初回では何故撃てない』
「そこも心因性魔術の特性だ。あんたの種族特性で使えるものと違ってあれはコントロールができない」

様々な条件が複雑に絡み合って発動する心因性魔術。
案外生物は「思ったより大丈夫だった」、「思ったよりひどかった」という無自覚が多いもの。

「案外撃ってみたら思いのほか強く出てしまったというのもざらだ。華凜の光魔術は小さな光でも目が数秒使い物にならないくらい強い。他のチーム戦ならばよかったが、バトルリレーは規定に引っかかる」
「……! 強すぎて他走者の妨害になるってこと?」
「そういうことだ」

あいつの魔術の場合広範囲ともなれば少なからず次の走者に影響が行く。それで次走者が走れないともなれば失格扱い。

「まぁ華凜レベルともなればラストでも許されるかはわからないが。次の走者がいないというのを見れば撃っても大丈夫だろう」
「じゃあそれで撃つのも考慮してラストに、かな?」
「だろうな。あとは俺がラストに来た時の対策でもあるんだろう」
「えっと、炎上君ラストにって思ってたけど……大丈夫?」

言外に「いつも言い負かされてるけど」みたいに聞こえるな。あながち間違いじゃないが。

「今回は平気だ。むしろ行く」
「たのしいもんね…」
「あぁ」

クリスティアに笑ってやって。

《第二グループ、準備開始をお願いします》

アナウンスが鳴り、閃吏達が慌てだした。

『じゅ、順番! 順番決まってないよっ!』
「えぇとラストが炎上君で!?」
「……」

慌てているのを横目に、ざっとメンバーを見回した。

クリスティアをレグナに当てるのはまずい。できればまだ能力値が割れていない奴の方が効果的。よって閃吏もアウト。誓真も違う理由で除外。
となれば。

「色世、トリスト」
「はぁい」
「何ができる」

問えばすぐに理解してくれたのか、色世は手を差し出した。

直後にその手のひらには、色世を模したような水色の小さい鬼が。

「こういう色鬼(いろおに)が出せるよー。水色が水属性、赤が火属性~。いろいろな属性持っててー」

そっと手を伸ばしたクリスティアを視界に入れて。

「ちなみにみんなスタンガン付き警棒もってまーす」

その言葉を聞いた瞬間すぐさまクリスティアの手を掴んで止めた。

「なんて物騒なものもってやがる……」
「わたしの武器がそのまま反映されちゃってね~。いい感じにびっくりはできるかな!」

本当にな。
クリスティアをしっかり抱きしめて、今度はトリストへ。

「悪魔となれば闇魔術がデフォルトだと思っているが」
『正解だ。ほかには持っていない。刹那ほどではないが足の速さには少々自信がある程度だ』
「……」

となると。

頭の中で組み立てていき、答えを出した。

「トップは誓真」
『えっ!?』
「陽真が来た場合一発目で霧か沼の妨害魔術が来る。おそらくお前がいるとなれば霧の魔術の方が可能性は高いだろう。あれの効果範囲はざっと高さ二メートル強。スタートした瞬間に高く飛べ」
『ワ、ワカッタ!』
「次はトリスト。足の速さで一回差をつけてもらえるか」
『尽力しよう』
「次は閃吏で」
「えっ俺木乃先輩!?」
「お前の目なら避けるくらいはたやすいだろう? 柔道とかでも一緒じゃないか」
「そ、そうだけど……!」
「クロスボウで妨害しつつ突っ走れ。なんなら去年同様バトンを投げてもいい」
「えぇ……」

不安そうな閃吏に「頑張れよ」と言って。

クリスティアに目を向ける。

「四番目は刹那」
「はぁい…」
「思いっきり走って来い」
「わかったー」
「じゃあ次わたしー?」
「あぁ。蓮がいる。色鬼で驚かせてやれば少し隙もできるはずだ」
「おっけー! 任せて。ラストはお願いねー」
「あぁ」

さて決まったところで行こうかと、準備も促されているので立ちがれば。

「!」

ガシっと、腕が掴まれた。その方向を見やれば先ほど心配そうな顔をしていた閃吏。今は顔が変わって少々苦笑い中。

「どうした」
「えっとその、提案が、あるんだけど……」

歯切れの悪い閃吏に、今一度座り。

「なんだ」
「その……」

手招きをされたので、耳を近づければ。

「……まじか」

思わぬ提案に、今度は俺が苦笑いをする番だった。

閃吏の提案は状況に応じてという条件を付けて飲み込み、自分の持ち場へと歩いていく。
一人ずつメンバーを置いていく中で周りの状況を見れば。

トップに陽真、二番手は知らない者、三番手は武煉。四も知り合いではなく、五番にレグナ。

「わ~、大当たりだね龍くん」
「さすが龍ー…」
「あとは問題の華凜だな」

何しでかすか。遠い目をして、まずはクリスティアの持ち場へ。

そこにしっかり立たせて、視線を合わせるようにしゃがむ。

「しっかり走って来いよ」
「うんっ」
「さっき言ったのもしっかり守れるな」
「もちのろーん」

そこが少々不安だが。まぁ大丈夫だろうと、これは勝負だとなんとか自分に言い聞かせ、立ち上がる。

「一位で通過したらごほうび?」
「そんな話をした覚えはないが。抱きしめてはやる」
「がんばるー」

かわいい恋人に笑って、頭を撫でてからその場を後に。

「かわいいねぇ」
「自慢の恋人だ」

最後に分かれる色世と歩きながら、ときおり可愛い恋人を振り返り。気づいて手を振ってきたのに微笑んでやる。

その少女が先ほど言った言葉を思い出して。

「迷惑ではなかったか」
「んー?」
「ネイルの話」

聞けば、すぐさま笑って首を横に振られた。それは先ほどのように寂しげなものではなく。どことなく楽しげな笑み。

「ぜんぜーん。むしろ嬉しかったよ~」

そう、今は黄色に変わった爪を見て、こぼす。

「女の子でそういうの、したことないからさ~」

憧れだったんだよね、と。心底嬉しそうな目を見て。

「……ならよかった」

うちのヒーローはどこまでもかっこいいなと惚れ直しながら、目的地へと足を進めた。

そうしてアンカーの場所へと行けば、やはり華凜が少々不服そうに立っていた。

「ラストの予想は大当たりでしたのね」
「おかげさまでな」

隣に立ち、始まるまでの数分間、軽いストレッチをする。

「いいです、他のところで挽回しますから」
「できるといいがな」

すごいな隣から殺気が。
それには余裕の笑みで笑ってやり。

《それではバトルリレー第二グループ。用意》

アナウンスの声に、首を最後に回してトップバッターへと目を向けた。

第一走者は足を一歩引き。

《スタート!》

銃声の音と共に走り出す。

その直後、やはり陽真が止まった。

それを見た誓真は大きく飛び上がり。

【ネブリーナ!】

陽真が放った霧の魔術を見事に回避。それと同時に隣で歯ぎしり。

「そこらへんは予想済みだ、残念だったな」
「いいですよ、あなたのところ以外は距離離せましたからっ」

負け惜しみに噴き出してしまいそうになるのをなんとかこらえながら、一位の誓真、止まったことで二位で続く陽真を見やる。誓真が有利ではあるがやはり陽真、足も速いな。だいぶ追い付いている。

それに焦ったのか、誓真が動いた。

後ろを振り向き、大きく手を振り上げて。

『あ、アッチ行ってー!』
「はっ、おわっ、ちょっ……!」

その小さい体から大量の真珠を地面に出し始めたじゃないか。

予想外だわ。

「すごいな、真珠で転がって陽真が見事に流れていく……」
「……ちなみにあれは作戦でしたの?」
「そういうことにしておきたいんだがな」

正直に想定外だったことを認めておくことにした。

ただ嬉しい誤算ではある。誓真が大量の真珠で陽真含む走者を流したため独走状態でトリストにバトンが渡った。

「距離を離すチャンスだな」
「ご安心くださいな、いざとなれば我々兄妹でテレポートしていきますから」

プライドが高いから絶対しないくせに。けれど強がりをひっぺがすことはせず。陽真からトラのビーストにバトンが渡ったのを見る。
トラだけあってさすが速いか。トリストももちろん速いが距離は詰められたな。

けれど魔術を使うよりかは走った方がいいと判断したんだろう。誓真のようにはせず、トリストは走って行って閃吏へとバトンを渡す。

「武煉先輩と閃吏くんとはなかなかな組み合わせですわね。閃吏くん骨折られないかしら」
「テンションが上がるようなことしなければ大丈夫だろ」

なんて冗談をかわしながら、トラのビーストが武煉にバトンを渡したのを見届ける。カリナにとっては一番挽回できるところだろう。

残念ながら、と思ってしまうのは仕方ない。ただ顔だけは無表情を保った。

レースでは閃吏も走るが武煉の方が早く、段々と距離が詰められていく。かわしている言葉は聞こえないが武煉が「お先に」とでも言っているんだろう。
そうして、抜かされるくらいのタイミングで。

閃吏が動く。

「氷河さーん!」

去年を思い出すような可愛らしい笑顔を浮かべて、閃吏はクリスティアに手を振った。
それに覚えがある陽真やレグナが声を上げる。

「武煉! 気にせず走れ!」
「このままなら抜かせないから!」

カリナも思っているだろう。バトンを投げるといっても距離があるから落とさないためにはかなりの放物線を描くことになる。去年見事に体感したが特段投げるスピードも速くはなかった。
だからこのまま行けば順位変わらず行ける。それは間違いじゃない。

それが去年のままだったらの話だが。

「あいにく閃吏もレベルアップしているからな」
「は……」

なに、と言うようなカリナには不敵な笑みを残して閃吏に目を向けた。
当の閃吏は。

「行くよー!」

と笑顔で言って。

バトンを、二年になってから装備していることが多くなったクロスボウへセットした。

「は、ちょっと待ってください」
「誰が待つか」

それをクリスティアへ向けて。

「それっ!!」

狙いを定めて発射した。

どよめきが起こるがバトンは止まることはなく、放物線など描くこともなくクリスティアへと向かって行く。

そして向けられたクリスティアは。

「♪」

あらかじめ言いつけておいた薄めの氷の壁を作って、バトンを受け止める準備中。そうして閃吏のバトンはきれいに壁にぶつかり。

薄めに作らせたこともあって、ぱりんと音を立てて見事にはまった。

きちんとはまったのを確認して、クリスティアは魔術を解き一気に走り始める。

それを見届けてからカリナに目を向ければ。

「ちょっと嘘でしょう??」

信じられないと言った表情でこちらを見ていた。

「本当だが。閃吏発案だ」
「彼には毎回驚かされますね……バージョンアップで来るとは思いませんでしたよ」

俺もまさかバージョンアップで発案されるとは思わなかった。

―まぁ、

「これでまた一気に距離が空いたな」

勝ち誇って笑うと、その顔は悔しげなものに変わる。この状況で一気に光魔術の可能性はゼロに近くなったか。正直あの作戦は不安があったが、厄介なものを潰せたしクリスティアも無事。結果オーライということで安堵の息を吐き。

ほぼ独走状態で一気に駆け抜けたクリスティアが色世にバトンを渡したのを見届ける。

少し遅れてレグナがウサギのビーストからバトンを受け取り、そこから続くように第五走者にバトンが渡っていく。

色世との距離は数メートルくらいと言ったところか。差が一気に開いたとは言えどレグナならすぐ追いつけるな。

第五走者が走っているということで少しずつ自分で準備もしつつ、去年の閃吏のように何があってもいいように構えておく。

足首を回していればレグナが色世に追いつき、他の走者も色世を抜かそうと寄ってきた。あぁこれは少々想定外だったか。まぁ何かあれば閃吏みたいに投げてくるだろうと考えつつ、準備は怠らない。

「詰めた距離がなくなってしまいましたね」
「そうだな」

少々嬉しそうなカリナの声も余裕に返し、首を横に倒す。色世はスタンガン警棒で襲い掛かってくる奴らに対応中。レグナも混ざりつつ……あいつ隙を見てあそこから抜けるつもりだな。さりげなくこっちに向かってきているな。

色世はこっちに向かおうとしているが妨害されて――って待て。

色世の奴バトンどこにやった??

手に持っているのは黒い警棒のみ。俺達は本来黄色のバトンを持っているはずだが。

「あなたのチームバトンどこに落としたんですか?」
「見当たらないが」

付近を見ても混戦していることを除いてもそれらしいものは見当たらない。あいつまじでどこにバトンやったんだ。体にしまったか?

さすがの想定外にバトンを探していると。

「え」
「ん?」

カリナが声を上げたのでそちらを向く。カリナは上を見ていた。

上?

倣って見上げれば。

「……」

なんとバトンを持った色世の小鬼がふわふわとこちらに降りてきているじゃないか。色は緑。浮いているところを見ると……風か。

そう来たか。

「これは本当に想定外だな……宅急便かこれは」

意思疎通できるのかお前。頷いたな。ひとまず小鬼からバトンを受け取って。

「色世! 受け取った!」
「わぁほんと~! あとお願いねー!」
「えっちょっとそれありです!?」
「バトンを投げるのがありならこれもありだろう。先行くぞ」
「ずるいっ! 蓮!!」
「ちょい待って!」

色世に報告だけして走り出す。
去年同様最初は独走か。すぐ妨害が来たが。

と思った矢先に魔力の感覚。

魔術が出てくるであろうタイミングで止まれば、目の前には花の柱が飛び出してきた。犯人はもちろん親友の妹。

「簡単には行かせてはくれないな」
「もちろんですわっ」

振り向けば、カリナ。そしてその手には投げてもらったであろうバトン。走るにしては短すぎる時間だしな。レグナの魔術があれば落とすこともない。

ちらりと周りを見れば俺が走り出したことで周りもアンカーへとバトンを渡すため走ってきている。追いつかれるのも時間の問題か。

「お前を押しのければこのまま一位なんだがな」
「させませんわ」

走り出し、俺は短刀、カリナは刀をそれぞれ出して刃を交える。特有の金属音を奏でながら何度か合わせ、押し合い、また合わせていく。

「せっかくですもの、一位にさせてくださいませ」
「お断りする」
「では、もし一位にさせてくださったら」

刃が離れた少しの時間でカリナは忍ばせていたスマホを取り出した。

そうしてすっとこちらに画面を見せる。来たかと身構えてそちらを見やった。

その画面には。

肩まで映っているクリスティアの写真。写真はいつもどおりだがちょっと待とうか。

どことなく、そうどことなく。

裸に見えるのは気のせいだろうか。

こいつ本当に予想できないことしやがってといろいろ思うが先に確認させてほしい。

「……俺に見せる写真はそれで合っているんだよな?」
「あら、ご自身の写真でも写ってます?」
「いや写真は刹那だが」

カリナは一度見せてきた写真を確認。しかし間違いはなかったようで。

「これで間違いありませんが」

何を言っているんだというような顔で再度俺に見せてくる。

いやお前が何言ってんだ。

裸だろう? 本当にいろいろ思うだろこれは。
何故持っているんだとか何故そのチョイスだとか。まぁチョイスはあれか、俺の動揺を狙ってか。いやある意味動揺するけども。

ゴールへと互いに走っていく中。俺達の間には沈黙が走る。

「……ちょっと、なんとも思わないんですか?」
「いや、いろいろ思うが」
「こう、あるでしょういろいろと反応が」

どう反応していいかもわかんねぇわ。

親友の妹にどうだと言わんばかりの顔で恋人の裸(らしい)写真見せつけられているんだぞ。むしろどう反応しろと。

追ってくる他の走者もなんとか視界に入れつつ。

「……ちなみに望んだ反応は」
「何してんだと照れてスマホを取り上げようとしてくる反応でしたね」

あぁ、その取り上げようとしたところで本当に小さい光魔術で目くらましか。
引っかかってたまるか。

苦笑いだけはどうしても取れなかったがなんとか平静を取り戻し。

他の走者から魔術の気配がしたので、無効化魔術のリフレインを展開しながら走りつつ。

「……予想した反応でなくて悪かったな」
「本当ですよ。あなたたまに本当に男性か疑いたくなりますわ」
「安心しろ、れっきとした男だ」
「れっきとした男に見えないからいつも疑うんでしょうよ」

俺としてはお前の性別を疑いたいんだが今は不問にしておこう。

カリナの不満そうな言葉に適当に返事を返していきつつ。

ここの打開策を。

おそらくただ単純に走り出せば追いかけてくるだけ。そして変わらず写真で何かしら言って来るだけ。このままゴール前に行くことも可能ではあるがそれもこいつの計算のうちには入っているはず。ゴール手前でこちら側によろけて反射的に支えようとした俺に小さい光魔術だとかで目くらまし、その間にゴール、が一番可能性が高いだろう。他にはこうして話しながら隙を伺って足元に何か仕掛けるか。

どのみち自分がゴールするために何か仕掛けてくる。そしてその相手をしていれば周りも追いついてくるし現段階で追いつかれ始めている。これはいただけない。クリスティアには褒美をやると言っているし、その俺が負けるのもかっこつかないだろう。自分が選べる選択肢は勝ち一択。その勝ち一択を選ぶには、

一番厄介なカリナを動けないようにすればいいだけである。物理的にではなく精神的に。

頭の中で計算が終わったところで、未だ不服そうにしながら、何か練っているんだろうその女に目を向けた。

「……ちなみに華凜」
「はいな」
「その写真どうやって撮ったんだ」
「あら、気になりまして? それはもちろん、私が撮れると言えば更衣室でしょう」
「着替え中に?」
「そうですわね。まぁ素敵なお姿で」

そうにこやかに、若干恍惚とした顔で語っているカリナに、「そうか」と返し。

「ならば」

と。カリナに一番打撃のある言葉を紡ぐ。

「刹那にはお前が着替え中に写真を撮る変態であることと、あまつさえこういった交渉の賄賂に使っていることをしっかり伝えなければな」
「っきゃーーーー! 待ってください待ってくださいそれだけはお許しくださいなっ!!」

一瞬で焦り始めたカリナに笑いはこらえながら、足を進めていく。相変わらず不測には弱いな。

「親友に裸を撮られるとは……刹那もとんだ親友をもったものだな」
「待ってください冗談なんですよこれほらっほら見てください黄色のっ、いつもの服映っているでしょう!? これあれですよほらっ、あれ!」

てんぱりすぎて「あれ」しか言えてないぞ。

「あのほらっ、いつも来ている黄色の服があるでしょう!? あの服の状態をカットしたんですトリミング!!」
「へぇ」
「断じて裸なわけではないんです本当に!! 待ってくださいな龍お待ちになって」

慌てふためき最終的に立ち止まって俺に訴えかけるカリナを置いて、俺はただただ走り続ける。

「龍待ってくださいほんとにっ、お話ししましょう龍!」
「断る。刹那には伝えておくから安心しろ」
「安心できないですあの子の中でこれ以上やばい奴にしないでください龍っ!!」
「ふはっ」

自業自得だろうと思いながらも、離れていくほどにじわじわと笑いがこみあがってきて。

ゴールも近づいているのにだんだんと自分の走るペースが遅くなっていく。

「ふ、……っ」
「ちょっと龍笑い事じゃないでしょう!?」
「いやこれは笑うだろう……お前のてんぱり具合……ふはっ」

だめだつぼって立ち止まってしまった。他の走者も追いついてきているから走らねばならないのに。

「お前は本当に予想ができないことばかりするな……笑いすぎて腹が痛い」
「あなたが勝手に笑ってるんでしょうよ」

あぁ笑っていたらカリナもこっちに追いついてきたか。
ゴールまでの距離は残り数十メートル。単純な足ではカリナは俺には敵わないがこの笑った状態だとなかなかきついか。

ゴールまでは風魔術か何かで後押ししてもらうとして。今魔術を使えばこいつも引っ付いてくるな。それはいただけないのでここで落とそうか。

若干目ににじんできた涙をぬぐってから、スマホを取り出す。
フォルダに入れてある写真をスクロールしていって、目的のものをタップした。

「華凜」
「はいな」
「次やるならこれくらいうまくやれよ。あとその不測の事態に弱い癖早く治してこい」
「? は……」

言いながら、カリナにスマホを投げて。

逃げるため魔術を一気に練り、風に乗る。

恐らく画面に映るものを見ただろう。

クリスティアとカリナの、なかなかきわどい後姿の写真が。

「ちょっと!! なにこれ!!」
「何かに使えそうだからと取っておいた」
「何かってなんですか変態!」
「お前の頭の中がだろう。こういうときに使うんだ」

お前を蹴落としたいときに、と。

笑ってやって。

「~~~~~っ!! あとで刹那に言いつけてやりますからねっ!!!」

長年頭脳戦で可愛がっている妹分の大層悔しげな声を聞きながら。

二年連続で、バトルリレーのゴールを切った。

『新規 志貴零』/リアス

おまけ
総合優勝はフィノア姉のいる青組でした。
今年は涼しげな外装とパッケージが人気の有名お菓子屋さんのお菓子購入チケット
ユーア『みんなでお菓子パーティーですっ』
フィノア「新しい子も入ったなら歓迎パーティーしましょぉ」
ウリオス『嬢ちゃん菓子買いつくしてやっからな! 待ってな!』

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