また逢う日まで 先読み本編second June

月始めと言えば「合同演習」ってすぐ返せるくらい身についた笑守人のほぼ月一恒例行事、合同演習。

「刹那動きにぶったんじゃないの」
「そんなことないもんっ…!」

復活してだいぶ経ったクリスティアは万が一を考えてもう少しだけ幼なじみと対戦を、ということで今月は俺が担当。相変わらず早いなーなんて思いながらも口からはそう言って、売られたケンカを買いやすい小さな親友が突撃してくるのに笑いをこぼして千本で彼女の氷刃を受け止めた。

「すぐそうやって直進するから龍にだって勝てないんだろ」
「蓮だって勝ててないっ」
「うわそういうこと言う?」

俺もケンカ買いやすいのは一緒なんだけども。カチンと来た言葉に押し合いしてる武器をぐぐぐっと押していく。

「闇魔術あれば強い、のにっ、変な、プライドでっ使わないからっ!」
「プライドとか、そういうんじゃ、ないんだけどっ!! どのみちあいつ闇魔術だって、防げる、だろっ!」
「でもっ、しょーりつ、あがるもんっ! プライド、捨てればっ!! 龍みたいに、ぽんって、捨てればいいっ!!」
「あいつがっ、簡単にプライド、捨ててると思うなよっ!!」

ごめん親友、フォローしてみたけどちょっと嘘ついたかもしんない。
お前結構簡単にプライド捨ててる記憶しかないかもしんない。ごめん。

なんて心の中で謝りながら、どこか冷静な頭でしっかり魔術を練っていく。

「そんなことより刹那」
「逃げた…」
「逃げてませんけど??」

思いっきり押し込んでやれば軽い体は弾かれて遠ざかる。負けじとまた向かってきたクリスティアの刃を受け止めて。

「俺のどこが逃げてるって?」
「いっつもそう…さりげなく都合わるいとこは話そらす…」
「さりげなくならいいだろ、妹みたいに露骨にさけたりしないわ」

おっと妹のいる区画からすっげぇ殺気。

「ねぇ華凜って耳よかったっけ」
「わたしがいると異常に耳いいよね…」
「あぁ……盗聴器でもつけてんのってくらいの地獄耳なるよね」

あの耳どうなってんだろうね。あいつ俺の耳おかしいとか言うけどあいつの方が絶対おかしい。

「刹那そろそろ家の中しっかりチェックした方がいいんじゃない」
「家の会話は平気…なんか半径何メートルかくらいのところがやばい…」
「えぇ……まさかの地で聞こえてるやつなの?」

盗聴器の方がまだ潔くねと思うのは俺の感覚がまひしてるだけか。

っと。

話してる間にゆっくり練っていた魔術も完成。

というわけで。

話に夢中になってるクリスティアと押し合い中の武器を引く。

「、わっ…」

そうすれば当然クリスティアは力を入れてた俺の方向にダイブ。片手で飛び込んできた彼女を支えるようにしてやりながら。

もう片手は、額の方へ。

「!」
「言ったじゃん、動きにぶったんじゃないのって」

油断しちゃだめだろ。

そう笑って言えば、バランスを崩して体制を立て直せないクリスティアはそれはもう不服そうに頬を膨らませた。かわいいそれには俺は笑うだけ。

変わらず手を額へ持って行って。

【睡陣】

俺の魔術で眠り、倒れこんだクリスティアを抱きとめて。

「勝者、波風!」

対クリスティア戦は今回も勝利ってことで。心の中で笑って、クリスティアを抱えながらスタジアムを後にした。

「意外と言い合いするんだな波風」
「そりゃもちろん」

とくに刹那とはね、と。
ほぼ同じタイミングで演習が終わった祈童・道化ペア、リアス・ウリオスペアと合流して観覧席に上がってく。

「二人だとすっごく穏やかな感じがするわ!」
『とくに蓮の兄貴はにこにこ笑って流しそうだけどな』
「まさか。この二人の方が喧嘩すると厄介だぞ。なぁ?」
「…」

起こして終わりの合図をもらったクリスティアはリアスに言われるけれど。不服そうな小さな親友は抱きかかえられたまま頬を膨らますだけ。それに楽しそうに笑みをこぼしたリアスは今度は俺に同意を求めるように見てくる。

「……別にそんな厄介じゃないと思うけど?」
「最終的に武器取り出して戦い出す奴らのどこが厄介じゃないと?」
「刹那が先に出すんだろ」
「蓮だって出すもんっ、蓮の方が多いっ」
「刹那が出すから俺も出すんですー」
「蓮が出すから刹那も出すの…」

そうしてにらみ合いが始まって。

互いにすぐさま手に武器を握る。

「見事に同じタイミングで出したな」
「止めてやらねばすぐ踏み出すからな。とりあえずしまえ」

変わらず楽しそうに言うリアスだけど、その目は本気。しまわなきゃあとが面倒っていうのはよくわかっているので。

「…次のバトルで勝つもん」
「こっちのセリフ」

互いに武器はしまって、不服そうに目をそらした。
階段を上がっていって、閃吏たちがいる方向に歩いてく。

「これで数秒後にはいつも通りだ」
「不思議な関係ねー」

後ろで言う道化の言葉には心の中で首を傾げておいて。

「あ、おかえり」
『お疲れさまでしたわ』
「ぉ、おかえりなさい!」
『おかえりですっ』

固まってる閃吏たちのとこについて、ただいまと返しながら腰を下ろす。

「なんか珍しく波風君言いあってたね、氷河さんと」
「閃吏までそういうこと言う?」
「ぁ、ああやって言ってるの、ちょ、ちょっと新鮮ですからっ」
『笑って済ませそうですものね』
「ウリオスにも同じこと言われたけども」

俺そんなに笑ってんのかな。いや笑顔張り付けてる自覚はあるけどさ。
口々に珍しいだのなんだの言われて居心地が若干悪くなってる中。

「れーん」
「はいよ」

ぽすんと、さっきまでのことが嘘のように背中に抱き着いてきた小さな親友を受け入れる。

「あそぼー」
「華凜見てないとすねるんじゃないの」
「終わったー」
「え、嘘」

あ、ほんとだ。ティノと一緒にスタジアムから歩き出してんじゃん。
乗っかられたときに前かがみになって見えなかった。

「何してあそぶの」
「てるてるぼーず…」
「布とか持ってきてないんですけどー」

なんて腕を引っ張ってやりながら笑えば、クリスティアも笑って膝に乗った。

俺らにとってはそれがいつも通りのことだけれど。

「さ、さっきまでが本当に嘘みたいね……」
『兄貴もあっさりだが嬢ちゃんもすげぇな……』

周りからはやっぱり不思議なようで。廊下でのやりとりも見てた組は苦笑い。それに首をかしげるクリスティアにはリアスが笑った。
最近よく笑うようになったなぁと思いつつ、ぱたぱた足を揺らすクリスティアの背を叩いてリアスのとこに行くよう促してやりながら。

「不思議だなんだって言うけど、俺と刹那より不思議な関係ここ最近でできたじゃん」

俺がそう言えば、半分は首をかしげて半分は納得の顔。

「ねぇ華凜?」
「あらまぁなんのお話でしょうか」

リアスを通り越して、上に上がってきたカリナに抱き着いたクリスティアの背中から視線を妹に上げる。俺よりも常ににこにこ笑ってる妹は笑みを崩すことなく首を傾げた。

『炎上と不思議な関係の子ができたという話ですっ』
『あっ、この前の後輩クンだよねー!』
「あぁ……そうですわね。今日もいらっしゃるんじゃないですか?」
「あれは単になつかれているだけで不思議ではないと思うが」

いや俺ら幼なじみからしたらだいぶ不思議な光景なんだけど。
どうせ言っても首を傾げるだけなのはわかっているので、ひとまず全員揃ったということで授業に戻るため立ち上がる。

「あ、波風くん被服実習なら帰りに布もらっていかないかしら! てるてる坊主の!」
「あーそうしよっか。刹那何色がいいー」
「紅ー」
「だいぶ血なまぐさい感じのてるてる坊主になりそうだな波風」
「祈童しっかり祈りささげてあげてね」
「ち、血の雨ですか……?」
「それですと龍が延々と外に出れなくなってしまいますね」

逆にクリスティア喜んで外出そうだな。そして血まみれで帰ってくる。なんのホラー映画かな?

『降水確率も下げるお祈りにしてもらわなきゃねー』
『今月頭のもそれで旦那は外出なかったんだろ?』
「90%は外出しなくてもさすがに許して欲しいんだが」
『いつ降るかわかりませんものね。正しい判断だと思いますわ』
『せめて50%まで下がってほしいですっ。再来週から梅雨が始まるですっ』
「その前には一回くらいがんばりたいねー…」
「本当にな……」

話しながら演習場を出るため歩いていって、頭の片隅では今週の天気予報を思い出す。一応梅雨入りまでは晴れが続くみたいだから今週こそは大丈夫だと思うんだけどな。

「天気を操れたら楽ですのに……」

ぼそっととんでもないことこぼす妹の言葉は聞かなかったことにして。

演習場から校舎に続く通路に出れば。

「先輩……」
「お」

少し前に「不思議な関係だね」と話題になってた少年・ルクがちょこんと立ってた。そうして俺らが止まったと同時に。

『コンニチハッ!』

真珠の精霊・珠唯も人型化して俺たちに顔を出す。
リアスとクリスティア、雫来とユーアが取ってた料理の時間、種族のこともあって孤立してたらしいところを珍しくリアスが救ったことでよくやってくるようになった後輩たち。

会釈をした二人にはそれぞれあいさつを返して。

「授業はないの」

もうちょっとで終わるけども。
ルクたちもつれて歩き出しながら聞けば、珠唯と、ルクに巻き付いてる蛇のイリスが頷いた。

『三限目はお休みなのっ!』
「ずっとあそこにいらしたんですの?」
『うんっ、渡したいものがあってね。ほらっ、ルク!』

再び立ち止まって、珠唯がルクの後ろに回る。首を傾げていれば、背中を押すように飛び回ってる珠唯のエールもあってか。ルクはおずおずと一歩前に出て。

リアスの前に立った。

あ、これは絶対面白い予感。

全員それを察知したのか身を引―こうと思ったけどクリスティアはリアスに捕まってしまったので、残ったメンバーで身を引いて二人を見届ける。

「……せ、先輩」
「……」
「……」
「……」

なかなか言葉を口にしないルクだけれど、とりあえず照れているのだけは蛇のイリスを見てよくわかった。めっちゃ真っ赤じゃん。
なんとかこの面白いことが起こりそうな状況に笑いをこらえながら、二人を見ていれば。

じっと待っているリアスに、ようやっと。ルクが動き出す。

後ろに持っていた紙袋を、そっとリアスの目の前に差し出して。

「ぉ、お菓子……作ってきたんです……食べて、くれますか……」

女子かな?? なんて言いたくなるのは全員で必死にこらえた。

「……甘いものは苦手だと伝えたはずだが」
「うん、でも、その……」

あ、やばいこれ腹筋引き締めないとやばい。
ぐっと体に力を入れて。

「妹さんにも、食べてほしくて……」

ルクから紡がれる言葉に笑わまいと唇を噛んだ。
祈童めっちゃ肩震えてるけど。やめて今笑い誘発しないで。

なんとかこらえながら、ナチュラルに妹と言われたクリスティアを見れば。

「わーい…♪」

なんと恋人、肩書よりも菓子を取って紙袋に一直線である。

「ふはっ、僕はもうだめだっ……!」
「骨は拾っとくよ祈童っ……」
「勝手に死亡扱いにしないでくれないか、ふふっ」

いやお前死にそうなほど肩震えてるよ。周りもだけど。

全員骨はしっかり拾うということを決めておいて。

「はーおっかし……」

延々と続いているこの問答に、未だ腹筋が慣れることはなく。苦笑いのリアスがお菓子を一口食べるのを涙目で見る。

「あは、そろそろ蛇璃亜君に言ってあげたらいいのに炎上君も」
『嬢ちゃんが否定する間もなく菓子に食いついてるからタイミングねぇのもあるけどな』
「わ、わかりませんよ……! 蛇璃亜くんが炎上くんに、き、気があるとしたら、恋人と言ってしまったらお菓子が、も、もらえないかもしれません……!」
「相変わらず想像力豊かね雪ちゃん!」

いやまぁそれは絶対ないと思うけど。

クリスティアそういうのって意外と敏感だし。

『蛇璃亜は純粋な尊敬ですっ』
「ユーアもそういうの敏感だよね」
『もちろんですっ』
『雫来サンたちは乙女心がわかってないんだよ~』

俺の目が正しければお前も乙女ではないと思うんだけどな?? 結構女子の会話に混ざってるけど。

『助けなくてよろしんですの?』

未だ笑いそうになりながら、エルアノの問いに一回カリナを見た。
そっくりな妹はにっこり笑って頷く。それに頷き返して。

「まだいいんじゃない」

幼なじみにとってはちょっと不思議な光景を、焼き付けるように見る。

「おいしー、ですか?」
「……まぁ」

苦笑いのリアスに、嬉しそうに顔をほころばせるルク。
ほかの人が見ればただの先輩後輩だけれど。

リアスは割と、年下とはうまく行かないことが多かったりする。

もちろん「あなたが好きです!」っていう恋愛の方の好意を持った子なら、年下だろうが年上だろうが人妻だろうが構わずやってきたけど、そういうのじゃない、単なる人間関係で。

創世期時代、弟とも関係が良好じゃなかったからか。昔から「年下」っていう存在には恵まれてなかった親友。

その親友に、ちょっとしたきっかけから後輩ができていて。

「次は、甘くないのも、作って、みます……」
「……わかった」

その後輩はリアスになついていて、リアス自身もそんなに悪い気もしていなくて。

頬がほころぶような不思議な関係は、できれば少しでも見ていたいと思うのはちょっと勝手だろうか。

けれど、検閲が終わったお菓子をおいしそうに食べている小さな親友も、心なしかその関係を嬉しそうに見ているから。

ちょっと勝手でもいいかと、自分で自分を許して。

リアス自身が助けを求めてくるまで見守ってやろうと、妹とそっと笑みをこぼした。

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