また逢う日まで 先読み本編second June

雨が続く六月後半。
最後の週も結局クリスティアとの外に行く行動療法は叶わず、これは荒療治決定だなと親友と苦笑いを浮かべながらこの時期日課となっている演習を行うべく、同級生揃って演習場へと入って行く。
廊下を抜けていって、規制もだんだんと強まってヒトがまばらなスタジアムへと、足を踏み入れれば。

「女子会したぁい!!」

集合と言われたスタジアムの中央でそう叫んでいる夢ヶ﨑が。

いや何があった。

突然こちらを向いて言われたそれに、同級生全員、ただただ固まるしかできなかった。

「えっと、突然ですね、夢ヶ﨑先輩……」

ひとまず集合場所に全員歩いて行って閃吏がそう声をかけると、むすっとした夢ヶ﨑は咥えている飴をガリっと噛みながら。

「突然じゃないわよぉ。話題は出てたもぉん」
「ぇ、炎上君たちと、ですか?」

雫来が問いながら俺を見たが、心あたりはなく。首を傾げてしまう。

それに夢ヶ﨑は「あった」と再度飴をがりっと噛んで。

「去年っ!! 女子会しましょぉってぇ!!」

そう叫ぶ声に耳を抑えながらクリスティアを見る。小さな恋人は俺を見上げて、頷いた。

「はるまたちが旅行デート中…」
「おいおい刹那ちゃん、オレはコイツと旅行デートしたコトなんてねぇけど? 修学旅行な」
「旅行デート中…」

譲らないクリスティアに笑いそうになりながらも、記憶を探っていく。
修学旅行。たしか十一月あたりだったか。そのときは夢ヶ﨑が俺達の送り迎えをしてくれていて、いつも通り女子組でBL話になり――あぁ。

「陽真と武煉の仲についてもっと語り合いたいからという女子会か」
「龍、その通りなんだけど今ちょうど来たルクと珠唯が驚いちゃってるから」

レグナに言われて指さす方向を見やると。

「? ……?」
『デート……? お付き合いってこと……?』

初日に杜縁や江馬に叱られたにも関わらず、なんだかんだこちらに入ってくるようになった後輩が。その顔は大変迷宮入りしている。

「しゅいー…♪」
『刹那先輩、あたしもうここの関係性わかんない…』
「思うままに受け止めて構いませんわ」
「待った華凜ちゃん、オレが構う」
「たまには後輩の希望に応えるかい? 陽真」
「オメーも一番めんどくせぇトコでノんじゃねぇよっ、ちけぇ!」

近づいて行った武煉を陽真が押しのけたのを見て女子組が歓声をあげているのを聞きつつ、再び視線を夢ヶ﨑へ。

「で、もろもろ落ち着いてきたことだし女子会がしたいと?」
「そぉ」

そいつは食い切った飴の棒を口から出し、包み紙に包んでから。

「可愛い後輩が増えたじゃなぁい?」

真剣な顔で言いながら俺へと近づいてくる。

「夢だったのよぉ」
『夢ヶ﨑姐さんにちなんでかい?』
「そういうつもりじゃないけどぉ。女の子の後輩できたときからほんっとに夢だったのぉ」

近づいてきて、俺の肩をがしっとつかみ。

「可愛い女の子に囲まれながらキャッキャうふふと女子会するのが」

こいつが一番やばいんじゃないのか。
しかし言う暇なく、今度は悔しそうに俺の肩を握りしめる。

「でも現実そう簡単に行かなくてぇ? ちょぉっとばたばたもあったのは仕方ないけどぉ、現実は小さなかわいい後輩には過保護の男がついてて女子会どころか好きに遊びにも行けないじゃなぁい?」
「……俺のことか」
「お前以外いないだろ親友」

お前だって過保護だろ、というのは今は置いておいて。じとっと見てきている夢ヶ﨑へ。

「……女子会をさせろと」
「せっかく全員集合してるんだものぉ」
「どこで」
「ここでぇ」

ここで?
いやクリスティアが離れないならば願ったり叶ったりだが。目を丸くしていれば、今度は夢ヶ﨑はにっこりと微笑んだ。

「さすがにいきなり部屋別にしてぇなんて言わないからぁ」

とりあえずかわいい後輩に囲まれながら話をさせて、と。

笑っているのにものすごい圧をかけられている気がして。

「……け、結界を張るなら、そりゃあ、な」

その圧に押されて、いつの間にかそんな風に頷いていた。

というわけで。

『男子全員の乱闘ですっ』
『漢っぽくていいなぁこりゃ』

少し広めにとってある区画の、気持ち左側に寄っている中央。女子会のしとやかさとは反対にこちらではバトルを行うことになった。
普段からやっているから別にいいんだが。

心配なのはいつも通りクリスティア――ではなく。

「……急だが平気か」
「……」

男子ということで強制参加となった後輩・ルク。見やれば少々不安そうだが、武器である大鎌をしっかり握っていた。やる気はあるらしいことにほっとして。

『ボクも向こう行きたかった……』
「お前は男子だろう……」

非戦闘要員を自称するティノにはそうツッコみ、準備運動をする。
首や肩を回し、手首を掴んで上へ伸び。足首を回して、また首を緩く回す。

一周し終わるところで、今度こそ女子会組の方を見ると。

「!」
「…」

小さな恋人が結界から出てこっちへ来ているじゃないか。

「刹那、どうした」
「んー」

効果音をつけるなら、とてて、と可愛らしく走っていくクリスティア。その目線の先に自分はいないことを確認。なんだなんだと全員で見ていれば。

「はるまー」
「おうよ」

恋人は同じくストレッチしている陽真のもとへ。

「どした」
「女子会…」
「ん?」

手を、伸ばして。

彼女はぴたり、陽真がつけているペンダントを指さした。

そうして、こてんと首を傾げて。

「女の子みんなでお話し会…いっしょに、あそんでいーい?」

それに俺達は当然きょとんとするが。

「ハッ、そう来る?」

言われた本人は楽しそうに笑い、いつもつけているペンダントを外した。

光り輝くそれは小さな恋人の手の中へ。

「楽しませてやってくれな」
「♪」

受け取った恋人は大事そうにそのペンダントを抱えて、また結界の中へと走っていく。その小さな背を見届けて。

「あれは不問でいいのか炎上」
『アクセサリーですぜ旦那、アクセサリー』
「楽しそうだなお前らは……」

見事に茶化してくる祈童とウリオスには、首を横に振る。

「訳ありに嫉妬するほど小さい男じゃない」
「つまり龍は訳ありじゃなければ嫉妬していたということかい?」
「そうだよ武煉先輩。この前まで見事に嫉妬してたもんね」
「蓮、乱闘始まったらお前一番に落としてやるからな」

圧をかけてやるもそいつは素知らぬふりで肩をすくめる。絶対一番に落としてやろう。そう心に決めて。

『始めるですっ』
「楽しもうぜ後輩クンたち」
「よぉい」

掛け声だけ頼んでいた夢ヶ﨑の声に、武器を構え。

「すたぁと!」

一斉に全員、中央へと走って行った。

「っと」

そうして一発目で武器を当てたのは狙い通りレグナ。

「今日は共闘してくれないの親友」
「言ったろう、始めに落とすと」
『その間にユーアが落とすですっ』
「甘い」

押し合いの隙に飛び込んできたユーアをかわし。

「……ご、ごめんな、さいっ」

ごめんなさいと謝りながらもしっかり大鎌を振るってくるルクの攻撃で、レグナと一旦離れた。

「乱闘だとやはりじっくり一人は落とせないな炎上」
「各個撃破で行きたいんだがな。主に蓮から」
「一緒に倒してって最後にバトルでもする?」
「聞いていたか、お前から落とそうと言っているんだ」

言いながらも矢を飛ばしてくる閃吏の方に向かって行って、短刀を振り下ろす。

「、っわ!」
「油断するなよ閃吏」
「波風君から落とすって言ったのに……!」
「あくまで希望だ」
『あ、閃吏クンごめん!』
「え」

ティノの声が聞こえてそちらを見やる。魔力を感じるので魔術を練っているんだろう。

ごめんということは。

「閃吏引っ張るぞ」
「うわっ!?」

探った感じここだろうと、閃吏の立っている場所に魔力を感じてすかさずそいつを引っ張ってやった。

直後にその場に落雷。

「命拾いしたな」
「あはは……ありがと炎上君」
「ありがとうと言うならそのクロスボウは降ろしてほしいんだが?」
「油断するなってさっき言ってたから」

倒れたところから俺を狙うクロスボウに笑ってやって、矢が放たれる前にその場から退く。そうして後ろに下がっていけば。

「!」
「お、ヤッホ」
「あんたか……」

背中にトンっと衝撃。ちらっと見やると衝撃の相手である陽真も同じように俺に背を預けている。

周りに目を向ければ止まった俺達に向かって全員が走って来ていた。

「いやぁオマエと背中合わせるとは思わなかったわ」
「こっちのセリフだ」

俺の言葉に笑って。

「んじゃ頼むぜ弟分?」
「俺はいつあんたの弟分を卒業できるんだかな……」

溜息をつきながら、互いに魔力を練り。

【ネブリーナ!】

陽真が魔術で霧を張ったタイミングで。

【ライトニング】

ティノとは比べ物にならない量の落雷を食らわせてやった。

悲鳴が聞こえるが演習なので助けることはせず。

霧が晴れていくのを、待つ。

徐々に晴れていくその中にいるのは。

「お」
「さすが、防いだか」

祈童の首根っこを掴んで自分の結界のテリトリー内に入ったレグナと、予め霧の範囲を見切ってその範囲外に出た武煉。そして大盾を出して閃吏、ティノ、ユーア、ルク全員を守ったウリオス。

「ウリオスがMVPか」
『おほめにあずかって光栄だぜ!』
「ま、そのまま狙われねぇように注意、な」
「あは、ごめんウリオス君」
『おいおい坊ちゃんそりゃねぇぜ!』

すかさず反撃に入った閃吏を合図に、全員近場の者に刃を向ける。俺は後ろの陽真に振り向き、ちょうど振り返ったそいつの大剣に刃を打ち付けた。

「乱闘も楽しいもんだわな」
「それは同感だ」

全員が味方で敵、というのはあまりないかもしれない。なんだかんだ去年も、ここ最近の演習もペアやグループ戦で行っていたし。

なかなか新鮮な戦い方に、心の中で少しばかりテンションが上がって。

大技でも行こうかと、陽真と押し合いをしながら魔力を練った時だった。

「ちょっと雪ちゃんどういうこと!?」

道化のでかい声が聞こえ、思わず全員びくついてからそちらを見やる。

そこには結界内でしゃべっている女子達。今日はなるべく耳を一般に近づけたから会話は聞こえていなかったが、道化の言葉を聞く限り話題の中心は現在雫来。
当の雫来は少々顔を赤くしてうつむいている。

『なになに、恋バナ!?』
「女子ならではだね。雪巴の反応を見る限りもそうじゃないかな」

押し合いもしながらも、少々道化の反応が気になり。

男子全員、緩い押し合いに変えて耳を立てれば。

「男の子が女の子の髪触ったら脈ありでしょう!?」

興奮気味なのかボリュームでかくそう叫ぶ。雫来から「声が大きい」と言われているが彼女の声は小さくはならず。

「ちょぉっと、どこでそんなイベント起きるのぉ?」
「た、たとえ話で、ですね……!? っていうか脈ありとかの、は、話じゃなくて、と、ときめき話だったはずじゃ……!」
『雫来さんがお付き合いしていないと言うから……その距離感はというお話になりましたわ』
「まさか懇意にしていらっしゃる男性が?」
「そ、そうじゃなくて……! ていうか、たとえ話ですよっ!?」
『そういうのってタトエっていうときほど自分のお話でしょうっ? ルクの本でもあったよ!』

ちらっと横目で見ると雫来は恥ずかしさで帽子を深くかぶってしまった。

「あーあーカワイソウに雪ちゃん」
『いいなぁボクもあっち混ざりたい』
「というか道化たち、だんだん声のボリューム全員が大きくなっていないか?」
「美織につられているんだろうね」

哀れな雫来に苦笑いをこぼし。

切り替えて続きでもするかと、視線を陽真へと戻そうとしたときだった。

一人だけ、向こうの女子側に目が行っていない奴が目に入る。

そいつは千本で祈童の刀を押しながらも、顔をうつむかせていて。

「……」

じっと見ると。

うつむいて黒い髪で隠しているつもりだがどことなく顔が紅くなっている。

お前か。

お前かそれをやったのは。
何してんだあいつ。妹の髪触る癖があるからとかそういう言い訳絶対通用しないだろ。なにさりげなく「雫来の奴っ」って小さい声で言ってんだ。自業自得じゃないのかこれは。
しかしこれは口には出せず、ただただ悶々と親友を見るしかできない。それを見て、声をかけてきたのは押し合いをしている陽真と、こちらに向かっていたらしいルク。

「どした龍クン」
「珠唯たち以外に……気になったこと、ある……?」

大ありだが。
正直なところ今すぐそいつのところへ行って何したんだと聞きたいところなんだが。

たださすがにここでレグナに声をかければ、このテンションだと変に騒がれる可能性もある。普段ならご自由に、という空気が強い奴らだがこのテンションはいけない。

不思議そうに首を傾げているそいつらには、首を横に振って。

「……一瞬杜縁が来たように見えただけだ」

言うならばもう少し機を経てからと、今はこっそり、嘘を吐いておき。

「刹那のも聞いてっ…!」

同じく空気を読んだらしい恋人がそう珍しく声を上げたので、あとで褒めてやろうと陽真に切り込んでいった。

そうして俺の切り込みを合図に演習が再開し。

「今日は蓮の動きが途中で鈍ってしまったな」

乱闘の末、勝者は少し残念そうに言う武煉。それに、レグナへと目を向けて。

「……まだまだ修行が足りないな」

そいつにだけ聞こえるように小さく小さく、呟けば。

うるさいわと、珍しくレグナは照れたように声を荒げて。
見事に首を傾げる乱闘組と女子組の中。

秘密を持ったクリスティアと目を合わせて、こっそりと笑いあった。

『新規 志貴零』/リアス

おまけ
みんな呪いとかあるのーって話してる女子組
男子(俺達の知ってる女子会じゃない)

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