また逢う日まで 先読み本編second June

あったかい体温に包まれながら、その光景を見る。

「……」

男のヒトにしてはちょっと長い、きれいな金色の髪。
愛しそうにわたしの指先を見る大好きな紅い目。

そうしてじっと見つめて。

ゆっくり、まぶたを閉じて。

大好きなヒトは、わたしの指先へ口づけた。

―あぁ。

「なんてイケメン…」
「安心を通り過ぎて恍惚としだしたな最近は……」
「あきれた顔もかっこいいと思う…」
「それはどうも」

せっかくほめたのに、大好きなヒト―リアス様は苦笑い。そうしてまた指先に口づける。

「わたしなりに想いを伝えているのに…」
「なんだろうな、どう反応していいかがわからない」
「恋人はかなしい…」
「さいで」

適当にはぐらかして、指先からほんのちょっと上がってまたキス。体が勝手にびくってなったけど、リアス様がぎゅってしてくれてほっと息をついた。

リアス様の方はいろいろあって遅れたけれど、一緒に行動療法頑張ろうね、って始めてから、もうちょっとで一か月。

リアス様がわたしのために前とはやり方変えてくれて、ぎゅってしながらっていう、一番安心する方法でキスをしてくれるようになって。

「…いけめん…」
「やりづらいわ」

無事リアス様はわたしの唇に向かってきています。リアス様最近苦笑い多くなったけど。

でもイケメンなんだもん仕方なくない?

めっちゃ好みの顔がすごい近くできれいなお顔で自分の手に口づけしてくれるんだよ??

「いけめん最高しか出てこなくない…?」
「俺には理解しかねるが」
「動画とろうか…」
「断る」

個人的に欲しいから今度カリナに隠しカメラもらおう。

心でそっと決めたら。

「っ」

手の甲へのキスに、体がびくついた。

思いのほかおっきくびくついたそれに、リアス様は止まってわたしを見る。

当然まだ残ってる恐怖心。

リアス様のハグパワーとイケメンパワーで気持ちの方は見ないフリできるけど、体はやっぱりまだ反応はする。心の中では申し訳なさがいっぱいで。

「……怖いか」
「…少し」

ごめんね、っていうように手をぎゅってにぎれば。

「ちゃんと恐怖もあるようで安心した」

とんでもなく失礼なこと言うから思いのほか強く手にぎっちゃったじゃん。

「……クリスティア、手が痛いんだが」
「失礼なこと言いすぎだと思って…」
「俺の反応は比較的正しい方だと思うが」
「比較的失礼な方だと思う…」
「行動療法中にだんだんと恍惚とし始める恋人は心配になるだろ」
「絶対心配してる感じの言い方じゃないでしょ…」
「本来あったはずの恐怖心をどこかに置いて恍惚としだしている恋人を見ていれば心配にもなる。いろんな意味で」

そのいろんな意味って絶対いい意味じゃないやつ。

「申し訳なく思って損した…」
「何よりだ。そもそも申し訳なくなる必要もない」
「そうかも、しれないけど…」
「お前だって俺の過保護に対してそう思うだろう」
「思うけども…」
「ならお前の好きなおあいこだ」

そう言って、リアス様は話は終わりっていうみたいに手の甲にキスを再開。不意打ちでびっくりしてまた体が跳ねたけど、リアス様が背中をゆるく叩いてくれて、ほっと息をつく。
心音が聞こえるように左胸にもたれて、リアス様がわたしの手にキスをしてるのを見た。

きれいな横顔。たまに開く紅い目はきれい。

こわくないわけじゃない。いきなりぐいって迫ってきたらってこわさも、まだあったりする。
紅い目がほんの少し熱っぽい感じになると、一瞬あの日の王子を思い出したりもして、背中がぞわっとしたりもする。

それでも前ほど気持ち悪くなったり、再開してすぐのときみたいに怖い映像が見えないのは。

トクトク聞こえる大好きな心音を聞いて、あったかい温度に包まれて。

大好きな紅に、抱きしめられてるからかな。

すぐそばに大好きな紅がある。その紅に抱きしめられてる。幸せな気持ちがわたしを満たしてる。

その紅が、動いて。わたしの手にキスをする。
紅いのが、皮膚越しに触れる光景が、間近で見れてる。

「…最高だと思う…」
「最近この体勢でやるのが正解か不正解か真剣に考えている」

なんて失礼な。

「どう見たって正解でしょ…」
「恍惚としだす恋人にどう考えてもイエスと言い切れない」
「こわいよりましじゃない…」
「それは否定しないが。想像していたのとまったく違って現実を受け止めきれない」
「最近容赦なくない??」

なんなのみんなの容赦のなさうつったの。恋人泣くよ??

ほっぺふくらませたら、それを見たリアス様はたのしそうに笑った。最近笑うこと多くなったよね。不意打ちでそういう笑い方はずるいと思う。許してしまう。

なんて、リアス様のわたしに対する甘さもうつったのかなって思いながら、そのほほえみをしっかり目に焼き付けた。

「まぁ恍惚としているので恐怖に勝るなら構わないが」
「一応こわさもあるもん…」
「知っている。最終的にその恐怖に勝てればなんでもいい」

そうして”ここ”がもらえるなら、って。

いとおしそうに、ちょっとゆがんだ目で。親指で唇をなぞるこのヒトはやっぱりずるいと思う。

照れを隠すように、目をそらして。

「…もっといけめんになったら勝てるんじゃない…」
「最高だと言っていたじゃないか」
「最高に終わりはないと思う…」
「お前最高の意味知っているか」
「クリス子供だからわかんない…」
「俺は大人な恋人にキスをしているつもりなんだが」

そう言って、リアス様は最近たどり着けるようになった手首にキスを落として。

「子供な恋人なら今日もキスはここまでで終わりにするか?」
「いじわる…」
「真面目に聞いている」
「真面目に聞こえない…」

ほっぺをまたふくらませながら、目だけは真剣な恋人様に”どうなんだ”って聞かれて。自分の体をちょっと相談。

震えはなし。お話もしてたからいつもみたいに限界って感じもない。

もうちょっと、進めそう?

心に聞いたら、さっきのリアス様も思い出してすぐにイエスが返ってきた気がした。

自分の心にうなずいて、リアス様にもうなずく。

「もうちょっと、いけそう…」
「わかった」

リアス様はわたしの答えにほほえんで、キスを再開。あったかい唇が手首を超えて腕に触れた。ほんの少しのこわさをリアス様のイケメン具合でふたしながら、またかっこいい横顔を見る。

「……やりづらいんだが」
「気にせず続けて…」
「気になるわ」
「恋人のかっこいい顔を目に焼き付けたいかわいい恋人の気持ちをくんで…」
「お前が俺にキスするときは逆のことをしても文句は言わせないからな」

そのときまでにリアス様がそのことを忘れてることをお祈りしとこう。

あいまいにうなずいておいて、また腕にキスを落とすリアス様を見た。

キスをする度に、あったかい紅が腕に触れる。

こっちに向かってくるのはほんの少しだけまだこわかった。このままこわいことされちゃうんじゃないかともやっぱり思う。
向かってくるたびに一瞬だけ、頭の中でこわいこともフラッシュバックする。

「っ…」
「……」

そうして体がびくついたら、リアス様がぎゅって抱きしめてくれた。

紅いのに包まれて、紅い目に見つめられて。ほっと息をつく。

だいじょうぶってうなずいたら、きれいな横顔はまた唇を腕に落としていった。

キスする度に金色の髪がわたしの腕をくすぐる。
離れて、触れて。触れるときはこわいけど、きれいな横顔と抱きしめられてる安心ですぐに力は抜けた。

たまに金色の髪で隠れちゃう紅い瞳が見たくて、そっとその髪に触れる。

「なんだ」
「紅い目が見たくて…」

キスをするために閉じてた紅い瞳は、わたしの言葉でゆっくりと開いていった。開いた瞳はこっちを満足か、なんて言うみたいに流し見る。

答えはもちろん。

「最高です…」
「お前実は恐怖にもう勝っているんじゃないのか」

そのあきれた目も最高だよ、って言うのはまた次回にして。

「こわさあるもん…体びくってなるでしょう…?」
「それはそうだが。地味に疑いたくなる」

今日はずいぶん失礼だなリアス様。

っていうか。

「こわくなかったらそもそもわたしからその紅に突っ込んでってる…」

ちょっと言ったのはわたしだけどそんな納得した顔されると複雑。

「お前は行動派だしな」
「もうちょっと否定してもいいと思う…」
「誰に聞いても頷くしかしないだろうよ」

今度はわたしが納得した顔になってしまった。

それにリアス様は笑ってから、最後に一回腕にキスをしてわたしを引き寄せる。見下ろした紅に、首を傾げた。

「終わり…?」
「前回より結構進めただろう。腕の途中だ」
「まだ行けそう…」
「次回に支障が出たら困る」

こわいからやってもらってるくせに、ちょっとだけ残念に思ってしまってほっぺをふくらませれば。

いとしそうに目をゆがませて、リアス様はわたしのほっぺに触れた。

「なーにー…」
「記憶を思い出しても、進まないことに残念に思うのは存外嬉しいものだと思ってな」
「…」
「まだ始めて一か月ではあるが。正直もう少し拒絶があるかと思っていた」
「それは…」

わたしも。

自分でも、もう少し拒絶があるのかなと思った。こわいし、あの光景はやっぱり気持ち悪かったし。それが自分の身にふりかかると思ったら、やっぱり気持ち悪い。
背中が気持ち悪くてぞわっとする。

でも、その度に。

よくはるまが聞いてきた「なんで」を思い出してた。

なんでいやなの、なんで気持ち悪いの。

少しだけ長く起きてられるようになった夜、こっそり考えて。

自分が、あの王子とリアス様を一緒に考えてたのを、知った。

「…まだ、ちゃんと整理はついてない…一瞬、フラッシュバックもあるけど…」
「……」
「目の前は、リアス様、って思ったら…ほんの少しずつ、大丈夫になってる…」

リアス様がわたしにキスをしてくれる。

大好きな紅がわたしを少しずつ満たしていく。

いつの日か夢に思った、その紅に埋もれたいという願いが。どんどん叶っていってる。

「…紅に、埋もれると思ったら…うれしさの方が、ある…」

みんなに嫌われた紅。
わたしだけを愛してくれた紅。

それに包まれて、それがどんどんわたしの中を塗り替えていく。
こわいけれど、それがやっぱりうれしくて。

そのうれしさのまま、ほほえんだら。

ゆがんだ紅い目は笑って、ぎゅっとわたしをだきしめて。

「……相変わらず物好きだな」

なんて、あきれたような言葉とは裏腹にうれしそうな声で言うから。

「…♪」

早くすべてがあなたの紅に埋もれられるように。

ときおりまだこわいときに頭の中に浮かぶシルエットの女の子は、大好きな紅で塗りつぶした。

『わたしの中は、紅でいっぱい。黒いあなたは、さようなら』/クリスティア
新規 志貴零

1文字2円で送れるファンレターサービス、OFUSEもやっています

頂いたOFUSEはサーバー維持費・グッズ作成などの活動費にあてさせていただきます。

志貴零のOFUSE箱